ハンターは次回です。
「……んぅ。旦那様、やっぱりここが一番あったかいです……」
現代の巣の中、俺の翼の下で完全に二度寝の体勢に入っているベリオロス――ベリーの柔らかい重みを感じながら、俺は遠い目をして呟いた。
「はぁ……。本当に、あの時の『氷の女騎士』みたいな格好良かったベリーは一体どこへ行っちまったんだろうな……」
今やただの極上の寝坊助と化しているベリーだが、彼女もある意味では不倫相手でオアシスのナルガとはまったく違った意味での『例外』であり、我がハーレムの中でも極めて異質な番だった。
何が異質かって?
それは、彼女が我が家のどの妻たちとも違って、とにかく徹底的なマイペースだということだ。
そして何より……彼女が狂おしいほどに求めているのは、俺という『雄』そのものではなく、俺の身体から放たれる『圧倒的な炎の温もり』なのだ。
つまり、端的に言ってしまえば……彼女の俺自身に対する『愛』は、他の妻たちに比べるとそこまで深くはない(気がする)
「ちょっとベリー! 旦那様をただの暖炉代わりに使うんじゃないわよッ!」
案の定、正面からサクラがキーキーと怒鳴り声を上げ、ティガも「そうだそうだ! 旦那様の温もりはみんなのものよ!」と抗議している。
けれど、ベリーは琥珀色の鋭い牙を俺の鱗に擦り付けながら、「むにゃ……うるさいです……暖房の温度を下げないでください……」と寝言で返すだけ。
……そう、これなのだ。 彼女にとって俺は「旦那様」であると同時に、極上の「暖房器具」でもあるらしい。
もちろん、番としての行為はした…というか襲われたし、俺と彼女の間の血を引く子どもたちだって無事に産まれて元気に育っている。生物としての子孫の残し方としては大成功のはずだ。
なのに、今は夜の営みの時ですら彼女は「旦那様、激しいのはいいですから、とりあえず覆い被さって全力で温めてください。凍え死にます」と要求してくる始末。
愛が深くないと言うと少し語弊があるかもしれないが、彼女の優先順位の第一位はいつだって『寒さを凌ぐこと』なのだ。
今や完全に野生を忘れて俺の体温に依存しきっているベリー。
しかし、あの雪山の洞窟から姿を現した日の彼女は、今の姿からは到底想像もつかないほど、凛々しく、鋭く、まさに『騎士』そのものの風格を漂わせていたんだ――
◆
ふふ……旦那様はさっきから、心の中でずいぶんと失礼なことを考えているみたいですね。
わたしの旦那様への愛が深くない?
ただの都合の良い暖房器具代わり?
――そんなわけないに決まっているじゃないですか。
わたしがこうやって、外で見せるような厳格な『騎士』の姿を綺麗さっぱり脱ぎ捨てて、こんなにも無防備な本性を見せるのは……世界で1番愛している旦那様の前だけですよ?
その証拠に、わたしはこうして大好きな旦那様に、翼も身体も全部預けて隙だらけに抱きついているのですから。
他の誰も、わたしのこんな蕩けた姿を見ることはできません。旦那様が太陽みたいに暖かくて素敵なのは否定しませんけれど、それが全てだなんて思われたら、ちょっと拗ねてしまいます。
旦那様の腕の中で心地よい熱に包まれながら、わたしはふと、まだ『騎士』の皮を分厚く被っていた、過去のあの日を思い出した。
◆
凍てつく猛吹雪が吹き荒れる雪山。
それが、かつてのわたしの世界のすべてだった。白銀の毛並みを揺らし、鋭い琥珀色の牙を煌めかせながら、わたしは孤独な『氷の女騎士』としてただ厳格に己の縄張りを守り続けていた。
寄せ付けるのは冷徹な風だけでいい。誰にも心を開かず、凛とした気高さを保つことだけがわたしの誇りだった。
そんなわたしの静かな縄張りに、突如として大天を裂くような大騒動が巻き起こった。
山のようなガムートの地響き。それに続いて響き渡ったのは、あの狂暴な絶対強者――ティガレックスの、理性の消し飛んだ凄まじい咆哮。
何事かと思ってわたしがゆっくり洞窟から姿を現したとき、そこで目撃したのは…わたしの理解を遥かに超えたあまりにも奇妙な光景だった。
リオレウスが暴走するティガレックスを強引に組み伏せ、あろうことかその大口を自分の嘴で力ずくで塞いでいたのだ。
(な、何を……しているのですか……?)
