「これがスタンガン付きハーネスです、四六時中付けた上で常に行動を監視してください。万が一にも誰か殺そうとしたなら、その場で即射殺でお願いします」
「……え?」
四皇、赤髪のシャンクス。そんな大御所の男から「え?」という幼女みたいなかわゆい声が出た。それもそのはず。先程まで海賊にしては珍しい気の良い連中ばかりのスペード海賊団と宴をしていたのだが、今やそのうちのひとりが表情を無に変えて拷問器具の稼働スイッチを手渡してきたからである。
これで動揺しない方がおかしいだろう。
「…いや、これは…仲間に対して少々やりすぎなんじゃないのか?」
と、スイッチを返却して右手を前に出し「受け取れません」という意思表示をしたシャンクス。拷問器具の先に“人”が繋がっているような状況を無視する事は出来ない。それをするのはこの世界で天竜人くらいだろう。人を甚振って悦に浸るのは彼等の十八番だ。
「カイトもそう思……赤髪さんもそう思うよね?もっと言ってよ、こんなのただの動物虐待だニャ」
やり過ぎなんじゃないか?というシャンクスの意見に賛同したのは、ハーネスをつけられた上に縄やら鎖やらで厳重に拘束されている猫耳の生えた女だ。4本しかないらしい指を丁寧に1本ずつ折り畳まれ、金属の枷を被せられている。
「ネフェルピトー、おれから目を逸らすんじゃねぇ」
「…はーい」
厳戒態勢がすぎるその扱いに、女は顔をぶすっとさせて不機嫌を顕にした。彼女が少しでも動いたり、視線を船長のエースから逸らすだけで仲間達からピストルの銃口、剣先を向けられる。宴では肩を組んで笑って居た筈なのに、今じゃ強敵と対峙しているかのような雰囲気がそこにあった。
「“名前のない怪物” ……その言葉の意味を、貴方はきちんと理解してますか?」
赤髪にスイッチを渡そうとしていたデュースが前のめりになってそう言う。同時に骸骨マスクを被った男が懐から一枚の紙を取り出し、「どうぞ、デューの旦那」と彼に手渡した。所謂手配書である。ネフェルピトーは紙の音でスカルが何を出したかを察し、とんでもなく嫌そうな顔をして歯をギリギリと鳴らした。
「…カクなんて嫌いだニャ」
その手配書にはハーネスで電撃攻撃を喰らい、間抜けにも白目を向いて倒れている瞬間のネフェルピトーの写真が掲載されている。
正しくこれは嫌がらせの産物だ。勿論犯人はカクである。あの後きちんとネフェルピトーの言いつけを守り、彼はエースの情報を秘匿した。あんなクソ猫に殺されたくはないので。しかしタダではやられない。
ひとりの危険度を意図的に下げねばならないのなら、代わりに“他の危険度”を上げればいいのだ。
そうすれば帳尻が合う。
「確かに、名前のない怪物ってのはよく分からねぇが…」
デュースからその手配書を渡されたシャンクスは眉を顰める。“名前のない怪物”というのは、ネフェルピトーに与えられた二つ名だ。火拳のエースと名前のない怪物。それがスペード海賊団の札付き海賊である。特に名前のない怪物には近付くな、手を出すな、と海賊界隈では恐れられているのだ。
触らぬ神に祟りなし、奴に近付けばどんな死に方をするか分からない。
そもそも二つ名というのは本来ある名前とは別に、その人物の特徴や功績、性格を表すために付けられたもう一つの呼び名の事だ。例えば“ゲンコツのガープ”だったり、“わたあめ大好きチョッパー”だったり、“赤髪のシャンクス”というのもそれに該当する。
二つ名さえ分かっていれば、そいつがどんな顔をしていようがすぐに分かるのだ。
ネフェルピトーに付けられた二つ名は“名前のない怪物”というもの。それがどんなことを意味するか分かるか?と聞かれたシャンクスは頭を悩ませる。
怪物……ってのはよく分からねぇ生き物の事だろ?
けど、それに名前がないってーのは、なんでだ??
