魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!?   作:砕(サイ)

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第7話「直接対決!ヨシノVSムジカントム」 Bパート

「精が出ておるな…ルミナキャスト」

「うわっ!誰、おじいさん!?」

 

 河川敷での特訓の最中。どこからともなく現れた、

ローブを纏った蛙の顔の老人に驚くゲッシー。蛙男は一言、

魔法素粒子界の者だと名乗り、そのまま腰を下ろす。

そして、向こう側から手を振るのは賢界《のりか》。

 

「もしかしてゲッシーも知らないのかな…あのおじいさん」

 

 先日、ヨシノが出会った蛙の骨董屋。彼らのやり取りを眺めながら、

ゲッシーがどこまで上層部から情報を受け取っているのかと、

ルミナタキオンの姿のまま考える。放送分は編集されてるって言うけど、

案外、私みたいに自分の姿を視聴できてないのかな…。

出演者として地球に出向いた彼らが、どのように映されてるかを把握していない。

そんなヨシノの仮説が当たっていた場合、パソコンを使い、

ルミナキャストの映像を見せた賢界の存在が、より一層恐ろしいことになるのだが。

 

「そういえば中間テスト、どう?ヨシノさん」

「あっテスト!?理科がちょっと…」

 

 ヨシノは、国語と英語は比較的得意で、数学がやや得意、社会が並程度。

だが、理科となると、どうにも単語がピンと来なくなり、

成績が落ちてしまう。今回は事情が事情なので、より一層、

苦手克服に励まなければならないのだが、その為にも、

まずはムジカントムとの勝負に勝たなければならない。

 

「どこが苦手なの?」

「いやー…暗記の部分かも」

 

 タキオン=エリオチェントリズモ=ディ=ガリレイの一件。

確かに、長すぎて覚えられない場面があったわよね。

賢界は本放送の映像や、宇宙のインターネット上で仕入れた裏事情とのギャップ、

そしてリーク情報を元に、ヨシノの弱点とその克服方法を教える。

ヨシノさんの勉強にも使えるのかもしれないわ、と。

 

「宇宙のおもちゃ会社の知育玩具とタイアップするそうよ、ルミナキャスト」

「こんな伏線の張り方初めて見たんだけど!?」

 

 あくまで、決まっているのはタイアップの情報のみ。

その知育玩具でどうやって勉強をするか。成績をを伸ばしていくか。

それを決めるのはルミナタキオン・草之根ヨシノのみである。

リーカーたる賢界もそう語り、ヨシノの未来に想いを馳せるが、

このような情報開示では没入感もあったものではない。

 

「あ…」

 

 半径1メートル、あるか無いかのタキオンフィールドと、転がる空き缶。

そして、会話の最中でそれを成し遂げる細微なコントロール。

気付かぬうちに、タキオンは己が必殺バリアの走り方を理解していた。

 

「さすがだな…さすがは撫子の娘だ」

 

 蛙男が杖をつきながら、歩み寄る。草之根撫子。

ヨシノの母の名前である。何故、この骨董屋がママの名前を知っているのか。

タキオンとしては、この場に骨董屋が訪れたことそのものよりも興味を惹く。

 

「あの娘もルミナキャストだったからだ」

 

 理由は単純。魔法素粒子界は過去、何度か危機を迎え、

その際に物質界からの助けを乞う機会があったと言う。

ヨシノとは別口。スマートフォンもキャリア毎に機能が違うように、

互換性のない、過去に世界を救ったルミナキャストが、

少女時代のヨシノの母親だったのだと言う。

 

‭「ママが先代のルミナキャスト…」‬

 

‭ ゲッシー達が地球に赴き、街を改変したのは、‬

‭草之根ヨシノが中学二年生になって以降のことである。‬

‭無論、そのような事実は存在しない。‬

 

‭「ウソでしょおおお!?」‬

 

‭ 最早驚くのも面倒であること。‬ある程度「盛った」方が盛り上がること。‬

‭ヨシノとしても大嘘は承知の上だが、‬フレーバーである事を漠然と悟り、‬

‭ひとまず大袈裟にリアクション。‬本当にママがルミナキャストだったら困るぞ!‬

‭その内心。外面と同じくらいの声量でヨシノは吠える。‬

 

‭「その反応も昔の撫子そっくりだな…」‬

 

‭ 昔なんて知らないでしょアンタ!‬

‭ヨシノとしても威風堂々とした嘘八百に、‬どう反応していいか分からないものである。‬

‭万が一にも、本当に旧・ルミナタキオンとして、‬

自分と共闘する事態になったら。

ヨシノとしては、‬母がコスプレ姿で授業参観に出向くようなもの。‬

後ろで祈るように目を輝かせる賢界を見なかったことにして、

ヨシノ自身も家族が巻き込まれない事を祈るばかりである。

 

