Uムーン様からの感想をいただいて、それは面白そうじゃね? と思ったので、ちょっと書いてみました。
ご笑納ください。
え? ひとのせいにするな?
あっ、ごめんなさい! ちょっ……まっ……石を投げないで!
「このラナーという女、興味深いわね」
報告書を見つめて、アルベドが言う。
その姿が、なぜだか新聞広告をながめる主婦みたいに見えてしまった。
相撲取りみたいに横に大きくなったアルベド(50代)が、真面目な顔して新聞広告を見ている……という光景を幻視してしまったのだ。
「……ふっ……。
……ククク……!」
「なによデミウルゴス? どうして笑うの?」
「ああ、すみませんね。
今の君の姿に、人間の熟年夫婦を連想してしまって。少しおかしみを感じたのですよ。
しかし考えてみれば、もし人間であれば、アインズ様の妻としてはむしろ自然なことかもしれません」
使いこなせない多機能家電を買おうとする主婦みたいだ。
もし人間同士だったら、数十年後のアインズ様の妻としてはむしろ自然なことかも?
「妻……くふふふ……!」
「あー……戻ってきたまえ。都合の良いところだけ聞いてからに。
アインズ様を『人間であれば』などと不敬な、とコキュートスあたりでも言いそうな事をスルーしないでくれたまえ」
「くふふ……あ、そうそう。
それで、このラナーという女、あなたはどう思う?」
「急に戻ってきた……。
あー……その女は、どうでもいいですね」
「え? でも、知能は高そうよ? 頭脳労働では私たちの補助役として使えるのではなくて?」
「ええ。ですが、単に性能が高いというだけです。
お抱えの騎士の坊やにご執心で、そのためだけに祖国を売ろうとしている。
今この瞬間だけは役立つでしょう。ゲヘナ作戦完了まではね。
しかし彼女は目的を果たしたあと、ナザリックのために働くことを嫌がるに違いありません。騎士の坊やと過ごす時間を邪魔する要素、としか思わないでしょうからね」
「それでもこれだけの知能なら、片手間にでも役立つのではないかしら?」
「……アルベド。
今のは聞かなかった事にしてあげます」
メガネくいっ。
「聞かなかった事にしてあげますから、ここからは私の独り言ですが。
守護者統括たる君がそんな事でどうするのですか。
ナザリックのため、アインズ様のためにお役に立つこと……それを『片手間で』?
あなたはそれで良いと判断するのですか」
冗談ではない。
ナザリックにそんな雑な仕事をする怠け者など居て良いはずがない。
……というのがシモベとしての理屈。
web版ではアインズ様ご自身が「役立つ者なら現地人を登用する」と発言しておられるが、アニメ版では「凡人なのがバレるかもしれない」と恐れておられた。
今のアインズ様はどっちなのか? ――それはどうでもいい事だ。
なぜなら今回ナザリックは宗教団体として活動する方針であり、必要となる人的資源は国家として活動するより遥かに少ないからだ。ラナーが居なくても「人手が足りない」と困ることはないのだから、わざわざ招いてアインズ様の御心を煩わせるリスクなど取らなくて良い。
「迎え入れるというのなら、せめて恐怖公やニューロニストに協力をあおぎ、徹底的に教育してからです。
精神の異形種とでもいうべき個体ですから、八本指の連中に施した程度の教育では足りないでしょう。
しっかりしなさい、アルベド。こいつは教育なしで受け入れても良さそうだ……と、君はラナーに『そう思わされている』のですよ」
ラナーは取り立ててもらえるように印象操作している。
アルベドはまんまとハメられた。
しかし冷静に考えると、アインズ様への忠誠心がないものを教育もせず受け入れるなど、あってはならない。
そもそもの大原則として、裏切り者を重用するなど、あってはならないのだ。ましてや自分から裏切ったような者など。都合が悪くなれば、またすぐに裏切る。ナザリックがそんなに簡単にグラつくことはないと信じたいが、突如ワールドエネミーが現れて大暴れなんて事になる可能性も捨てきれない。オバマスでそれ系のストーリーを用意しているっぽいので余計にだ。……最後まで攻略できずに憑依してしまったな。結末わからん。悔やまれる。
「……言われてみれば、たしかに……。
おのれ……この私によくもナメた真似を……!