「……やっぱり分かんねぇ。お前は一体どんな怪物なんだ?」
むむむ、と頭を悩ませても答えが出なかったのでシャンクスは隣に立っている本人に聞いた。
「そんなの、ボクだって知らないニャ」
するとネフェルピトーはエースと視線を合わせたまま、つんと唇を尖らせて静かな声を出した。これにシャンクスは困ってしまった。本人が知らないなら、もう誰にも分からないだろうと。しかし、ネフェルピトーの返答に深い溜め息を吐いたデュースが低い声で代わりに説明をし始めた。
「おれもこの言葉の全て理解することはできませんが、マァ何となくコイツが名前のない怪物ってのは分かるんです。人の理では処理しきれない、とんでもないことをしでかす、予測不能で、コントローラーが存在してない暴走列車……とでも思って頂ければいいかと…」
「……それは、結構まずいな?」
「簡単に言えば、該当する言葉がないから“名前のない怪物”なんだと思います」
「……一応、それ持っとこうかな」
デュースの言い分を身をもって体験していたシャンクスは、彼の手からスイッチを受け取った。その時にネフェルピトーが「チッ、あともう少しだったのに」と舌打ちをしたので、年頃の女の子って怖いな……とシャンクスはしょんぼりする。
「いいか?ネフェルピトー。迷惑かけない、殺さない、言うことを聞く。この3つを復唱しろ」
「はーい。迷惑かけなーい、殺さニャーい、言うこと聞くー」
「よし!!……んじゃ、くれぐれもよろしくお願いします。赤髪の旦那」
シャンクスに頭を下げてそう言うと、エースは仲間を引き連れて冬島を出ていった。その場に残ったのは赤髪海賊団と、名前のない怪物である。
これからシャンクスはこのネフェルピトーを連れて、とある島を目指すのだ。
「……寂しいか?」
「…そうだね、ひとりぼっちになるのは久々だから」
船影が見えなくなるまで海の向こうを見続けていたネフェルピトーに、シャンクスは小さな声で聞いた。そうして帰ってきた「ひとりぼっち」という言葉に、大きく笑ってから背中をバシッ、と叩く。
「何言ってんだ、おれ達がいるだろ?」
「……マ、いいか。キミをカイトだと思えば案外楽しそうだし」
「いや、おれシャンクスだけど……」
「でも声一緒なんだよね。キミ達といる間だけ目潰そうかな」
「辞めてください……」
シャンクスは早々にこの問題児とやっていけるのかなと不安になった。しかしまだ初日だ。仲良くなるチャンスなんていくらでもある。賑わっている島にでも寄って、アイスクリームやらワンピースやら化粧品やらを買ってやればすぐに懐くだろう。女の子なんてみんなそんなもんだし、とシャンクスはこの時思っていた。
それが見当違いだったということに彼が気付くのは、もう少し先になる。
「お頭ー!!俺達も出航できるぜー!!」
「おう!!……それじゃあ行くか、頼むぜピトー」
「ウン」
■
「で?言い訳があるなら聞くぞ」
「へへ」
そもそも何故こんなことになっているのかというと、昨晩ネフェルピトーが四皇赤髪の船長室に忍び込み、“勝手に左腕を治した”からであった。
「普通にさ、カイトに声似てるし?腕ないの見たら更にカイトだって勘違いしちゃって……ほら、ボクあの時泥酔してたでしょ?出血多量で死んじゃう前に新しい腕付けなくちゃ!!って思って………えへへ?」
と、いうのが猫の言い分である。勿論これに激怒したのはエースだ。勝手に他の海賊団の船に忍び込み、あまつさえ船長室で朝まで寝転けるだなんて許されない事だ!!と、ネフェルピトーのしっぽを掴んで怒髪天を衝く。
「でもよ、お頭の腕を治してくれたんだぜ?おれ達は嬉しいけどな」
しかしそれに待ったをかけたのが赤髪海賊団であった。それもそのはず、何せ“船長の左腕を治してくれた”からだ。剣使いが利き手を失うという損失は計り知れない。日常生活にだって支障が出るし、幻肢痛に悩まされている船長の姿を長年見てきた。
そんな船長を救ってくれた“恩人”が怒られている様子など、黙って見ている事なんて出来ない。
