【クソアニメ攻略系バトルコメディ】魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!? 作:砕(サイ)
鎧武者・ルミナバリオンが人間で言う肝臓部分に放った一撃にワルターは悶絶。
そのまま腹を抑え、項垂れたと思ったのも束の間。
バリオンの右脚が消えたと思った矢先、轟音が鳴り響く。
ワルターも堪らず。声にならない悲鳴が、バリオンの轟音と協奏した。
カーフキック──左ふくらはぎを狙ったローキックを叩き込んだバリオン。
陰から観戦し、息を呑むヨシノとゲッシーの存在などつゆ知らず。
そのままもう一発、脚部へ同じくカーフキックの衝撃を与える。
「え…これ大丈夫なの?」
ゲッシーも、あまりの絵面に困惑する。さすがの彼も、
「魔法少女はかくあるべき」といったイメージはあったと言うことか。
実際問題、今叩き込まれた蹴り一つにしろ、ヨシノのアクションとは質の違う、
破壊的な質感がどこか見受けられる。一方、ルミナタキオンとして戦う、
ヨシノは思いのほか冷静。普段から激しい戦いをしていること以上に、
自身の原体験がそうさせるのか。ふと、かつて視聴したヒロインを引き合いに出し、
ゲッシーに対して反論する。鎧武者はヤバいけど、と前置きはしながら。
「これくらいならよくある事だよ。私が見てた番組でもこれくらいガチな事はあったし」
などと、視聴者目線のレクチャーをしたのも束の間。
ヨシノのフォローをも遮るように、ルミナバリオンは次のカーフキックを叩き込む。
二発、三発。 ひたすら打ち込まれるは、
たまらず体勢を崩すワルターであったが、それで満足するバリオンではない。
すかさず突進し、脚と背中を抱えたまま地面に倒れ込み、
そのまま流れるように両拳による殴打が始まった。
「こ……これはどうなのヨシノ?」
ゲッシーはワルターに跨るバリオンからヨシノの方に視線を向けるが、
さすがに彼女も目を見開くばかりである。これもありがちなのか、と
尋ねるゲッシーに答えるはヨシノ。
「あ…あれはさすがにガチすぎるって言うか…あれじゃ"総合"だよ!」
魔法少女とはいうものの、肉弾戦を伴う作品は古今東西存在する。
ルミナタキオンもそのような存在ではあるものの、タキオン本人である
ここまで思い描くヒロインの像と異なる様を見せつけられては、驚愕せざるを得ない。
パウンド──すなわちマウントポジションからの拳の連打は一通り終わったが、
バリオンはそれでも満足はしない。そのまま腕に全身を絡ませ、
思い切りワルターの腕関節を伸ばし、悶絶させる。
「なにこの絵面!?」
腕ひしぎ十字固め。柔道などで用いられる関節技である。
バリオンは腕ひしぎの姿勢のまま、そのままワルターの腕部を固め、
決して逃がさない。そして、戦いに集中しているが故か。
思わず叫んだヨシノの声も聞こえていないようである。
「ワ゛ッ……」
倒れ込んだまま、ワルターは体を維持できず、そのまま黒い霧となり、
消滅した。ヨシノが知る限りでは、純粋な肉弾戦でワルターが敗れるのは初のことである。
黒髪の少女の姿へと戻り、腕を交差し、一礼する。
「押忍!」
振り向いた先。
自身と同じ制服を着た少女。この奇妙な状況を見られてはまずいと言うのは、
誰であっても共通項なのか。初対面も同然ながら、
ヨシノと
「私以外にも、戦士はいたと言うことか……」
「伝えてなかったの!?ゲッシー!!」
なにぶん、伝える前にワルターが来てしまったのだ。
ゲッシーとしても不本意だったようである。言葉にせずとも、
少なくともその表情で語りかける。それはそれとして、
戦いに巻き込むには説明不足すぎやしないかと、ヨシノは少しキツめに睨みつける。
「あまり怒らないでやってくれ。ゲッシーにも時間がなかったんだろう」
事情を知らぬが故か、あるいは性分か。諌めたのは意外にも、初対面である
ヨシノとしては、眼前の彼女が不本意に巻き込まれることが心配なのだが、
論《とき》としては、ヨシノの感情の意味をまだ知らぬようである。
「あっ、もうルミナバリオンの戦い終わっちゃった?残念だわ……」
背後から聞こえてきたのは
行き交う自動車や街を歩く人々の声で賑やかさを取り戻した駅前にて。
息を切らしつつ。せっかくの戦いに間に合わなかったことを賢界も残念がりながらも、
「授業に遅れるのも覚悟で追いかけて来ちゃったけど……」
この一言で、昼休みが終わりそうなことにヨシノたちは気付く。
慌てて駆け抜ける三者に、釣られて走る一匹の宇宙ハムスター。
なんとかクラスに戻ってきたはいいものの、既にグロッキー状態。
これでは午後の授業の先が思いやられると言うもの。
「ルミナキャストが好きって言うのも、色々大変なものね……」
「その好きに私は振り回されてるんですけど!?」
それでもヨシノの方は、ギリギリ物申す元気は残っていたようだが。
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今日の授業は全て終わりと、鳴り響くチャイムが生徒に伝える。
全力疾走の疲労を抱えながらも授業を乗り越えつつ。ホームルームを終えたヨシノは、
相棒として共に戦うであろう少女。
考える材料を求め、勇ましく歩く。
「話ってなに?ヨシノ」
「この前話してた空手の子のことなんだけど」
もっとも、一人で考えるわけではないのだが。料理部に所属する友人、
共通の話題は、もちろん
「へー……若林さんってゲームもやるんだ」