「フフフ…」

 

 聞き覚えのある声とともに、突如、飛来するカード。

すぐさま拾い上げ、その内容を確認する。

 

 

前略

 

フフフ…待ち侘びたぞ

ルミナタキオン…フフ

明日の放課後

この場所に来い…フフフ

 

       フフフ…草々

 

幻影紳士 ムジカントム

 

 

「…ちょっとムキになってない?」

 

 先日、笑い声を指摘したことを何処からか聞き取り、根に持っていたのか。

過剰なまでに文章化された笑い声とともに記されていたのは、具体的な期日。

今まで、ワルターを中心に戦ってきたムジカントムが、

どんな技を引っ張って、ヨシノと相対するのか。挑戦状のふざけた文言には目を瞑り。

特訓の成果を示すため、ヨシノは明日へと向かう。

 

「その眼差しも、撫子のようだ…」

 

 蛙の老爺は、母の面影と、その娘の姿を重ねる。

だから知らないでしょうって!

 

 

 

「律儀なもんね、ムジカントム」

「フフフ…お前だって同じ条件なら、騙し討ちを狙わないだろ?」

 

 世界を狙う悪党とて、自身のプライドを汚す行為は許し難し。

河川敷に立つのは、そんな仮面の男と、(こころざし)を同じとするゴシックドレスの少女。

タキオンの特訓が完遂するまでのその間。ムジカントムも空気を読み、

手を出す事は無かったようだ。エゴシックもそれに異論はない。

それに、もう用事も済ましたからと、彼女が片手に持つのは赤き宝石。

ワルターもどきを用いてルミナストーンを回収した以上は、

この河川敷でやるべき事は8割がた済ませたようなもの。

 

「目的は、我らが"団長"の復活…」

「フフフ…その"団長"が寝ている間に、俺が事を終わらせてるかもな」

 

 不敬よ、ムジカントム。首領たる存在の出る幕など無いと、

暗にそう述べてるようかのようなその有様。自信に満ちた同僚に対し、

エゴシックは叱咤する。上の者の手を煩わせないのもまた、

俺達部下の役目だろう。ムジカントムはそう反論しながら、

何かに気付いたように肩で笑う。

 

「来たわね」

 

円卓の騎士って言うのなら、是非とも正々堂々戦いなさい。

宿敵(ルミナキャスト)の気配を感じ、エゴシックはそのまま、

空に溶けるように姿を消す。まるでシャッフル。

入れ替わるようにムジカントムの前に現れたのは、

既に変身を終えたルミナタキオンと、その相棒たる魔法素粒子界のハムスター。

己が得物、ルミナステッキを携えて、決闘に向き合う。

 

「直接対決だね、ムジカントム!」

 

 そう一言述べたら、あとは構えるのみ。しかし、

無言のタキオンが指し示す、その自身に満ちた表情から、

ムジカントムは確かに聞き取る。剣技が何か、見せてもらうよ。

確かにそう言い放った、タキオンの宣戦布告。

 

「お前の偽者に醜態を晒した時の俺と、一緒だと思うなよ?」

 

 (はや)い。ルミナライトアップの弾丸で先手を打とうとしたところ、

既に距離を詰め、短刀での攻撃を始めるムジカントム。

咄嗟にステッキで受け止め、鍔迫り合いを始めるが、

何を思ったかムジカントムの方から先に後退する。

そのままステッキを掻き消すように収納。素手の状態から、

体を捻ってタキオンシフトの姿勢に行こうとするが、

 

「フフ…タキオンシフトは常に予備動作を必要とするだろ?」

 

 ムジカントムはそれを逃がさない。イーヴィルとの戦いにおいて、

高速移動(タキオンシフト)同士の戦いが成立したのは、同じ技の使い手だから。

それを持たないこの男が対策を取るならば、それはやはり、

「最初から使わせない」こと。予備動作を誘発させるブラフを以て、

目にもとまらぬ速度でタキオンに刃先を突き付ける。

 

「白刃取りなら慣れてるよ!」

 

 イーヴィルタキオンの振り下ろしを受け止めた時と同様。

その両掌でナイフを受け止める。鈍器同然のステッキを受け止めた前回と異なり、

今度は、正真正銘の真剣白刃取りである。

 

「タキオンシフト!」

 