「お頭だって嬉しいだろ?」
「いや、まぁ、嬉しいが……これ、どうやってやったんだ?」
ラッキー・ルゥという、名前からして幸運そうな太っちょの男がシャンクスに向かってそう言った。大きな骨付き肉をむしゃむしゃと食べながら頭を傾げ、彼の新しい左腕を触る。一方で数十年前に新しい時代に賭けてきた筈の左腕が戻ってきたシャンクスは、心底理解不能ですと言った顔で左腕を動かしている。
「……本当におれの腕みてぇだ」
そこに違和感は一切ない。肌の色だって同じだし、筋肉量も右腕と変わらないのだ。それは不気味な事である。まるで元からそこにあったかのような感覚さえしていた。あれほど幻肢痛に悩まされたというのに、だ。
そんなことが出来る奴なんてシャンクスは悪魔の実の能力者しか知らないが、治癒系の悪魔の実は見た事がない。
存在しているのかさえ怪しいのだ。
「勿論、その腕はもうキミの物だ。ベースにボクが前に殺した海賊の左腕を使ってはいるけど、
と、ネフェルピトーは至極簡単に言う。自分が一体どれだけの事をしているのか理解していないのだ。
これに頭を抱えたのが赤髪海賊団で医者をしているホンゴウという男と、デュースであった。医学の知識があるお陰でネフェルピトーが何を成したのかが全てわかる。
これはクローン技術を応用したものだ。
実際彼女からしてみれば簡単なことなのだろう。だがそれをたった“数時間”で完成させる技術は恐ろしい。シャンクスが死んだ様にフレグランスの香りがするお布団の中へと倒れ込んだのが朝の7時である。そして目が覚めたのは昼の12時だ。その5時間という短い時間の中で、ネフェルピトーは全てを終わらせた。
「クローン技術なんて高度な物、一体何処で学んだんだ?」
というホンゴウの疑問は最もだろう。そもそも他人の左腕をベースにしたとしても、“脱細胞化”という工程が必要不可欠だ。シャンクスの腕にする為に元の細胞を界面活性剤で洗い流し、コラーゲンなどの「
この脱細胞化だけでも2週間はかかる。
その後にシャンクスの細胞を注入しそれぞれ筋肉、血管、神経、骨の細胞へと「
そうして出来た左腕を「
シャンクスの左腕を作り、移植するという行為はどれだけ技術が確立されていようが1年は要するのである。だというのに、ネフェルピトーが実際にシャンクスの左腕を完成させるまでにかかった時間はたったの5時間だ。
神の御業と言っても過言では無いだろう。
「おれだって考えたことはあったさ、お頭の腕を1から作っちまえばいいってな」
正に空中楼閣だ。頭の中では理想とするシャンクスの腕を作ることはできるが、それは蜃気楼のようなもの。現実に持ってくることは不可能だった。
しかし、ホンゴウとて何度も考えた。
今この人に左腕があったら幻肢痛なんかで苦しんでなかったのに、と。
あの時シャンクスがルフィを助けたことは否定しない。自分がシャンクスの代わりにあの子のそばに居たなら、例え左腕を失ってでも助けただろう。隻腕の医者なんて厄介払いされてしまうだろうが、それでも子供の命を救う為なら喜んで差し出す。
それが医者というものだからだ。
「けど、どうやったって無理だ。そんなものはあのベガパンク程の技術が無いと実現出来ない。だからこれは机上の空論だった……ってのに、5時間で完成させちまうなんて……」
「ホンゴウさん、多分ベガパンクでも5時間で作るのは無理ですよ。コイツに常識は通用しませんからそう落ち込まないでください…」
頭を抱えて項垂れるホンゴウの背を、苦虫を噛み潰したような顔をしたデュースが摩っている。それもそうだろう。どう考えても5時間で完成させるなど無理な話だ。そもそも前に殺した海賊の腕をベースにするなどあまりに倫理観がないし、
あったら良いのにな……というレベルである。
「ンー、泥酔してなかったら30分くらいで作れたと思う。ボク切断された腕なら7秒でくっ付けられるし。頑張れば頭も取り替えられるかも。今度試してみようかニャ?」