戦いとすら呼べないあまりにも乱暴で、それでいて奇妙な口づけ。
呆気にとられてそれを見つめていたわたしの前で、さらに信じられないことが起きた。
嘴を離されたティガレックスが、さっきまでの凶暴な仮面を一瞬で粉砕させ、顔を真っ赤に染めながら、そのリオレウスに対して雪山をも溶かしそうなほどの熱視線をジィィッと注ぎ始めたのです。
極寒の雪山で繰り広げられる、あまりにも濃厚で、理不尽な求愛劇。
それまで誰にも怯まず、凛とした女騎士として生きてきたわたしは、そのあまりにも理解不能で熱すぎる状況を前に、ただただ目を丸くして呆然と立ち尽くすことしかできなかった――
呆然と立ち尽くすわたしに気づくと、リオレウスはゆっくりとこちらへ歩み寄り、なんと頭を下げてお願いをしてきたのです。
「頼む、ここの主さん。どうか彼女の傷が癒えるまで、この岩場に置かせてもらえないだろうか?」
その言葉を聞いた瞬間、わたしの頭はさらなる大混乱を極めていました。
ティガレックスを……置く? 狂暴で獰猛なあのティガレックスをよりによってわたしの静かな縄張りで療養させるというのですか?
(ありえない! 冗談ではないわ!)
そもそも何の対価も用意せず、ただの善意でそんなとんでもない要求をしてくること自体が厚かましいにも程があるというものです。
わたしは凛とした気高さを取り戻し、鋭い牙を覗かせながら彼に言い放ちました。
「ここはわたしの城です。見ず知らずのあなた方に貸し出す道理はありません。どうしてもと言うのなら、相応の『対価』を示しなさい!」
そう告げて胸を張るわたしを前に、レウスは「対価と言われても……」と、完全に困惑しきって頭を抱えてしまいました。
当時はサクラの罰で肉を探しにきた放浪の身です。わたしを満足させるような財宝も、珍しい獲物もない。彼には差し出せるものが何一つ見当たらなかったのです。
気不味い沈黙が流れる中、わたしは彼を追い出そうと翼を広げかけ――ふと、彼の全身から立ち上る、陽炎のような濃密な『熱気』に気がついたのです。
その瞬間、わたしの瞳は、彼の身体から完全に目が離せなくなってしまいました。
(……なんて、暖かそうなの……)
極寒の雪山で、凍てつく冷気に身を晒し続け、冷たい孤独の中で戦ってきたわたし。
そんなわたしの目の前で、彼はまるで燃え盛る炎そのもののように、圧倒的な生命の熱を惜しげもなく放っていた。
冷え切ったわたしの身体が、その熱気を感じただけで、じわじわと心地よく融解していくような錯覚さえ覚えるほどに。
――対価なら、あるじゃないですか。
わたしは張り詰めていた騎士の防衛線が、その『温もり』への猛烈な渇望によって、みしみしと音を立てて崩れていくのを感じていたのです。
気づいた時には身体が勝手に動いていました。 誇り高き『氷の女騎士』としての理性も伝統もすべてをかなぐり捨てて、わたしは目の前の暖房へと夢中で飛びつき、その逞しい首筋にがっしりと抱きついていたのです。
「あ……あぁ……っ」
圧倒的な…太陽のような熱量と温もりが、わたしの冷え切った身体を一瞬で支配していく。その至福の快感に晒された瞬間、わたしが長年かけて磨いてきた氷で出来た女騎士の鎧は……何の抵抗もできず、あっという間にドロドロに溶けていきました。
あまりの気持ちよさに頭がとろけてしまい、あれほど拒絶していたティガレックスの滞在も、「あ、いいですよ」とあっさり秒で了承してしまったほどです。
用件が済んだと思ったのか、レウスは「あ、主さんありがと……」と顔面蒼白で慌てて翼を広げて羽ばたき、この場を去ろうとしました。
――逃がすわけ、ないじゃないですか。
「……待ちなさい」
わたしは蕩けていた目を一瞬で据わらせると、自慢の爪を突き立て、飛び立とうとしたレウスの巨体を素早く捕まえました。
「まさか……今の一瞬温めてくれただけで凶暴なティガレックスを何日もわたし一匹に押しつけ、自分はさっさと帰るつもりでしたか? そんな虫のいい話は断固拒否します」
