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……すみませんでした(土下座)。
出来心でまた書いてしまいました。
念のためお断りを。
本作は「短編」です。
なんか感想いっぱいいただいて調子こいて「続き」を書いてしまっていますが「連載」ではありません。
というわけで。
時系列が前後するけど許してください。
ていうか短編集に「時系列」とか「どこに居る」とか詳細を詰めるようなことは考えないほうが楽しめると思うのです(個人の感想です)。
短編集なんです。連載じゃないので。
ねっ? ねっ?
そうだ、冒険者になろう。
現地の情報収集もできて、忠誠心高すぎNPCに囲まれる息苦しい環境から抜け出せる。
やったね!
というわけでアインズはナーベラルを連れてエ・ランテルに出かけた。
原作ではナーベラルはアインズの少し後ろを黙ってついていく「メイド然」とした振る舞いをするのだが。
このナーベラルは、デミウルゴスから「2つのお願い」をされている。
「アインズ様が何に興味を示されるか。
それとナザリックの消耗品を現地の品物で代用できないか。
観察しておいてくれないかね?」
というわけで、ナーベラルは頑張って周囲をキョロキョロしながら歩いていた。
アインズから見ると、まるで上京したばかりの田舎者である。
物珍しくてあちこち見てしまうのだろう。ナーベラルは楽しんでいるな。
そんなふうに見て取れた(もちろん勘違いである)。
「ナーベ。あまりキョロキョロするな」
「は。申し訳ありません、モモンさーん」
即座に首を正面に向けて固定しつつ、ナーベラルは考えた。
これはアインズ様が何に興味を示されるかという事のひとつと考えていいのだろうか?
状況的には「興味を示した」というより「興味を示すな」と禁じられたような形だが。
「……あの」
「なんだ?」
「理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
ひとつはナザ……んんっ、その、ふさわしい振る舞いをせよ、という事かと思いますが、新しい土地に来てこれから冒険者になろうとしている2人組という設て……状況からすると、それほど不自然なことでもないと思うのですが」
「あー……」
治安が悪いとはどういう事か、想像できないのだろう。ナザリックNPCは忠誠心が高すぎるからなぁ、とアインズは察した。勘違いである。
御方の護衛として供回りを許された、とナーベラルは張り切っている。当然、油断もなければ隙もない。
「現地の人間から見ると『キョロキョロするやつはよそ者』というのが分かる。
すると不慣れな相手には何を言っても嘘か本当か見抜けないはずだ、と考える者が出てくるわけだ。偽物を売りつけられたり、ボッタクリ……地元住民なら絶対に買わないような高値で売りつけようとしたり、だな」
まあ無一文だから買い物なんかできないけど……とアインズは心のなかで付け足す。
「あとは、明らかに注意散漫に見えるから、スリとか寄ってきやすい」
スられるお金がないけどね、とアインズは心のなかで付け足す。
ナーベラルは首を傾げた。
「恐れながらモモンさーん。その、買い物をするお金を稼ぐために冒険者になるのでは?
それに、レベル1桁のミドリムシどもがスリなど働こうとしても、見てから捕らえることは容易ですが……?」
レベルの格差。
そうだったー(下顎パカッ)と心の中でアインズは慌てた。
ど、ど、ど、どうしよう???
