【クソアニメの主人公に人格あったらどうするよ!?】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!?   作:砕(サイ)

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「どうだった?阿保さんとのコラボの盛岡」
「やめんか、その言い回し!」

 相も変わらず、ルミナキャストの視聴者目線。
いつもの調子で、賢界(のりか)はヨシノに問いかける。
普通に友達に会いに行った話だったら。条件を変えて、
おみやげのぬいぐるみや温泉の話、巡りに巡ったショッピングモールの話など、
盛岡に転校した友人との話題なら大漁の宝船。

「今度は小岩井とか花巻にも行きたいわね、私も一緒ついて行って……」
「へ、変なことしでかさないでよ」

 賢界が言うように、岩手には観光名所やレジャー施設も数多く。
今回のヨシノの盛岡の回遊とはまた別に、宮沢賢治ゆかりの土地や、
牛や羊と触れ合う場にて、様々楽しめるはずだと提案する。
あかりに対してイーヴィルのような劇薬をぶち込んだその時は、
今度ばかりは直接タキオンレーンをぶちかますぞと脅しつつも。

「いいの!?」

 喜ぶな。このような有様だからヨシノとしても、
破壊光線を浴びる様を想像し目を輝かせている賢界を、
あかりの戦場へ連れて行くのは慎重になると言うものである。


第10話「我ラ裏生徒会ナリ 其之壱 護国神像・大和」 Aパート

「突然だが、本日は全校集会があるからみんな準備してくれ」

 

 担任の一言に、ヨシノは少し身を乗り出す。

予定のない集会から想起されるイメージといえば、よからぬ事件や事故の話題。

他のクラスメイトの心象風景までは分からないが、ヨシノの内側の世界が再生するのは、

そんな凶兆である。

 

「嫌だな〜……なんだかすごく怖いんだけど」

「ヨシノさんなら普段はもっと恐ろしいもの、体験してるでしょ」

 

 ルミナキャストとのそれとこれとは違うと言うか……。賢界(のりか)の無邪気な茶々が、

体育館へ向かう気怠い行進の中のコントラストとして、

ヨシノの重い足取りも少しばかり軽くなる。イーヴィルの件が異常だっただけで、

やっぱり良い友人なのかもしれない。

 

「そういえば私、ルミナキャストへの脚本コンテスト、送ってみたの。楽しみだわ」

「ゲエ!」

 

 もっと恐ろしいものを体現してくるはこの少女。聞いたこともない大会。

相変わらず宇宙との交信が可能であることと、まだまだ番組に干渉する意欲が、

誰よりもマンマンであること。その目の輝きが物語る。しかも、

お小遣いと言う非正規のルートで番組を買収する可能性も未だ残る中。

次の爆弾が投げ込まれないことを祈りつつ、体育館で整列するヨシノと、

そのクラスメイトたち。どんな話題が壇上で飛び出すのかと、

にわかに体育館全体がざわつく。

 

「諸君、これより集会を開始する」

 

 そんな群れるような喧騒を掻き消すように。唐突な宣言が、静寂へと上書きする。

いつの間にか壇上に立っていたのは、学校指定の制服をそのまま白く脱色したか、

あるいは染め上げたような不可解なカラーリングの衣装を纏った青年。

全校生徒を睨みつけるように、その後ろには、同じく白い制服を纏った集団が横一列に並ぶ。

 

「諸君らは、この日常を当たり前に享受出来ると思っているようだが──実は違う。

 物理法則、数式、歴史、法律──これらは人が得た概念、知識、或いは力である」

 

 白い制服。髪を短く刈った鋭い眼光の見慣れぬ男は、

最初からこの学校に存在し、今日この日まで生徒を統べていたかのように、

威風堂々と、人類が蓄積した知識と概念、ルールを語る。

 

「だが、人が得られる力は所詮その程度なのだ。摂理……真理はまだ、人の視界の外にある。

 その力がいつ、我々に牙を剥くか。或いは……我々が本当の意味で手に入れるか」

 

