【クソアニメの主人公に人格あったらどうするよ!?】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!? 作:砕(サイ)
「んなわけあるかい!」
父の思わぬ発言。それに対して、ついうっかりと、
普段ルミナキャストにぶつけるトーンでツッコむ。
ヨシノが行っているのはただのシェービング。
肌の質感を向上させる、美容を意識した行為である。
たまたま洗面所で出会した父子。
「そういえばさ…パパ」
「どうした?」
娘と交代するかのように。
今度は父の方が髭を剃りつつ、娘の言葉に耳を傾ける。
岩手に友達が転校したこと。次の中間テストがあること。
そこで、学年順位が10位上がったら、
岩手県盛岡市への旅費を出して欲しい、と言うこと。
10位かー…。
「20位ならいいよ」
「うわー…しんどいなー…」
ヨシノの目標、上方修正。負けられない戦いが始まる。
少なくとも、中間テスト期間に入るよりも、少し前の話である。
その日の夜、机に向かうヨシノは、スマートフォンに文章を打ち込む。
何をそんなに真剣なんだと問うゲッシーに、
感想文を書くためだと返す。書名と具体的なあらすじを教え、
それらしい回答を教えてもらう、と言ったプロセスを踏む行為。
要はAIに感想文を肩代わりしてもらうつもりだ。
だが、意外とゲッシーはこれに対して懐疑的。
宇宙の技術を容赦なく使ってくるこのハムスターの事だから、
効率性に納得してくれるものだろうとヨシノも考えていたが、
その口から出る反論は違った。
「電卓を算数のテストには持ち込まないだろ?」
宇宙にもまだ電卓はあるのか、と思うと共に納得もする。
とりあえずスマートフォンの代わりに原稿との睨み合いを始めるヨシノ。
なんだかんだ、ゲッシーも大学を出ただけあるんだなと感心する。
学力ではなくレポートの出し方という斜め下の方向だが。
「教授に叱られて泣きそうになった時の受け売りなんだけどね」
そこまで言わんでいい、とヨシノは心の中で前言撤回をする。
とりあえず、利便性はともかくカンニングはやめておこう、
というのが今のヨシノの結論だ。この試験も、
会場が教室か自宅の勉強机かの差でしかない。
「(ルミナキャストのパワーもテストじゃ役に立たないだろうしね)」
そして、現在。テスト期間に突入した今こそが、ヨシノの正念場となる。
ヨシノと
同じ小学校を卒業した仲であるが、最近会話が少なかったところ、
久しぶりに話に花を咲かせる。
「テスト期間にこんな話するのもだけど」
料理部にでも入らない?と有は提案する。魔法少女部なんてもの、
到底申請出来ないしなあ…。ヨシノは自分の立ち位置について、
少し考える。バスケ部に入らない?と凪が誘わないのは、
運動部特有の難しさもあるのかもしれない、とも。
「テストねー…部活に行きたいわ」
普段なら練習もサボりたいが、今は部活に逃げたい。
そんなバスケットボールへの距離感を、凪が訴える。
なんだかんだ、テスト期間ともなると、部活動が休みになっても、
気軽に遊びに行くには、少々ハードルが高い。うわやべっ!
何かに気づいたようにカバンを開けた凪が叫び、そのまま逆走。
「先行ってていいから!」
走り去る彼女の言葉を聞き取ったところ、
弁当を置いてきたことを思い出したらしい。
こう言う時の凪は本当に先に行って欲しい感じだからね…。
その言葉通りに二人は歩き、テストの話題を続ける。
「うちの部活の子なんかは…」
料理部には、空手の県準優勝クラスの選手が。
しかも、学校成績も非の打ち所がないと言う。
柔道部などには入らなかったのは、
未熟なまま身の丈に合わない技を身につけたら、
全てが疎かになるからと言う理由。
人格も非の打ち所がない。おまけに料理もうまい。
「うわーすごいねそのコ…ウチないもんね、空手部」
過剰なまでのスペック。
他人を妬む性も持ち得ぬヨシノとしては、
そんな空手娘に感嘆する他ない。そんな彼女が、
ルミナキャストに選ばれず、私が選ばれた理由。
「弄りがい」とかじゃないだろうな、ゲッシー。
そんなヨシノの心中など露知らず。
英単語帳を開き、歩く
さながら二宮金次郎。私は空手のその子と比べて、
そこまで要領よくないからと呟く有に、私もだよとヨシノは返す。
ひとまず、理科と社会の暗記項目を覚えて順位を上げる。
盛岡へ行くために。
「アンタ…そろそろ動いたらどうなの?」
河川敷で、ルミナストーンを回収したエゴシック。
敗北はしたものの、現場で戦うムジカントム。そして最後に、
変な怪人を派遣したハラガヘッタ。エゴシックとしては、
この
そんな彼女の胸中は、ガルニエの壇上には響かない。
「個人飲食店を買収し、機械でパーソナライズする。それまで待て」
