ポケモンフィールドノート   作:ひよこ大福

10 / 12
ジョウト地方
ワカバタウン


マサラタウンへ戻ってから数日後。

 

ナツキとヒノアラシは、再び旅支度を整えていた。

 

オーキド研究所の一室。

 

机の上にはフィールドノート、地図、予備の筆記具、簡易的な測定器具、傷薬や携帯食が並んでいる。

 

「これで全部かな」

 

「ヒノ?」

 

ヒノアラシが床に置かれたバッグを覗き込む。

 

「お前のご飯も入ってる」

 

「ヒノ!」

 

「そこだけ確認するなよ」

 

ナツキは苦笑しながらポケモンフーズの袋をバッグへ押し込んだ。

 

今回、ナツキが向かうのはカントー地方ではない。

 

その西側に広がる地方。

 

ジョウト地方。

 

カントーを歩き始めた頃から、いつかは別の地方も調査してみたいと思っていた。

 

環境が変われば、当然そこで暮らすポケモンも変わる。

 

同じ種類のポケモンでも、地方が違えば食べるものや暮らし方に違いがあるかもしれない。

 

そして何より。

 

ナツキの隣にいる相棒。

 

ヒノアラシ。

 

ジョウト地方では比較的よく知られているポケモンだった。

 

「今度はお前の故郷側だな」

 

「ヒノ?」

 

「ヒノアラシが暮らしてる地域」

 

「ヒノ」

 

自分のことを言われていると理解したのか、ヒノアラシは少しだけ胸を張った。

 

「野生のヒノアラシにも会えるかな」

 

「ヒノ!?」

 

「なんだよ。その反応」

 

「ヒノヒノ!」

 

「別にお前と交換したりしないって」

 

ヒノアラシが慌てたようにナツキの足へしがみつく。

 

「冗談だよ」

 

頭を撫でると、ようやく落ち着いた。

 

その様子を見ていたオーキド博士が笑う。

 

「相変わらず仲がよいのう」

 

「長い付き合いですから」

 

「ヒノ!」

 

「ジョウトでもよい調査ができるといいな」

 

「はい」

 

ナツキは机の上に広げられた地図を見る。

 

最初の目的地は、ジョウト地方東部。

 

ワカバタウン。

 

小さな町ではあるが、ポケモン研究者のウツギ博士が研究所を構えている。

 

オーキド博士から紹介状も預かっていた。

 

「まずはウツギ博士へ挨拶して、それから周辺を調べようと思います」

 

「うむ。ウツギ君はポケモンの繁殖やタマゴについて熱心に調べておる。君とはまた違う視点でポケモンを見ておるから、話をしておくとよい」

 

「楽しみです」

 

「それと」

 

オーキド博士がナツキを見る。

 

「地方が変わったからといって、最初から珍しいポケモンばかり探そうとせんことじゃ」

 

ナツキは少し笑った。

 

「分かってます」

 

「そうじゃったな」

 

「ポッポでもコラッタでも、見る場所が変われば違うことがあるかもしれませんから」

 

「その通りじゃ」

 

カントーを一周して戻ってきたことで、ナツキ自身もそれを強く感じていた。

 

珍しいポケモンだから面白いわけではない。

 

日常の中にこそ、生態は現れる。

 

食べる。

 

眠る。

 

移動する。

 

仲間と過ごす。

 

警戒する。

 

子供を育てる。

 

そうした普通の時間を、ナツキはこれからも追い続けるつもりだった。

 

翌朝。

 

ナツキとヒノアラシはマサラタウンを出発した。

 

いくつかの町を経由し、西へ。

 

そして数日の移動を経て。

 

ついにジョウト地方へ入った。

 

地方の境界を越えたからといって、急に景色が変わるわけではない。

 

道路が突然別の色になるわけでもなければ、空気が切り替わるわけでもない。

 

それでもナツキには、不思議と新しい場所へ来た感覚があった。

 

「ここからジョウトか」

 

「ヒノ!」

 

ヒノアラシはいつもより少し前を歩いている。

 

「なんか嬉しそうだな」

 

