いつも本作をお読みいただき本当にありがとうございます!
この度読者の皆様に、より作品の雰囲気やストーリーの目的が伝わりやすくなるようタイトルとあらすじ、及びタグを変更いたしました。
私はネフェルピトーのことを完全に女の子だと思い込んでいたのですが、よくよく調べてみれば原作では性別が不明でした。申し訳ありません。
それから評価とコメントありがとうございます。
大変励みになる上に私の食料となるのでとても嬉しいですね。
この先もよければこの怪物を皆様に堪能して頂ければ幸いです。
「……不味い。気付いたら文無しだったニャ」
水水肉の骨をガリガリと齧りながら道端のポールに腰掛けて頭を抱えるネフェルピトー。あの後何も考えずに手当り次第目に付いたものを食べまくっていたお陰で今や一文無し。
正しく邯鄲の夢である。しかしそれも仕方の無いことなのだ。傍から見ればネフェルピトーの身体は健康そのものであるが、その中身は全く違う。
ゴンの爆発的な量のオーラが含まれた拳との衝突により、現在猫の身体は7割程が失われていた。つまりは骨と皮、後はちょっとの臓器で形成されているちゃちな木偶人形である。
よって食べる事により少しでも栄養を摂って回復を図ろうとしたのだが、やはり金貨1枚で食べれる量では足りなかったらしい。
「マァ、こうなったら早めに手術するしかないか。弱体化するからあんまり人間の臓器は使いたくなかったけど……背に腹はかえられんニャ」
ボキッ、という音を立てて骨を噛み砕いて飲み込むんだネフェルピトーは颯爽と路地裏へと入り込む。悪い事をするにはここが一番だ。何故なら路地裏に居る大体が犯罪者か人を殺すことを生きがいにしている人外なので、皆オトモダチなのである。
足音を立てずに薄汚れた地面を踏みしめ、深く迷い込むようにして辿り着いたのは人気のない一本道。そこでネフェルピトーは
早速手術を開始する為、ドクターの腹部にある“ふたつめの扉”の中から保存していた新しい臓器を取り出す。これは瀕死状態から何とか生きながらえようとしたネフェルピトーが念能力を作り替えた結果であった。
ドクターが差し出してきた瓶の中に入っている臓器を観察すると、まぁ……使えるかな、といった出来である。
正直ギリギリのラインだ。
「……ンー、これでも無いよりはマシだな。早く万全の状態に戻らないとだし」
ジャケットのボタンに爪を引っ掛けて外し、その下のシャツも脱ぐ。真昼間から外で上裸を曝け出すという奇行に走るネフェルピトーを止める者はここにはいない。猫は両手を広げると
緑の液体が入った注射針が腕に刺さり、その薬液を注入される。冷たい物が身体の中に入ってくる感覚に気味の悪さを感じつつ、首から下、腰から上という限られた部分に麻酔を回し痛覚を鈍らせた。
それから自分の血液型と合致した輸血パックも点滴し、腹部を縦に大きく開帳する。その中は空っぽであった。心臓と片方だけの肺、それから少しばかりの胃があるだけで後はスッカラカンである。
その穴を埋めるように早速
「……呼吸がしやすくなってきた」
身体の修復が進み、段々とネフェルピトーが本調子に戻って来ているのだ。体の七割が喪失している状態というのは良くなかったのだろう。
流石の化け物にもこれは堪えた。
「よし、まぁ及第点かニャ」
そうして腹部に付けた大きな傷跡も綺麗さっぱり消してしまった
服を着て肩をぐるぐる回したネフェルピトーはじゃあ次は人間でも喰って栄養補給するか、と思い立ち路地裏を徘徊し始める。肉付きが良く、ガタイがあってそこそこ強い、死んでも2、3日は気付かれない奴。
そういうお手頃な食料を頭の中に思い浮かべ、今まで本調子じゃなくて使えなかったお得意の円を発動し周囲の気配を探る。丸々ひとり喰えれば御の字と言った所。死にたての死体でも落ちてたら嬉しいんだけど、と思っていれば数百m先の入り組んだ路地に数人の気配を察知した。