何を言っているの、アンタ。エゴシックは目を見開く。
ハラガヘッタの計画としては、個人経営の飲食店を乗っ取り、
店舗毎に設置したデータベースとフィジカルAIを用いて、
どこでも全国の味を参照できるロボットの店を作り上げ、
実質的に味を独占する、と言ったものらしい。悪役の所業といえば所業だが、
無論、破滅劇団・ペルソナクスの活動には一切関係ない。
「まあまあ、そない喧嘩せんといて」
サイケデリックな色彩の着物を纏った、虚構舞姫・オクニカタリ。
三者の対立を仲裁し、場を宥める。ムジカントムは変わらぬ調子で笑い声を漏らし。
腕を組み、眉間に皺を寄せるのはエゴシック。ハラガヘッタはお構いなしに、
パソコンを弄るのみ。デスクワークなどと言う事情を無視して、
オクニカタリはハラガヘッタに擦り寄り、一方的に慰める。
「名前がシャイロックはんだったらお二方も喜んどったでしょうに」
「知らん」
名前が滑稽か否かなど我が覇道には些事にすぎない。
ただ一言返したのち、自分の肩に手を添えるうら若き娘を無視して、
老獪な男は仕事を続けた。忘れてはいけないが、
これはハラガヘッタが、破滅劇団・ペルソナクスの団員でありながら、
仇敵のルミナキャストに対し全く関心を持たず、
ロクに任務を行わないがために始まった小競り合いである。
断じて硬派なビジネスパーソンではないし、
名前がダサいからいじめられたわけではない。
「フフフ…見誤るなよ?」
いつもの調子で嘲笑いつつも、
ムジカントムも場を掻き乱す彼女を威圧する。
まあまあ、そないに怒らんといてなと受け流し、
その場を去るオクニカタリ。その瞬間、
ムジカントムとエゴシックは顔を見合わせる。
「誰?」
普通に馴染んでいたが、あんな女、前回までは勿論影も形もない。
阿国を騙る者、すなわち悪い出雲阿国であるのなら、
ハラガヘッタよりは劇団たる組織に相応しい存在であるのは間違いない。
しかし、そんな事は彼女にとって重要ではない。
それ以上に、また無意味な設定変更をしたのかとエゴシックは唇を噛む。
「あ…これ酸化か」
何故だか、酸素変化などと言う珍妙なフレーズを書き記してしまったヨシノ。
放課後。自宅にて机に向かうものの、どうにも単語がピンと来ない。
ヨシノの最大の弱点として、興味関心の薄いものに対しては、
記憶力があまり働かないこと。普段、錬金術については色々調べているものの、
どちらかと言うと歴史的な成り立ちの方に関心を抱いてしまっている。
そのため、元素記号や化学式を覚えたり、フレーズを覚えたり…
と言った事項は意外と得意ではない。
「これじゃあ魔法素粒子界の戦士失格だよ…」
恐らく、もう少し苦手意識を払拭できたら覚えが早くなるのかもしれない。
もっとも今のヨシノとっては、それまで微妙な成績そのものが、
大きなプレッシャーになっているのだが。
「宿題とか予習復習はわりとちゃんとやってるのにこれじゃあね」
「何がこれじゃあね、じゃい!ゲッシー!」
余計なお世話である。ヨシノよりも歳下ながら、
大学出のゲッシーとしては高みの見物と言ったところか。
数学の問題が解けなかったのはどこの誰だと、ヨシノも内心悪態をつくものの、
苦手克服のため机に向かう。そういえばさあヨシノ…
「僕たちならモリオカに転送くらいなら出来るけど」
ゲッシーはふと、ヨシノが順位を上げて盛岡へ行こうとすることに対して、
番組側で手を打てることを示す。ルミナストーン回収と言う目下の課題。
これはいくらアドリブありきの撮影現場でも果たさなければならないノルマである。
しかし、ヨシノはその提案に対して首を縦に振らない。
何故それではダメなのか。ゲッシーは率直に問いかける。
「草之根ヨシノとしてだよ」
ヨシノはただ一言そう返す。唐突な答えに対して、
何が?と言わんばかりに口を開けるのはゲッシー。だが、
草之根ヨシノのためと結論づける彼女の眼差しはどこまでも真剣なもの。
漠然とであるが、ゲッシーとしてもその意味を言わずとも理解した。
「ルミナキャストに頼らないで戦いたいんだね、友達に会うために」
ヨシノを主役に選んでよかった。ゲッシーは改めてそう考える。
不可思議な力を得てもなお、不可思議な人脈を得てもなお、
その力に自分の主導権を渡さない。それに頼り切りもしない。
だからこそ、理不尽な状況に置かれてもヨシノは戦えるのだと。
「それに大学だって合格したいしね」
ルミナタキオンとしての戦いを終えても、ヨシノの人生は続く。
まだ中学生ではあるが、ヨシノにとっても地元の国立大学に入ることは、
この先の彼女の人生における大きな目標の一つである。いや…待てよ…
大学に入る頃まで番組に付き合わされる事になったらどうしよう!?