「ヒノヒノ!」

 

「やっぱり分かるのかな」

 

匂い。

 

空気。

 

植生。

 

人間には感じにくい何かを、ヒノアラシは感じ取っているのかもしれない。

 

しばらく歩き続ける。

 

やがて前方に家々が見えてきた。

 

大都市ではない。

 

静かで、自然に囲まれた町。

 

風が草を揺らし、その向こうには海も見える。

 

「ワカバタウン」

 

ナツキは地図を確認する。

 

間違いない。

 

ジョウト地方で最初に訪れる町。

 

ワカバタウンだった。

 

町へ入る。

 

カントーのマサラタウンと少し似ている。

 

大きなビルはなく、人と自然との距離が近い。

 

家の周囲には草地が広がり、ポケモンの鳴き声もよく聞こえる。

 

「こういう町、落ち着くな」

 

「ヒノ」

 

「マサラタウンに似てるからかな」

 

ナツキは歩きながら周囲を見る。

 

民家の屋根へポッポが止まっている。

 

道端ではオタチが1匹、後ろ足で立ち上がって周囲を見渡していた。

 

「……オタチ」

 

ジョウトへ入って初めて見る、この地方らしいポケモン。

 

ナツキの手が自然にバッグへ伸びる。

 

しかし。

 

「いや」

 

まずは研究所へ挨拶。

 

そう決めている。

 

オタチは少しすると草むらへ走っていった。

 

「また会えるだろ」

 

「ヒノ」

 

ワカバタウンの少し奥。

 

比較的大きな建物が見えてきた。

 

ウツギ研究所。

 

入口へ向かう。

 

扉の前で一度服装を整えた。

 

「ヒノアラシ。勝手に走り回らないようにな」

 

「ヒノ!」

 

「その返事、前にも聞いたな」

 

「ヒノ?」

 

マサラタウンのオーキド研究所へ初めて行った日のことを思い出しながら、ナツキは扉を開けた。

 

「失礼します」

 

研究所の中では、白衣を着た研究員たちが慌ただしく行き来していた。

 

机には資料。

 

培養器のような機械。

 

ポケモンのタマゴを模した模型。

 

そして奥から、1人の男性が現れた。

 

「あれ? 君はもしかして」

 

「初めまして。ナツキです。オーキド博士から紹介していただきました」

 

「ああ! 君が!」

 

ウツギ博士の表情が明るくなる。

 

「聞いてるよ。ポケモンの生態を現地で調べながら旅してるんだってね」

 

「はい」

 

「ヒノ!」

 

ヒノアラシも挨拶する。

 

ウツギ博士の視線がすぐヒノアラシへ向いた。

 

「おお、ヒノアラシ!」

 

「相棒です」

 

「いいねえ。ジョウトへ来てヒノアラシを連れてると、なんだか馴染んで見えるよ」

 

「俺もさっきそんなこと考えてました」

 

ウツギ博士はしゃがみ込み、少し離れた位置からヒノアラシを見る。

 

無理に触ろうとはしない。

 

「元気そうだね」

 

「ヒノ」

 

「ナツキ君とは長いの?」

 

「はい。調査官になる前から一緒です」

 

「なるほど」

 

ウツギ博士が立ち上がる。

 

「オーキド博士から君の調査記録についても少し聞いたよ。サファリパークでミニリュウを観察したとか、ふたごじまでフリーザーに会ったとか」

 

「博士、そこまで話したんですか」

 

「かなり楽しそうだったよ」

 

ナツキは少し恥ずかしそうに頭を掻く。

 

「でも、俺としてはフリーザーだけが特別っていう感じではなくて」

 

「うん?」

 

「普通のポケモンの生活も同じくらい知りたいんです」

 

ウツギ博士は一瞬黙り。

 

それから笑った。

 

「いいね」

 

「ありがとうございます」

 

「僕はタマゴやポケモンの繁殖について調べることが多いけど、その研究にも日常的な行動の記録はすごく重要なんだ」

 

「繁殖ですか」

 

「そう。どんな環境でつがいになるのか。どこでタマゴを守るのか。孵化した後、親がどんな行動をするのか」

 

