時点でナナ・テスカトリが一歩リード、その次に婚活中のアマツマガツチか…。
そしてマム・タロトが最下位…。
あれかな、体格差かな。
作者は結構好きなんですけどね…巨女が。
「まったく……性懲りもない奴だ」
昼下がり、件のリオレウスが大きな翼を広げ、悠然と巣を飛び立つのを見張り台から確認した俺は慣れた手つきで大剣を背負った。
あの一件以来、あのレウスとの付き合いも(一方的な監視だが)本当にずいぶんと長くなった。結局、ギルドが狩猟禁止を下した以上、俺にできるのは奴が「次は何をやらかすか」を見届けることだけだ。
どうも最近は密林によく飛んでいく姿を見かけるらしい。帰るときはランポスとかの食料を抱えているらしいから何も異常はないと思われていたが、流石に連続で行くのは何かがあるに違いないと新人どもは騒ぎ立てていた。
どうせ、またどこぞの異種族の雌をナンパしに行ったのだろう。以前なら憤慨していたはずの俺も、今やどこか達観した面持ちで奴の後を追って緑豊かな密林地帯へと足を踏み入れていた。
鬱蒼と生い茂る木々を見上げながら、俺の脳内では勝手な「予想」が始まっていた。
(密林か……となると、次の標的はまさか『雷狼竜ジンオウガ』の雌か? いや、さすがにそれはないか。水や泡を操る先妻のタマミツネと、雷をまとうジンオウガじゃ家庭内の相性が最悪すぎる……いや、待てよ?あの常識破りの女誑しレウスなら『属性の不和? 俺の愛で包み込んでみせるさ』とかなんとか言って、平気でやりかねんぞ……)
そんな馬鹿げた妄想を繰り広げているうちに導蟲の光が止まった。
ひときわ開けた岩場。そこにリオレウスが静かに舞い降りる。俺は手慣れた動作で茂みに身を隠し、遠くから奴の様子を観察した。
レウスは緊張感の欠片もなく、退屈そうにふわぁと大きな欠伸を一つ漏らした。それから、何を確信したのか、ある特定の方向をじっと見つめる。
ガサリ、と密林の闇が揺れた。
そこから滑り出すように現れたのは――漆黒の体毛と、鋭く光る紅い眼を持つ飛竜。迅竜、ナルガクルガだった。
「……ちっ、ジンオウガじゃなくてナルガクルガか。外れだな」
俺は茂みの陰で、小さく舌を巻いた。我ながら、モンスターのナンパ相手を大真面目に予想し、外れて悔しがっている自分の現状に呆れそうになる。
まだまだあいつへの理解が足りないな、などと俺の心はいつの間にか奴の「ナンパ現場の観察」をどこか楽しむようになっていた。
岩場の中央。ナルガクルガは本来極めて警戒心が強く、他者を容易に近づけない孤高の暗殺者だ。
だが、目の前の黒き迅竜は、レウスの姿を見ても刃翼を立てるどころか、どこかそわそわと落ち着かない様子で尾を揺らしている。
レウスがゆっくりと歩み寄り、その美しく艶やかな赤き翼を広げてナルガクルガの毛並みを優しく毛づくろいするように触れた。
ナルガクルガが喉を小さくゴロゴロと鳴らし、レウスの喉元に頭を預けるまでに、そう時間はかからなかった。
「よし、今日も一丁上がり、というわけか……」
手帳を取り出し、『密林にて、迅竜ナルガクルガの雌へのアプローチ成功を確認。すこぶる順調』と淡々と書き留める。
かつて生態系の危機だと叫んでいたベテラン大剣使いは、今や完全に、レウスの特異すぎる恋愛模様を記録する「お抱えの観測者」と化していた…からこそ気づいた。
――いや、待て……何かがおかしい。
ナルガクルガを無事に落とした、そう思った俺のペンがピタリと止まった。
じっと二頭の観察を続けるうち、俺のハンターとしての長年の直感が目の前の光景に強烈な違和感を告げていた。
ナルガクルガの雌はレウスの側をそっと離れると、近くの木からいくつか熟した木の実を器用に毟り取ってきた。
そして、ごく自然に口を開けたレウスの元へ戻ると、その口内へ優しく木の実を押し込んだのだ。
その一連の動作には、照れも、躊躇いもなかった。
レウスの方も、当然のようにそれを受け入れ、美味そうに果実を咀嚼している。
あまりにも手慣れている。
まるで、何ヶ月も前からこうすることが決まっていたかのように、流れるようにスムーズで献身的な奉仕だった。
