【クソアニメ攻略系バトルコメディ】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!?   作:砕(サイ)

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 私、草之根ヨシノ!悪の科学者・プラティノが監査に来たとウソをついて、
私を進化したワルター、ワルター・オリジンの実験体に!
なんとかその力を利用して、タキオン・スーパーノヴァに変身して倒せたけど、
勝手に死んだことにしたりだとか、勘違いも甚だしいよ!全く!
魔法素粒子界の裁判所で、しっかり罰を受けなさい!

「……なんか違わない?」
「う、宇宙放送倫理で問題になって……」

 震える声でゲッシーが話す組織の名は、宇宙放送倫理機関。
端的に言えば、ヨシノが死んだ設定は子供の視聴に適していないとクレームが来て、
番組審査の結果、「プラティノの勘違い」として設定がオミットされたのである。

「そりゃそうでしょ!!」

 確かに朝っぱらから暗いトーンの作品はあるにはあるが。
魔法素粒子ルミナキャストという番組に求めるものではないのは明白である。

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「お、鬼!」

 とある牢獄。涙目で叫ぶのは、野望を打ち砕かれた後、
自身の研究を「勘違い」ということで世界(ばんぐみ)に一蹴された泣きっ面に蜂の男、
プラティノである。しかし、この男の野望はまだ終わってはいない。

「別の形で、ワルター・オリジンに準ずる力を手に入れればいい……」

 無論、牢屋の中ではそれも叶わない。今はただ、
虎視眈々と脱獄の計画を練るばかりである。


第12話「がんばれ、ルミナタキオン」 Aパート

‭「この道路も広くなったなー」‬

‭「え、これで?」‬

 

‭ 片側一車線を基本とする高速道路、秋田自動車道。‬

‭ぼやく草之根夫人に、その夫はこれでも以前よりは整備されたと、‬

‭愛車を走らせながらも感嘆する。草之根夫妻の会話の背中で、‬

‭娘、ヨシノが見る風景は夢の中。‬

 

‭ 初めてワルターと戦った時。エクリプスベルトを巻いた時。‬

‭ムジカントムがバイオリンをエアギター演奏した時。‬

‭レンタルショップで飲んだコーラの味。三鳥(みとり)さんが見た、‬

‭ルミナキャストの映像。妙に強く賢いカラス。アルマゲスト。‬

‭ハニエルと一緒にモノリスを誤魔化したこと。裏生徒会。‬

‭配信サイトに書いたコメント……。‬

‭思えば、ルミナタキオンとして戦ってきてから、‬

‭色々あったなあ……。‬

 

‭「ちょっと待って!?なんで他人のイメージ夢に見てんの!?」‬

‭「寝言か?ヨシノ」‬

 

‭ 娘の唐突な絶叫に、前方の席の両親は笑う。‬

‭ヨシノとしても恥ずかしさに思わず取り乱すが、‬

‭ルミナキャストとしての正体がバレないだけ、彼女にとっては幸運である。‬

 

‭「いやにリアルな夢だったなあ……」‬

 

‭ のちに、ゲッシーが直接ヨシノに説明することであるが、‬

‭睡眠中のヨシノの脳の領域を一部利用し、夢として記憶の映像を再生。‬

‭その際に他人の経験を脳に一時的に流し込み、一つの映像としてまとめ上げる。‬

‭このような記憶のアルバムのエクスポートは、どんなに映像技術が進んでも、‬

‭独特の味わいが出るとして宇宙では比較的ポピュラーな編集方法である。‬

 

‭「夢まで介入されたらやってられんわ!!」‬

‭「ち、地球じゃ受け入れられないかな……」‬

 

‭ ヨシノが訪れたのは、秋田県の能代市周辺にある山田空港。‬

‭ひいきの配信者・オヤマダのイベントに際し、‬‭前々から家族と約束して、

日帰りドライブの予定を立てていたのである。‬娘が楽しみにしているイベントが終わるまで、‬

‭少し遠くの道の駅までと二人で走っていった父と母。‬

‭こうなってくると、無論、ゲッシーの独壇場である。‬

 

‭「地球の配信者か〜……さすがにコラボは出来ないな」‬

 