地面に組み伏せられ、ガタガタ震えているレウスを見下ろしながら、わたしは有無を言わせぬ絶対的な口調で条件を突きつけました。
「あなたがずっとここにいてわたしを温め続けてくれるというのなら、ティガレックスがここにいることも特別に許します。食料なら、わたしのこの牙でいくらでも狩ってきてあげますから――あなたたち2匹共、大人しくここにいなさい」
そう。これが、レウスを雪山の洞窟に軟禁して暖炉代わりにし続けたというのが、今のマイペースな『暖房依存竜』であるわたしの、すべての始まり。
最初は、ただ凍える身体を癒やすためだけの、好都合な暖炉代わりにしか感じていなかった彼の温もり。
けれど、四六時中その圧倒的な熱量に包まれているうちに、いつの間にかそれは確かな『愛』へと変わっていき、わたしの冷たかった瞳には自分でも制御できないほどの熱が籠もり始めていました。
ただの暖房器具だと思っていた雄を…一頭の魅力的な雄として意識してしまった瞬間…わたしの瞳の色の変化に気づいた時の、レウスの「ああ……また…増えた…」と言わんばかりの絶望に満ちた顔は今思い出しても非常に面白かったです。
そうやってレウスを洞窟に軟禁してから、数日が経過したある日のこと。
わたしが2匹のために外で狩りを済ませ、獲物を引きずりながら戻ってくると――ティガとレウスがあまりにも…そう、あまりにも激しく交尾をしていました!
荒々しい吐息、バチュン!バチュン!とぶつかり合う肉体、覚醒したティガの情熱的な猛りとそれに全力で応えるレウスの雄の姿…そのあまりにも濃厚な交尾を特等席で目撃した瞬間、わたしの眠っていた『雌の本能』も凄まじい衝撃と共に刺激されてしまったのです。
あのレウスの…数日間、禁欲させられたことによるパンパンに膨らんだ袋…ギンギンに猛っている太くて硬いモノ…それをわたしのここに打ち付けられたら…わたしは一体どうなってしまうのでしょう?
番のいないわたしは当然未経験です。そんなわたしにあれほど巨大なモノの相手が務まるのでしょうか…なんてことを考えると思いましたか?残念、それは大間違いです。
本来なら我が家で盛る2匹を怒るべき修羅場なのかもしれません。
けれど、身体の奥底から湧き上がる熱い衝動に突き動かされたわたしは声を荒らげることもなく、ただ静かにわざわざ2匹の行為がすべて終わるまでその場にじっと座して待つことにしました。
張り詰めた空気の中、ティガが満足し、ようやく荒い息を吐きながら行為を終えたレウス。
へとへとになって横たわる彼の姿を見つめた瞬間、わたしはこれ以上一秒たりとも我慢ができなくなっていました。
「……お待たせいたしました、レウス。次はわたしへの対価をきっちり支払っていただきますね?」
終わったまさにその瞬間。
わたしは腰を抜かして驚くレウスを求めて、容赦なくその巨体へと押し倒すように抱きつきました。
ティガとの交尾で火照りきった彼の身体が、わたしの白銀の毛並みを一瞬で焦がすように熱くする。
そこからはもう、騎士のプライドも何もありはしませんでした。疲れて涙目になっている彼を羽交い締めにして、わたしは貪るようにその温もりと愛を、身体の芯まで刻み込んでもらったのです――
はい。未経験のわたしが経験豊富なレウスを食べちゃったのです。正直、かなり痛かったですよ?でも…それ以上に気持ちよかったのです。痛いのに、自ら深く腰を落としてアソコ押し広げました。血がわたしの白銀の毛皮を赤く染めましたが、そんなの一切気にしませんでした。
凄かったですよ、あの時のレウスは。禁欲による蓄積したエネルギーはとどまる所を知らず、赤く染まったわたしの毛皮が再び白く染められる程の量が出ましたから。お分かりですね?そう、わたしの中に収まらなかったのです。
ドクドクと注がれた彼の種は、凄まじい熱量でわたしを内側からも温めてくれました。彼に抱きつけば外側が暖まり、彼と繋がれば内側が暖まる…わたしはこの温もりを求め、彼と何度も何度も身体を重ねました。
――そんな情熱的な雪崩のような連戦を経てレウスを完全に軟禁し、食料をわたしが運ぶというレウスをヒモにする生活を続けてさらに数週間が経過した頃。
