【クソアニメ攻略系バトルコメディ】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!? 作:砕(サイ)
「魔法素粒子界から『奴』が来るか……フフフ」
「ええ。私としては不本意だけどもね」
闇
ムジカントムとエゴシックが語るは、彼らが同胞。
ペルソナクスの「団員」が、魔法素粒子界からヨシノの地球、
物質界へとやって来るのだと言う。なにも、破滅劇団は、
今いる三人で構成されているわけではない。ムジカントム、エゴシック、
そしてハラガヘッタ。ルミナタキオンが彼らを倒すだけではまだ足りず。
まだ見ぬ幹部を含めて決着をつけねば、世界に平和は訪れない。
「フフ……なんか一人忘れている気がするが……気のせいだろう」
「ええ」
二人は互いに目を逸らす。派手な着物の女がいた気がするが、実際問題、
いるはずの彼女は影も形もないのだ。いなかったのだろう。
余計なことを考えるよりは、今は目下の厄介ごとの処理。
ルミナストーンの回収と、ルミナキャストの打倒である。そして──
「我らが団長の野望。それを果たすまでだろ?フフフ」
「そうね」
すかさず左の手の甲を顔にかざす、ムジカントムとエゴシック。
この短いやり取りの中でも、ペルソナクスの象徴たる、
顔を覆う仮面を現したポーズは欠かさない。こんな構え今まであったか?
と両者の肌が言葉を交わすものの、その所作に曇りはなく、二人の表情は涼しいばかり。
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「追加戦士出そう!」
夏服に袖を通す最中、ゲッシーの唐突な提案にヨシノは目を丸くする。
追加戦士と言ったらそう、特撮や変身ヒロインの番組において、
途中で加入する新レギュラー。ヨシノの立場で言えば、
同様のアイテムを持つことで、変身を果たす「二人目」ということだ。
「追加戦士って…そんな『出そう』って出すものなの?」
ヨシノの疑問もごもっともである。普通、こういった番組においては、
もっと「必然性」を持った上で丁寧に仲間入りさせるものであって、
天気雨のように突然降って湧いてくるものでは断じてない。
「グッズも売りやすいしさ。地球じゃそういう商法がベターなんだろ?」
「そんな数字で決めるものじゃないよ。もっと文脈みたいなものがあるの」
いくらなんでも物語性を省略しすぎだと呆れる他ない。
これなら物語作りの経験もないような、
テレビの前の子供にプロデュースさせた方が、
まだ血肉の通ったストーリーが作れるだろう。
大学を出てこれではペット止まりも無理はない…と思おうとしたが、
ゲッシーに気を遣い、考えなかったことにした。
「それに戦いやすくもなるでしょ?この前みたいに雑魚キャラにやられるのはごめんだよ」
ゲッシーもゲッシーなりに真剣なのだろう。
スポンサーに話は通したので問題ないと語りながらも、
ヨシノはそう言う問題じゃないと言わんばかりに怪訝な表情をするが、
「戦いやすくなるのはそうかも」
と、一言返す。得意になって語り続けるゲッシー。
しかしながら、ヨシノはヨシノで他人を危険に巻き込む事をよしとしない。
そうした流れで、しかめっ面で互いに掛け合う二人。
そんな無言の議論はひとつの結論を導き出した。
「強い女の子?」
いつの間にやら、収まる先は教室の机。部屋から学校。
場所は変われど、ヨシノの考えることは変わらず。「追加戦士」である。
性格が合わない子だったら嫌だなあ…。あたかも、
クラス替えや席替えで面識のない誰かと隣になるような、
そんな世俗的な距離感で彼女は物思いにふける。
「聞いたわよ。リーク。バリオンよね」
「やかましいわ!」
そんな心中の黄昏に割り込むのは、やはり
追加戦士なる存在は、宇宙単位では意外と見受けられない珍しいもの。
宇宙のSNSのルミナキャスト・クラスタでは、あることないこと、
追加戦士の噂で大いに盛り上がっているのよ。賢界は嬉しそうに、ヨシノに話す。
「そ……そんなこと私に言われてもね」
期待するのはいいが、ヨシノの立場はルミナキャストの視聴者ではなく、主演そのもの。
悪気がないのは分かるが、好き勝手予想されたところで気が気でないのである。
ワルター・オリジンなる設定を勝手に付け加えられたのだから尚更だ。
「バリオンの活躍は、実際に見てくれないと」
ついでに、あまりリーク情報で盛り上がりすぎない。
はしゃぐ賢界に、ヨシノは釘を刺す。いくら前情報があったところで、
正規の放送を見てもらわない限りは、何も分からないのだ。それに、
実のところ、追加戦士が「誰」なのかすらまだ決まってはいない。
