【クソアニメ攻略系バトルコメディ】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!? 作:砕(サイ)
いくら些細なストレスから生まれた貧弱そうな見た目のワルターだからと言って、
誰に危害を与えるかもわからない。空港からなるべく距離を取るよう、
全力疾走とタキオンシフトを併用して、ルミナタキオンはワルターを誘導する。
「目的は私なんでしょ?こっちだよ!」
やはりと言うべきか。タキオン目がけて、追跡を始めるワルター。
瞬間移動に近いタキオンシフトにも平然と追いつき、そのまま並走をする。
攻撃的な鬼ごっこの中、タキオンは幾らか蹴りを叩き込むものの、
ワルターの方はビクともしない。
「このワルター、もしかして強い……?」
あるいは、タキオンが弱くなっているかである。
少なくとも、ワルターの強さは抱えた負の感情の強さや、その総量に左右されるもの。
スマートフォンの動画の煩わしさ程度の日常の些細なストレス如きで、
タキオンと互角というその出力。何かがおかしいのは間違いない。
「ペルソナクスの新しい技術!?それとも……」
これまでも裏生徒会などの異常事態を平気で投入してきたのだ。
疑わしきは、やはり番組の側となる。ゲッシー!何をしたのか教えてよ!
そんなタキオンの声が聞こえたかは定かではないが。空港に取り残されたゲッシーが、
タブレットから鳴り響く通知に気付く。何かと思えば、裏方のスタッフ。
「番組のステータスが、ハックされた!?」
ゲッシー達のように実際に地球で活動する役者とは異なり、
彼ら「裏方」は、むやみに地球人に見つかったりしないよう、
通常の次元とは異なる特殊な空間の中で撮影現場のコントロールを行っている。
そんな彼らが通達する異常事態。
「タキオンが
番組・ルミナキャストは戦闘が成立するよう、演者の身体能力と言ったステータスも、
ある種デジタル的に制御されている。これは出来レース、と言うよりも、
強さが極端に上振れするなどにより戦闘が成立しないといった、
作劇上の欠陥を抑制するために必要不可欠なものであり、誰かに楽をさせたり、
あるいは過剰な苦難を与えるためのものではない。
「えらく焦ってるけどケミンパ……どうしたんだろ」
駆け抜けるゲッシーの後ろ姿を不思議そうに眺めるのは、
先程までタキオンたちとパフォーマンス対決を行なっていた、けみかる・あざとー。
何かの騒ぎの匂いとなれば、野次馬根性が黙ってはいない。
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「タキオン!大丈夫!?」
「大丈夫じゃないよ!!」
ようやく駆けつけた先は、車通りの少ない道路。
いかにも山道といった光景である。車のかわりに駆け抜けた、
ゲッシーが目の当たりにしたのは、息の上がったタキオン。
今まで戦ってきた中で、一番貧弱な見た目のワルターに対して見せていい姿ではない。
「詳しい事情は後だ!とりあえず僕ができ……ぶへっ!」
「ゲッシー!!」
お前は邪魔だと、似たような背格好のワルターが、宇宙ハムスターに突っ込み、
そのまま体当たりで吹き飛ばす。普段、ゲッシーが攻撃を直接受けることなど滅多に無い。
不意のアクシデントに相棒にすぐさま駆け寄る程度には、タキオンも思わず焦りを見せた。
戦闘の最中に背中を見せるのは、時に命取りになるのも忘れるほどには。
「タキオン!危ない!」
次の瞬間。ワルターの体から放たれるは電撃。タキオンの絶叫が、
その電流の威力を物語る。何者かによるワルターの能力の改竄。
本来ならば、この程度で一方的にタキオンがやられることなどあり得ない。
しかし、抵抗すら出来ずに苦しむタキオンの姿が、その絶望的な戦力差の証明となる。
「まずい……タキオンが死ぬ!」
「うえ……嫌だよ!せめてオヤマダのイベントが始まるまでは生きたい!!」
ゲッシーの口から直接死を予感させる言葉が放たれることは、