‭ オヤマダの宇宙的知名度は皆無。理由はシンプル。‬

‭受信手段が限られているからである。賢界(のりか)やあかりなどの例外を除き、‬

‭地球人が宇宙の情報に触れられないのと構造そのものは変わらない。‬

 

‭「宇宙の人気動画を見たけど、確かによく分からなかったかな……」‬

 

‭ オヤマダの動画が宇宙でもウケるかどうかは分からないと言うのは、‬

‭ファンであるはずのヨシノも、宇宙の感性と比較して、漠然と感じ取っている。‬

‭盛岡でのひと騒動を終えてから、時折ゲッシーのタブレットを借りて、‬

‭宇宙の動画視聴をするヨシノであるが、どうにも上手く使いこなせないのと、‬

‭どうにも好みの動画が見つからないで悪戦苦闘中である。‬

宇宙のブームは地球人にはイマイチ、ピンと来ない。

 

‭「なんか、検索方法が独特って言うかさ……」‬

 

‭ 地球のUIとも異なる違和感に、あかりや賢界はどのように対応しているのか。‬

‭また、地球のカルチャーとも違う肌触りにどんな面白さを見出してるのか。‬

‭ゲッシーはまだヨシノ好みの動画を見つけていないだけと言うが、‬

‭彼女の疑問は尽きない。その時である。‬

 

‭「あっ!ケミンパじゃん!ここでルミナキャストのロケやってたんだ」‬

 

‭ 番組としてのルミナキャストの名を出すと言うこと。それは宇宙人か、‬

‭あかりのような特殊な地球人の二択しか無い。不意打ち!‬

‭思わず振り向くヨシノが見たのは、大学生くらいの若い女性。‬

‭にプラスして、頭にたがい違いに生えた二つの目玉付きの触角と、‬

‭四本腕といった出立ちのその姿。宇宙人だ!‬

 

‭「やべっ……バレた?」‬

‭「そりゃバレるよ!!」‬

 

‭ 宇宙人の女性としては完璧な擬態、‬

‭あるいはヨシノたちと種族的な差は無いつもりだったようだが、‬

‭少なくともそれは、ホモ・サピエンスの特徴ではない。‬

‭本人としては不本意だったのか、虹色のスペクトルに沿って、‬

‭色味を少しずつ変えていく瞳と、二又の爪で頬をかく。‬

 

‭「今はゲッシー!空気読んでくれよ」‬

 

‭ ケミンパとはどうにもゲッシーを指すようだ。‬

‭ゲッシーが何故このように嫌がるのか。‬

‭宇宙人の女性とゲッシーの会話を聞くところ、‬

‭ケミンパは他の出演作での名前であり、‬

‭ルミナキャストに持ち込むものではない、とのこと。‬俳優や声優が、

他の役柄を演じている時に、全く関係のない作品の役で呼ぶようなものなのだと言う。‬

 

「え〜この星ってルミナキャスト放送してないんだ!ここがロケ地なのに」

 

 ゲッシーが「あざとー」と呼ぶこの女性、どうやらオヤマダのような動画配信者らしい。

地球の言葉で訳すなら彼女は「ホログラムシフター」。イーヴィルタキオンのような、

質量のあるホログラムに人格を投影。遠い宇宙の遠隔から操作して、

様々な惑星やコロニーに赴くのだと言う。あざとーのこの姿も、

地球風にローカライズした、「地球人バージョン」なのだとか。

ローカライズしきれてないわ!

 

「あと、ややこしいからVTuberって呼んでいいかな……?」

「あ、この星にも似たようなモノあるんだ」

 

 秋田犬の像が鎮座するベンチにて繰り広げられる、二人と一匹の奇妙な会話。

そんなホログラムシフター──宇宙VTuber・あざとーがやって来た理由は、

見知らぬ星・地球の動画投稿者とのパフォーマンス対決をすることだと言う。

 

「でもせっかくルミナキャストの主役もいるんだし、先に君と戦ってみたいかな」

「えっ」

 

 ヨシノとしては、予想外の反応。

 

 

「よもや、お前たちがここに来ていたとは」

 