「げ、現地の人間であれば、そういう事を警戒して振る舞うものだ、ということだ。
我々は今、よそから来た人間というていで偽装しているのだからな。それっぽく振る舞わなくては。そうだろう?」
「はっ。申し訳ありません」
きれいに頭を下げるナーベル。
メイド然。
そういうとこだぞ。
冒険者らしくもなければ人間らしくもない。
頭を下げるだけの動作が、完璧すぎる。
ダメだこりゃ、とアインズはさじを投げた。
「あー……ところで何か興味深いものでもあったのか?」
「スクロールなど消耗品を補充できる可能性はないものか、と。
しかし、どこも店内が見えるようにできておりませんので、窓から中を覗くような形になってしまい……申し訳ありません」
ショーウィンドウが存在しないのだ。
これは建築技術の問題で、壁そのものが建物を支える構造材なのだ。そこをくりぬいて大きな窓を作ると、建物自体の重さで潰れてしまうのである。
だからこそ、という事だろう。露天商が盛んである。壁がない露天商は、通行人に商品が見えるように「手前を低く、奥を高く」陳列する。しかし防犯上の理由から、あまり高価な商品は扱えず、ほとんどが食料品である。
「ああ……見える範囲には食料ばかりだな。私は食べられないから興味もないが」
と支配者ムーブをかましながら、リアルには無かった本物の食材なんて食えるものなら食ってみたいと臍を噛むアインズだった。
ナーベラルは「食事といえば……」と思い至った。
「現地のものなど味には期待できないのでは……とは思いますが、一般メイドはホムンクルスなので食事の量が多いですし、食材をどこから補充するかとなると……」
「ああ……」
食事量が多いのはホムンクルスの種族特性だ。
守護者などは飲食不要のアイテムを装備しているが、一般メイドまでは行き渡っておらず、ナザリックには食堂があってシホウツ・トキツらが腕をふるっている。
で、その食材がどこから来るのかというと、料理するアニメーションの中でどこからともなく現れる。ゲームなので。しかし使った分だけギルドの維持費として計上される。食事によるバフ効果が存在し、そのために料理人系のクラスを必要とする、というユグドラシルらしい特徴だ。
一般メイドが食べるものはバフ効果がない食材・料理であるが、バフ効果のあるものはプレイヤーが集める。バフを求めて集めることもあれば、イベントやクエストの周回などで副次的に入手したものが大量に余ってしまうこともある。もちろんこれらは至高の御方の許可なくば使用されない。
まあ要するに、食材を現地から調達すれば、システム上はナザリックの維持費が抑えられる。とはいえ防衛ギミックなどに比べれば僅かな支出だし、現地から調達するその資金とどっちが安いのかという話になるのだが。
「そうだな。一考の価値がある話だ。素晴らしいぞ、ナーベ。
料理人系のクラスがあれば多少劣る食材でも美味しく調理できるかもしれないな」
第6階層に畑でも作ろうか。アンデッドに農作業をやらせて……と節約術に思いを馳せるアインズだった。
◇
その後セバスとソリュシャンのチームがアインズ様の命令を受けて、多様なスクロールを少量ずつ買うことになる。サンプル集めだ。
現物はパンドラズ・アクターのもとへ送られて鑑定。
さらにデミウルゴスのもとへ送られ、実際に使ってみて効果を確認し、報告書にまとめる事になる。
「というわけで、これがご報告の第1段でございます」
「うむ、ご苦労。
忙しい中すまないな、デミウルゴス」
コレクターとして趣味の範囲である、との認識から出た言葉だろう。
「何をおっしゃいますか。
わずかでもナザリックのためになる可能性があるのでしたら、きちんと確かめるのがシモベの務めでございます」
「そうか。そうだな。
それで、どうだ? なにか面白いスクロールはあったか?」
「ナザリックの戦術レベルで役立つようなものは何も。低位のスクロールばかりですが、冒険者モモンとしての活動に使うのであれば、むしろ自然でしょう。
一方で戦略レベルで見ますと、現地のスクロールがその程度であるということは、こちらの対策も通常はその程度で足りるという事になります。これをもとに節約の方法を考えるのは少しばかりナザリックの益になるかと。アルベドに回しておきます」
「うむ」
「面白いという点で申し上げますと、第0位階のスクロールなどというものがございました」
「第0位階?」
ユグドラシルには無かったものだ。
