もはや”雷帝の遺産”なんて言えばなんでも出てくるでしょ   作:らんかん

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この話に出てくるネームドキャラ
◻️チーム・シャンバラ
枯墨(かれずみ) シシュウ……ゲヘナ二年、遺産ハンターの1人。
虚遣(こづか) ナダレ……トリニティ二年、遺産ハンターの1人。



雷雨(ダス・ゲヴィッター)

 アビドス外れの砂漠。

 

「いいもん見つかったー?」

「ダメかも〜、ここ外れだったみたい」

 

 廃墟のコンピューターを復帰させて、天使の翼をパタパタさせながら仕事しているメガネの生徒が1人。古いバージョンだから戸惑っているのか、かけた眼鏡を時折直してはまた生きていたキーボードを破壊。モニターも壊して用意周到にハイエナが使えないように機械の修理を困難にしておく。

 

 方法はもちろん己の四肢!

 

「かの『雷帝の宝具』はまだあるって話だったんだが、ここじゃなかったのか?」

 

 機械を破壊した眼鏡の天使の前に、さっきまで近くのソファで持ち込んだシェイクを氷一つまで飲み干した八重歯以外に恐ろしくない悪魔がやってきた。

 

「情報を整理してみたんだけどここだったはずなんだよなあ……偽情報をつかまされたかな?」

「じゃさっさと帰って寝るに限るね。どこに帰る?」

「そりゃトリニティだろ。ゲヘナの隠れ家に帰って変なことに巻き込まれたら洒落にならねえ」

 

 2人の少女は廃墟から出る。

 

 ひどい砂嵐が迫ってきたのにそれで気づいたようだ、大きなハリケーンで今いる場所もどうも建物の奥深くで作業してたせいで気づくのに遅れたらしい。

 

「帰るか」

「うん」

 

 自分たちが乗ってきた大きく思く、黒い装甲車に乗り込む。中は涼しく、後ろの座席は大改造されて寝床もあり、武器ラックもあり、冷蔵庫もある。

 

 ルームミラーには2人の学生証。

 

 天使の方は【枯墨《かれずみ》 シシュウ】で、悪魔の方は【虚遣(こづか) ナダレ】と描いてあった。

 

「最近ずっとハズレばかりだね、偽情報が多くなってきたってことは……」

「十中八九掘るやつが増えたってことだな」

 

 遺産ハンター。

 

 ゲヘナ屈指にして最大の独裁者、雷帝と名乗った少女は非常に多彩な才能を誇った。政治家としても科学者としても、とかく”1人でなんでもできる神に等しい存在”であったことを皆が口々に語っている。

 

 そのうち科学者としての側面から生み出された数々は雷帝の遺産として伝えられており、破壊された列車砲シェマタ、NKウルトラ計画など科学・医学的にも凄い遺産が豊富。

 

 総数は不明であるが、そのうち遺産ハンター独自の基準として雷帝の宝具という概念が生まれた。

 

「雷帝の宝具という概念自体が俗称を作れるほど噂に乗ってる数の人間がいるってことだからねえ。遺産よりチープな話だけど、まあランクづけって必要だよね」

「そりゃ、そうだな」

 

 シシュウは冷蔵庫からコーラを取り出して、砂糖の塊を冷たい二酸化炭素と共に舌を経由して奥へと流し込む。

 

 雷帝の宝具とは、遺産ハンターが雷帝の遺産のうち完成度の高いもの、発掘された場合の影響度の高いものを自然とそう呼ぶようになった。

 

 くじには当たり外れがあるように、そういう概念が明確な基準がないままに採用されて、雷帝の遺産の中でも()()()()()()()()ものを当たりとして遊び半分の人間が流入し続けている。

 

「にしてもこっからトリニティかあ、ちょっと遠いよなあ」

「今何時だ?」

「昼の3時、めっちゃ飛ばして着くのはおおよそ6時くらいじゃないかな」

「ほう」

 

 シシュウが、ルームミラーを見て、サイドミラーも覗く。

 

 車の影が何台も出てきて、バギーに乗ったヘルメットが銃を持ってこちらに接近していることに気付いたようだ。少なくとも五台くらいは見えている。

 

「ハイエナのご登場だ」

「うわあ、今自動武装積んでないんだよなあ。どうする?」

「手動でやるしかない。ナダレ、お前はそのまま前を見て運転していろ」

「うん」

 

 自分の座席を倒したシシュウが、奥の武器ラックから大型のレールガンを取り出す。

 

「起動確認、レールへの通電よし、給弾機構異常なし、エネルギーバレットシステムオールグリーン」

 

 彼女が持っているのは、恐らく”雷帝の宝具”に入るであろう小型火器。

 

 レールガンはその武器の都合上部品点数が非常に多く、実際に使用する戦場で取り回しがいい突撃銃サイズまで縮小すると細かい上にパーツの多さが災いして耐久性に大きな難があった。

 

 持ち運びだけでも振動が細かいパーツに当たって接触不良や破損が多く、そこを超えれたとしても今度は撃っている間にレールに汚れが付着した結果発火、バレル相当の部品が使用不可になった上パーツが高価なので簡単に交換できるものではなく、結果取り回しと貫通力・制圧力の両立を図った個人火器としてのレールガンは頓挫せざるを得ないという結論に至ったらしい。

 

 だが雷帝は諦めなかった。

 

「カバーパーツぐらつきなし、オールオッケーだ!」

 

 彼女はダマスカス鋼を流用した銃専用鋼鉄を使用し、M4を基準に落とし込む形へとカスタムした。

 

 バレル周辺を大改造したのが大きく、フリーフローティングをベースにレールガンバレルを作成、汚れても大丈夫なように銃口からチャンバーにかけては少し大きめのカバーを取り付けそのカバーの内側には水冷のパイプを通した上で長く太めの専用バッテリーを搭載。