夢破れて、今から歌でも歌い出しそうな雰囲気がある男ふたりにズバッと実力の差を見せつけたネフェルピトー。正しく悪魔の所業であった。しかし忘れてはいけないのが彼女はそもそも“人間ではない”ということ。加えればキメラ=アントという化け物であるし、人の心がない名無しの怪物である。
その上ネフェルピトーには“念能力”という、いつもプリキュアのそばに居て手助けしてくれている妖精のサポートがついているのだ。ネフェルピトーもドクターと力を合わせればプリキュアになれるかもしれない。
マァ、つまり彼女は色々と“レベルが違う”のである。その前にネフェルピトーはこの世界の住人ではない。つまりはバグのようなものなので、比べる必要はないのだ。
「つーかよ、人の部屋に勝手に侵入して腕治すなよ。お前は一応医者なんだから患者と話し合ってからじゃねぇとダメだ。お互いに納得しあってねぇのに治療するなっておれはいつも言ってんだろ?」
と、至極真っ当な事を言うエース。彼はネフェルピトーの船長である為、船員がしでかした失敗や問題は全て彼の監督不行届だ。今回のケースもそれに該当する。盲目の少女の瞳を勝手に治した時に、本人の意志を確認してからじゃないと治療してはいけないということを学んだと思ったのだが、どうやらダメだったらしい。
あと何回言えば覚えてくれるのか……と、彼は多大なる疲れを感じていた。最近立ち寄った島にあった本屋で猫に関する本を色々と購入して読んではいるのだが、あまり役には立っていない。
ネコの気持ち、という可愛らしい表紙の本やら、ネコ科の全て、という分厚い参考書なども買ったのだがネフェルピトーは蟻だったので通用しなかった。
「なんで目ぇ離した隙に取り返しのつかない事ばかりすんだよ。もっと猫みたいによ、机の上からコップ落としたり壁引っ掻いたりしろよ。猫だろお前」
「そんなの無理だニャ。ボクってただの猫耳付けた蟻だし」
「嘘つけ、じゃあなんで語尾が“ニャ”なんだ」
「え、多分そういうキャラ付けなんじゃないかニャ…?」
「キャラ付けって……自分の事なのに分かんねぇのか?」
「ウン…あんまり分かんない、かも…」
「そっ、か。なら、仕方ねぇか……」
ネフェルピトーは耳をペタン、と下げて困ったような顔をした。分からないのなら仕方がない、だって分からないのだから……とエースは一旦諦める。こんな事なら潰れた骨董屋の前にいた自称エクソシストおじさんから「悪魔を飼い慣らす方法」という怪しい本を譲り受けておけばよかった。
あの時は隣に居たネフェルピトーが直ぐに自称エクソシストおじさんを殺してしまったので、結局手にすることはできなかったが。何故か死体と共にその本もポンッ、と白い煙を立てて消えてしまったのは一体なんだったのだろうか。
「でもさ、エースにとっても良い事でしょ?これでキミが溺愛している弟のルフィの蟠りが解消されたんじゃない?」
「……マァ、確かにそれはあるかもしれ____おい待て。なんでその事をお前が知ってるんだ、おれはルフィの事をまだ話してねぇぞ」
「あ、やば」
「ッまさかおれが寝てる間に記憶を覗いたのか!?」
エースは途端に顔を真っ青にしてネフェルピトーの胸倉をつかみ上げた。ネフェルピトーは彼の混乱のままに大きく揺さぶられて気持ち悪くなりながらも、「違う!!違う!!」と全く信用ならないことを言うのである。周りにいたスペード海賊団の連中も顔色を悪くして「おれの頭は覗いてねぇよな!?」とネフェルピトーに詰め寄った。
「き、記憶を覗く行為は死体にしかやってないニャ…!!」
「お前2ヶ月前に戦った海賊の頭生きたまま弄ってたろ!!」
「……あれは、多分死んでた奴だニャ!!」
「嘘付け!!」
「囲め囲め!!」
「え?記憶覗くって何?そんなことも出来るのか?」
これに驚いたのは赤髪海賊団である。てっきり治癒系の悪魔の実の能力者だと思っていたのに、記憶を覗くだなんて全くの別物ではないか。エースは随分と取り乱しているのか、段々とネフェルピトーの首を絞め始めている。シャンクスがそれを見て冷静に彼女を救出し、その事について詳しく問い詰める為に顔を突き合わせた。