アインズ様のコレクター魂を刺激したらしい。
しかし効果自体はそれほど興味深くもないだろう。
てことで、少し情報を付け足すことにしよう。
「塩や胡椒などを生成する魔法ですとか、汚れを落とす魔法ですとか。
まあ、生活をちょっと便利にする、程度の効果ですね。
シホウツ・トキツやピッキー……クラグゥが欲しがるかもしれません。
逆に一般メイドは、嫌がるでしょうね。自分たちの手でナザリックを清潔に保ちたいでしょうから、スクロールひとつで片付けるのは彼女たちの矜持に反するかと」
「なるほど」
天井に視線を向けて思案するアインズ様。
彼ら彼女らがどのように反応するか、想像しておられるのだろう。
アインズ様から与えられた、という形になってしまうと「従うしかない」という反応になるので難しいところだ。
「アインズ様」
「なんだ?」
「エクレアは、どう反応するでしょうね?」
いつかナザリックを支配することを企んでいる、という設定があったはず。
そのときに役立つ、と喜ぶのか。
あるいは、これは邪道だ、と拒否するのか。
言動はアレだが掃除には熱心だ。どっちに転ぶか分からない。
「ス――ッ……」
肺も無いのに、アインズ様は深く息を吸い込まれた。
自然と腕を組み、片手を顎へ当て、視線は再び上を向く。
眉も表情もないアインズ様だが、なんだか眉をひそめておられるように見えた。
「……さて。どうだろうな?」
「どうでも良いことでした。忘れてください」
ナザリックにとっては益にも損にもならないことだ。
アインズ様が暇になったら、戯れにお確かめになってみるのが良いだろう。エクレアなら遠慮なく反応するだろうし。
天井にいつもエイトエッジアサシンがいるから「今から呼んで確かめてみませんか」なんて提案をすると、あとでアルベドあたりから「アインズ様の貴重なお時間を奪って何やってんだオマエ」と嫌味を言われることになりかねない。ぜひ一緒に鑑賞したいのだが、難しいところだ。
「いや、確かに『面白いスクロール』だ。
さすがだな、デミウルゴス」
「恐れ入ります。
あ、そういえば。ニューロニスト以下トーチャーらは喜ぶかもしれません」
お仕事のあとは作業場が血まみれになるだろうからね。
ほっこり系のあとでスプラッターをぶちこんでしまって申し訳ない。
しかしデミウルゴスならやりそうだ。
そしてアンデッドになったアインズ様は、そういう事に忌避感が薄いはず。
「ああ、そうだな」
「他にも欲しがるシモベがいるかどうか……アルベドに回しておきます」
「頼んだぞ」
「ところで、ナーベラルはいかがでしたか?」
「あいつはなぁ~……」
迂闊にアルベドの名前を出しおって……とアインズ様が愚痴るのを聞いて。
俺はすぐにナーベラルのもとへ向かうことにした。
第2話後半へ続く!
◇
おまけ。
ナーベラルに話をしたあと、俺はアルベドのもとを訪れた。
「あら、デミウルゴス。どうしたのかしら?」
「カクカクシカジカです」
「あらあら、ナーベラルには後でよく言っておかなくてはいけないわね。
あ、仕事のほうは了解したわ」
にっこにこである。
よく言っておかなくては、の中身がどうなるか透けて見える。
まあいい。
アインズ様に叱られ、デミウルゴスからも言われて凹んだであろうナーベラルのメンタルを思うと、アルベドが褒めるのは(利己的な理由だとしても)悪くないだろう。
口には出せないが、ンフィーレアを引き込むために必要な失言だったし、俺としても責めるつもりはないが……ナーベラルがどう受け取ったかは疑問が残る。
まあ、それはともかくとして――
「重要なことを見落としていますよ」
「え? 何かしら?」
「『迂闊にアルベドの名前を出しおって』と、アインズ様はそう仰っしゃりました」
「ええ、そうね?」
キョトンとするアルベド。
待ってみても、それ以上の反応はない。
「……はぁ~」
「何? そのため息は」
「そういう所ですよ」
「どういう所よ?」
「単に機密管理だけの事として扱ってしまう。守護者統括としては優秀ですがね」
「何よ? 何なの?」
「次にアインズ様にお会いするときは、上機嫌なふりをしてみなさい。
アインズ様から『どうした?』と聞かれるのを待つのです。
聞かれたら、こう答えてみるといいですよ。
わたくしの名前を大事にしてくださったのが嬉しくて、と」
「……効くのかしら? アピールとしては弱すぎるのではなくて?」
「恋の病というでしょう?