 誰の横槍も許さない、あまりにも確信に満ち足りた言葉。

自分は人の知らない摂理を知っています。そのように主張しているかのようである。

馬耳東風でいられたらどれだけ良かったか。物言わず、

見たことのない上級生の言葉に困惑するばかりのヨシノは、

最初に予想していた事故・事件の報告の方がまだマシであったと、

不謹慎ながらもその内心でポツリと呟く。その内心に被せるように。

白い制服の青年は結論を先に告げる。

 

「ここに宣言する──我ら、裏生徒会がこの学校を統治する!!」

「いやバカじゃないの!?」

 

 ヨシノも罵倒したくて罵倒したのではない。

絵に描いたような、文章に記したような。

創作、あるいは妄想が目の前で喋っている。

フィクションの真っ只中にいる彼女。

だからこそ、荒唐無稽に誰よりも敏感である。

 

「我らが統治に異議があるか」

 

 やべっ!自らの失言に、今更気付くヨシノ。

裏会長が直々に彼女に問う。

我々の何処がバカなのか。そう言いたげに威圧的なトーンではあるが、怒りは感じられない。

あくまで純粋に反論に耳を傾けるつもりのようである。

 

「えっと……」

「ならば──裏生徒会が支配するに相応しい証拠をお見せする」

 

 学校をまとめたりするのは校長先生だと思います。

ヨシノがそんな風に一言返そうと思った矢先、

突如として、裏会長の背後から光の渦が巻き起こる。

さしづめ台風。体育館を巻き込みながら、

嵐とも激流ともつかない破壊的な衝撃が生徒たちを圧倒する。

 

「ウソでしょ!?」

 

 ペルソナクスによる力。そのような説明可能な根拠を疑いながらも、

その異常な体感にヨシノも叫ばざるを得ない。

そんな混乱を尻目に、破壊的な濁流は一つの形を成した。

 

「これぞ我が力。『護国神像・大和』也」

 

 光の血肉で構成された、威厳に満ちた武者。

天井があったはずの空から、光の武者はヨシノを見下ろす。

既に半壊した体育館。あたかも最初から

この巨大な光の展示場であったかのように、存在感を示している。

 

「何この世界観!?」

 

 いきなりの出来事に頭が追いつかず、勝手に動き出す体。

いつの間にか、廊下で息を切らしていたヨシノ。

あまりの困惑。ヨシノとしても、頭が処理できず

あの場から逃走せざるを得なかった。

 

「いつものルミナキャストって感じじゃないよアレ…」

 

 ワルターやムジカントムとも違う異様さを

何処か感じながら、頭を整理する。そんな中、ふと、売店が視界に入る。

ヨシノも時折、ここで昼食のパンを購入している。

彼女の中学校生活にとって、そこそこ大事なインフラだ。

 

「チョコチップメロンパンが食べたいな……」

 

 いやいや落ち着こう。一瞬、現実逃避をしたヨシノ。

しかしながら、目下の課題は裏生徒会が何たるかを知ること。

思考を巡らせる中、売店の店員が視界に入る。

バンダナにエプロン、そして白い仮面。ムジカントムだ。

 

「うわ出た!」

「フフフ……人を化けて出てきたように言うんじゃないぞ」

 

 化けて出てきたようなものだろう。ヨシノは表情で訴えつつ、口で問いただす。

あの裏生徒会は何なのか。ワルターの類なのか。

 

「フフ……知らん。何だあいつらは」

 

 マジか。ムジカントムの回答は、ヨシノが求めていたものでは無かった。

そしてムジカントム曰く、ああいった者にはワルターの適性もない。

いつもの笑い声を弱々しく漏らすムジカントム。

ワルターを使えない以上、これではどうしようもないと俯きながら、

チョコチップメロンパンの購入をヨシノに促す。後にしなさい。

 

「ワルターは強固な自我には弱い……」

 

