魔法少女演ってます ~魔法素粒子ルミナキャスト~ …のショー!?   作:砕(サイ)

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第4話「ヨシノの休日!ストレージに眠る叡智」 Bパート

「‭あ、ヨシノもパカッチやんの?」‬

 

カードコーナーのストレージ。大した値段のつかない、

価値で言うなら雑多なカードをひとまとめにしたコーナーである。

もっとも、性能やカード間の相性に関して言うならば、

有益なカードが転がっているのもまた、ストレージと言える。

 

「いやー順くん…私はやらないけどさ」

 

パカッチカードバトル。元々は、児童向け雑誌の漫画、

「パカッチ!オープンファイト」から発展したカードゲーム。

自分の持っている才能をパカッと開放、

というコンセプトのアクション作品が原作となる。

既に5年ほどの歴史があり、小中学生の間ではそれなりのシェアを得ているのだ。

 

「そっかー、凪も興味ねーしな」

 

少し残念そうな、凪の弟。

今回参加する大会のように、手合わせの機会はあるものの、

もっと多くの対戦相手に飢えている様子だ。

学校の同級生だけでは物足りないのだろう。

姉に対してカードバトルを試みたい、といった様子からも見受けられる。

しかし、今のヨシノはそれ以上に飢えていると言っていい。

 

「先にマニアとかコレクターに取られたら終わりだからね、ヨシノ」

「大丈夫だよ、こういうのって知らないカードはむしろ無視すると思うし」

 

奇妙な小声、ヨシノの一人芝居のようなやり取り。

姉の友人である、昔馴染みの年上の少女。

順は不思議そうに、彼女の呟きに首を傾げるものの、

それどころじゃない、そろそろ試合だとそそくさと去っていく。

頑張ってねー、と声援をかけつつも、ヨシノはゲッシーとともに、

改めてストレージを漁る作業に移っていく。

 

「私の趣味じゃないわね」

 

ヨシノと同じくらいの背格好のシルエットが呟く。

カード型のルミナストーンを探すのに夢中になっている最中。

いつの間にやら、隣でストレージの中身を探す少女がそこにいた。

 

‭「うおっコスプレ…?」‬

 

‭特異な格好。その視界に飛び込んできたのは、‬

‭モノクロのゴシックドレス。非日常に驚くヨシノ。‬

‭見知らぬ少女に対して思わず無礼な発言を口走ったものの、‬

‭幸い、ヨシノが発したノイズは聞こえていないらしい。‬

 

‭「見つかんないわね…」‬

 

‭一見すると、ヨシノや凪と同世代の少女。‬

‭ファンタジー世界から飛び込んできたような、その格好。‬

‭そんな彼女がストレージコーナーで、‬

‭目当てのカードを漁っているのだ。‬しかし、

丁度いいカードが見つからなかったのか。

匙を投げ、その場を去るゴシックドレスの少女。

 

「‭魔法少女とかも好きなのかな、あの子…」

 

ルミナタキオンに変身する身。こんな事を疑問に思うのも、

着飾る者同士、どこか親近感を覚えたからである。

ヨシノは心の片隅で、奇抜な格好の少女との再会を期待する。

そして、エスカレーターを降りるゴシックドレスの少女の一言。

 

「別の店のストレージかしら、ルミナストーン…」

 

歌劇令嬢・エゴシック。

言葉こそ交わさなかったが、これがヨシノと彼女の初邂逅となる。

 

 

「負けたァァァァァァァ」

「騒ぐなバカ」

 

2回戦敗退の悔恨をその過剰なテンションで表現する順に、叱る凪。

ヨシノの方も、目当てのルミナストーンを見つけられず意気消沈。

別の店に行くか否かと、次の予定を立てる三人だが、一匹だけは様子が違う。

 

「多分いるぞ…ペルソナクス」

 

タブレットと睨み合い、ワルターの反応を確かに確認するゲッシー。

先日のリクルートスーツ・ワルターと比較したら、はるかに微弱な信号。

それが何を意味するかは、ゲッシーとしても未知数ではあるものの、

ヨシノに対して、緊張を促す。

 

「予定調和なんでしょ?なんで分からない風なの、ゲッシー」

「僕だって何から何まで知ってはいないんだよ」

 