ナツキの目が輝く。

 

「それ、面白そうです」

 

「でしょ?」

 

急に2人の距離が縮まった。

 

ウツギ博士は机へ移動すると、何冊かの資料を広げる。

 

「例えばジョウトでは、カントーと同じポケモンでも生活場所が少し違う場合がある。それに、この地方特有のポケモンも多い」

 

「はい」

 

「オタチ、ホーホー、レディバ、ヒマナッツ……時間帯によって見つけやすさが大きく変わる種類もいる」

 

ナツキはすでにフィールドノートを出していた。

 

「書いていいですか?」

 

「もちろん」

 

「ヒノォ……」

 

ヒノアラシが足元で座り込む。

 

「ごめんごめん」

 

話が長くなりそうなことを察したらしい。

 

ウツギ博士も笑う。

 

「フィールドワークに行くつもりだったんだよね?」

 

「はい。今日はワカバタウン周辺を見ようかと」

 

「だったら面白い場所があるよ」

 

「どこですか?」

 

「町の西側に草原と林の境目になっている場所があるんだ。オタチがよく見られる」

 

「さっき町の中でも1匹見ました」

 

「ああ、それならちょうどいい」

 

ウツギ博士は地図に簡単な印を付けた。

 

「オタチは見張り行動が分かりやすいから、観察してみると面白いと思うよ」

 

「見張り?」

 

「まあ、そこから先は自分で見た方がいいかな」

 

答えは教えない。

 

ナツキはその方が嬉しかった。

 

「行ってみます」

 

「また戻ってきたら、どんなものを見たか教えてよ」

 

「はい!」

 

研究所を出る。

 

まだ昼前。

 

ナツキはウツギ博士に教えてもらった場所へ向かった。

 

町を西へ出ると、すぐに草原が広がっている。

 

その奥には低い木々。

 

「ここか」

 

ナツキはフィールドノートを開いた。

 

ジョウト地方最初のページ。

 

少しだけ新鮮な気持ちになる。

 

『ジョウト地方・ワカバタウン』

 

『午前11時24分』

 

『天候・晴れ』

 

『草原と林の境界部』

 

『ジョウト地方での最初の生態調査』

 

そして。

 

『主にオタチを観察予定』

 

「ヒノアラシ」

 

「ヒノ!」

 

「ここから新しい地方だ」

 

「ヒノヒノ!」

 

「よろしくな」

 

ヒノアラシの頭を撫でる。

 

調査開始。

 

最初の10分は何も見つからなかった。

 

ナツキは歩き回らず、大きめの木の近くに座ることにした。

 

「待ってみよう」

 

「ヒノ」

 

ヒノアラシも隣へ座る。

 

風が吹く。

 

草が揺れる。

 

遠くでポッポの鳴き声。

 

さらに。

 

草の中から別の音。

 

ガサ。

 

「来た」

 

ナツキは動かない。

 

茶色い頭が出る。

 

長い耳。

 

白いお腹。

 

黒い輪の入った長い尻尾。

 

オタチ。

 

1匹。

 

草むらから顔を出したオタチは、突然後ろ足で立ち上がった。

 

「……本当に立つんだ」

 

尻尾を地面へ付け。

 

体を高くする。

 

周囲を見る。

 

右。

 

左。

 

後ろ。

 

何度も首を動かしている。

 

『オタチ1匹』

 

『草地から出現後、後肢と尾を使用し直立』

 

『周囲を広範囲に確認』

 

そのまま数十秒。

 

オタチが姿勢を戻す。

 

草の中へ顔を入れた。

 

何かを食べ始める。

 

「見張った後に食事?」

 

しばらくすると。

 

もう1匹。

 

少し離れた場所から出てきた。

 

さらにもう1匹。

 

合計3匹。

 

最初のオタチは食事を続けている。

 

2匹目も草の中を探っている。

 

そして3匹目。

 

「オタ!」

 

立ち上がる。

 

周囲を見る。

 

ナツキの目が細くなる。

 

「さっきと違う個体が見張ってる?」

 

数分観察する。

 