 そのまま、腰を落とし、体を捻る。タキオンシフトの予備動作。

その勢いでナイフごと放り投げ、吹き飛んだムジカントムの元へ一気に飛び込み、

思い切り蹴りを叩き込む。その隙にルミナステッキを展開し、

ルミナライトアップでダメ押し。光弾の熱量がムジカントムを襲う。

しかし、閃光手榴弾(スタングレネード)としては役立っても、

ムジカントムを吹き飛ばす爆弾にはならないのか。

怯みはしたものの、無傷。そのまま立ち上がり、再び距離を詰める。

 

「十二の剣技、見せてやろう」

 

 更なる速度。ルミナステッキの出し入れを行い、

タキオンシフトに移行するのも間に合わないスピード。そして、

妖しく光るナイフの刃先。タキオンは咄嗟に、正中線上にステッキをかざす。

 

「心の速度で、光と闇を包み込む!」

「トリスタンクラッシュだ」

 

 タキオンの眼前のムジカントムは、腰が捻じ切れるかのような回転に、

その体が無理矢理追いつかせるようにナイフをスイングさせる。

しかし、その所作に荒々しさは無く、無駄がない。

トリスタンクラッシュがタキオンフィールドと衝突したのに気付いたのは、

展開されたフィールドにまでその振動が伝わってからだ。

 

「フフフ…トリスタンクラッシュでも割ることはできないか」

 

 矛と盾のぶつかり合い。ムジカントムのその言葉も、自嘲とも余裕ともつかない。

そして、膠着状態の二者に駆け寄る茶色い球体。あまりの速度で割り込む事すら出来なかったゲッシー。

タキオンを気遣い駆け寄りつつも、ハッと息を出し何かに気づく。

 

「さっき言った"十二の技"に、トリスタン?まさか、この星に伝わる円卓の騎士か!」

 

 さりげなく宇宙人目線で発言した事にヨシノは目を逸らす。

その横で、ゲッシーは魔法素粒子界の使者として、

アーサー王物語を解説する。王様は勿論、ランスロットやガウェインといった、

様々な騎士が活躍した地球の有名な騎士伝説。

 

「宇宙でも沢山の翻訳版やアレンジ版が出版されているくらいだ…」

 

 何度も宇宙を引き合いに出して、傍目から見たら、

世界観を壊す怪しさを展開しているが、あくまで宇宙の視聴者に語っているのだろう。

 

「つまり、残りの騎士の技が来るってこと!?」

 

 トリスタンの他にもアーサー王の元で戦う有名な騎士がいるという、

キャメロットの物語を詳しく知らないヨシノにとっても未知の情報。

よくぞご存知、と言わんばかりにムジカントムはナイフを構え、

あたかも巨大化したようにタキオンの眼前に飛び込む。

 

「フフフ…トリスタンクラッシュ2」

 

 何故使いまわしたのか。遠近感を無視したようなスピード感を警戒すべきだが、

それより先に、ムジカントムのその投げやりな命名にヨシノが至った思考は「無」。

 

「に、2?」

 

瞬きほどの間。なんとか草之根ヨシノから、

ルミナタキオンに心のスイッチを切り替え、攻撃を見極める。

危機一髪の状況ながら、直線的な突きであったのが幸いし、

紙一重で上体を横に(ねじ)る事で回避したタキオン。

しかし、彼女は一切安心していない。勢いとキレ自体は、

先程の数字の付かない「旧版」より増していると確信する。

 

「え、何あの名前」

「ゲッシーも知らなかったの!?」

 

 たった今放たれた、ゲッシーの率直な言葉に、

戦士としてのタキオンの意識が逸れてしまう。

音声が拾われない程度の小声で、ハムスターの耳元に対し囁く。

円卓の騎士を簡明直截(かんめいちょくせつ)に解説──あんなに分かりやすく

みんなに教えたのは何だったの!?と、激しくも静謐に語りかけるものの、

その答えは「アドリブ」。やはり、ペルソナクスの動向は伝えられていなかったらしい。

そんな中で円卓の騎士を見事説明してみせたゲッシーに、

あっぱれとルミナタキオンは思いつつ。

 

「この何が起こるか分からない無軌道さ!これこそがリアリティだよ」

「その無軌道さで私は振り回されてるんでしょうが!」

 

 思う前に声が出る。タキオンフィールドの正式名称にしろ、囲碁にしろ。

その勉強の成果でネーミングや知識の偏りをどうにか出来なかったのかと、

草之根ヨシノ、いち個人としても考える彼女である。

 

「フフフ…俺の技に呆気に取られたかな?」

 