よし、ちょっとこの女ぶち殺してくるわ」
「放っておきなさい。知恵だけで力がないのですから、放っておけば無害ですよ。
むしろアルベドが手玉に取られるという事は、関われば関わるほど危険ということの証明です。
距離を取るべき……いえ、それよりも、もし『力も備えているラナー』が現れた場合にどう対処するか、策定しておくべきでしょう。それは新たに転移してくるプレイヤーかもしれませんからね」
だんだん今の状況に慣れてきたところだ。
このまま憑依生活を続けて安寧に暮らすためには、油断も慢心もできない。
◇
ラナーうんぬんの事で思い出した(思いついた)ことがある。
俺はアインズ様のもとへ伺った。
「デミウルゴス。今日はどうしたのだ?」
「アインズ様のお持ち物に、たしか『ブラスティングスタッフ』なるものがあったかと。
それに似た性能のアイテムがございましたら、拝借できますと幸甚に存じます。
ただし、低い確率で失う可能性がございます」
ブラスティングスタッフは、攻撃力ほぼゼロ、ノックバック特化の武器だ。
リク・アガネイア戦で使っていた。魔力系魔法職でも装備できる武器で、一般的には魔法が込められた杖だが、アインズ様の使うブラスティングスタッフは攻撃力がほとんどない代わりに強力なノックバック効果があり、自分の得意な間合いに持っていくために使用される。
リク・アガネイア戦はまだこれから。なので失われる可能性があると承知でブラスティングスタッフそのものを借りるわけにはいかない。だがアインズ様なら、たった1つ作っただけで「これでよし」とはお考えにならないだろう。
「似た性能か……性能は劣るが試作品があったな」
はいビンゴ!
やっぱりね!
いくつも作って一番いいものを使っていると思ったよ。
しかも試作品を「もったいないないから取っておこう」とか考えそうだ。
「レア度は低いが、失う可能性があるとなると少しためらわれる。
使用目的は?」
「ゲヘナ作戦でこちらの損害を減らすためです。
ゲヘナ作戦について改めて申し上げますと――」
運命の強制力というやつだろうか?
計画書と呼ぶべきか企画書と呼ぶべきか、とにかくそれ系の書類は、アルベドがやたら邪魔してくるので、あまり詳細に書けないのだ。報告書なら詳細に書けるのに。
結局「アインズ様はいい感じに動いてください」というバカみたいな計画書を提出することになってしまった。報連相は大事だとアインズ様も仰ったのにと言えば、アインズ様の叡智であれば分かりきっている事をクドクドと書くほうが不敬だと言い返される。アインズ様に届くかどうか、書類の最終審査はアルベドなので、却下と言われると強引に通すことはできない。デミウルゴス(本物)なら狡猾に突破する手段を思いつくかもしれないが、一般人の俺では無理だった。
んで、どうするかと考えた結果、直接お会いして詳細を説明することにした。ただし「そのためだけにアインズ様に会いに行く」というのでは強制力が働くようで失敗してしまうため、別の用事を作って「ついでに」と添える形にしなければならない。ちょっと面倒くさいが、いっそそのほうがデミウルゴスらしいと言えるかもしれない。
「――という形で、お借りしたアイテムを使用する予定でございます」
「よろしい。では、これを貸し出そう」
ピコピコハンマーをお借りした。
◇
イビルアイはレベル51~55程度と推測され、相性の問題もあってレベル51のエントマでは対処が困難だが、レベル100のデミウルゴスなら対応できる。結果はアニメ版の通りだ。
しかしエントマを追い詰めなければ、アインズ様からの印象もそれほど悪くないはず。
モモンを通して、という形であればアインズ様に好意的な相手と見ることもできる。
外伝まで広げるとますますその可能性は高いだろうが、あちらはイビルアイとは全く違う職業構成になっているので参考程度だ。
「虫殺し!」
イビルアイが独自の魔法をぶっ放す――
これを受けてエントマは大ダメージを受け、口唇蟲は死亡。
創造主・源次郎様からいただいた声を失う。
――が、そこに手を加えさせてもらった。
ぴこっ
間抜けなSEとともにイビルアイが吹き飛んだ。
魔法はあらぬ方向へ飛んでいき、エントマは口唇蟲を失わない。
手順はこうだ。
警備が手薄(ナザリック基準)なラナーに、シャドウデーモンを差し向けた。あっさり影に潜む。
いつものようにラナーが蒼の薔薇に会い、その隙にシャドウデーモンはラナーの影から蒼の薔薇の影へ移る。
仲間同士しか居ない部屋。現地人基準では警備が厳重な王城の一室という環境。それは意識の盲点だ。
バレずに影に潜んだシャドウデーモンの手には、アインズ様からお借りしたピコピコハンマー。
あとは重要なタイミングで殴るだけ。
防御系の魔法では防げない可能性があった。それが可能なら、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーであれば種族特攻効果なんて対策していて当然だろう。だから防ぐのではなく逸らす。
それた魔法がエントマの召喚した虫を大量に殺すが、それを合図として利用する。
「何やら大量の眷属が死んだようだが?」
「ヤルダバオト様、申し訳ありません」
「……順調とは言えないまでも、無事なようだね」
と、エントマが大ダメージを受ける前に介入する。
魔皇ヤルダバオトの登場だ。
そしたら蒼の薔薇は適当にあしらって、無駄に恨みを買いすぎないようにガガーラン殺害は踏みとどまる。
ただし「運がよかったら勝てるんじゃね?」などとヤルダバオトの実力を低く見られる事のないように、余裕ぶって遊んでいる感じを演出する。
しっかり力の差を分からせたところで――
「……私の敵はどちらかな?」
冒険者モモン登場。
これで役者が揃った。
で、あとは原作と同じように2人で適当に暴れるわけだ。
計画の詳細は事前にお伝えしたが、途中で空き家に入って相談するシーンはあえてカットしない。
なぜなら相談の内容が異なる。
◇
「ガゼフ・ストロノーフを引き込む方法はないか?