ですが、ちょっとした風邪に劇薬を投与する必要などないのですよ。むしろ毒になる」
「なるほど……そういうこと」
ニタッ、と肉食獣の笑みを浮かべるアルベド。
ほんと、そういう所だよ。
「でも、あなたは私を応援する立場なのね? シャルティアではなく」
「あー……正直それはどっちでも良いのですがね。
ただ、我々が忠義を尽くすべきお世継ぎは、お生まれになるほうが望ましいでしょう?
その点シャルティアは……アウラによくいじられていますが、アンデッドなので成長しない。それは胸だけでなく、もし妊娠したとしても、胎児も育たないということになるのではないかな?」
そもそも妊娠できないのではないかと思うが。
ペロロンチーノ様はそのあたりも「ヤリ放題」と喜んで設定なさったのではなかろうか。
しかし、その一方で普通に物事を記憶し、あとで思い出すことができる。洗脳イベント後に飲んだくれていたのは、まさに記憶(他の守護者たちから教えてもらった内容)を参照できるからこそ。
しかし記憶というのは脳のシナプスが新しく結合して保存されるものだから、アンデッドの脳で「新しいことを記憶する」というのは奇妙な話だ。あるはずのない新陳代謝が起きているという事になるのだから。
まあ、それを言ったらそもそも脳がないアインズ様は? という事になってしまうけれども。ナザリックは不思議がいっぱいだ。
「その可能性はあるわね。
私であれば、その限りではないでしょうけど。
でもアインズ様ならそのあたりは、どうにでもできるのではないかしら?」
「おそらくね。『星に願いを』とか使えば解決できるとは思うよ。
ただ、その場合、貴重なアイテムや大量の経験値を消費してしまうことになる。
シモベとして、それは避けるべきだろう?」
変身系のアイテムを持っていらっしゃるかもしれないが、シモベがアインズ様の持ち物を確認するなど恐れ多い。
かといって「持ってないか確認してください」などとお願いするのは不敬だ。アインズ様に行動を指示するなど、主従が逆転している。
まあ、慈悲深いアインズ様はきっと引き受けてくださるだろうが、それはそれでアインズ様のお時間を頂戴してしまって申し訳ない。
……というのがシモベとしては通常の判断基準だろう。だからこそ、興奮してアインズ様に襲いかかったアルベドがお叱りを受けたと聞いて、誰もが呆れ、アルベドに同情する声など上がらなかった。
「そもそも君たちはアインズ様のご寵愛がほしいのであって、お世継ぎがほしいわけではないのでしょう? 愛情の向かう先として『あるべき結果』とは思うにせよ、ね?」
「……まあ……そうね。言われてみれば。たしかに」
咀嚼するように答えるアルベド。
極めて情が深いから、物事を要素に分解して考えるというのは、やや苦手かもしれない。
ナザリックの宰相としてなら当たり前のようにこなすのに、アインズ様のこととなると、たちまちポンコツだ。恋は盲目というやつだろうか。
「ところがアインズ様はアンデッドなので、性欲は無い……もしくは非常に薄いのだと思うよ。おそらくアインズ様が性的に興奮して君に手を出すというのは、起きないことだ。
状況をよくご覧になった上で、必要と判断されれば行動なさるだろうけど、寿命の概念がないアインズ様がお世継ぎを『必要と判断する状況』といったら、我々ナザリックにとって良くない状況ではないかな」
アルベドは、サッと顔を青くした。
――自分が滅ぶかもしれないから保険として用意しておこう。
考えるだに恐ろしいことだが、アインズ様にとってお世継ぎが必要になるとは、そういう事だ。
お世継ぎを作りましょうと誘うのも、そういう状況を想定していますと申し上げるようなもの。それは極めて不敬な考えだ。
「愛の形は様々だ。君の性愛を悪いとは言わないが、私に言わせればそれは『愛』ではなく『恋』だね。
もちろんそれは素晴らしい事だが、アインズ様のご命令とは異なるのではないかな。
はたしてアインズ様がお求めになった愛とは、どのような形なのだろうね?」
考え込んだアルベドに、聞こえていない挨拶をして退室する。
これで少しは落ち着いてくれると良いのだが。
誤字報告をいただきました。
はっしー様
ありがとうございます。