 廊下を走りながら、ヨシノは呟く。

先程のムジカントムが、愚痴とともに語っていた情報。

レンタルショップで凪がワルターに取り込まれたが、

彼女の心が弱いようには到底見えない。

 

「それだけあの裏生徒会ってヤバいのかな…」

 

 確かに、あのような超人的な能力を持つ者が、

人並みの心持ちである方が不自然である。

焦燥感を覚えつつ、駆けるヨシノの足元に飛び込んで来た茶色い毛玉。

へたり込み、弁慶の泣き所を抑えつつも。ヨシノは骨に染み渡る痛みに悶えるよりも先に、

駆けつけてきたゲッシーに目線を合わせ、そのまま思い切りその体をゆすり、思い切り叫ぶ。

 

「ゲッシー!?何この状況!!説明してよ!!」

「テ……テコ入れで……」

 

 聞くところによると、宇宙では今、所謂「能力バトルもの」も産業として、

大きく発展しているとのこと。上層部がそれを取り入れようと、

急遽、能力者との戦いを始めようとルミナキャストの世界に捩じ込んだのらしい。

 

「バカ!!!!」

 

 ヨシノがここまで声を荒げるのも、初めてのことである。そりゃそうだ。

 

‭ 日常(がっこう)が非日常(ルミナキャスト)以上の非日常と化すこの状況。‬

‭ヨシノとしても次の行動が定まらない。ルミナタキオンとして戦えばいいのか、‬

‭説得すればいいのか。少なくとも、それは彼らと同質の超能力者が戦えばいいのであって、‬

‭魔法素粒子界の調和を守る戦士の責務ではないことだけは理解している。‬

 

‭「これ、視聴者はどう処理するの……!?」‬

‭「僕も見たくない……」‬

 

‭ ゲッシーだけは自慢のタブレットでその反応を覗けるはずだが、‬

‭震える手つき、あるいは前脚。恐らく、今回ばかりは何を言われるか、‬

‭ゲッシー自身も想像したくはないのだろう。想像に難くないが故に。‬

‭そんな困惑に追い打ちをかけるように、校内放送が流れる。‬

 

‭「我々裏生徒会は、力を以てこの学校を支配する。

 力とは、武力、知力、魅力──それを限定しない」‬

 

 陶酔とも自負ともつかない言葉。この、冗談のような宣言でヨシノは確信する。

本当にクラスメイトが傷付くかもしれないと。ならば、次の瞬間にやることは一つ。

言葉よりも先に放たれるは覚悟。構えるルミナスコープこそが、それを物語る。

 

「誰かを守るのに、場違いか否かなんて関係ない!」

 

 至るはルミナタキオン。ゲッシーに微笑みかけ、そのまま駆け抜けていく。

無論、裏生徒会が何者かであるかなど、知る由もない。誰がどんな力を使うのか、

どんな性格なのか。顔見知りはいるのか、全くの赤の他人なのか。

ヨシノが憧れたヒロインは、どんな戦場であっても逃げ出さないであろうことを考えたら、

それも些細な事ではあるが。

 

「その力…"エクステンド"の使い手みてえだな」

 

 走りゆく中、引き留めるように放たれた、どこか軽薄な声。

廊下の奥から顔を出すのは、首筋から覗かせるタトゥーに着崩れた白い制服。

疑う余地もない。裏生徒会である。嘲笑するかのように緩んだ口元で、

手招きをしてそのまま引き返すも、あんな放送を聞かされた直後なのだ。

 

「待ちなさい!」

 

 曲がり角まで一直線。タキオンの名に違わず。

その脚力で走り抜け、追跡を試みる。その距離数km。

未だ、曲がり角まで到達しない。

 

「これ……何かの能力だ!!」

 