3匹目が座る。

 

今度は1匹目が立つ。

 

残りの個体は食事。

 

「交代してる……」

 

ジュゴンのときにも似た行動を見た。

 

ただしこちらはより明確だった。

 

1匹が高い位置から周囲を確認している間、他の個体が地面へ顔を向けて食事している。

 

『オタチ3匹』

 

『1匹が直立し周囲を確認している間、残り2匹は採食』

 

『一定時間後、別個体が直立』

 

『見張り役を交代している可能性が高い』

 

「なるほど」

 

単に立つ姿が特徴的なだけではない。

 

その行動には理由がある。

 

低い草原では、地面にいるだけだと遠くが見えない。

 

体を立てる。

 

さらに長い尻尾を支えにする。

 

それによって周囲を確認できる。

 

「体の形そのものが生活に使われてるんだ」

 

ヒノアラシを見る。

 

「お前の背中の炎みたいなもんかな」

 

「ヒノ?」

 

「いや、ちょっと違うか」

 

そのとき。

 

見張っていたオタチが急に鳴いた。

 

「オタッ!」

 

他の2匹が顔を上げる。

 

一瞬で草むらへ飛び込んだ。

 

見張り役も続く。

 

「何かいた?」

 

ナツキは動かない。

 

数秒後。

 

上空を大きな影が通る。

 

「ホー」

 

鳥型のポケモン。

 

木の枝へ止まる。

 

丸い体。

 

大きな目。

 

片足で立っている。

 

「ホーホー」

 

昼間でも活動している個体がいるらしい。

 

ホーホーは木の枝から地面を見下ろしている。

 

「オタチが反応したのはあれか?」

 

捕食者として警戒しているのか。

 

単に大きな影へ反応しただけか。

 

まだ分からない。

 

『オタチの警戒声直後、全個体が草地へ退避』

 

『数秒後、ホーホー1匹が上空を通過』

 

『両者の関係は不明』

 

しばらくするとホーホーは飛び去った。

 

その後。

 

草むらから最初のオタチが顔を出す。

 

すぐには出てこない。

 

顔だけ。

 

周囲を見る。

 

少しして。

 

立ち上がる。

 

「安全確認」

 

さらに数十秒。

 

ようやく他の2匹も出てきた。

 

「ちゃんと段階があるんだな」

 

逃げる。

 

すぐ戻るのではなく。

 

まず1匹が確認。

 

その後、全体が活動再開。

 

ナツキは夢中になって記録した。

 

昼過ぎ。

 

オタチたちが別の場所へ移動したところで観察を終える。

 

「初日から面白かったな」

 

「ヒノ!」

 

「お前ずっと座ってただけだけど」

 

「ヒノ?」

 

「まあ一緒に静かにしてくれたから助かった」

 

「ヒノ!」

 

ヒノアラシは褒められたと理解したらしい。

 

胸を張る。

 

その後。

 

少し林の方へ進むと。

 

「ヒノ!」

 

ヒノアラシが声を上げた。

 

地面。

 

そこに小さな黄色いポケモンがいた。

 

「ヒマナッツ」

 

頭に葉。

 

小さな体。

 

ヒマナッツは日当たりのいい場所でじっとしている。

 

「動かないな」

 

10分観察する。

 

ほとんど動かない。

 

「日光浴?」

 

葉を少し動かす程度。

 

日の当たる場所から外れない。

 

『ヒマナッツ1匹』

 

『日照の強い草地で長時間静止』

 

『太陽方向へ頭部を向ける行動』

 

「植物みたいだな」

 

「ヒノ」

 

ヒノアラシがヒマナッツへ近づこうとした。

 

「そこまで」

 

「ヒノ?」

 

「観察だけ」

 

「ヒノ」

 

素直に戻る。

 

少しずつ。

 

相棒も調査に慣れてきている。

 

最初の頃なら、珍しいポケモンを見つければ近づこうとしていた。

 

今はナツキが止めればすぐ理解する。

 

それもこの旅で変わった部分だった。

 

夕方。

 

ナツキとヒノアラシはウツギ研究所へ戻った。

 