今まで一度もなかった。しかし、電撃から抜け出せず、
ひたすらに苦しむタキオンの姿。実は、ここまで危機的な状況を見せるのも、今まで皆無。
信じられないことに、今こそが史上最大の危機。絶体絶命の状況なのである。
「げ……ゲッシー!?そういえば、死なないセーフティーってあったって言ってたよね」
「あ、あるよ!」
以前よりゲッシーが語っていた死なないセーフティ。地球の言葉で言うならば、
「リポップ装置」。リポップとは、コンピューターゲームにおいて、
消えたアイテムやモンスターなどが復活する現象。要するに、
タキオンが万が一死んでも、そのままポンと新しい体で蘇ると言うのだ。
「とりあえず、これで万が一死んでも大丈夫」
「命をなんだと思っとるんじゃ!」
言うならば、死の重みがなくなるのと同時に、命の価値が大暴落する暴挙である。
未知の攻撃に死を予感しているタキオンとしても、
この呆れ返る倫理に物申さざるを得ない。しかし、この状況において、
微笑んだのもルミナタキオンである。
「それってつまり、結果は同じってことなんでしょ?」
「え?」
タキオンの肝の据わった表情。ゲッシーとしても、何が何だか分からない。
タキオンは何を思いついたと言うのか。次の瞬間。ゲッシーは思い出す。
ルミナタキオンは。草之根ヨシノは。
「どうせ同じなら、生きたまま耐えた方がかっこいいでしょ!!」
普段の常識が通用しない状況でも、決して諦めない。
それが出来るからこそ、今までだってルミナキャストと言う戦いを乗り越えてきたのだから。
「ぐええええええ!!」
ルミナタキオンは耐え続けるも、ワルターの電流攻撃は決して止まらない。
スーパーヒロインがあげていいものではない激しい絶叫が、その威力を物語る。
ゲッシーもワルターに何度も体当たりを仕掛けて、その攻撃の妨害を図るものの、
元よりゲッシーにワルターと戦う力が備わってないこと以上に、
何者かによるステータス改竄が影響しているからなのか、
ワルターはやはりビクともしない。
「タキオン!もう耐えるのはやめるんだ!死んだ方がマシだ!」
冗談のような発言だが、リポップ装置がある以上、この言葉は文字通りの事実となる。
ワルターの様子も明らかにおかしく、普段とは状況が違うのは間違いない。
少なくとも、タキオンの心臓が本気で止まるかもしれない程度には。
それでもなお、焼き切れそうな体でなんとか耐えつつ、
タキオンは脱出の機会を狙う。
「ヨシノ!!」
ゲッシーも思わず、草之根ヨシノの名を叫ぶ。
ルミナキャストと言う番組の枠組み以上に、目の前の少女の痛ましい姿に、
我慢ならなくなったからに他ならない。それでもなお、
草之根ヨシノは
そんな中、タキオンは自分の姿の不自然さに気付く。
粗い四角形で覆われた自身の視界。もとい、タキオンの姿が四角形に覆われているのだ。
「えっ!?何このモザイク!?」
「多分、見た目がヤバいからそうなってるんだ!!」
いつの間にやら。タキオンの傷付いたその姿を隠すため、
配慮のためか、モザイクが覆い隠す。このような状況の中でもなお、
ワルターの攻撃は止まらない。一瞬の困惑が勝ってもなお、
それを上書きするように、容赦ない攻撃は続く。
「ヨシノ!!もうやめるんだ!!」
それでもなお、今まで培ったルミナキャストの力をもって、
タキオンはその命を繋ぎとめる。この電撃を耐え続けるということは、即死級の苦痛に対し、
フル稼働の魔力をもって、首の皮一枚でそれをひたすら受け続けてるに他ならない。
モザイクに覆われ、けたたましい絶叫を放つ姿。悲痛を通り越し、コントそのものだ。
そんな滑稽な様を見て、視聴者が喜ぶはずはない。
それでもなお、ルミナタキオンは──草之根ヨシノは、
逃げることは選ばない。どんなに無様でも、諦めない方がかっこいいから。
「がんばれ」
誰の言葉かと思ったら、僕だった。ゲッシーはヨシノを応援した自分自身に驚愕する。
こんな無様な姿に本気で心を動かされたのだ。文字通りの死んだ方がマシな状況。