どうやら揉めている様子である。しかも恐らくは海賊だ。なんてありがたいバイキングだろう。神から与えられた幸運に感謝しながら太腿に力を込め、土煙と共に空高く舞い上がった。
「……はぁ、全く。何故そんなにもわしを追うんじゃ?船大工なら他にもおろうて」
「へへ、悪ぃな。今は懐が寂しくってよ、船着場に屯しているお前さえ殺せりゃ後は出航しちまえばいい。このご時世だ、節約は大事だろう?」
「…そうか、なら容赦は____」
「失礼しマース」
「うギッ!?」
5人の海賊に囲まれていた妙に角張った鼻を持つ男の前にフワリ、と音もなく降り立ったネフェルピトー。海賊は驚く間もなく右腕を刈り取られた。突如としてやってきた地獄の番人に反応する事が出来なかった海賊はピューッ、と切断面から溢れ出す血液を見て尻もちを着き、生娘のように叫び始める。
「あ、あぁ!?お、俺の腕がっ…!?」
「なっ!?お前さんは一体誰じゃ!?」
「…ウーン。弱いなァ、これじゃあ食べ損だよ。キミこんなんでよく今まで生き残れたね。マァでも、キミにはここでボクの糧となって貰うよ。そうしたらキミも一緒に航海できるし、嬉しいよね?」
「ひっ、ひぃい!?なんだっ、なんなんだよお前はッ!?」
「ボクはネフェルピトー、よろしく」
前と後ろから響く困惑の声をBGMに、むちゃむちゃと腕に齧り付く。尋常ではない顎の力で骨ごと食べ進め、最後に口の中に残った指輪をペっと道端に吐き出した。勿論右腕ひとつでは失った力を補う分には届かないので、怯えて声も出ないらしい他の男達も次々に殺していく。
自分の右腕が急になくなってしまいぼーっと地面に座って困惑している男の頬を殴ると、大砲で吹っ飛ばされたみたいに飛んで壁にぶつかる。ゴキュッという嫌な音がした。
頭が割れたのだろう。いちばん栄養価の高い脳ミソが零れ落ちてしまう前に直ぐさま頭部を胴体から切り離し、割れていた額に舌を入れこんで片手間にちゅーちゅーと啜る。同時に男が持っていたらしい拳銃で逃げ惑う他4名の心臓を的確に撃ち抜き、数秒間動いた後に息絶える様を余興にして死体を貪った。
「お前さん、人を、喰ってる…のか?」
目の前で行われたあまりにも惨い暴力の現場をカクという名の船大工の男は突っ立ったまま唖然と見ていた。経験上そこらに居る人間よりかは惨状に慣れている自覚がある。
しかしそれを持ってしてもいま目の前で起こった現実が理解出来ず、まるで悪い夢でも見ているような気分であった。脳ミソを啜り終わったらしく今度はポリポリという硬い音を立てて頭骨を食べ始めている。
「そうだよ。キミも喰べる?」
「ッ!?」
ネフェルピトーの動きは早かった。いつの間にかカクの背後に立ち別の海賊の頭部を差し出してきたのだ。カクはやっとの事で距離を取り、懐にしまってある電伝虫を取り出そうと手を伸ばす。此奴は確実に今消しておかなければならない。しかしネフェルピトーはその動きに瞳孔を細めると、次の瞬間にはニコッと笑う。
それから敵意が無いことを男に示す為に頭部を持っていない方の掌を見せた。本音を言えばこの男をいちばんに食べたい。彼は実力者だからだ。
強いのはオーラで分かる、だが先程盗み聞きした会話によれば彼は船大工。
殺してしまったらガレーラカンパニーとの都合が悪くなる。
「キミの事は殺さないから安心してよ。キミ船大工なんでしょ?今ガレーラカンパニーにボクらの新しい海賊船を作って貰ってる。だからボクは、キミを守ったんだ」
「…は、なん、お前さんは海賊なのか…?妖怪とかじゃなくて…?」
「えー?失礼だなぁ。ボクは列記とした人喰いの化け物だよ?妖怪みたいに存在しているのかいないのかあやふやな存在じゃないって」