 気付いたと思えばもう遅い。そのまま床はひび割れ、

崩れ落ちる。タキオンがいる一階廊下の更に下。

奈落の底の無限の穴が、深い闇へと突き落と相当の手招きをする。

そうはさせない!そんな叫ぶような足取りとともに。

タイル片を足場にし、次から次へと踏み抜き、飛び越えながら、

タキオンは地上へと突き進む。それだけではまだ足りない。

 

「なら、飛んでやる!!」

 

 ルミナタキオンは圧倒的な脚力を以て、

宙を切り裂き、空を飛ぶかのようにその体で高く跳ねることはあったが、

一度たりとも空中浮遊、飛行の類の力など使ったことはない。

だからこそである。虚空からルミナステッキを展開し、

思い切り心を込める。目、耳、鼻、肌、舌、頭。

感じ取る総てがステッキに流れ込み、そのまま質量がゼロになる。

 

「飛んだ……」

 

 布団に倒れ込む。感覚としては、そんな日常動作と一緒である。

それを、上へ上へとかける方向を変えるだけ。

名付けて空中浮遊・ルミナフロート。

普段の生活には活かせそうにもない、

この奇妙な体重移動を以て、空を歩く。

 

「こんなタイミングで新技を覚えるのも癪だけど…それどころじゃないよね」

 

 大事な学校を壊す悪い生徒は、ワルター以上に見逃せない。

そんなタキオンの覚悟を激励するような窓越しの日差し。

一階まで戻り、最初に見た景色は青空でも、

遠すぎる曲がり角でもない。向こう側から見える、

なんの変哲のない距離感の廊下。

 

「この能力……実は微妙な距離しか操作できない!?」

 

 換気をするかのように開けた窓から飛び出し、

そのまま屋外へとタキオンは走る。やはり、その通り。

融通の効く力であれば、閉じ込めることも、

学校全体を出鱈目な空間にすることも出来たはず。

見掛け倒しと言うにはあまりに不気味な質感ではあったが、

廊下を出るだけで突破可能な力。

 

「クソッ!なんだアイツ……逃げやがっウゲッ」

 

 焦りからか、窓を開けるのは能力の主。

もっとも、タキオンにとってはそれもモグラ叩きのようなもの。

飛び出した顔面を、そのままドロップキックで踏みつける。

手加減はしておいたよ、少しダウンしてもらうけど。

少し意地の悪い笑顔を投げかけ、タキオンはそのまま走る。

 

「何だその格好は。アイドルのつもりか?」

 

 駆け抜けるタキオンと並走するは、

白い学生服とペンライトのコントラスト。複数人の男たちが、

統制のとれたフォームで追跡を行う。ワルターならまだしも、

人間がルミナタキオンとして自分と互角の速度を保ち、

あまつさえ服装に悪態までつくとなれば、にわかに恐怖を禁じ得ない。

 

「追手!?させるか、タキオンシフト!!」

 

 思い切り体を捻り、そのまま肉体を質量なき光へと変換し、

一気に駆け抜けた先。確かに教室へ逃げ込んだと思ったところ、

先程入ったはずの体育館以上に広大な敷地が拡がる。

巨大なモニターに、左右に陣取るスピーカー。

この空間はまさしく、ライブ会場。

 

「対バン希望!?悪いけど、スーパーヒロインはあたしなんだから!!」

「へえ!?」

 

 乱入してきたタキオンに啖呵を切る少女が纏うは、

裏生徒会に共通する純白の制服の女子仕様。

マイク片手にステージに立つその姿は、まさにアイドルそのもの。

相槌にすらなり得ない、情けないタキオンの声を遮るのは、

スピーカーから流れる背景音楽。そのまま蕩けるような発声に乗せて、

動き出すのはペンライトを持った兵士たち。

 

「みんな!その不届きものを殺っちゃって!!」

「歌で生徒を操ってるの!?」

 

 飛びかかる男子生徒の大群。彼らの四肢が鞭のようにしなり、

鋭い当て身をタキオンに浴びせようと蛇のように牙を剥く。

この速度感。間違いなく通常の人間の出せる敏捷性ではない。

裏生徒会特有の超能力が、極限まで身体能力を高めたのだろう。

身の危険すら覚えるほどの勢いではあるものの、

操られているのかもしれない以上、

妄りに生徒を傷つけるわけにはいかない。ここで放つは、タキオン…

 