「……ナンパ、じゃない」
俺の脳が、一つの恐るべき、そしてあまりにも人間臭い結論を弾き出した。
これは今日初めて口説き落とした現場などではない。
正真正銘、前々からコソコソと続いていた『不倫現場』だ。マジかよ…。
そこで俺は先ほどレウスが昼間にもかかわらず、緊張感なく大きな欠伸を漏らしていた理由を思い出す。
あいつは退屈していたんじゃない。ただの深刻な寝不足なのだ。
考えてみれば当然だった。本妻のレイア、妹分の亜種、そして種族を超えたタマミツネに天敵だったライゼクス。
いくら最強の女誑し火竜とはいえ、これだけの強烈な個性の雌たちを同時に満足させ、家庭内の平和を保ち、終わらない繁殖期を全力で駆け抜けているのだ。
巣にいる間は、まともに眠る時間すら与えられていないに違いない。
体力的にも精神的にも、あいつの疲労は限界を迎えているはずだ。
だからこそ、あいつは昼間に巣を抜け出し、この静かな密林へと「逃げて」きていたのだ。
「なるほどな……つまりお前は、あそこのハーレムから逃げて、ここで癒やされていたわけか」
目の前では、木の実を食べ終えたレウスが、ナルガクルガの柔らかな漆黒の体毛に顔を埋め、実に気持ちよさそうに目を閉じている。
ナルガクルガもまた、疲れ果てた旦那を労わるようにその大きな刃翼でレウスの身体を優しく包み込んでいた。
本妻たちの前では「威厳ある絶対的大黒柱」として振る舞い、過酷な育児と夜の営みをこなすレウス。
しかし、ここにはギルドの監視も、嫁たちの厳しい目もない。
陰に隠れてひっそりとレウスを支えるこの献身的なナルガクルガは、あの哀れな火竜にとって間違いなく「疲れ切った心を癒やす、唯一無二のオアシス」だった。
「ハンターに命を狙われるより、家庭内で生き残る方が過酷とはな……同情はせんが、少しだけ気持ちは分かるぞ、レウス」
俺は苦笑しながら、手帳の文字を『浮気現場の確認。レウス、家でのストレスにより密林で現実逃避中。ナルガクルガは最高の癒やし枠』と書き換えた。
生態系の崩壊を心配していたはずの俺は、いつの間にか、この「多忙すぎる魔王」の胃の痛い二重生活に、奇妙な憐れみを抱き始めていた。
しかし…手帳に走らせるペンの先が、わずかに震えた。
俺は双眼鏡の焦点を限界まで絞り込み、息を殺してその一部始終を記録する。
『追記――密林の岩場にて、件のリオレウスとナルガクルガが交尾を開始』
驚くべきことに、その主導権を握っていたのは先ほどまで死んだように眠りかけていたあのリオレウスの方だった。
家での寝不足など嘘だったかのように奴は信じがたい野生のエネルギーを取り戻し、極めて積極的に漆黒の迅竜へと迫っている。
本妻たちの前で見せる「義務」としての営みではない。
これは、抑圧された日々の反動が生んだ、純粋なる情熱の爆発だ。家でのストレスを、この浮気相手への狂おしいほどの愛撫に変えてぶつけている。
対するナルガクルガの雌はそのあまりの激しさに身を委ねながらも、必死にその声を押し殺していた。
本来なら密林の生態系の頂点として鼓膜を裂くような金切り声を上げるはずの迅竜が、今だけはか弱い雌の顔になり、ただ微かな吐息だけを漏らしている。
それは、周囲への警戒というよりも――「他の嫁たちに見つかってはならない」というこの背徳的な密会を守るための、彼女なりの健気な配慮に他ならなかった。
声を漏らせば、あの耳聡い先妻たちが空から降ってくることを、彼女も本能で理解しているのだ。
明かりの届かぬ密林の陰で、声を殺し、貪り合う二頭の影。
「……凄まじいな。これほどの熱量だ。近い将来、番としてあの巣にナルガクルガが正式に加わる可能性は大、か。」
俺は手帳にそう結論を書き加えた。
ただのオアシス、ただの行きずりの関係では終わらない。この情熱の深さを見るに、レウスがあの過酷な家庭環境を生き抜くためにはこの献身的な黒き癒やし手を正式に「身内」として迎え入れる他ないだろう。
だが、そうなればあの魔王軍の巣はどうなる?