僕もまた、魔法素粒子ルミナキャストという番組を構成する一つの歯車に過ぎない。

ペルソナクスも、決して負けるために戦っているわけでもない。

ヨシノが無条件で勝つようなシナリオでは決してないし、

それ故に全力で戦わなければならない。その為に相棒の僕がいる。

ゲッシーは自分の立ち位置を、こう整理する。

 

「うんこ!」

 

そのような内緒話を続ける中、いつの間にやら、

順が先程見せた排泄物のカードを見せびらかし、

同世代の少年たちと笑い合っている。さすがに、

ここまで人数が多いとゲッシーを秘匿できないと焦るヨシノを尻目に、

下品なジョークに対して、ゲッシーも釣られて笑う。

ムジカントムも一緒に笑っている。

 

「は!?」

「フフフ…安心していいぞ」

 

ご丁寧にも、順がハマっているカードゲームの登場人物のコスプレで

この場に現れたムジカントム。店内の等身大POPとお揃いだ。

こんなバレバレの姿で現れて、怪しまれたらどうするんだ。

そうヨシノは心の中で咆哮する。そして、ムジカントムの言う、

「安心」とは何だと考える前に、周りの人々が意識を失う。

以前、その断片がムジカントムの口頭でのみ語られた、

ワルターの製造工程の実演。倒れた人々の体から、

暗い影が噴き出す様がヨシノの目に飛び込む。

レンタル店にいる従業員や客。その全員の心を素材に使う。

それを一つに集約させ、一体のワルターを作るつもりのようだ。

 

「総じて、人付き合いというものはストレスが付き物だ」

 

ムジカントム曰く、楽しい趣味ですら、他人に気を遣ったり、

勝敗があったり、欲しいものが手に入らなかったりと、

大小はあれども心の動きは生じる。仕事や学業は言うまでもない。

そんな心の揺れを触媒にして、人の剥き出しの心を無理矢理引き出す。

それにペルソナクスの仮面を付ける事で、ワルターは生まれる。

 

「フフフ…心理学で言うシャドウだが、俺もよくわからないぞ」

 

情けない自己申告はいらんわ!ヨシノは内心叫ぶものの、

それ以上に大事なのは、凪と順の心までワルターの材料にされた事。

ムジカントムの言う「安心」とは、友達の心を使ったから、

意識のないお友達にルミナキャストの姿がバレる心配はないぞ?

と言うことか。ヨシノにとっては余計なお世話だ。

今回はいつもよりも容赦しないぞ、と彼女の表情は語る。

ゲッシーに案内されつつ、本来なら入れない屋上までの通路に誘導され、

ヨシノは走る。ワルターの狙いはあくまでルミナキャスト。

誰もいない場所で戦う方が安全といった寸法だ。

 

「あと、ヨシノ!ちょっと先行ってて!」

「先?」

 

何かを確信したように、走りながら自身のタブレットの画面に頷くゲッシー。

また妙な仕込みを始めたりしない?変身を完了しつつも、

白い目で相方を見下ろすルミナタキオンだが、今は緊急事態。

他の客は勿論、凪と順の精神を解放し、救うことが最優先。

そのまま屋上へ、一直線で駆け抜ける。そして青空の下。開いた扉からワルターが入場。

待ってましたと言わんばかりに、少し先に待っていたタキオンは構える。

 

 

‭ゲッシーが屋上まで駆けつけたところ、

既に戦闘は進行中。建物そのものを破壊するような、

ワルターのその質量。踏み付けをその両手で支え、

思い切り踏ん張り、耐えるタキオン。そして、亀裂の入るレンタルショップの外観。

 

「タキオン!ワルターを倒せば建物も直る!番組側でこっそり修理するから」

 

そういう事は後で言え!

いちいち声を出しはしなかったものの、

ゲッシーの余計な追伸に思わず腹を立てる。

しかし、今にも押しつぶされそうなその状況。

 

「奥義!ゲッシードリフト!」

 

間一髪。先日、机の隙間に潜った時の如し。ゲッシーは、

目にも止まらぬスピードでタキオンの足元に潜り込む。

その勢いのまま、テーブルクロスに食器を乗せて布を引っ張り抜く芸当のように、

タキオンをワルターの万力から脱出させた。

 

「ありがとうゲッシー!助かったよ」

 

初めてまともに役に立ったねと、さりげなく酷い事を言いつつも、

タキオンはゲッシーの救援に大喜び。そしてゲッシーは喀血。

あまりにも唐突なリアクション。血を吐き出したゲッシー曰く、

体への負荷が大きすぎるため多用は出来ないらしい。

 

