デミウルゴスに憑依した一般読者   作:目ん玉

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目ん玉は社会人ですが、異形種ではないのでAOGには加入できません。睡眠無効の種族特性やアイテムもありません。週に1~2回の頻度で夜勤が入っており、これが16時間、休憩なし(みなし休憩なので仕事から解放されない)、単独勤務でして。いえ、この業界では珍しいことではないのです。
ただ、夜勤明け(今日もそうですが)は、不意に意識を失うくらい眠いのに、眠ろうとしても眠れないという悪魔的な状態になります。ヘロヘロ様状態です。きっとるし★ふぁー様が何らかのイタズラを仕掛けていらっしゃるのでしょう。
次話投稿が途切れるかもしれませんが、ご容赦ください。書き溜めがありません。いただいた感想から思いついて書き足している状態です。


法国乗っ取り計画

 ゲヘナ作戦は無事完了。

 リザルトは以下の通り。

 

「資源獲得――これは王国から強奪したものだな」

 

「はい。価値は高くないものばかりですが、あとで王国への救援物資として一部を消費する予定です。残った分は、聖王国への支援に使います」

 

 マッチポンプである。

 これぞナザリックのお家芸だ。

 

「うむ。

 モモンの評価が確たるものになった――これは、蒼の薔薇を軽くあしらったヤルダバオトを単独で追い払ったモモンが、他のアダマンタイト級冒険者より頭ひとつ以上、抜きん出ていると思わせたという事だな」

 

「思わせたというか、事実をやっと認識させたというべきでしょう。

 中身がアインズ様ですから」

 

「ちょくちょくパンドラになるがな」

 

「どちらにしても、です」

 

「ふっ……。

 次の、ガゼフ勧誘に向けて仕込み――これは?」

 

「ゲヘナ作戦の途中で、アインズ様と計画を共有させていただきました。そのことでございます。

 あのとき申し上げました通り、これからガゼフを何くれと無く支援してやる必要がございます。お手を煩わせてしまいますが、パンドラズ・アクターは冒険者モモンとして姿を見せておく必要があるかと。

 最初にガゼフに見せておくことで、以後はモモンを派遣したアインズ様という形を取れます。そうすれば2度目からはアインズ様のお手を煩わせることなく、ガゼフの信用を稼ぐことができますので。

 もちろんアインズ様がお望みであれば、ご自身でガゼフに支援していただく事も、あるいはパンドラズ・アクターにアインズ様のお姿を取らせてガゼフの相手を任せ、その間に冒険者モモンとしてお望みのままに冒険していただくことも可能でございます」

 

「なるほど。了解した。

 帝国との戦争が済めば、だな。今はその時間がない。誰かさんが立派な計画を立ててくれたおかげでな」

 

「忙しくさせてしまい、申し訳ないことでございます」

 

「許せ。冗談だ。

 極めて効率的だとは理解しているし、最終的に私が承認したのだから私の責任だ。

 では、次の作戦への仕込み――これは?」

 

「先ほども申し上げました『聖王国への支援物資』の確保がひとつ。

 それから、王国にヤルダバオトが出現したという情報を与えたのがひとつ。

 これを法国が受け取ったタイミングで、アインズ様には法国へ出向いていただきます」

 

「決定事項か」

 

「申し訳――」

 

「よい。お前の作戦ならば従……あー……協力は惜しまないとも」

 

「今『従う』と言いかけましたか?」

 

「ナ、ナニヲイッテイル……! ソンナコトナイヨ? ホントダヨ?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「アインズ様」

 

「な……なんだ?」

 

「もう全部こいつに任せておけばいいや。とか思っていませんか?」

 

「…………」

 

「表情のない骸骨の顔だからバレないと思ったら大間違いでございます。

 目が泳ぎまくっておいでですね?」

 

「うぐっ……!?」

 

「大丈夫でございます、アインズ様。

 聖王国は海に面しております。目だけでなく全身くまなく泳げますので」

 

「……冗談か」

 

「はい、冗談でございます」

 

「「はっはっはっ」」

 

 しょーもない冗談を言い合える関係になったのだ、と。

 安心した勢いでアインズ様と2人で笑い合う。

 隣の部屋から「むきーっ」とアルベドの声が聞こえた気がした。

 そういう所だぞ、アルベド。余裕のない女と思われたら困るのは君だろうに。

 