それに耐え抜こうとする、彼女の在り方に賭けたくなった。
「ルミナキャストとかそんなの関係ない!ヨシノ!!生きて勝つんだ!!」
地球時間にしておよそ10分後。バッテリーが切れたように、
ワルターの攻撃は停止する。それと同時に、満身創痍のタキオンは、
そのまま膝から崩れ落ちる。既に意識はない。すぐさまその体を支えに近づいたゲッシーは、
確かにその息があるのを確認し、思わず安堵するものの、
この状況ではなす術もない。その時である。
「待ちなよ、ケミンパ!せっかく来たんだから、もっと目立たせて!!」
唐突な乱入宣言。それと同時に、タキオンの傷がみるみるうちに癒えていく。
あざとーである。目を丸くするゲッシーも、一息置いて、
彼女が何をしたのか気づいたか。アッと声を出したのち、合点。理解する。
「私の方の予算、使わせてもらったよ!」
スペースコロニー風のライブ会場を展開した行為と方向性は違うものの、
類似技術の応用である。あざとー側の介入により、タキオンのステータスを制御し、
その傷を癒したのだ。
「つまり、今のルミナタキオンは私の配信チャンネルのルールで動いてるわけ!」
そのまま立ち上がったタキオンは、ルミナステッキを構え、
思い切り力をこめる。こんな弱いワルターに、タキオンフィールドは必要ない。
あざとーもそれには同感と言うところか。二本の腕を組み。もう二本の腕を腰に当て。
うんうんと頷くも、それだけでは終わらない。構えるはマイク。
「あざとーさんの歌に乗せて!ルミナライトアップ・リミックス!!」
放たれるルミナライトアップの光は、あざとーの歌声と混ざり合い、
虹色のスペクトルを纏う。そのままワルター目がけて突き抜けて、
輝く光がそのまま弾け、あたり一面、煌めく光が覆い尽くした。
ルミナライトアップが、正真正銘のイルミネーションとして、
ルミナタキオンとあざとーを照らした瞬間である。
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「番組のバランスが崩れたせいで、ハッキングされたと言うことか?」
「そうみたい」
山田空港のベンチで、ゲッシーとESGは語らう。
ゲッシー達が行う文明介入には、相応のエネルギーを要する。
裏生徒会やワルター・オリジンの白紙化といった行為が立て続けになされた影響で、
過剰な改変が起こり、本来ならあり得ないステータス改竄を許してしまったのではないか。
それが「裏方」による推測である。
「犯人を見つけるのも後になりそうだけど……参ったなあ」
「いずれにせよ、草之根ヨシノをあまり振り回すなよ」
部外者の言うことではないかもしれないが。ESGはそう付け加えつつ、
ゲッシーに釘を刺す。その心配はないよと、ひょっこり顔を出すのは、
先程助け舟を出した、けみかる・あざとー。
「ルミナタキオンが生きてて良かったってワンワン泣いてたもんね」
「言うな!!」
ワルターとの戦いの直後の恥ずかしい姿を、惜しげもなく暴露する悪戯っぷりに、
涙を流した当事者も思わず怒り出す。ESGの方はと言うと、
一回の涙くらいでそうそう変わるものだろうかとため息をつくばかりだが。
「しかし……いずれにせよ、あの少女ならどうにかなりそうだな」
遠間も遠間から、ESGが眺めるその先。少し前まで死にかけていたとは思えない、
ひとりの少女の姿がそこにある。ようやく始まったオヤマダのリアルイベント。
今度はルミナタキオンではなく、ただの草之根ヨシノとして。
待ちに待ったパフォーマンスを、同じく集まったファンと一緒に共有する。
私、草之根ヨシノ!
ゲッシーが私を心配して、「追加戦士」を相棒にしようと考えた!
だけど、こんな危ない戦いに巻き込める子、そうそういるわけないし、
何より巻き込みたくもないというか……
いた!?
私もゲッシーもビックリするような、とんでもない戦士が誕生する!!
次回、「誕生!新戦士・ルミナバリオン」
届ける想いは光を超える!