 ゲッシーにとって聞き覚えがある声に、ヨシノにとって漠然と見たことがある気がする顔。

ESGの男である。ヨシノを他所に。ESGはゲッシーに事情を話す。

ルミナキャストのロケ地である上、当たり前のように宇宙の通信網(ネットワーク)と交信している、

賢界(のりか)がいるから分かりづらいが、地球と宇宙の交信は限定的なものである。

 

「お前たちのような放送局の技術があるからこそ可能な代物だ」

 

 ゲッシーやハニエルたちの元締めとなる、宇宙の大手放送局が有する通信衛星。

この高級機材を地球の周りに走らせ中継局とし、ヨシノやあかりの勇姿を発信できている。

しかし、逆に言えばそれくらいしか発信できない。

地球の動画サービスなどを宇宙に発信したり、或いは宇宙の動画サービスに、

地球人が普段使いの動画サイトのように揃いも揃ってアクセスしたら、

衛星の容量がもたない。無論、賢界ひとりくらいであれば許容範囲であるが。

 

「そこで、ホログラムシフターと地球のインフルエンサーのコラボレーションだ」

 

 大掛かりな整備はまだまだ先の話。その前段階として、

地球の動画コンテンツの知名度を向上させ、宇宙人を誘致させる。

その取っ掛かりとして、ESGの活動拠点から遠くない地でイベントを行う、

オヤマダが丁度いいコラボ相手だったのである。

 

「今はまだ地球に行くにもハードルが高いけど……それくらいで何とかなるかな?」

「けみかる・あざとーのファン層は濃いからな。富裕層もそれなりにいるはずだ」

 

 現在売り出し中の宇宙VTuber・あざとーが訪れた聖地かつ、

現在放送中のコンテンツのいくつかの舞台たる地球。そうなると、

興味関心を持つ宇宙人も当然出てくるであろうと言うもの。

 

「あざとーには周辺地域の無名のパフォーマー、という体でコラボを行ってもらうわけだ」

 

 もちろん、あざとーが宇宙人であることがバレたらマズい。

地球人として振る舞ってもらいつつ、地球の人脈を増やしていく。

極めてシンプルだが、複雑な手続きはもう少し後からでもいいのだ。

 

「その……あざとーとルミナタキオンがライブ対決を始めちゃったんだけど」

「は!?」

 

 いつの間にやら始まっていた、地球人にはなんのことやらのドリームマッチ。

山田空港の広場に展開された、スペースコロニー風のライブ会場。

自己主張の範疇を超えたパフォーマンスに、ESGもその口を大きく開けたまま、

閉じることも叶わない。

 

「おい!どうするんだ!!地球人にバレたら大問題だぞ!」

「だいじょぶ!職業訓練で認識阻害の講習修了したし!」

 

 ゲッシーが二種特定惑星改竄処理監督により、ヨシノの地元の文明に介入したように、

宇宙には平和利用やトラブル防止のために得た特定資格──

訓練によって得た技術や能力、或いは道具の使用スキルを有する者が多く存在する。

平たく言えば、あざとーは「自分が異星人だと気づかれにくくする装置の操作資格」を持ち、

正体を察知されないよう、周囲に地球人だと誤認させながら歌うのだ。

 

「空港にスペースコロニーなんかあるわけないわ!!」

 

 ホログラムの壇上に立つタキオンも、マイクを握って思わずシャウトする。

ここまで大掛かりなセットを使うと思わなかったタキオンとゲッシー。

ESGの説明を受ける前に安請け合いをしてしまったが、これでは単に歌うだけでも、

普段のワルターとの戦い以上に心臓が激しく動くと言うものである。

 

「ところで、なんだあの歌は」

「えーっと、キャラソン」

 

 キャラクターソング。作品の登場人物、厳密に言えば、それを演じる俳優や声優が歌う、

キャラクター性に沿った歌である。ゲッシーはヨシノに、万が一のことがあった場合にと、

ルミナタキオンのキャラクターソングを密かに教え、練習をさせていたのだ。

時折挟まれるヨーデルのフレーズは、これでもヨシノの地元をイメージしたものらしい。

 