「そんな技封印しときなさい」

 

絵面がおぞましすぎるだろう。これでは視聴者を怯えさせてしまうと、

ゲッシーの無茶を封印するよう叱りつけるタキオン。

そして、複数の人間を取り込んだが故に、普段以上の重さを成しているのだろうと、

血をその手で拭い取りつつ、気を取り直したゲッシーはワルターを分析する。

臨戦態勢でありつつも、傷付き、疲労した二者の様子。

逃走でもされたら困るなと、ムジカントムは気を引き留めるための手段に出る。

 

「フフフ…どうだ?このカードは。レアだぞ」

 

見知らぬカードを胸ポケットから取り出し、見せびらかす。

ムジカントムが持つそのカード。宝石のような装飾、

赤いルビーのようなコーティング。テキストなども無く、

どう見てもゲームに使えそうな代物ではない。

 

「あれがルミナストーンだ!タキオン!」

 

古文書に記された予言に相反して、

ムジカントムに先を越される事態に。

慌てるゲッシーだったが、タキオンは意外と冷静。

ここで臆しても仕方ない。ワルターを倒して、

なんとか自分たちのカードにしてしまおう。

 

「それにさゲッシー…あの予言、思い出してみて」

 

とある日曜日のレンタルショップ

女子中学生とハムスターのような魔物が

カードショップのストレージコーナーに

紛れているルミナストーンを見つけるだろう

 

ストレージコーナーに紛れているルミナストーン。

それをヨシノたちが発見すると記されている。

ムジカントムが女子中学生やハムスターという事実はない。

だから、予言が外れたのではなく、その内容は終わっていないだけ。

つまり、最後に見つけて、手に入れるのは私たち。

 

「そのカードは私たちがいただくよ!ムジカントム」

 

自分たちがストレージで見つけずとも、

カードコーナーの中に眠っていたカードを手に入れたら、

結果は同じ。予言を遂行すると意気込むタキオンに、

所詮、屁理屈だろうとムジカントムはいつもの調子で嘲笑う。

 

「ストレージ?だが…俺が黙って帰ったりしなかった理由は分かるか?」

 

この男がわざわざカードを見せびらかしたのも、

単なる見栄や自慢の類ではない。元より、

ルミナストーンを賭けた決闘を行うつもりであった。

タキオンを始末するという目下の目標こそあれども、

こっそりストレージからカードを抜き取るか、

買って帰るのはスマートではない。

 

「いわばカードを賭けた決闘だぞ?ルミナタキオン」

 

もっとも、カードを使うことはあるかもしれないぞ?

と、手に入れたアイテムを活用することも申告する。

必ずしも対等の決闘を挑まないのもまた、ムジカントムという男のようだ。

そして、タキオン側にも秘策がある。

 

「新技、見せてあげる!」

 

今まで存在すら知り得なかったはずの、新たな技を行うための所作。

ヨシノのようなルミナキャストが突然それらを見出すのは、

特定のタイミングでルミナスコープのとある回路が動き出し、

使用者の脳にアクセス。技の記憶を植え付けるためである。

その名も新技、タキオンシフト。

 

「フフフ…いわばスピード技か」

 

体格の優れた格闘家でも、徒競走では短距離ランナーには敵わない。

突如ワルターの背後に現れ、そのまま思い切り延髄蹴りを叩き込む。

そのタキオンの速度に、ムジカントムは興味を持つ。

 

「行くよ!更にタキオンシフト!」

 

タキオンシフトの名を宣言する前に、屈み、腰を思い切り捻る。

そして、高らかにその名を示したと同時に光瞬く。

今度は側面から、ワルターの脇腹を狙った一撃。それでもなお、

タキオンの攻撃は怪人の痛覚に訴えかけない程度の威力しかないようだが、

一方的に翻弄されるがままのワルター。オイ、そこの魔法生物。

動的な膠着状態の中、ムジカントムはゲッシーをそのように呼びつつ、‬

‭ルミナストーンの持つ力について、一つの確認を行う。‬

 

‭「"宝石型"以外には様々な効果があるのを知っているな?」‬

 