「リジェクト!!」

 

 タキオンフィールドの制御で見出した新技。

単刀直入に言えば、簡易タキオンフィールドである。

破壊力の替わりに、燃費を向上させた純粋な盾。

拒絶の文字の通り、タキオンは相手の攻撃を拒絶する。

 

「攻撃しないかわりに、絶対に攻撃させない!それがタキオンリジェクト!」

 

 簡易版タキオンフィールドとも言えるタキオンリジェクトを以て、

生徒の襲撃を受け止め続けるタキオン。しかし、身動きが取れない以上、

その状況は決して好転しない。ならば、簡易版ではない真打であれば?

 

「心の速度で、光と闇を包み込む!覆い尽くせ!タキオンフィールド!!」

 

 タキオンリジェクトは、タキオンフィールドの出力制御の副産物。

極限まで威力を抑えつつも、光のドームが持つ衝撃が、

男子生徒の徒党を怯ませ、吹き飛ばす。今だとタキオンが照準を向けるは、

裏生徒会アイドルの傍らで仁王像のように構えるスピーカー。

歌に反応して動き出した様子を見るに、

その歌声が操作能力の源泉と考えるのはそこまで突飛ではない。

 

「行け!ルミナライトアップ!!」

 

 光の弾丸が突き抜けるも、その着弾を裏生徒会は許さない。

男子生徒の集団が陣を組み、光弾(ルミナライトアップ)を受け止めるその様に、

まばたきほどの一瞬(タイムライン)の中、わずかにその顔を歪める。

人間はおろか、同じ中学生相手に直接攻撃を仕掛ける状況は、無論、今回が初めて。

悲嘆の顔は、すぐさま怒りを帯びたものに変わる。

 

「人を盾にするなんてことあるの!?卑怯者!!」

「そうやって動揺してくれるならいいもーん☆大儲け!」

「……そっちがそのつもりなら、こっちも本気で行くよ!」

 

 同じ中学生ではなく、ペルソクスと同じ成敗の対象として、

このアイドルに一撃を加える。反省する気がないのなら、

少しはその気にさせてやろう。一方の裏生徒会アイドルも、

生半可な攻撃で対処可能な相手ではないと認識したか、

騎馬戦のように組まれた男子生徒の陣形に乗っかり、

そのままタキオン目掛けて突き進む。

 

「マイクパフォーマンスならこっちに分があるってもんよ!」

「これはマイクじゃなくてステッキだけど……」

 

 何を思いついたか。そのままタキオンは己が得物、

ルミナステッキを男子生徒の集団に放り投げる。

先程この魔法少女風の娘から放たれた、

未知の破壊力による罠の可能性をアイドルは想定するも、

状況は二択。ここで黙ってては仕方がない。

 

「そんなブラフに騙されるもんですか!みんな!ぶん盗って!!」

 

 同じ技なら、そのまま突っ込めばいい。魔法のステッキが持ち主から離れて、

単体で手榴弾のように自分ごと巻き込む爆発をするわけでもない。

そんな確信から、アイドルはそのまま追っかけを扇動するも、

次の瞬間、タキオンの膝蹴りを浴び、そのままファンで出来た騎馬から落馬する。

 

「ついでにトドメの数発!」

 

 ルミナステッキを持たない状態で放つ高速移動・タキオンシフト。

本来、虚空へと収納するステッキの「オンオフ」の性質を利用して、

その条件を満たすこの技を、仕舞うのではなく、

敵陣に投げ込む奇策を以て成立させる。

ルミナストーンを狙うペルソナクスとの戦いではないからこそ出来る、

今回ならではの発想。統率が崩れた集団は敵ではない。

ルミナステッキを掴み取り、ルミナライトアップを数発、

そのステージに叩き込み、スピーカーとモニターを破壊する。

 