「うちの娘もルミナキャスト観てるぞおおお!」

「マジかあああ!!あざとーに課金しすぎて嫁さんに怒られるなよおおお!」

 

 コロニーにひしめく球体状のスライムが、タキオンを応援する奇妙な光景。

あざとーのファンもホログラムとして投影されているのか、

ヨシノの普段の生活では、到底聞けないような声援が響き渡る。

思いの外、このコラボイベントの手ごたえは悪くなさそうだと感じた、その時である。

 

「うわっ!もう撮影やってるんすか?俺もこっから入りますよ」

 

 あざとーが二つの右手で手を振る先。なんだ?とスライムたちが振り向けば、

そこにいたのは地球人の若い男。この未知の状況にも動じず、

二人のライブに参戦しようとするその胆力。あざとーの認識阻害の影響以上に、

シンプルに場慣れしている証であろう。そして、誰よりも動揺しているのは、

ルミナタキオンその人。

 

「おおお……オヤマダ!!」

「あ、俺のこと知ってるんだ!ありがとぅ!」

 

 そう言えば現地の異星人とコラボするって言ってたな…。タキオンは飛び入り参加。

本来はこの男とのコラボレーションであることを思い出しつつも、

スライムたちは更なるサプライズに期待して、歓声をあげる。

 

「あざとーに負けない芸を見せてくれよおおお!!」

「うっし!じゃあ第一曲!『タビメグリ』!!」

 

 この状況の中、気が気ではないのはやはり、ルミナタキオン・草之根ヨシノ。

今の今まで感じなかったタキオンとしての羞恥心を、オヤマダという、

今までずっと追いかけてきた存在を目の当たりにして感じているのである。

思わず顔をその両手で覆い隠そうとするも、それを自ら振り払う。

 

「ルミナタキオンとして、オヤマダの魅力を轟かせてみせる!」

 

 普段のルミナキャストとしての戦いとはひと味違う、宇宙(スペース)ストリートライブ。

あざとーと一緒にこの場を盛り上げて、オヤマダの名を宇宙に知らしめる野望。

具体的な方法は定かではないが、ヨシノの意気込みは確かである。

 

 ルミナタキオン・あざとー・そしてオヤマダのパフォーマンス勝負は、いつの間にやら、壇上でのダンス合戦へ。

地球仕込みのブレイクダンスを巧みにこなすオヤマダ。

宇宙ではあまり馴染みのない動きなのか。リスナーの共通アバターたるスライムたちも、

大いに感心し、歓声を上げる。

 

「踊りのすごさならこっちも負けないよ~」

 

 そう言うあざとーはと言うと。その四本の腕でバナネイラ──

カポエイラで言う逆立ちの姿勢を取りながら、その腕を軸に体を回し、

更に腰関節を回転させ、その上で股関節をも回転させて、速度を乗せた高速回転を果たす。

さすがのオヤマダも驚愕の表情を浮かべるが、そこはあざとーの認識阻害のおかげか。

あくまで「すごいパフォーマンス」の範疇として受け止めて、そのままダンスを続ける。

 

「なにあのダンス!?宇宙だとああいうのあるの!?」

 

 こればかりはさすがに、文化は様々と片付けるには思考が追い付かない。

そんな驚愕を覚えつつもタキオンがやることと言えば、

二人のダンスをコラボレーションさせる行為。単純な勝敗を決めるだけでは、

あざとー主導の勝負である以上、不利なのは間違いない。

それに、せっかくの競演。ただ争うだけでは逆に芸が無い。

普段はワルターとの戦いで用いるその身体能力。それを攻撃ではなく誘導に使うのは、

今まで戦いをこなしてきて、力のコントロールも覚えてきたタキオンには容易なこと。

 

「うおっ、ジャンプ!?」

 

 宙に浮いたオヤマダの体が、あざとーの方角へ一直線。

ポンとオヤマダを投げ込んだその先へ、タキオンが持ち前のスピードですかさず割り込んだと思ったら、

あざとー、タキオン、オヤマダの組体操の完成である。

下であざとーが宇宙式ダンスを踊り、上でオヤマダがブレイクダンスを舞う。

その間でタキオンが、二人の邪魔にならないようにフォローをしつつも、

リズミカルにその体を刻むのは、さながら中国雑技。

 