どちらかと言うと技名の方に驚愕したものの、

危険な技である事には間違いない。ムジカントムの放つ更なる技、

トリスタンクラッシュ3に、再びタキオンが立ち向かう。

 

 

「これがトリスタンクラッシュ3…!」

 

 子供がイタズラでボタンを連打するように。無造作な突きの連打。

逆に言えば、全く軌道が読めないナイフ捌きに対して、

ただひたすらに腰と脚を縦横無尽に動かしつつ避けるほかない。

それを放つムジカントムのスタミナも無尽蔵ではないのか。

一通りトリスタンクラッシュ3を披露したのち、

地面を思い切り蹴り距離を取るも、タキオンはそれを見逃さない。

すかさずタキオンフィールドを展開し、速度と重さの伴った、

より暴力的な剣技──トリスタンクラッシュ4を受け止める。

 

「フフ…ワルターに使ってた今までのタキオンフィールドと少し違うようだな」

 

 キュビスムという言葉がある。端的に説明すれば、

あえて空間を固定せず、画面に描きたいものを全て収める。

パブロ・ピカソを代表とした、空間の分解と再構築を主旨とした画法である。

あくまで比喩ではあるが、ムジカントムのトリスタンクラッシュは、

視点すら存在しない。空間を結びつけたかのような速度で、

タキオンフィールドに猛攻を仕掛ける。

 

「トリスタンクラッシュ5だ…」

 

 ふざけたネーミングではあるが、そんな事を気にする暇も与えず。

円卓の剣技による攻撃を繰り返すムジカントム。しかし、

タキオンフィールドはそれすらも翻弄。あたかも、

キュビスムで無理矢理結びつけた空間に対して、バリアの体積を縮小し、

戦場に余白を挿入させる。展開の範囲と出力をコントロールすることで、

バリアの領域を狭め、トリスタンクラッシュ6と7の空振りを誘発させる。

距離を詰めたムジカントムに対して、高密度のエネルギーで、

トリスタンクラッシュ8を押し返す。矛と盾。一進一退の激突。

 

「フィールド全開!」

 

 飛びかかり、空中から奇襲するトリスタンクラッシュ9に対し、

可能な限り出力範囲を広げて弾き飛ばす。ムジカントムも見越していたのか、

驚く素振りも見せずに、曲芸のように回りつつ空中から後方に着地する。

タキオンレーンを発射さえすれば、ムジカントムとて回避は不可能。

ルミナタキオンはそう確信し、前方にルミナステッキをかざそうとした瞬間、

 

「ムジカントムキックだ」

 

 唐突。ふざけた名前と共に、

彼女の眼前にムジカントムの脚部が現れる。

ヨシノはその両腕を交差しつつ、顔面をガード。

確かに防御は間に合ったが、構えが乱れる。

タキオンフィールドを放つにも

タイムラグが生じる危機的状況だ。

 

「何そのネーミング…」

 

 円卓はどうした。大ピンチではあるが、

あまりにも唐突な路線変更。この隙だらけの命名。それに反して、 

この攻撃によって生じたチャンスを、確かに見逃さない。

ヨシノはそのナイフに対して、鍔迫り合いを行いつつも

思わず呆れを漏らす。だが、そんな呆れ声すらも掻き消すかのように、

タキオンは息を詰まらせる。ムジカントムの仮面が、

顎下から照らすライトのように、コントラストを演出する。

 

「トリスタンクラッシュ11」

 

 ステッキとかち合うナイフから発した光が、爆発のような衝撃を生む。

今までのトリスタンクラッシュに伴っていたエネルギーとも一線を画した、

強烈な力を以て、辺り一面が激しい光に包まれた。

 

「フフフ…こればかりはひとたまりもないかな?」

 

 ムジカントムもこればかりは勝利を確信したのか、

思わず余裕の態度を示す。が、鍔迫り合いに伴う質量は未だ変わりがない。

ホワイトアウトから解放された空間。そこには先程と変わらず、

タキオンがいた。今度はムジカントムの側が息を詰まらせる。

ルミナタキオン、その体の発光。まるで、

タキオンフィールドを纏ったかのように光沢がある。

 

「ビックリした?これがゼロ距離タキオンフィールド」

 

 まるで、と言うのは厳密には誤りだ。

ヨシノはタキオンフィールドのコントロールを果たした事を、

数日かけて必死に特訓した過程を含めて、改めてムジカントムに語る。

もっとも、周囲に張るバリアを通り越した、

「コーティング」のような状態に至ったのは、

この場のアドリブであると、タキオンは正直に申告する。

 

「この鍔迫り合いの中で、タキオンフィールドの構えを果たしていたか」

「ご名答!」

 