「ルミナバリオンに変身できるくらいの、強い子かあ……」
ヨシノが戦いに興じられる資質の少女をパートナーに求めたのは、
純粋にルミナキャストという世界に巻き込まれる事を危惧したから。
置かれた状況の馬鹿馬鹿しさと苦しさは、彼女自身が一番理解している。
一方、ゲッシーが同様に「強い女の子」を提案したのは、
追加戦士のコンセプトにも
ヨシノが変身するタキオンが汎用性重視なら、これから現れる戦士の扱える技は、
より火力重視。パワーに寄ったものになるという。
「(タキオンフィールドと同じ技が使えるわけじゃないんだね)」
心の内で、そのまま名前をスライドさせた「バリオンフィールド」
……とはならないのだろうと、朝方のゲッシーの説明を思い出しながら考える。
「私が変身してもいいんだけど?」
「丁重にお断りさせていただきます」
思わぬチャンスに気付き、賢界は目を輝かせるも、ヨシノは即座にNOを出す。
確かに賢界は強いには強いものの、それは「我」やヨシノへの愛の強さであり、
ルミナキャストとして戦う強さではないだろうと、この場で否定する。
それに、番組ジャックの件を考えると、下手に力を手にしたら何をしでかすか分からない。
そんな不安要素もある。せっかくの機会。賢界としても譲りたくはなかったのか、
ヨシノさんのケチ!と眉の角度を下げながら、唇を縮こませつつも軽く文句を言うも、
「そんな顔をしてもダメなものはダメ!」
彼女を叱りつつ、第二のルミナキャストを捜すためにヨシノはその場を立ち去った。
当たり前に賢界も付いてきたのだが。無意識に、先程の賢界と同じ表情をしながら、
彼女の押しの強さに呆れるヨシノである。
「たぶん、この学校で捜すことになるんだろうけど……」
ヨシノがゲッシーに課した条件は、「騙さない」こと。
間違いなく痛みは伴い、理不尽に振り回される、過酷な状況。
なるべく自発的に戦いに身を投じるような存在を見出さない限りは、
ヨシノも首を縦には振らないとハッキリ宣言した形となる。
「でも、そんな子いるのかしら?ヨシノさんだからこそ、戦えたようなものよ」
あくまでもルミナキャストは
ヨシノはかつてヒロイン達からもらった夢を、今度は自分が届けると決意して、
巻き込まれながらも自ら戦う決意をしたのである。同じ構造は、
そうやすやすと再現できたり、そちらから現れたりするものではない。
「宇宙のスタッフさんもその子にお給料払えたらいいんだけどね〜……」
地球の通貨で給与を振り込めないことは、賢界が一番理解しているであろう。
ヨシノもそれを承知で口走ったが、当の賢界の視線はヨシノの反対、壁の側。
貼り紙に興味があるのか。何と言わず、ヨシノの方も試しに見てみると。
◆来たれ!強さを求むる者◆
命を賭す覚悟がある者
この張り紙を剥がし、
昼休みに体育館裏まで来たれよ
戦士としての覚悟があるのならば
そなたに力を授けよう
「こんなんで来る奴があるかい!!」
あまりにふざけた貼り紙に、ヨシノも思わず叫ぶ。
ご丁寧にも、添えられているのはルミナスコープとゲッシーのイラスト。
間違いなくゲッシーの仕込みであるはずだが、これで誰が剥がすのであろうか。
一方、賢界が何かに気付いたか。ヨシノの背中を指でトントンと突き、
廊下の角に隠れるよう促す。
「誰か来たわよ。もしかしたら剥がすかもしれないわ」
「そんなことあるかな……?」
赤い色をした校章のバッジ。歩いてきたのは、ヨシノと同じ学年の少女である。
麗しい黒髪の、凛とした佇まい。見た目で真面目さってわかるもんなんだなー……。
ヨシノも同じ中学校に通う同級生の顔と名前を全て把握しているわけではなかったが、
少なくとも今の一目で印象付いた程度には、忘れられないような姿をしている。
「若林さんね。フルコンタクトの空手で県準優勝だったんだとか」
「あっ、聞いたことあるかも……」
どこで耳に挟んだかはヨシノも忘れてしまった事であるが、
強い女の子である事には間違いない。そんな彼女が貼り紙に興味を持つのだろうか。
持った。貼り紙を横切った瞬間、腕を組み視線をそちらに向けたのである。
マジか……。思わずヨシノが呟くが、それ以上に驚くべきこと。
「あっ!キミ、ルミナキャストに興味あったりする?」
ゲッシー!なんで今飛び出して来るんだ!昼休みを待たずに、
思わず飛び出してきたのは地球では到底見られないサイズの特大ハムスター。
サッカーボール大の体躯の不思議な動物に、少女・若林も思わず目を見開き、
手にかけた貼り紙を剥がしてしまう。
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「朝にゲッシーが飛び出してきた理由だけどね」