 

 ◇

 

 

 てことで、次は法国を取り込む。

 効果は以下の通りだ。

 竜王国へ介入する窓口の獲得。

 信者の大量獲得。

 宗教団体として国家の後ろ盾を得る。ただし将来はどちらが後ろ盾なのか関係を逆転させる。

 

「最近、簡素な計画書になったわね?」

 

「アインズ様とは事前に相談してありますので」

 

「なんですって!? いつの間にそんな羨まけしからん事をするようになったの? いえ、どうやってそんな関係になったのか教えてちょうだい!」

 

「うーん……すまないが、君には真似できないだろうね。

 それに、君が目指すところは私とは違うだろう? アインズ様の何になりたいか、という目的がね」

 

「ううっ……! それは、そうだけど……」

 

「信用していただくという点では共通ですが、どういう分野でどういう信用をいただくかというのが決定的に違うのですよ。

 私はシモベとしてだが、君は妻として、だろう?」

 

「デミウルゴス」

 

「うん?」

 

「あなた、二人称が『君』の相手は、基本的に下に見ているわよね?」

 

「……はて……?」

 

 そうだろうか?

 意識していない事なのでよく分からない。

 そうかもしれないし、そうとは限らないかもしれない。

 ただ――

 

「ね?」

 

「……まあ、アインズ様からの好感度を、君よりは稼いでいると思うよ」

 

「むきーっ!」

 

「ちゃんと『貞淑な妻』をやっているのかね? 欲望のままにアインズ様を舐め回すように見ていたりしないだろうね?」

 

「うぐぐぐ……」

 

「……しているのかね……はぁ……そういう所だよ」

 

 

 ◇

 

 

 さて、法国乗っ取り作戦の手順は以下の通りだ。

 

「王国に現れたというヤルダバオト……何者なのだ?」

 

「ただの悪魔にしては強すぎるようだ。まさか魔神では……」

 

 などと神官たちが会議をしている場へ、アインズ様が転移魔法で現れる。

 神官たちはその姿を見て、スルシャーナ再来と誤解する。

 

「まさか……!」

 

「このお姿は……!」

 

「ス、スルシャーナ様……!」

 

 神官たちはスルシャーナしか知らないので、それと誤解するのは当然だ。他のオーバーロードを知っているようであれば、この世界の人類はとっくに絶滅しているだろう。従って、この部分に関しては何も操作は必要ない。

 

「聞いているようだな。ヤルダバオトの脅威を」

 

 都合よくこのタイミングで現れたのは、神の圧倒的な知覚能力ゆえである。

 神官たちは、そう誤解するだろう。

 信仰心が高い上に、プレイヤーに関する知識も豊富で、巫女を使えば第6位階の魔法まで行使できるとあって、神ならもっと上の魔法を使えるだろうからドンピシャのタイミングで都合よく現れても不思議はないと信じやすい。

 こういう部分では、むしろ他国より騙されやすいのだ。

 

「だが安心するが良い。

 冒険者モモンとナーベは、私が遣わした使徒である。

 彼らならば、ヤルダバオトに対抗できる。実際に王国から撃退してみせた。

 その情報も届いているかね?」

 

「おお……! 事実なのですか!」

 

「どうやら討伐には至らなかった様子。

 だが、使徒コキュートスもすでに近くへ遣わしてある。

 そして私自身もこうして再臨できた。

 次は討伐できるであろう」

 

「おお……!」

 

 という具合に、スルシャーナだという勘違いを利用して、いい感じに話を持っていく。

 しかし法国がそのままでは具合が悪い。人間至上主義で亜人殲滅を掲げ、実行もしているのだから、ほとんど異形種で構成されたナザリックを神聖視させようとするには、ちょっとばかり工夫が必要だ。

 

「聞け、スレイン法国の人の子らよ。

 私は考えを変えた。ゆえに名前も変えた。

 我が名はアインズ・ウール・ゴウン。

 スルシャーナの名は今後、使用しない」

 

「ご尊名伺いました」

 

 神官たちは少しの間、驚き戸惑うかもしれない。

 だが結局は、平伏して従うだろう。

 彼らの信仰心の高さは、奇しくも、ナザリックのシモベたちに近いものだ。

 