などと、一瞬考えたものの。さすがにそれに囚われていたら正気を失うな…。
ヨシノはそう思い直して、綺麗さっぱり忘れる事にした。
そう思考を整理する中で、今まで触れなかった話題に少し触れる。
「そういえばゲッシーって、大学でどんな免許取ったの?」
「固有名詞だから地球の言葉で喩えづらいんだよなー…」
日本語のニュアンスで言うならば、ゲッシーが大学で得たのは、
「第二種特定惑星改竄処理監督」。厳密に言うならば、
大学卒業で得られるのは、その試験の受験資格である。
試験に合格し免許を取得したら、特定の星に介入して、
合法的にその文明をコントロールできる。特に、
テレビ番組や映画の撮影など、映像制作を行う業種であれば、
この免許があることで架空の惑星史を挿入することが可能。
ヨシノの地元に、後付けのように魔法素粒子界のオーパーツが紛れ込んだのも、
ゲッシーが飛び級で大学を卒業した後、この免許を以て、現場に指示を出したからである。
「いや怖いわ!なにナチュラルに文明コントロールする発想が出るわけ!?」
地球人が想像するような侵略行為ではない。
あくまでエンタメのスパイスに利用するものだ。と、
ゲッシーは言い訳するが、本当に悪用をしない保証があるのだろうか。
宇宙を回る道理や常識。ヨシノはまだその全貌を掴めない。
「ヨシノ、睡眠はしっかりとるんだよ」
そうして、勉強しつつ、騒ぎつつの時間を過ごしていく中。
ヨシノはいつの間にか日付が変わっていた事に気付く。
ゲッシーの気遣いを確かに受け入れ、布団に入ることを決める。
体を壊しては元も子もない。
「それにほら、オモチャのタイアップもあるから」
「…宇宙のおもちゃ会社ってやつ?」
思わず、エッと声を出したのはゲッシーの方。ゲッシーとしても、
唐突な提案を行うことに多少の覚悟はあったものの、
それを難なく飛び越えて先読みしてきたヨシノ。一体どこから、
そんな情報を仕入れてきたんだと慌てふためくものの、答えは簡単。
「
「ノ…ノリカかー…」
合点こそいったものの、ヨシノの部屋を漂う空気は果てしなく微妙なもの。
何も言わずとも。ヨシノとゲッシーはその緊張でコミュニケーションを取る。
な、何にせよ!最初に声を出したのは、結局ゲッシーである。
「ヨシノの勉強にも役立つオモチャだから」
…本当?ヨシノは
宇宙では確かに、学習効果が評価されている商品を用いるのだという。
一部、教育機関や保護者からクレームが入った事もあると補足しながら。
「こ、怖…」
絶対ロクな代物ではないと確信し、ヨシノは床に就く。
放課後。ヨシノは警戒しながらも帰路につく。図書室で勉強してもよかったが、
学校内で
賢界が面白そうだからとルミナキャストに介入してきても困る。
そんな理由から、今日は誰とも一緒に帰るわけでもなく、通学路を歩く。
「あら、そこのお嬢さん?学校成績を上げたいと思ったことはないかしら〜」
えっ何?不意打ちの如く。ヨシノはいきなりのセールストークに思考が止まる。
声の主は若い印象の女性。組織を背負うほどの貫禄もないが、
新人と言うには
宇宙人!?いや、魔法素粒子界の住民!?地球人としてはあり得ない、
その奇妙な特徴にヨシノは警戒する。間違いなく、
今この瞬間こそ、賢界の言っていたタイアップイベントの幕開けである。
「うわあ、ザルガ・エレクトロニクス社のお姉さん!」
歓喜の声をあげて飛び込んできたのは、茶色い毛玉のサッカーボール。
もとい、ゲッシー。異世界の魔法素粒子界ですらその名を轟かす、
宇宙規模の企業の社員が眼前にいることに感激。目を輝かせながら、
ヨシノにザルガ社の商品の購入を勧める。ところで、
ザルガ・エレクトロニクスって何だろう…。
「これさえあれば成績アップも間違いないよ!」
「いきなり購入だなんてとんでもない、まずは無料でお試しできますよ〜」
これ、どちらかと言うと通販番組のテンションじゃない?