‭宝石型。すなわち最初に見せた、‬

‭ルビー風のルミナストーンは純粋なエネルギー。‬

‭動力やパーツとしての運用が前提となる。‬

‭ルミナスコープはその一例と言える。‬

‭一方、今回のカード型のような、‬

‭宝石以外の形を成したルミナストーンは、‬

‭それ単体で何らかの力を持つ。‬

 

‭「ここひとつ…ワルターに発破をかけてやるか」‬

 

ムジカントムのカードが光った矢先。ワルターの体が炎に包まれる。

一見、自分から火だるまになったような容貌だが、

特段苦しんでいるようには見えない。ゴリラのようにドラミングを行うなど、

むしろ活力に満ち足りている。

 

「まずい!これじゃあ触れない!」

 

炎など触れたものではない。肉弾戦から遠距離戦。

光弾・ルミナライトアップでの戦いに切り替えようと、

素手の状態からルミナステッキを呼び出そうとした瞬間、

ワルターは口から巨大な火球を吹き矢のように思い切り飛ばす。

 

‭「うおヤバ!」‬

 

‭脊髄反射の叫びとともに、体幹を逸らして‬地面に手を付くタキオン。‬

‭ブリッジの姿勢で、見事光線を回避する。‬そのまま定位置を作り、

距離を取りながら戦うのかとゲッシーが予想したものの、なんとタキオンは、

‭そのまま地面をスターティングブロックにして、

掌でクラウチングスタートを行う。‬

‭屋上に叩き込んだ衝撃。天井に穴を開けるかのような、

掌をスプリングにした反動で一気に距離を詰めた。‬

 

「ルミナライトアップ!」

 

至近距離での光の弾丸。ひとたまりもないのか、ワルターも顔を抑えて悶絶。

そのままルミナステッキを消し、タキオンシフトで距離をとる。

やはりそうかと、ムジカントムは仮面越しに顎に手を当て、嘲笑う。

 

「タキオンシフトはいつでも使えるわけじゃないんだろう?」

「!」

 

タキオンシフトとは、ルミナタキオンがその肉体を光に変換し、

そのまま質量に囚われない高速移動を行う技である。

ムジカントムは何の説明もないままそれを見抜き、

同時に構造的な脆さを指摘する。その一つは消耗の度合い。

 

「お前…普段と比べて息が上がっているな」

 

ワルターが炎の弾丸を連射し、捌ききれないと悟ったタキオンは、

タキオンシフトを織り交ぜつつも、回避に特化する。

しかし、ムジカントムはその節々で見受けられる彼女の顔色と呼吸を見逃さない。

全力疾走を繰り返すような疲労感。ヨシノの身近な例で喩えるなら、

敵陣でシャトルランを繰り返すのがタキオンシフトである。

 

「そして、ルミナステッキを使った技とは同時に使えない」

 

高速移動《タキオンシフト》で回避をしながら、光弾攻撃《ルミナライトアップ》を使えばいい。

それを行わない。そして、タキオンシフトを使用する際は必ず素手。

つまり、ステッキを持たないことこそが使用条件、技の限界ではないか。

そう分析するムジカントムに、タキオンはわずかに顔を歪ませる。

 

「だけど、ルミナライトアップには弱いんでしょ?」

 

引き攣った顔を、すぐさま自信に満ちた笑みに切り替える。

新技の弱点を指摘されても、タキオンは怯まない。

このやり取りの間も、暴力的な火の玉が雨霰《あめあられ》のように降り注ぐ。

全弾を回避するものの、限界を迎えるのも時間の問題。

それでも、諦めたら友達とその弟は助けられないし、自分を応援しているであろう、

視聴者のみんなは喜ばない。故に、タキオンは動き続ける。

 

「そっちの方は疲れてないの?ムジカントム!」

 

荒い呼吸で啖呵を切るタキオン。しかし、どこ吹く風とムジカントムは嘲笑う。

ルミナストーンで強化をしている以上、普段のワルターとは違う。

ここで限界を迎えるのならば、それはルミナキャストが突然変身を解き、

ただの人間に戻るのと一緒であると。さあ、トドメを刺せ!

ワルターに対して、決着を促すムジカントム。

 

「…どうした、何故撃たない」

 

突然の機能停止。ワルターはその口を開いたまま。

先程までノンストップだった、炎の弾丸の供給が停止する。

ムジカントムとしても予想外だったのか、

攻撃の再開を求めるその所作には余裕がない。

 

‭「やっぱりそれは"贋作"だったか…ムジカントム!」‬

‭「えっ、贋作?」‬

 

ゲッシー、どういうこと?