「……いや、同じようなもんじゃろ」
「…そう?妖怪も人間の事食べるの?」
「……ん、うん、多分…?」
「へぇ、妖怪って怖いね〜」
「わしはお前さんが一番怖いがのう…」
ネフェルピトーは務めてバカっぽい振りをした。警戒されて仲間を呼ばれれば面倒だ。この男はそこそこ強いので誰にもバレないように殺すには骨が折れる。よってこの場合は話し合いで解決した方が良いだろう。
という事でまずは背後にある殺戮現場を隠滅して彼を安心させるために、
「んなッ!?悪魔の実の能力者じゃったのか!?」
「え?……あ、あぁそうだよ!!ボクはアナアナの実の能力者!!便利な穴を持つ良い女を何時でも何処でもどんな場所でだって出せる!!さァみんなでヤろう!!Everyday sex party!!」
「……最低だのう」
「否定出来ない」
突然目の前に大きな女が現れた事により取り乱してしまった男を落ち着かせるために最低すぎる下ネタでこの場を切り抜けたが、どうやら上手くいったらしい。やはり下ネタは世界を救うのだろう。これで一安心だ。
ネフェルピトーは手に持っていた喰いかけの頭部もドクターに投げ渡し、扉の中へと回収されるのを横目で確認すると念能力を消した。まだ喰いたりないが、これ以上この男の目の前で人間を喰べてしまうとせっかく取り戻した信用を失ってしまうからだ。
この男とは良い関係を築きたい。
「なら、お前さんが人を喰べる意味はなんじゃ?ミンク族と人間のハーフ……みたいな見た目をしているが、それが理由か?」
「……みんく族?」
「……だって、その頭に着いとる耳は猫のじゃろう?さっきもビルの屋上から音も無く降りてきたしな。何ならしっぽもある」
「……じ、実はそうなんだニャ〜!!隠してたけどボク本当は猫人間なんだニャ〜!!」
「急に語尾が“ニャ”になったのう、そもそも全く隠しとらんし。フードぐらい被らんか」
「今後は隠すニャ〜」
その後もネフェルピトーはふにゃふにゃとした気の抜ける動きを続け、見事男の警戒心を解いた。男は物分りがいいのか、はたまた肝が据わっているのか先程の食事風景にそこまで興味が無いらしく今はネフェルピトーについて気になった事を質問している。
「何処の海賊団に所属してるんじゃ?」
「スペード海賊団だよ。旗揚げしたばかりだからまだまだ無名だニャ」
「船長の名前は?船員の数は?」
「船長はポートガス・D・エースだよ。それから副船長のマスクド・デュースと、このボクの3人だけなんだ。良かったらキミも仲間になる?今なら面接無しで即採用だニャ」
「思ったより少ないのう……後、わしは海賊にはならん」
「そう?結構楽しいかもよ?うちは縦社会じゃないから面倒なしがらみもないし」
「余計なお世話じゃ。それよりお前さん、この袋の中に入っている物を取り出して持ってみてくれんか?」
「ンー?……何この石ころ。どうせ渡すなら宝石を渡して欲しかったニャ」
会話途中で渡された謎の袋の中には小ちゃな石ころが入っており、ネフェルピトーはそれを数回手の中で転がす。しかし何も起こらなかったのでつまらなそうに唇を尖らして中に戻し、カクに投げ渡した。それを受け取ったカクは随分と深刻そうな顔をする。
「……」
「どうしたの?」
もしかしたらおばあちゃんの遺骨だったりしたのかな…?と思ったネフェルピトーはとても申し訳なく思ったが、仮にそうだったとしても突然自分に渡す行動の意味がわからなかった。多分石ころを集めるのが趣味なのだろう。自慢したかったのかもしれない。それならもっと大袈裟に反応してやればよかっただろうか、とネフェルピトーが考えていればカクは懐に石の入った袋を静かにしまった。
「……いや、なんでもないわい」
「…そう。変だねキミ」