 

 見た目にはM4ライフルの銃身以外と大型のビームライフルの銃身部分を合体させたような見た目になっており、案外大きかったのか少しだけかっこいい見た目になっていた。

 

「よし、撃つぞ!」

 

 どうせ車のエンジンの音で警告も意味をなさないだろうと感じていたシシュウは、容赦なく引き金を引く。

 

 1発1発撃つごとにマズルファイアに青い電流が奔ってそのファイアを何倍にも膨らませ、目の前が歪むほどのソニックブームを起こしながら銃弾は相手の車へと飛んでいく。

 

 当然、撃たれた側はそんな代物から放たれた弾丸から無傷でいられるはずも無く、当たりどころが良すぎたのか、バッテリーがショートしてただ無惨にエンジン部分を貫かれて爆発した。

 

「よし、まずは一匹目!」

 

 同じように、シシュウは二台目、三台目と餌食にしていく。

 

 このレールガンは銃身部分以外はM4と変わりない。

 

 それが意味するところはフリーフローティングのレール部分がレールガンに置き換わってるというところ。

 

「3発とも全命中!? すっごい!」

「いつも通りだ!」

 

 銃の重心が大きく変わること、カスタムパーツの手入れがちゃんとなされているかどうか、この二つさえ大丈夫ならば銃としての精度は依然高いままなのも、雷帝の宝具としての分別に説得力を持たせている。

 

 幸いなことに一個のパーツが高すぎて流石のゲヘナでも量産には至れなかったのが幸いして、最悪最強の軍隊は出来上がらなかったが、設計思想と設計技術に関しては雷帝としての威厳が保ったままなのを感じさせた。

 

「四つめ!」

 

 相手の接近速度よりも撃破速度の方が上回ってるというとんでもない射撃制度の持ち主と、威力をした銃のタッグにヘルメットのバギー連中は砂漠の中へと転がされていく。

 

 それでも全員倒れるまでは諦めないようだ。

 

 最後の5台目は、なんと狙撃銃を構えてこちらを狙ってきている。

 

「やっべ、あいつ狙撃銃持ってる。喰らったら多分ただじゃ済まないな」

「どうする?」

「ビーム撃っていいか」

「うーん仕方ない、いいよ」

 

 ナダレの許可を得て、彼女は銃身を変形させる。

 

 とはいえ、実銃で使っていた銃身を取り外した上でカバーも展開。バッテリーが露出してレールに装着されるとカバーがそれらを包みながら伸びて、かつ少し長めのDMRのような形へと変わった。

 

「さあ、泣く時間だ。お前らが求めた宝を拝み、咽び泣いて埋もれてけ!」

 

 銃口とその側面にあるスマートなフィンを連想させるバレルジャケットから漏れ出したブルーライトは周囲を照らしながら、ゆっくりと銃口を向ける。

 

 高倍率サイトがないのでシシュウは低倍率のホロサイトそのままに狙いを定めた。

 

 相手も覚悟を決めたように、シートベルトに体を預けて彼女を狙っている。

 

「行けっ!」

 

 ならばもう、緊張感は必要ないだろう。

 

 互いに引き金を引く。

 

「後悔しろ」

 

 そう言い残すだけの、理由はあった。

 

 相手の持っていたスナイパーライフルは対人制圧用のもので、高級品でありブルパップ形式の狙撃銃である。

 

 しかしシシュウの持っている雷帝の宝具”ダス・ゲヴィッター”はあくまで便宜上レールガンであり、俗称がビームライフルであるべき代物。無理矢理銃の規格をつけるなら【エネルギー・システムウェポン】の類。

 

 今のモードがエネルギー弾である以上、それが攻撃に転用できる威力ともなればその結果は言うまでもない!

 

「よし、当たった!」

 

 奇しくも同時に放った銃弾だったが、放った実弾はとんでもない電力を誇るエネルギー弾によって周囲の砂鉄を巻き上げるほどの磁力を発生。

 

 シシュウやナダレが乗っている装甲車は重い上で相当のパワーのエンジンを乗せていたのを全力疾走させていたので支障はなかったが、それほどの対策があってようやく車の上でも撃てるような代物を、対策がない車に撃てばどうなるか。

 

 銃弾は砂鉄とともに生まれた巨大な磁場で大きく捻じ曲がって砂に埋もれ、磁場と電力の勢いが最後のバギーを直撃し、それがバッテリーの破壊と各機器の破壊につながってショート、大爆発!

 

 かくして二人はハイエナを狩り、砂漠を後に出来ることとなった。

 

「やったぞ! これであいつらも反省して砂漠を彷徨い続けながら諦めてくれることだろう!」

「おお、おめでとう。あ、そろそろちゃんとした場所に着くよ」

 

 午後3時58分。

 

 全速力で走り続けた高馬力の車の目の前に大きなビル群や風車が見える、連邦生徒会管轄区域だ。

 

 トリニティにはまだ遠いだろうが、少なくともKVハイウェイから一気に移動すれば夕方には着くだろう。

 

 シシュウはもう一度敵がいないかを確認してからダス・ゲヴィッターをレールガンに戻し、念の為マガジンを抜きボルトをいじって排莢した後に武器ラックに収納。また冷蔵庫から2本目のコーラを出して、キャップを開けて飲む。

 

「今日は、そうだね。自分が何かを作るよ。何食べたい?」

「海鮮一杯のパスタかピザ」

「いいね、じゃあ帰りにスーパー寄ろうか」

 

 二人は笑い合って、彼女達を乗せた車は高速へと乗る。

 

 遺産ハンターの一日が一つは、貧乏くじの花火で終えた。

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