私たちのいる雪山の隠れ家についに彼の番であるレイアお姉様とサクラがやってきたのです。
罰の期限が切れて旦那様を回収しにきたのか、あるいはどこからか異変を察知したのか。
洞窟の入り口に現れた2頭の陸の女王は、私たちを見つけると、綺麗な笑顔を浮かべて静かに接近してきました。ええ。笑顔でしたけれど、その瞳の奥はこれっぽっちも笑ってはいませんでした。
不倫の罰として向かわせた場所で役目を果たさないどころか、まさかの一気に2頭の雌に不倫をするという、実に背徳的で楽しい生活を送っていたのですから番としての怒りは当然でしょう。
レウスなんて、2頭の影を見た瞬間からガタガタと歯を鳴らして私の後ろに隠れようとしていたくらいです。
普通なら、ここで新しい雌としての恐怖や、激しいキャットファイトに身を投じるべき場面――ですが、わたしとティガは、彼女たちを前にただ余裕の笑みを浮かべていました。
「ふふふ……お姉様方、わざわざお出迎えご苦労様です」
「追い出そうったって無駄よレイア、サクラ!!」
そう。わたし達、もう身籠りましたから。既成事実を作っちゃいました。
レウスの圧倒的な熱量に狂わされ、あの激しい交尾を経て、わたしとティガの身体にはしっかりと彼の新しい命が宿っていたのです。
飛竜の理として、子どもを身籠った雌を無下に追い出すことなどできはしません。先に来ていたナルガと同じように、これでわたし達も正真正銘、彼の番になる権利を勝ち取ったのです。
そこからはもう、お堅い『氷の女騎士』なんて完全に辞めました。
ただの一匹の雌として、私はすべての誇りを彼に捧げ、彼の正式な番になりました。
毎日、みんなに「暖炉代わりだ」とからかわれながらも、大好きな旦那様にみっともなく抱きついて、その大好きな温もりばかりをひたすら求めて離れようとしない、ただの甘えん坊な雌に……
◆
「ふふ、あの時サクラと一緒に雪山へ踏み込んだ時は、流石にどうしてやろうかと思ったわよ?」
現代の食事の席。回想を終えて、今でも旦那様の翼の下でぬくぬくと温まっているわたしを見て、正妻のレイアお姉様が懐かしそうに目を細めました。
「本当よ! 珍しいお肉を獲ってこいって言ったのに、お腹を大きくしたティガレックスとベリオロスを両手に抱えて帰ってくるんだもの。節操なしの極みよね!」
「本当にあの節は、色んな意味ですみませんでした……」
旦那様はナルガを右翼に、わたしを左翼に抱え込んだまま、恐縮しきって小さくなっていました。
因みに旦那様がお姉様達をどうやって宥めたかと言えば……旦那様が干からびるまで搾られることで許してもらえたそうです。
レウスは数日間の禁欲で済みましたが…お姉様方は数週間の禁欲でしたからね…それはもうレウスは悲鳴をあげていました。因みに…一番容赦がなかったのはミツネでした。
まあそんなこんなで、こうしてレイアから、サクラ、ミツネ、ナルガ、ゼクス、ティガ、そして最後にわたしが加わり、総勢7頭の最強最悪な愛妻たちによる『リオレウスの異種族ハーレム』が、めでたく完成したというわけです。
ミ「お姉様、旦那様の帰りが遅いですね?」
レ「きっと一生懸命探してくれているのよ」
ゼ「そうだと良いんだがな」
ナ「お肉美味しい」
サ「まさかまた雌を引っ掛けて来たりしていないでしょうね…?」
数週間後
全「「「「「……………」」」」」
ゼ「…ムラムラが…限界だ…」
全「「「「……そうね……」」」」
サ「…迎えに行くわよ…」
全「「「「賛成。ジャンケンポン!」」」」
レ・サ「「バカ旦那を回収してきます」」
◆
べ・ティ・屑「イチャイチャ♡」
レ・サ「「何やってるの♡あ・な・た♡」」
屑「\(^o^)/オワタ」
べ・ティ「「既成事実♡」」
レ・サ「「巣に帰ったら覚悟してね♡」」
屑「悪りぃ、俺死んだ♪」
ではもう一つアンケートを。この中なら次は誰がいいですかね?
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