‭‭その突然の宣告。ゲッシーによるちゃぶ台返しに、

タキオンは思わず声を出す。‬カードを手に入れた、

そう確信していたはずのムジカントムもまた、

仮面の形状を歪ませ、驚愕の表情を浮かべているかと、

タキオンが一瞬錯覚するほど困惑している。

 

「フフフ…?贋作まであると言うのか」

 

器用にも、困ったような声色で笑い声を漏らしつつ、

ムジカントムは疑問を投げかける。

僕が答える前にこれを見ろ。言葉よりも先に、

ゲッシーはカードパックをどこからともなく取り出し、

そのままタキオンめがけて放り投げる。

 

「タキオン!これを開封するんだ!」

 

ゲッシーが渡したカードゲームのパック。

これは、凡そ百数十年前、魔法素粒子界の錬金術師が遺した、

ルミナストーンのレプリカ。そして、

真のルミナストーンを指し示すカードの入ったものである。

そんなわけあるかい!と、タキオンが時代ごと破綻した在り方に対して、

物申そうとその怒号が喉元まで来た瞬間。

 

「それはさっき俺が開封したパックじゃないか」

 

予言と相反する、ムジカントムの思わぬ発言。

確かに先程、この仮面男はストレージという概念に対して、

わずかに疑問を示していたことを思い出しつつ、

タキオンはパックを開く。

 

「水色…?」

 

鈍色や錆色のような暗い色味のものの中、

サファイアのように輝くカードが目に飛び込む。

丁度、ムジカントムが持っているものの色違い。

何らかの対比関係にあると推測できるものである。

誰に言われるまでもなく、タキオンはそのままカードに思考を集中させる。

 

「ムジカントムに出来るなら、私にだってできるはず!」

 

その姿に、ムジカントムは仮面の奥で息を詰まらせる。

肉体が青い光に包まれ、それを纏うルミナタキオン。

彼女の姿を流動的に巡っているその様は、まさに流水。

水の力を得たタキオンは、そのままワルターを殴りぬける。

 

「どう?さっきと比べて効いてるでしょ」

 

先程までの全く攻撃が通らなかった姿は何処へ行ったか。

青いオーラのタキオンは、己が当身をぶつけるたびに、

ワルターの炎を弱め、鎮火させていく。

しかし、ワルターに対して打撃を与える事は叶ったものの、

怪人はそれでもなお立ち上がる。

 

「フフフ…硬いだけではない、意外とタフなところはあるんだな」

 

贋作と言う未知の情報で見せた焦りは引っ込み、

冷静さを取り戻したムジカントム。

自身の生み出したワルターの強靭さに感心するが、

一方のタキオンは全く臆せず、ルミナステッキを展開。

そのまま額にステッキを当て、目を閉じて念じる。

 

「(凪!こんな一纏めにされて、落ち着かないでしょ!?)」

 

ルミナテレパス。タキオンは草之根ヨシノとして、

ワルターの一部となった凪の心に語りかける。

自我が一遍に集約した場合、その心はどうなるのか。

少なくとも、不協和音が何重にも鳴り響くその様は、

統一された心があるようには到底見えない。

 

「ワルァッ!」

 

なんと、ワルターが自身の顔面を一発殴る。

唐突な反射行動。しかし、そんな無意識の自傷すら意を介さず。

ワルターはそのまま、力士がぶちかましを仕掛けるように、

勢いよく突っ込み、そのスピード感を更に拳に乗せるが、

振りかぶった拳の先にタキオンはいない。

 

「凪!助かるよ!」

 

直後、ワルターの顔面周辺が光に包まれ、

その熱と爆風をもって、勢いよく吹き飛ぶ。

自我の複合体である以上、凪に語りかけたところで、

説得の効果はないと考えたタキオン。

ワルターが顔面を殴ったその一瞬の隙に飛び上がり、

ルミナライトアップの光を叩き込んだのだ。

 

「フフフ…大した読みだな」

 

確証こそなかったものの、タイミングと位置関係。

それらを見事に分析しつつ、強烈な一撃を叩き込む。

ムジカントムも、それを成し遂げたタキオンの、

一連の読みの筋の良さを賞賛する。

 

「もっとも、それどころではないか…」

 

やはり贋作。当初、ムジカントムが持っていた、

ルミナストーンと思われていたカード。

それがボロボロと崩れ落ちていく中、

タキオンは一味違う技を叩きこむ。

 