「お前、一体どんな悪魔の実を食ったんだ?」
「え……アリアリの実だよ。蟻人間になれるんだニャ」
「せめてネコネコの実とかにしとけよ、耳としっぽあるんだし」
シャンクスの質問に明らかな嘘を述べたネフェルピトーに、幹部であるライムジュースという男が呆れた顔をして言った。マしかし、口篭るほどの“ナニカ”を口にしたのには違いない。仲間でもないのに簡単に口を開く訳にはいかないだろう。
「なぁ、頼むよ。お前のことが知りたいんだ。おれたち、もう“友達”だろ?」
「……とも、だち?」
言い渋るネフェルピトーに対し、シャンクスは大きな手のひらで彼女の視界を覆い、そんなことを言い始めた。ネフェルピトーはそれにピクッ、と分かりやすく耳を動かして動揺を露わにする。シャンクスから発せられた聞き覚えのありすぎる“声”と、“友達”というワードの組み合わせにカイトの事を想像したのだ。
「あれ?キミってそういえばカイトなんだっけ?」
因みにネフェルピトーは未だに泥酔状態であり、この後は地獄の二日酔いが待っている。言わば正気を失くした状態だ。今の彼女はギリギリ人間の形をしているだけの肉塊でしかない。よって視界を覆われてしまえば目の前の人物が誰なのかを判別する方法は“声”だけになる。
「あー……そうだ。カイトだ。お前の事をよく知りたいから、もう一度教えてくれないか?」
そして残念な事にシャンクスも二日酔い状態であった為、悪ノリをして自分はカイトだとネフェルピトーに言ってしまった。元々おれの左腕を無償で治してくれたのはそのカイトとやらの声に似てるからだし、そいつのフリすれば話してくれるだろ。という軽い理由からであった。
しかし彼の声は非常にカイトの声と似ていたので、ネフェルピトーはこれに騙されてしまうのである。
「んもう、忘れるなんて酷いニャ。ボクは王直属護衛軍のキメラ=アントで、
と、ネフェルピトーは尻尾をゆらゆらと振ってバカ正直に自己紹介をした。
「あの、おれたちその情報聞いてなかったんだけど……」
「あれ?そうだっけ。ごめん忘れてた」
「んん……じゃあ、仕方ないか…」
「エースの旦那、そこで諦めないでくだせぇ」
元来拷問をする時には酒が必須だ。散々痛めつけた後に酒を呑ませて休憩し、また拷問を開始しようとすると驚くほど簡単につらつらと話してくれるのである。マ、この猫に限ってはこの方法は通用しない。しかし運良く“泥酔状態”と“カイトのそっくりさん”が奇跡のマッチングを果たし能力を暴露したのだった。
「……へぇ、この世界には念能力ってのもあんのか。まだまだ知らねぇことばっかだなぁ」
シャンクスはネフェルピトーの言葉を聞くとボケーッ、と間抜け面をしてからそう言った。彼女が話した内容が何一つ理解できなかったのである。一方でネフェルピトーのあまりのスペックの高さに、シャンクスの隣で様子を伺っていた副船長のベックマンは葉巻をポロ、と口から落とす。
コイツ4つぐらい悪魔の実食ってんじゃねぇのか……と思った彼はネフェルピトーから少し距離を取った。
今爆散されたら肉片で服が汚れてしまうので。
「……よく分からんけど、まぁ不思議人間なんだな!!」
と、シャンクスはネフェルピトーの視界を覆っていた手を外し、彼女の肩を叩きながら雑なまとめ方をした。しかし、そのお陰でシャンクスの正体がバレてしまう。白髪で長身のお兄さんキャラではなく、赤髪で筋肉質のおじさんだということが。
「……あれ?え?ダレ?」
ネフェルピトーは本当に驚いていた。何せカイトだと思っていた人物が、無精髭を生やしたただの酒臭いおじさんだったからである。キョロキョロと周囲に目を向けて、「あれ〜?」と間延びした声を出した。
そしてふと冷静になった時、ネフェルピトーは思い出したのだ。
「……あ、そっか。カイトはボクのせいで死んだから、もうどこにも居ないんだった」