「お前さんの方が変じゃろ」
「てかキミの名前って何?」
「カクじゃ」
「かわいい名前だね」
「嬉しくないのう…」
少し気まずい時間はあったが段々と他愛もない話へと進み、男の名を聞いたネフェルピトーは早速本来の目的を話そうと動き出す。元々捕食以外にも彼の目の前に姿を表した理由があるのだ。ネフェルピトーはカクに「見て欲しいものがある」と言って両足の義足を素早く外した。
それから膝関節部分に使っていたミカンを外して手に持つと、腐った様な匂いがしたので遠くの路地に投げ捨てる。もう片方のミカンは無事だったのでネフェルピトーは皮ごと齧り付いた。そしてその一連の猫の行動を口をポカン、と開けて見ていた彼に向き直り本題へと入る。
「ボクは膝関節部分を作ってくれる優秀な船大工を探してた。そしたらちょうどキミが犯罪者達に襲われていたから助けに入ったんだよ。言うなればボクってキミの命の恩人でしょ?だからキミ、膝関節部分作ってくれないかニャ?」
ネフェルピトーは恩着せがましいことを言った。自分はカクにとっての救世主であり、愛ある隣人なのだ。つまりお互いが困っていたら助け合わなければならない。キミを救ってあげたでしょ?だから今度はボクを助けてよ、ということを本心から言ったのであった。
「……お前さん、義足であれ程の動きをしていたんか。一体何者なんじゃ?人を喰らうミンク族なんぞわしは聞いたこともない。そもそもミンク族と人間のハーフなんて存在も確認されておらんし、悪魔の実の能力者というのも嘘じゃろう。海楼石を触らせても一切反応がなかった」
止まらないカクの質問に今度はネフェルピトーがポカン、と口を開ける番になった。現在ふたりの間には先程までの気の抜けた空気は一切ない。その上カクから発せられるビシビシとした殺意をしっかり感じ取ったネフェルピトーは顔を顰める。彼とは戦う気が無いのだ。
それをしたとしてもこちらに利益は一切ない。寧ろ不利益にしかならないという分が悪い状況に、ネフェルピトーは大人しく降伏する。コロンっと地面に転がって「降参だニャ〜」と言ってカクに腹を見せた。貴方に敵意は無いですよ、という意味が込められたプロの技である。
この猫には相変わらずプライドというものが一切なかった。
「怖がらせてごめんね?でもボクはキミを傷付ける気なんて一切ないんだ、だからそう警戒しないで欲しい。ボクはただキミと仲良くしたいだけなんだ」
「お前さんの言うことは何一つ信用できん。先程聞いたことも全て嘘じゃったしのう。元々海賊なんてものは信用するに値せんわい」
「ンー。嫌なデジャブを感じるニャ」
お互い腹を見せあって仲良くなろう作戦はカクに全く通用しなかった。そもそも物理的に腹を見せているだけであって実の所この猫は何一つ情報を開示していないのだ。それなのに気分が良くなるような言葉しか話さないので、そりゃあ相手からしたら何か下心があるんじゃないのかと疑われる一方だろう。
以前の猫ならそれに気付かずに似た様な言葉を吐き続けていた。しかし今の猫は違う。カイトとの交流のお陰で、こういう時は大人しく喋った方が後々の被害が少なくなるということを学んでいるのだ。
よってネフェルピトーは地面に寝っ転がるのを辞めると今度は右腕の義手もカポッ、と外した。続いて左腕の義手も口で噛んで外し、自ら攻撃手段を失くしたのである。
「なっ!?両腕も義手じゃと!?」
「これでボクには攻撃手段が無くなった。マァ、元々キミに危害を加える気なんてないけど。少しは安心してくれた?キミ程の実力者なら今の状態のボクを簡単に殺せるでしょ」
ネフェルピトーは地面に転がり自分は貴方よりも弱者だ、ということをアピールした。しかし残念ながら不気味さが勝っているのでカクは警戒を強める。こういう輩は次の瞬間には自爆する可能性があるからだ。