「みんな!ありがとう!!」

 

 見知らぬ地球のインフルエンサーと、彼らが愛する宇宙VTuber。そして、

現在放送中のバトルヒロインコンテンツの主役の夢の共演に、観客も大満足。

あざとーの〆の一言でその熱は冷めるどころか、大いに会場は沸き、

より一層大きな歓声が鳴り響く。その外側で、思考が追い付かず、

微動だにできないゲッシーとESGがいるのはともかく。

 

「本当に認識阻害だけで誤魔化せるの……?」

「知らん……」

 

 最悪の場合、ESG側もこの場にいる地球人の記憶領域を少し弄って、

あざとーの異常事態の拡散を制御すること自体は可能なようではあるが、

そういう問題ではない。

 

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「ケミンパたちはいいよねー、予算もいっぱいで」

 

 山田空港にある食堂の中。たくあんの燻製、

いぶりがっこを用いたメニューに舌鼓を打ちながら、

あざとーはルミナキャストを羨む。あのホログラムのライブセットも、

展開するのは決してタダではない。宇宙配信者は、

視聴者から得た再生数などをポイントに変換し、セットに転用すると言う、

地球人で言うゲーム的なシステムを敷いているのだが、

やはり、スポンサーや放送局のバックが付いているルミナキャストの方が、

大がかりな空間のコントロールを可能にするのである。

 

「小回りに関してはお前たちの方が上だろう」

 

 大規模なセットを使うためのしがらみも当然ながら多い。

相席のESGも、ゲッシーの苦労を度々聞いているが故か、

あざとーの羨望に対して、必ずしも首を縦に振るわけではない。

確かにそっか。エクリプスベルトのエピソードが、

宇宙のSNSでもネタになっていたのを思い出しながら、あざとーも不意に笑ってしまう。

 

「そういえば、ルミナタキオンは?」

 

 元々、オヤマダのイベントはあざとーとのコラボとは全くの別物。

いわば別撮りでの共演であったが故、今は本筋たるイベントの準備を行うのである。

そんな中で、どういうわけかタキオンとオヤマダの二人が、

それぞれ投稿者として語らうことに。

 

「俺に影響されてなんだ!嬉しい〜」

「そそそそうなんですよ!私、オヤマダさんの色々な企画が好きで!」

 

 「東北から関東まで」をモットーに活動するオヤマダ。草之根ヨシノも、

ブレイクダンスのようなパフォーマンスをはじめ、様々なスキルのもと、

バラエティ豊かな企画の数々を各地で行う彼のファンであることは間違いない。

しかし、様々なきっかけや理由がある中、諸事情により打ち切られた自身の動画企画が、

目の前の少女が宇宙規模の番組撮影に身を投じる動機の一つになったのは、

オヤマダも知る由はないだろう。

 

「じゃあ、私もこれで!」

「あれだけすごいこと出来るんだから、いつか絶対バズるよ」

 

 バズったら困るんです!内心そう叫びつつも、動画投稿者という体で、

まさか憧れのオヤマダと間近で話すことが出来るとは思わなかったヨシノ。

以前に自身の戦いがAI動画と勘違いされたように、タキオンに変身したままの方が、

かえって「そういうファッションの配信者や芸人」などと思われ、

都合がいいといったゲッシーの判断のもと、下手に逃げずに語り合ったものの、

嬉しいやら恥ずかしいやら。グチャグチャの感情の中、

物陰でやっとタキオンとしての変身を解こうとする。その時である。

 

「うわっ、動画広告うざっ」

 

 通りがかった少年がスマホ片手に一言ぼやく。ここまではまだいい。

その直後、突如少年の体から黒い影が勢いよく噴き出し、

そのまま倒れ込む。まさしく、ワルターである。しかもその姿は、

ゲッシーよりも少し小さい程度で、極めて弱々しい。

 

「こ、これと戦えって言うの?」

 

 さすがのタキオンも、今までとは別方向のアクシデントに困惑せずにはいられない。

 

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