「新しい方針を告げる。

 人間種のみならず、すべての種族を存続させること。言葉が通じるかどうかは関係なく、昆虫や植物なども含む生態系の保存。そして環境汚染を禁止し、環境保全に主眼を置く。

 念のため言い置くが、環境汚染を『禁止』とは、自然界の浄化作用で吸収できる限度までは許容するという意味だ。そうでなければ技術の発展は不可能だからな。

 話を戻そう。

 あらゆる生命を、我が名のもとに保護する。すでにリザードマンを保護するべく使徒コキュートスを派遣したが、この使徒は虫型の異形種である」

 

 さすがにざわめきが起きるだろう。

 多少の拒絶感と、戸惑いのために。

 しかし「騒々しい、静かにせよ」のポーズで黙らせてしまえばよい。

 最終的には「人間も保護対象に含まれる」という部分を理解して納得するはずだ。

 

「人類よ栄えよ、というのは今までの法国の方針と同じだが、積極的な亜人狩りをするのは禁止とする」

 

 これは漆黒聖典を使って「こっそり」やっていること。

 大々的にはやっていないので、この変更は一般人への影響はないはずだ。

 つまりすぐに対応できるということ。実行のハードルが低い。

 あとは「そうは言われても、やっぱり……」と隠れて動くことがないように釘を刺しておけば良いだろう。

 

「理由を教えよう。

 人間種のみが存続し、繁栄を極めた場合、1000年以内に自滅の道を辿るからだ」

 

 リアルがたどった歴史だ。モモンガ様なら、いくらでも語れるだろう。

 しかもそれは非常に実感のこもった、真に迫る内容になるはず。

 ゆえに、あえてアドリブでお願いした。

 

「まさか……そのような……」

 

「神の言葉を嘘とは思いませぬが……それでも、にわかに信じがたい……」

 

 神官たちは、すぐには信じられないだろう。

 人間ではそこまで見通せない可能性がある。

 特に文明レベルが低いと、なおさらだ。

 どこまで出来るようになるか。その結果どうなるか。そういう事を予想する土台は「今なにが出来るか」であるからだ。

 逆に言えば、そんなにも遥か未来を見通しているというのが、アインズ様を神らしく印象づけることになる。

 

「1つの技術開発が、それを前提とした次なる技術の開発につながり、それはネズミ算式に増えていく。そのため文明の発展は加速度的である。

 たとえば鉄の精錬技術が発達すれば、より高純度の鉄を作れるようになる。これは分かるな? 高純度の鉄があれば、炭素と混ぜて鋼を作るのと同じように、他にも様々な添加物を使って、多様な性質をもつ鉄を作り出せる。そうして生まれた新たな鉄を素材として、今は存在しないものが発明されていく。そしてその発明もまた、さらなる発明の礎となるのだ」

 

 バネ鋼が開発されてバネが製造され、バネを使って様々な製品が作られる、という具合だ。まあバネなんて具体的な例を出しても、逆にわからなくなるだろうけども。

 要するに、足し算の先に掛け算があるというような話である。小学生でも分かることだ。

 神官たちは、いくらかイメージをつかめるはず。

 

「王国滅亡計画は中止せよ。私が保護するので人類存続のための努力は、程度を抑えて良い。

 今後は調査と報告に注力するのだ」

 

 その分、ナザリックは外部調査に割く労力を省く。

 同時にこれは調査結果を「問題あり」かどうか判断すること自体をも法国に任せることになる。

 つまりナザリックは「君臨すれども統治せず」の状態に近づくわけだ。それは「従わないものは残らず殲滅する」というような過激な方向に進まないためのブレーキ装置であり、ナザリックの意向をあくまで「かくあれかし(そうであればよいな)」という努力目標に抑えるための構造である。

 もし統治に手を出してしまうと、ナザリックの意向が「かくあらねばならない」という必達目標になってしまう。それはもうリアルの社会構造と同じようなものだろう。至高の御方々が喜ぶわけがない。シモベの性質がそれに近いのでアインズ様の人間性が擦り切れてしまうというのは原作の通りだ。朱に交われば赤くなるともいう。

 原作では蜜に浸したような国を作ると息巻いていたアインズ様だが、その裏側はおぞましい。吐き気を催す邪悪そのものだ。

 