 眼前の正中線にルミナステッキをかざし、

念じるのがタキオンフィールドの所作である。

短刀の膂力を相殺する過程そのものに、

彼女の必殺バリアを成立させる条件が確かに隠されていたのだ。

ムジカントムはすかさず後退。体幹を思い切りひねり、

そのまま右腕で突っ込む。腰ごと座標と空間を捻じ曲げたかのような突進突き。

トリスタンクラッシュ12を放つムジカントムだが、

タキオンフィールドのエネルギーをそのまま身体能力に変換したのか。

キュビスムを上書きするかのような速度で、ナイフを持った右腕を掴み、

そのまま思い切り引っ張る。一気に前傾姿勢で倒れ込むように、

体勢を崩したムジカントム。それに対して、背後に回ったタキオンが、

光弾・ルミナライトアップで追撃。ワイヤーアクションのように吹き飛ぶ、

ムジカントムに照準を定め、伸ばした右腕の肘関節にそのまま左腕を添え、

タキオンレーンの構えに移行する。光弾と光線の連携が、この戦闘に引導を渡す。

 

「全てを突き抜けるは、光を超えた通り道!貫け!タキオンレーン!!」

 

 全身全霊の見栄を以ての光の線。その決め台詞ごと、

ムジカントムに届き決着をつける。

この激しい熱量をダイレクトに浴びてなお、

肉体は維持しているものの、激しい勢いでこの男は吹き飛ぶ。

喩えるならば、坂道を回る雪だるまの顔面部分。

ムジカントムは積もった雪を抉るかのように転がる。

 

「フフフ…見事だな」

 

 この言葉は余裕や強がりなどではない。

感嘆である。ムジカントムは、

ようやく鳴り響いた破砕音と、ひび割れる仮面と共に、

ルミナタキオン──草之根ヨシノの強さを賞賛する。

 

「だが、まだ終わってはいないぞ?ルミナタキオン」

 

 虚空へ消えていく男は、それでもなお余裕を見せる。

敗北してもなお、ムジカントムの底は仮面に覆われ、

今のタキオンでは剥がすことは叶わない。

 

 

 何時ぞやのように。ひび割れた仮面を付けたまま、

ボンドで修繕を行う仮面の男。エゴシックは、

ガルニエでひとまずの休憩を行う敗者(ムジカントム)に対して、

少しばかり嫌味を込める。十二の剣技も立場なしね。

 

「オペラ座の怪人が円卓の騎士って言うのがそもそも間違ってたのよ」

「オペラ座…フフフ」

 

 ムジカントムは、自分がそう喩えられた事に笑う。

不気味な仮面と芝居がかったその仕草。

解釈としてはそこまでおかしくはない。

だが、人差し指を立て、メトロノームを振るように、

そのジェスチャーでハッキリ「No」を示す。

思わず目を見開くエゴシック。道化師の方が良かった?

それに対してムジカントムはこう述べる。

 

「俺にクリスティーヌは必要ないさ」

 

 クリスティーヌ。かのオペラ座の怪人が愛し、

その狂気を理解されずとも情熱を捧げ、それでも恋は叶わず。

怪人を拒絶し、すれ違った女性。自分は愛に殉じた怪物とは違うと、

ハッキリと宣言した形となる。彼がそう語った意味を、

エゴシックはまだ知らない。

 

 

「ひ、昼ドラ!?」

 

 この単語も彼女の母親からの受け売りではある。

戦いが終わったのち。珍しく図書館から借りてきた、

アーサー王物語の書籍を手に取り、その概要を読んだヨシノ。

アーサーとランスロット、ギネヴィアの愛と忠義のすれ違い。

それに対する、このあまりにも世俗的な困惑が、

今の彼女の結論である。

 

「読みが浅いな、ヨシノは」

 

 ゲッシーはそれに対して冷ややかに対応する。当時の騎士道、

価値観などを照らし合わせて語るべきである。

一言で修羅場と切り捨てるのは些か単純すぎないか?と、

タブレットで円卓の騎士の読み方を先読みしながら語る。

受け売りかい!深く理解していない、という意味において、

ヨシノとゲッシーに大差はない。




私、草之根ヨシノ!
盛岡に行くため、中間テストの順位を上げないと!
そんな中、ゲッシーが用意したのは
魔法素粒子界にあるザルガ・エレクトロニクス社のオモチャ、
アルマゲスト!これを使って、猛勉強だ!

次回、「赤点のムジカントム」
届ける想いは光を超える!

ザルガエレクトロニクスって何…?
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