「おかえり」

 

ウツギ博士が迎える。

 

「どうだった?」

 

「オタチ、見てきました」

 

「何してた?」

 

「3匹で食事してて、1匹ずつ交代で見張ってました」

 

ウツギ博士が嬉しそうに頷く。

 

「ちゃんと見たね」

 

「警戒した後も、すぐ全員出てこなかったです。最初に1匹だけ周りを確認してから、他の個体が戻ってきました」

 

「なるほど」

 

「あとホーホーが通った直後に逃げました。ただ、ホーホーを警戒したのか、上から来た影に反応したのかは分からないです」

 

「いいね」

 

「それとヒマナッツも」

 

ナツキはノートを開き、記録を見せる。

 

ウツギ博士は1ページずつ丁寧に読んだ。

 

「面白いなあ」

 

「ですよね」

 

「僕はタマゴの研究でポケモンを見ることが多いけど、こういう行動記録を読むと別の疑問が出てくる」

 

「例えば?」

 

「オタチの見張り役はどうやって決めるのか、とかね」

 

ナツキの手が止まる。

 

「……それ、気になります」

 

「でしょ?」

 

年齢。

 

性別。

 

体格。

 

単純な順番。

 

何か決まりがあるのか。

 

「また疑問が増えた」

 

「研究って大体そういうものだよ」

 

「1つ分かると2つくらい増えますよね」

 

「そのうち10個増えるようになるよ」

 

「怖いなあ」

 

2人で笑う。

 

足元ではヒノアラシが大きな欠伸をした。

 

「ヒノォ……」

 

「ごめん。今日はこれで終わりにしよう」

 

「ヒノ!」

 

「急に元気になるな」

 

研究所を出る頃。

 

空は夕焼けに染まっていた。

 

ナツキはワカバタウンの外れにある小さな丘へ向かった。

 

そこから町を見下ろす。

 

海。

 

家。

 

研究所。

 

草原。

 

マサラタウンに少し似ている。

 

けれど。

 

そこに暮らしているポケモンは違う。

 

オタチ。

 

ホーホー。

 

ヒマナッツ。

 

そしてこれから。

 

さらに多くのジョウトのポケモンと出会うのだろう。

 

ナツキはフィールドノートを開いた。

 

今日のまとめ。

 

『ジョウト地方・ワカバタウン』

 

『オタチの小集団を確認』

 

『採食中、1匹が高い姿勢を取り周囲を警戒』

 

『見張り役と思われる個体は交代』

 

『警戒後は1匹が先に安全確認を行い、その後他個体が活動再開』

 

『ヒマナッツは日当たりのよい場所で長時間静止し、頭部を太陽方向へ向ける傾向を確認』

 

そして最後。

 

少し考えた。

 

カントーを最初に歩いた日。

 

マサラタウン。

 

あのときも、何も知らない場所から始まった。

 

今も同じ。

 

けれど。

 

自分にはもう、あの頃より多くの見方がある。

 

ナツキは書いた。

 

『新しい地方へ来ても、やることは変わらない』

 

『見る。待つ。記録する。そして分からないことを残す』

 

「これでいい」

 

「ヒノ?」

 

隣でヒノアラシが見上げる。

 

「ジョウトでもいっぱい調べような」

 

「ヒノ!」

 

「野生のヒノアラシも探してみたいし」

 

「ヒノ!?」

 

また焦る。

 

「だからお前を交換しないって」

 

「ヒノヒノ!」

 

「分かった分かった」

 

ヒノアラシを抱き上げる。

 

夕方の風。

 

草の匂い。

 

遠くから聞こえるポケモンの声。

 

カントー地方で始まったフィールドノート。

 

その続きは。

 

ここ、ジョウト地方でも書かれていく。

 

新しい地方。

 

新しい環境。

 

新しいポケモンたち。

 

そして。

 

今まで見てきたポケモンたちの、まだ知らない暮らし。

 

ナツキはフィールドノートを閉じた。

 

ジョウト地方での最初の1ページ。

 

ワカバタウンでの調査は。

 

静かな夕暮れとともに終わった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。