その事を考えておりました」
「ほう?」
アインズ様は、ガゼフを気に入っておられた。
誇り高く義理堅い戦士長としての振る舞い。そしてアインズ様に対等な個人として礼儀を尽くす稀有な人物。
理由としてはこのあたりと推測される。
が、シモベにとって理由など、どうでも良い。
「至高の御方が『ほしい』と思し召したならば、そのために動くのがシモベの務めでございます」
原作では王国と帝国との戦争でガゼフは勧誘を断って一騎打ちの末に果てる上に、せっかく守ろうとした王国もフィリップの暴走で滅亡確定になるわけだが。
ここに2つばかり手を加えるとしよう。
「今回のゲヘナ作戦のどさくさに紛れて、貴族派閥のおもな連中を始末しておきます」
ついでに大戦犯フィリップも処す。
デミウルゴスのスキルで召喚した悪魔に、その役割を任せる。
なにしろ標的となる貴族が無駄に多い。
跪いた悪魔たちが揃って一礼し、出陣していった。
「下位の悪魔でも、このくらいは造作もない事です」
なにしろレベル1桁が珍しくない。
これで魔導国から聖王国へ向かう救援物資の穀物運搬車を略奪というフィリップの蛮行は消滅。
そして王国の正式な謝罪と首謀者の差し出しを求めたが、腐敗した国内政治と無能な貴族たちのせいで迅速かつ誠実な対応ができなかったという未来も消滅する。
そしてもちろん今回は宗教団体として表に出るので、見せしめはともかく、統治の実験のために王国を更地にして作り直そうという計画は最初から無い。
つまり王国を滅ぼす理由がなくなる。
ただし帝国と関わる都合上、王国大虐殺のシーンは不可避だ。使う魔法は選んでいただくとしても。
「ふむ……貴族派閥に邪魔されなくなったガゼフは、今後かなり動きやすくなるわけだな」
「はい。そしてアインズ様はカルネ村でガゼフと会っておりますので、かの者を訪ねるのは不自然なことではないでしょう。
ほとんど王派閥だけになって領主が不足する中、ガゼフはかなり忙しくなるはず。何くれと無く支援してやり、恩を売って友誼を篤くしていただけば、将来的には王国から引き抜くことも可能かと」
陛下に恩があるから裏切れない、と一騎討ちを挑んで殉死するその義理堅さと誇り高さ。
それゆえ恩を与えれば与えるほど、勧誘されたら断りにくいはずだ。
「ただし帝国との戦争ではアインズ様は帝国側で参戦されることになりますので、ガゼフを見つけても近寄らないようにお願いいたします」
「近寄ってはダメなのか」
「ちょっと立ち寄ったついでに挨拶でも……ではございません。
ここはユグドラシルではないのですよ?」
「うっ……」
「そんな事をなさいますとガゼフは意固地になって立ち向かってくるでしょう」
「あー……」
「死は単なる状態異常の一種、などと捉えるのは、超越者たるアインズ様だけです。
現地の人間は、死んだら終わり。必死に生きているのですよ?」
「……はい」
「1度殺してから蘇生させて『君はもう死んだのだから今後はナザリックに』と勧誘するのは、成功する可能性が無いとは申しませんが、確実とも言えません。
蘇生を拒否されると、いかんともしがたく……ですので戦場では知らん顔していただき、その後の王国に対して『宗教団体ナザリックが支援して復興を遂げる』という形に持っていけば、次代の王に交代するタイミングでこちらに引き抜けるかと愚考いたします」
ガゼフを個人的に支援していたアインズ様が、その流れで王国側について帝国軍相手に大虐殺という流れにも持っていけるが、そうすると「竜王国と聖王国を救った神様の居城にコソ泥どもを差し向けた帝国」という国際非難も加わって「帝国は神の敵」とみなされてしまう。
王国軍を大量虐殺すると、ガゼフからの好感度が下がってしまうので、なるべく被害者が出ない方法が望ましい。開幕の魔法としては「要塞創造」で即席の一夜城を作ってみせるとか「天軍降臨」で追加の兵力(天使)をズラリと並べてみせるとかでも十分なはずだ。そもそも「いかに欺瞞情報を与えるか」という誰でも楽々PK術の思想に従えば、わざわざ超位魔法を見せる必要もないだろう。経験値? 竜王国のビーストマンやドワーフ王国のクアゴアで我慢してください。
アインズ様はジルクニフの事も気に入っておられたご様子。信者を獲得するという点から考えても、帝国を滅ぼすメリットはない。
「おお……!」
先程から連続で感嘆の声を漏しておられる。
わはー! ちょっぴりアインズ様と打ち解けたかも!
ちなみにバルブロは原作通り、カルネ村に向かったあと消息不明になりました。