「報告に漏れがあって問題が起きたという場合には、信仰が足りないものと心得よ。

 ただし処罰するという意味ではない。もっと精進せよという意味だ。どうやっても防げない失敗はある。私はそれを許そう。経験の少なさによる失敗はある。私はそれを許そう。だが努力を怠って起きた失敗は、よくよく反省せよ。失敗して、反省せぬ事こそ罪と知れ。

 それから、限界には個人差があるという事を念頭に置け。他人から見れば怠けているようにしか見えない者でも、実は本人にとって必死に頑張っているという場合がある。よくよく吟味するように。

 組織として不適格ゆえに除籍するという事はあるだろう。適材適所は創造性や効率化のために必要なものだ。しかし人格や存在を否定してはならない。くれぐれも履き違えて勝手に処罰などしないように。よいな?」

 

 シモベ向けの説明としては、そんな事にナザリックの労力を割くのは馬鹿馬鹿しいという内容になる。家畜は都合のいいように品種改良したり教育したりするものだ。しかしハチが受粉を助けるとかハチミツを集めるとかいうのは、教育してやらせることではない。ナーベラルが虫と呼ぶ現地人は、はたして家畜たりうるのか? という論法である。

 保護活動は教導活動とは違う。守るけれども導くわけではない、というのが今後のナザリックの方針だ。

 唯一の導きは、環境保全である。そこには人間種も含まれるが、人間種の天敵も含まれる。なるべく、世界をありのまま保存する。至高の御方を発見したときにお喜びいただくため――特にブルー・プラネット様のために。

 

「神の保護がどれほどのものか見せてやろう。

 竜王国への支援を肩代わりする。その旨、竜王国にも伝えよ」

 

 こうして竜王国への窓口を作る。

 法国は竜王国に聖典を派遣して助けているので、そのあたりはスムーズに進むはず。「今度は聖典じゃなくて神様送りますね。戦力としては遥かに上なので文句ないでしょ?」と話してもらうわけだ。

 

「教会での回復魔法による治療は、料金体系を見直し、もっと多くの人が治療を受けられるように改善することだ。

 高位の回復魔法は使い手が少ないゆえ、育成コストの回収や人的資源の限界による人数制限のために料金をやや高めにすることは許す。だが、せいぜい第6位階しか使えないのに、私腹を肥やそうなどというのは片腹痛い。

 そんな暇があるなら、もっと精進して、より高位の魔法習得に努めよ。使えば使うほど実力は増すのだから」

 

 保護対象を広げるということは、法国の人間最優先の方針を「他と同程度」に下げることになる。

 人間種からの反発が起きるだろう。ある程度は天敵の餌になることを許容せよという事になる、と受け取られるからだ。

 回復魔法の値下げは、そのムチに対するアメである。

 しかし、それは初期段階にすぎない。

 変化は連鎖する。

 いずれ彼らは気づくだろう。

 おそらく最初は亜人から。人間なんて家畜としては非効率なのだ。大きく育つのに15年以上もかかる。もっと早く育つ牛や豚や鶏のほうが生産効率が高い。ちゃんと食事を取るという事を考えるなら、収穫量の多い品種を選ぶべきだ。

 そして、その気付きはやがて亜人の中に「倫理観から生じる拒否」という反発運動を生むだろう。反捕鯨団体とか過激派ヴィーガンみたいに。

 そうなれば人間種も気づく。食われなくなった、と。

 そして理解するだろう。その変化が何によって起きたものか。

 21世紀の畜産業は今更否定するには大きすぎる。だがこの世界の人食いはまだ止められるはずだ。




リザルト
死傷者0人
事実上、法国を従えた
セバスにっこり
たっち・みー様「え? それは詐欺では? いや、でも法国の蛮行を止めた……? ん? んん〜? え、デミウルゴスが計画を? あー! くそっ! ウルベルトさんめ……! 怒るに怒れないのが絶妙にムカつく!」


誤字報告をいただきました。
佐藤東沙様 めそひげ様
ありがとうございます。

作者「目ん玉」に石を投げますか?

  • めっちゃ投げる!ふざけんな!
  • ちょっと1発投げさせろ
  • う~ん……
  • いやいや、投げない投げない
  • チョコラータする。よーしよしよしよし
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