昼休み。ヨシノは賢界にゲッシーが飛び出してきた理由を語る。
ゲッシーが言うには、貼り紙に特殊な仕掛けを用意して、
女子生徒が手に掛けた瞬間に通知が来て、飛び出すようにする……
といったシステムを構築していたのだという。決して、
何も考えずに飛び出してきたわけではない。と言うのはあくまでもゲッシーの言葉。
突然、「秘密」が歩いてやって来るのだ。ヨシノとしてはたまったものではない。
「ところで……女子生徒限定なのね。男子や先生じゃダメなのかしら」
「そ、それは商売ってものがあるから……」
賢界としても冗談半分であろうが、ヒロインもので女子と男子のペアや、
生徒と教師のペアは確かにそうそう見るものではない。
いたとしても、少女や若い女性の集団の中にひとり少年や若い男性が混じるか、
指導者として大人が支える程度であろう。果たして、
男子や先生とのペアだけの組み合わせで本当に人気を獲得できるのだろうか。
それは誰にも分からない。
「ところで……若林さん、本当に来るのかしら」
「さすがに気になって来てくれるんじゃないかな……」
ヨシノと賢界。二人が物陰から見つめるのは体育館裏。貼り紙に手をかけた少女、
確か、リンゴにそんな品種あったよね……。揶揄をするわけでもないものの、
名前を引き合いに、ふと思い出したように賢界に語りかけるヨシノであったが、
早速、
ゲッシーが身振り手振りで何かを問うのが伝わる。腕を組み、
耳を傾ける
静かに耳を傾けているようだ。
「肝が据わっているわね。ゲッシーちゃんみたいな不思議な子に動じないんだもの」
「確かに……」
今は相棒として行動を共にしているヨシノとて、
その存在を直ぐに呑み込めたわけではない。登校時間に突然現れて、
その日の昼に既に話を聞くに至ると言うのは、中々の適応能力なのかもしれない。
そんな中、突如ルミナスコープからサイレンが鳴り響く。
「えっ、何これ?」
「ワルター反応だと思うわ。リークで機能追加の話があったから」
リークリークやかましいわ!ヨシノは隣の賢界を叱りつけるものの、
今はリークか否かどころではない。賢界の言葉が本当ならば、ワルター退治が先決である。
間髪入れず、ヨシノはルミナスコープのレンズから発せられる矢印状の光に導かれ、
見たこともない機能のガイドのもと、そのまま走り出す。
賢界も一緒に駆けるも脚力はヨシノの方が少しばかり上手なのか、
中々追いつけない。そんな中、ヨシノと並走するのは、
先程まで
「あ、ゲッシー!どうだった、空手の子?」
「結構乗り気だったよ!」
結構とはなんだ。騙して戦わせるつもりではないでしょうねと、
ヨシノはゲッシーに問いかけるが、それも問題ないとのこと。
痛みも危険も伴うが、刺激的な戦いを以って、実戦に身を投じられるとも。
しかし、肝心なことを言う前に、ワルターが来てしまったのだと言う。
「この戦いが本質的にはお芝居だってこと、言ってなかったんだよね……」
「それが一番肝心でしょうが!!」
ヨシノの怒号が響く中、いつの間にやら。たどり着いた先は駅前の交差点。
多くの市民が昼休みに活用する時間帯。しかしながら、
深夜帯の如く
そんな交差点の中央で、仁王立ちするはワルター。いつも以上に屈強な体つきをした、
大男の姿。そして、ワルターの眼前に立つは、
ルミナバリオンその人である。
「これがゲッシーの言っていた怪物か。相手に不足はない」
威風堂々。
そのまま吸い込まれ、制服を光に変換。そこで至るは、戦士の装束。
体を覆う甲冑に、端午の節句で見るような
戦国時代の鎧武者。
「は?」
ヨシノが思わず困惑するのも無理はない。ルミナタキオンとは似ても似つかず。
それもそのはず。実は、ルミナスコープで変身に至る際、
ルミナキャストとしての姿は個々人の資質、すなわち性格や嗜好、
あるいは意識によって定まるのである。草之根ヨシノが格闘戦が可能なフリルドレスという、
かつて憧れたヒロイン達に似た姿に至ったのも、ヒロインはかくあるべしと言う、
彼女の無意識がそうさせたのである。
「え……これどうしよう」
「こっちが聞きたいわ!」
ゲッシーも思わず呟くが、ヨシノの言う通りである。
番組製作陣も
完全に理外の領域だからである。両者の困惑のさなか、
ヨシノがタキオンに変身する暇もなく、ルミナバリオンは思い切りワルターに拳を叩き込む。
「ワルァッ!?」
「確かにこの力……人智を超えたもののようだ。試させていただく」
バリオンは、自身の姿にも一切動じない。あたかも、
その姿が正解であるかのように。カッコいい戦士って意味では正しいけど、
魔法少女としては間違ってるんじゃないかなあ……。
戦いの背後で、ヨシノとゲッシーの困惑が、内心そう話し合いながら。