固有名詞やジャンル名は出さないものの。同じゲームをたまたま遊ぶというまさかの接点。
eスポーツのイベントで
という体で、もしかしたら友人になれるのではないかと、
ヨシノは
「学校の外だと空手一筋、って感じかなあ?」
ただし、漫画や動画の話題になれば、それなりに調子を合わせるとも。
ヨシノのオヤマダ、賢界のルミナキャストのように、
特定の何かに没頭しているわけではないが、共通項に付き合い、
話題に混じる程度には普通の子のようである。
「でも、ファッションとかはあんまり興味ないかも……」
「え、意外」
ファッションブランドの話題となると、耳を傾けつつも、
私はそこまで着飾らないな、と一歩退くような場面もあるのだとか。
ヨシノが意表をつかれたのも、
華やかさを見出したからかもしれない。甲冑は纏うものの。
「ところで……ヨシノも料理部に入らない?」
「いや〜、今は私も色々立て込んでるんだよね」
ガジェットって言うのかな?ここだけの話、
ある会社の新製品のモニターになっているんだよね。そう語りつつ、
ヨシノは腕時計のように左手首に巻いたルミナスコープを
突然呼び出されたりしたら部活どころじゃないし、迷惑かけるかもだから。
「そっかー……。終わったら教えてね」
さすがに、ルミナスコープを一目見て、異世界の科学の結晶、
あるいは宇宙のメディアコンテンツの目玉アイテムと想像する者はそうそういない。
ヨシノの説明に納得したのか、
保留にされた勧誘への答えを良しとする。そういえばだけど……
「最近SNSでもよく見たりするけど」
唐突な切り替えだが、これが一番重要な話でもある。
ヨシノは休日の朝にやっている、ヒロインものの番組の話題を口にする。
視聴するか否か、と言うよりも、手元のルミナスコープに対して、
これって変身アイテムみたいじゃない?などと引き合いに出す意味合いではあるが。
「若林さんなんかはあまりそう言うの興味なさそうかも」
妹につられて視聴した、などと部員が話したり、
たまたま昔観たヒロインもののアニメの話になったりと言った時、
或いはぬいぐるみやマスコットの話題になった際も、
もっともそれは、嫌いという感覚などでもないようだが。
サイレン風の音楽がヨシノの声を遮り、
鳴り響く
「ごめんユウ!呼ばれたから行かなきゃ!」
本当にこの場で突然呼び出されることがあるんだ……。
ヨシノの申告そのままの状況。
いっそ感心してしまう。
「一日に二度もワルター……!こんなの初めてかも」
駆け抜けるヨシノはルミナスコープに導かれるまま。
黒い影の怪物めがけて一直線。そのまま至るは、ルミナタキオン。
スーパーマーケットの駐車場に現れたワルターに狙いを定め、
そのままルミナステッキで馴染みの光弾・ルミナライトアップを叩き込む。
「仕事帰りの人たちもいる時間でしょ!買い物の邪魔はしないことだね!!」
さもなくば、お仕置きするよ。顔面に光を浴びせられ、
その痛みで顔を抑えるワルターへ、タキオンは啖呵を切る。
買い物は済んだ。そう反論するかのように、ワルターは覆った両手を振り払い、
片手にフライパン。もう片方の手にフライ返しを持ち、
臨戦態勢へと至る。よくよく見たら、どこか獣じみた容貌に相反して、
律儀にエプロンを身に纏っている。
「私を料理しようって感じ……?」
誰もが行う「日常」であっても、或いはそうだからこそ、不安や不満は生まれるもの。
おそらくは、料理を作ることへのストレスが生んだワルターなのであろう。
今にも材料にされそうなタキオンも、炒められてたまるかと、少しばかり苦笑いをする。
「もしや……その黒い影は昼間に戦った者の仲間か何かか?」
そんな中。背後から聞こえてきた声は、昼間にルミナバリオンとして戦った少女。
会話をロクに交えていない初対面に毛が生えたような状態ではあるものの、
ルミナタキオンとして彼女に出会うのは、尚更初めてのことである。
そして、
「その格好……それで本当に戦えるのか?」
タキオンを指してそう言ったのは明白。
言われてみれば、ドレスのような格好で怪物に挑むというのも、
奇妙な話であることは間違いない。
純粋な疑問として目を丸くしているようだ。
「当たり前だよ!私はスーパーヒロインだもの……なんてね」
ルミナタキオン──草之根ヨシノとしても、魔法少女、
あるいはバトルヒロインとしての姿を疑われるのは少し意外ではあったが、
彼女は夢を届けるために戦い続ける立場。少し照れ臭そうに最後の文言を付け加えるが、
この姿こそ正装。恥じることのない、紛れもなく戦士の装束なのである。
しかし、
「ひろいん……?」
あたかも一度もヒロインたちが戦う番組を観てこなかったような、そんな反応。
嘲笑するでもなく、困惑するでもなく。ただただ彼女の辞書に、
その単語が存在しないかのような表情で、首を傾げたことで、タキオン──もとい、
ヨシノは気付く。
「ヒロインもの、観たことがない!?」
まるで、ではなくそのもの。そう。
かつて幼少期にヒロインものを視聴した「原体験」が存在しないのだ。
私、草之根ヨシノ!
ルミナバリオンとして私と一緒に戦う女の子、若林論。
この子は私と違って、ヒロインものを全く知らない!?
ルミナキャストとしてやっていくには、どうすればいいんだろう……
そんな事を考える中、ペルソナクスがワルターの他に、新たな技術をひっさげて、
私たち二人に襲いかかる!
次回、「ペルソナクスの新境地!暗黒舞台・フテージ」
届ける想いは光を超える!