「…本当に一体何者なんじゃ。何故そうまでしてわしに拘る」
「……?海賊だってさっき言ったじゃん。それにボクはただキミに膝関節部分を作って欲しいだけ。長距離を移動するのに膝関節がミカンだと結構気を使わないといけなくて大変なんだニャ」
「なら、ならあの力はなんじゃ?」
「あれは
ネフェルピトーは実に呑気なものだった。ファミレスで長年の友達と会話しているかのような雰囲気を常に漂わせている。それは偏にカクを格下だと認識しているからだ。もしこのまま話の流れが良くない方向へ進んでしまうのならば、彼を殺してしまえば済む話である。
「ねん、のうりょく……?そんなもの、生まれてこの方わしは聞いた事がない」
「そりゃあそうでしょ。キミただの船大工だし」
「……それも演技か?」
「え?な、何で今そういうこと言うの…?親友との事を思い出して怖くなったニャ……」
「さっきわしのことを実力者だと言うたじゃろ。それもわしの正体を見抜いたからじゃろうて」
先程まで余裕をぶっこいていたネフェルピトーはカクが零した「それも演技か?」という言葉に、初対面でカイトからフルボッコにされた記憶を鮮明に思い出してしまい顔を青くする。
ここで答えを間違えれば殺されてしまうかもしれない。人間はいざという時にとんでもない力を発揮することを忘れていた。よってネフェルピトーは一生懸命にカクの正体を考え、彼って実はものづくりの妖精だったりするのかニャ……と一瞬考えたが、どう見ても彼は人間だ。
「ンー…」
しかし万が一がある。今は多様性の時代なのだ。背中にちいちゃな天使の羽が生えてたっておかしくはない。
「えーっと、天使…とか?」
「……ん?」
「あっ、違うの?じゃあ何だろう…バナナの擬人化とか?そしたらキミって全身えっちな変態さんだね。モザイク処理せずに外歩いても捕まらないこの島ってもしかしてセレブの会合場所だったりする?キミの部屋に裸の女でも立ってンの?」
「お前さんは一体何を言っとるんじゃ」
カクは震えながらそう言った。この目の前にいる女は薬でもやっているのかと1歩後退る。そして再び「本当に何を言っとるんじゃ…」と言った。先ほどとは打って変わって随分と疲れた様子を見せたカク。もしや世界政府の犬か!?と言われるかと思っていたのに、出てきた言葉は「バナナの擬人化」という意味の分からないもの。
心做しか特徴的である自分の鼻を凝視しながら言っていたので、彼は鼻を隠しながら項垂れる。
そんな彼を見たネフェルピトーはコテンッ、と頭を傾げエネルギーでも切れたのかなと食べかけのミカンを差し出した。
「……なんじゃ、そんなもんわしは食わんぞ」
「なんか疲れてるみたいだったから」
「お前さんのせいじゃわい……」
近くに鈍器があるなら殴っていたが、生憎ここには頭を殴るのに適しているものが落ちていなかった。カクは「ン”ー…!!」という呻き声を出して渋々ネフェルピトーの手の中から齧った跡のあるミカンを受け取る。
「くらえっ」
「んミ”ャっ!?」
するといきなりミカンを握りつぶした。カクの素晴らしい握力によって抽出された酸味がたっぷりと含まれたミカンの汁が、間抜けな芋虫ネフェルピトーの両目に直撃する。猫は今四肢が無い状態なので目を抑えることもできず、ただその場で起き上がり小法師のように惨めに動く事しか出来なかった。
「お前さんの正体が何であれ、ただの阿呆ということはわかった。一応助けて貰った恩はあるし、膝関節とやらもわしが作ってやろう。色々と納得はしとらんが……マァ今のでスッキリしたわい」
「め、目がっ__!!」
彼は俯いたまま笑う。それからネフェルピトーがジタバタと暴れるさまをジーッ、といつまでも見つめていたのであった。