火、毒、水、泡、雷、そして今度は闇を制する「隠密の暗殺者」までが家庭に加わるのだ。
ギルドの学者どもがこの事実を知れば今度こそ嬉しさのあまり気絶するに違いない。
俺は手帳を閉じ、大剣の柄に手をかけた。
この秘密の逢瀬が終わり、レウスが再びあの「戦場」のような我が家へと帰っていくのを見送るために。そして人間の観測者として、この歪んでいく生態系の行末を最後まで見届ける覚悟を新たにしながら。
◆
――そして、数週間が経過した。
俺の予想通り、事態は一気に動いた。書士隊の定時報告には、はっきりと『ナルガクルガの妊娠を確認』の文字が躍っていた。
さらにその数日後、腹のふくれたナルガクルガの翼を携え、観念したように我が家へと彼女を連れ帰るリオレウスの姿が目撃された。
ついに浮気が公のものとなったのだ。
しかし、流石のレウスも今回ばかりは本妻たちの逆鱗に触れたらしい。
ナルガクルガを巣に残したまま、リオレウスが雌たちに猛烈に突つかれ、命からがら絶対零度の雪山の方角へ飛び去るのが確認されたのだ。
「あはは! 見たかよあの女誑しレウス! ついに奥さんたちに愛想を尽かされて、家から叩き出されたんだ!」
「ざまぁみろね。極寒の雪山で一人、凍えて反省すればいいわ」
ギルドの酒場では、新米ハンターや受付嬢たちが「今度こそ家庭崩壊だ」と大笑いし、我が世の春のように盛り上がっていた。
だが……俺は彼らの浅はかさに、心底呆れ果てていた。
「追放された? ……おいおい、だったら何で、浮気相手であるはずのナルガクルガが、今も巣の中で本妻たちに手厚く介護されてるんだよ?」
俺がボソリと呟くと、新米たちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
本当に追放されたのなら、浮気相手の雌など真っ先に噛み殺されているか追い出されているはずだ。
しかし現実は、お腹の大きなナルガクルガは巣の中に匿われ、レウスだけが弾き出されている。
違う。あれは追放なんかじゃない。
終わらない繁殖期、増え続ける嫁、そして今回の浮気発覚による修羅場…
度重なる家庭内ストレスと責任の重さに耐えかね、あのレウスは「俺はちょっと雪山で頭を冷やしてくる!」と、ガチの現実逃避を敢行したのだ。
だが、あいつはあの『誑し魔王』だ。ただでさえ家庭内ストレスで心が傷ついている状態で一人で雪山にこもらせたらどうなる?
「……絶対に、ただでは帰ってこんぞ」
俺は嫌な予感、あるいは期待に突き動かされ即座にギルドの上層部へと向かった。
「あの個体が雪山で暴走する危険がある」
とか適当な大義名分を並べ立て、特例として雪山への監視・追跡依頼を正式に発行してもらった。
もちろん、依頼を受けるのは俺だ。
防寒着を着込み、ホットドリンクを用意し、大剣の紐をきつく締め直すと俺はニヤリと口元を歪めた。
「さて、レウス……お前、今度は雪山の誰を番にしちまうんだ?」
さてと…次はアイツか…難しいな…。
……仕方ない。あの有名なシーンを丸パクリするか。
ではもう一つアンケートを。この中なら次は誰がいいですかね?
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