ヨシノは内心で苦笑いをしながらも、トントン拍子で事は進む。
宇宙の大企業のお姉さんとゲッシーの契約は確かに結ばれ、
実物も見ることは叶わないまま知育玩具の無償レンタルが始まった。
その直後、まるで
「は…?森…?」
辺り一面、生い茂る草木。熊や猪でも飛び出してきそうな、
不安を煽る見晴らし。地元の山の中にでも来たのだろうか。
そうヨシノは考えつつ、突然の事態を頭の中で処理しようと、
周囲を見回し歩き始めるが、その必要はないと訂正するように、
物を言わぬ何者かがヨシノを牽制する。
「えっ熊!?」
草陰から飛び込んで来たもの。万が一にも、
丸腰の女子中学生では敵わないような野生動物であればひとたまりもない。
ルミナタキオンに変身すれば勿論勝てるだろうが、
そういった問題なのだろうかとも考えつつ、視界に飛び込んだもの。
「え…め…メカ?」
空に浮かぶは、SFの人工惑星のミニチュアのような丸い機械。
続けて四つほど、同じ造形、大きさのミニチュアが草陰から現れ、
最後に、遅れて一回りほど大きい機械の球体が姿を現す。
「コンニチハ。ルミナキャスト様。"アルマゲスト"デゴザイマス」
「あ、いやどうも…」
思わず返事をしてしまったが、熊をも仕留めてしまいそうな無骨な機械。
そして、当たり前のように引用してきたルミナキャストの名前。
地球人からすれば兵器のようであるが、これこそがタイアップ商品。
そう、ヨシノは確信する。
「ヨシノ!今すぐタキオンに変身するんだ!」
更に木の隙間から駆け抜けてきたのは、茶色い猛獣。ゲッシーである。
困惑のままルミナスコープを展開し、そのままルミナタキオンに至った直後。
待ッテマシタと言わんばかりに、小さな衛星から瞬く光が放たれる。
間一髪。身を逸らして避けたのはいいものの、
タキオンが見たのは樹木に開いた風穴。
「何このビーム!?いったい何のオモチャなのコレ!!」
「勉強道具だよ」
嘘でしょ!?突然破壊光線を撃ってくる機械を使って、何を勉強するのか。
そんなタキオンの怒号に割り込み、ゲッシーは説明を行う。
「アルマゲスト-2459」。宇宙でも老舗の知育玩具の最新式。
勉学には痛みと刺激が必要、といったコンセプトで製作されたこのおもちゃ。
「実際に発売されているバージョンはちゃんと殺傷力を抑えてるんだよ」
じゃあ私が戦うコレには殺傷力があるの!?
そんなヨシノの内心の叫びを掻き消すように、ゲッシーの解説は続く。
四つの浮遊小型砲台が光線を放ち、それを子供達は回避する。
そして、その上で正しい答えに相当する砲台に攻撃を叩き込む。
「地球で言う四択クイズやマークシート式の試験の練習問題だね」
要は、クイズ番組や動画企画のように、
バラエティ性を伴わせた学習ツールなのだ。つまり、
ルミナキャストのタイアップ。そしてヨシノの中間テスト。
この二つを組み合わせることで販促と勉強の双方を潤せる、といった寸法だ。
番組陣営も、地球の文明については中途半端な理解である中、
彼女の日常と噛み合う販促行為を考え抜いたことになる。些か不器用すぎるが。
「ちなみに、ちゃんと防御しないと風穴が開くから注意してね」
「怖すぎるわ!」
タキオンとして魔力のコーティングで防御を行えば問題ないとは言うが、
なんてものと対峙させると言うのか。宇宙の教育観でも近年は賛否両論、
とゲッシーは付け加えるものの、何のフォローにもなっていない。
「というか、魔力のコーティングって何!?」
「そこは気合いだよ、気合い!」
要するに、タキオンフィールドの領域操作のように、自分の体に力をこめて、
筋力や敏捷性を強化する行為を指すようだ。タキオンとして戦う中で、
無意識にやっていた行為ではあるが、特に前回の特訓を経た後ならば、
容易に可能であるだろうと、ゲッシーはタキオンに信頼を寄せる。
寄せてやることなのか、これは。
「水ノ電気分解ノ問題デス」
「このアルマゲストは、エリートを育て上げる宇宙の教官なんだ!がんばれタキオン!」
早速クイズが始まった。こんな、非常識に足が生えて、
そのまま突っ込んでくるこの状況。呆れ返るような絵面だが、
驚くことに、既にタキオンの目には一切の迷いが無い。
やるからには、逃げるわけはいかない。どんなふざけた状況でも完遂する事。
それが、彼女の憧れたヒロイン。そして、私もそんな風に勇気を届けたいから。
「…でも主人公で勉強が好きだった子、どれくらいいただろう」
それでも、ふと内心は出るが。