「覆い尽くすは水の力!光と闇をも潤して!アクア・タキオンフィールド!!」

 

 

「必っ殺!」

「何やってんだ二人とも」

 

決着が付き、ムジカントムが撤退したのち。

背中合わせで、息の合ったポーズを決めるヨシノと凪。

意味が分からぬまま、乾いたリアクションの順。

それもそのはず、順が物心つく前の作品。

ヨシノと凪の共通項たる変身ヒロインのポージングである。

 

「動画アップしたらバズるんじゃね?」

「いやー…どうだろ」

 

それだけ、自分たちの所作が見事だと自負する凪。

ヨシノも内心、見事なコンビネーションと自惚れるものの、

一般人の少女二人が、ポーズ一本で勝負したところで、

画面越しの観衆を沸かせるのは無理難題だろう。

そうだそうだと、順もヨシノに同意する。

 

「二人ともそりゃないっしょ~」

 

そんなやり取りの最中。ゲッシーが割り込み、

こっそりヨシノと打ち合わせる。

今回、古文書の通りには行かなかったものの、

重要なヒントは確かにあった、と。

だから、絶対今日のことは徒労ではないとヨシノを励ます。

 

「きっと、パックを開けていく中で見つかるさ!」

「…もしかして、これも商品として売る算段だったりする?」

 

今回の戦いのアイテムも、自分の知らない宇宙のどこかで、

実際にグッズとして売っていくのではないか。そんな疑念のもと、

ヨシノはゲッシーの調子のいい発言に気の抜けた反応をする。

一見したら奇妙な一人芝居。そして、改めて凪との日常の顔に戻ったヨシノは、

凪の放った一言に少し戸惑う。

 

「ヨシノ…なんかちょっと夢を見た気がすんだわ」

 

日頃の疲れからか、僅かに意識が飛んだ時。

自分がポージングを決めたヒロインになったものの、

一方的にやられてしまう。しかし、最後の最後に、

相方であるもう一人のヒロインが自分を助けてくれた。

そんな夢を見たのだと言う。心当たりが大いにあったヨシノは、

なんとか夢であることを強調しようとするものの、

最後の凪の一言で、全部どうでもよくなった。

 

「夢にこんなこと言うのも変だけど、ありがと」

「いいんだよ。夢なんだし」

 

 

時は数日前まで遡る。凪との約束を、

賢界《のりか》越しの伝聞で取り決めたその日のこと。

 

「三鳥《みとり》ン家もすげーもんな、友達でうらやましいわ」

「やましい事を言わんでいい!」

 

そんな打算で普段から付き合っているわけではない!

そう勢いよくツッコむヨシノ。

仲良くしてたら高い料理でも食べられんじゃね?

と言うのは近くの男子生徒の弁。この軽口も根拠があってのもの。

実際、賢界はヨシノの達の住む町でも名の通ったお金持ち。

それなりに知名度のある地域企業の娘である。

 

「あと草之根…最近、なんだかリアクションが激しくなってきてね?」

「そ…それは気のせいっすよ」

 

これもまた男子生徒の覚えた疑問。

ルミナタキオンとして、様々な事態に反応せざるを得なかったヨシノ。

その余波が日常生活にもにじみ出てきているのか。

不器用にも、慣れない口調で返すのも、ヨシノの焦りの表れ。

ルミナキャストの側面がバレたら色々な不利益を被るのは明白。

いつボロが出るか心配ながらも、おどけて返す他なかった。

 

「古本コーナー…」

 

ヨシノと賢界がいなくなったタイミング。

男子生徒は、賢界が伝えた内容について、一言呟く。

 

「あのバスケ部の奴、そんなこと言っていたか?」

 

凪が寝ているヨシノに伝えたかったことは、

今度の日曜日、遊びに行かないか?と言う提案。

そして、場所や内容の詳細をトークアプリで後で話すこと。

その二つだけである。




‭私、草之根ヨシノ!‬
ルミナタキオンと瓜二つの姿を持つ、
謎の存在。ムジカントムすら前座にするその力。
ペルソナクスをも超える最強最大の敵!
だけど私は、絶対諦めない!

‭次回、「最強の敵、イーヴィルタキオン!」‬
‭届ける想いは光を超える!‬

…5話でこれって早すぎるでしょ!
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