「さっき身代わりにした男子たちは、もっと痛かったんだからね!」

 

 先程までの狂騒は何処へやら。自身らの状況に目を合わせながら、

混乱する男子生徒たちと、大の字で気絶する裏生徒会アイドル。

利用した事への反省を促しながら、タキオンは教室を後にする。

何処から攻撃が飛んで来るか、裏生徒会が襲って来るかも分からない状況。

ここまで来たら常在戦場(じょうざいせんじょう)。すなわち、

いつ敵襲に見舞われても構わない。突然蹴り込まれたサッカーボールにも、

その頭蓋で受け止め、そのまま足元で抑える程度には。

 

「私はゴールじゃな……!?」

「あーお前、AI動画の魔法少女と同じ見た目じゃん。なんか元ネタあんの?」

 

 この状況において、ルミナタキオンとしての心構えは変わらない。

草之根ヨシノとして、さすがに息を呑まざるを得なかった。以前、

タキオンとワルターとの戦いの撮影風景を野球部員と熱心に議論していたサッカー部員。

面識こそないが、唐突に現れた裏生徒会では決してない。

ヨシノの学校に、嘘偽りなく存在する少年である。

 

「どっちにしろ、裏生徒会の味方じゃなさそうだしな……」

 

 タキオンを裏生徒会と誤認したのではない。裏生徒会の敵と認識し、

ボールを蹴り込んだのである。眼光と言うには、あまりに光のない目つき。

受け止めこそしたものの、弾丸を彷彿させるその威力。

裏生徒会は既に、アイドル風の少女とも異なる形で生徒たちを操り、

支配しようとしてる。戦慄とともに、タキオンは確信する。

 

「その制服……この学校の生徒なのに、何で裏生徒会に加担するの!?」

「エクステンドは、この世界を支配し得る力だからだ。俺のは大した力じゃねえがな」

 

 同時。タキオンとサッカー部が、互いの足元に置いたボールを同時に蹴り、

二つの球の破壊的な威力を相殺させる。それすらも想定内か、

あるいは想定するまでもなく攻め込むつもりか。何処からともなく現れた、

何個、十何、何十ものサッカーボールを同時に蹴り込む。

 

「ウソでしょ……!」

 

 タキオンリジェクトで受け止めつつも、攻撃の止む隙を見逃さず。

光弾(ルミナライトアップ)で攻め込むも、ほんの一瞬。

ボクシングで言うダッキングの要領なのか。まるで胴体を圧縮したように上体を低くし、

サッカー部員はそのまま光の弾を躱す。

 

「呆気に取られる暇はないだろ、魔法少女さんよ」

 

 その息を呑む瞬間を決して見逃さない。目にも止まらぬ速度で距離を詰め、

サッカーボール越しの蹴りを至近距離で直接タキオンに叩き込む。

レッドカードを出そうにも、キックの重量が乗ったボールを防御(ガード)するのが精一杯。

少女はそのまま後方へ蹴り飛ばされ、尻餅をつく。

 

「その格好……自分を正義の味方とでも思っているようだがな」

「そんな正義、投げてみろよ」

 

 裏生徒会仕様にチューニングされたその心。血の気も引けた冷たいトーンで、

目の前の魔法少女に対して、蹴り飛ばすように吐き捨てる。

このサッカー部員が正気ではないことは確か。しかし、草之根ヨシノは、

剥き出しの心の闇を相手にして来たのである。ワルターと裏生徒会の洗脳。

違うのはラベルだけなのだと確信し、その心を取り戻すことを決意する。

 

「届ける想いは光を超える。ルミナキャスト――ルミナタキオン!」

「そいつがそのキャラクターの名前か」

 

 不敵に笑うサッカー部員は、目の前の少女によるコスプレなどでは決してない、

正真正銘のルミナタキオンであることはまだ知らない。

 

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