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あれから、数年の時が流れた。 白銀の雪山で繰り広げられたあの大修羅場を最後に、あのレウスの「女誑し」もようやく鳴りを潜め、これ以上番が増えることはなかった。
さすがの魔王も、7頭の嫁たちによる完璧な監視網と底なしの義務に心底コリゴリしたのだろう。
今ではすっかり、一族の大黒柱として(胃を痛めながらも)真面目に暮らしているようだ。
――そして、俺はといえば。
かつて雪山のキャンプで焼き肉を食いながら、ふと思いついたあの日銭稼ぎの妄想。
それが、今や信じがたい現実となって俺の前に転がっていた。
俺の懐は今、笑いが止まらないほどに大層膨らんでいる。
あの時、自分じゃ扱い切れないとギルドマスターに丸投げした「レウスのモテる秘訣」の報告書。
どうやらうちのギルドマスターには眠れる凄まじい文才があったらしい。
俺が提出した生々しい浮気の記録、キスの現場、そして修羅場の数々を読んだ彼は、何を血迷ったか「これを恋愛小説風にアレンジすればいける!」と謎の覚醒を遂げてしまったのだ。
そうして裏で密かに出版された本は、発売されるや否や、あっという間に完売。
増刷に次ぐ増刷を重ね、今や街の若い女性たちの間で人気が爆発していた。
「ねえ、最新刊読んだ? あの『赤い竜の君』が、今度は『漆黒の隠密美女』の沼にはまって初めての不純な不倫をしてしまう話!疲れているのに彼女の前では元気になって身体を重ね、彼女が声を一生懸命押し殺しているのに彼はドンドン激しくがっつくようになる!」
「色を好む彼はまさしく若き英雄王。妊娠させた彼女を側室に迎える彼は色欲王!」
「でも私はやっぱり、強気な桜色の彼女が最後は彼の翼の中でしおらしくなるシーンが好きだなあ!」
「いや、私は夜の渓谷での哀愁漂う和装美人を口説いてそのまま天然の石鹸を使ったヌルヌルローション野外プレイが一番好き!というかしたい!」
「わかってないね!こういうのは原点にして頂点!正妻、箱入り娘が母になる成長過程と正妻故の側室とは違う熱が籠もっている1巻が至高なのよ!」
ギルドの酒場では、街の娘たちだけでなく、普段は荒々しい大剣やハンマーを振り回している女ハンターどもまでが、本を片手に頬を赤らめて大騒ぎしている。
時折、あの事情を知らない受付嬢たちまでが「こんな素敵な旦那様、どこかにいないかしら」なんて噂話をしているのを聞くたび、俺はジョッキの酒を吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。
(おいおい、お前らが憧れてるその『理想の旦那様』の正体、家出先でベリオロスに軟禁されて白目剥いてた、あのたらしレウスだぞ……因みに次の新巻は軟禁ヒモ生活ダブル不倫&既成事実編だ…というかライゼクス人気ないな。男勝りな女がタイプなもんでね、俺はライゼクスが推しなんだ)
まあ、それはさておき。本当のネタ元が「現役の大型モンスター」だなんて、口が裂けても言えないな。
「先輩、最近狩猟クエやってませんけど何してんです?」
「ん? 俺か?」
酒場の喧騒から少し離れた特等席で、俺は新調した最高級の防具に手を置きながら、ニヤリと不敵に笑った。
「俺は今もあのレウスの『監視』を続けているさ」
……いや、今となってはギルマス直属の、『次作の小説のタネ探し』という名の極秘クエスト、と言った方が正しいか
終わらない繁殖期を過ごすあの大家族は、今やギルドの貴重な財源兼恋愛バイブルのモデルとして完全に人間サイドと奇妙な共生関係を結んでいた。
今日も今日とて俺は手帳と双眼鏡をカバンに詰め込む。
あのレウスを一番理解し、奴の背徳の歴史を特等席で見届けてきたハンターは世界中でこの俺だけだからな。
「さあて、レウス。今日はどんな面白い家庭内トラブルを見せてくれるんだ? 俺の明日のメシ代のために、せいぜい派手にやらかしてくれよ?」
俺は背中に愛用の大剣を背負うと、まだ見ぬ「最高のネタ」を求め、今日も元気よく、あの不可侵の楽園へと向かって歩き出すのだった。
だが…この平和が嵐の前の静けさだったことに気づくのは…すべてが手遅れになったあとだった。
◆
「……聞こえぬか、セバスチャン。また街の愚民どもが歌っておる。あの、忌々しい羽虫を称える詩をな」
深夜の王宮。豪奢な絨毯が敷き詰められた執務室で、王は酷く不機嫌そうに窓の外を睨みつけていた。傍らに控える老執事は、音もなく一歩前へ出ると、恭しく頭を垂れた。
「……人民どもはただ、数年前よりこの地方の空に君臨するあのリオレウスの威風に怯え、同時に憧れているだけにございます。無知な者たちの戯言、陛下が御心を痛められるまでもございません」
「痛める? 違うな、余は憤怒しておるのだ!」
王は振り返り、机の上の書類を激しく叩いた。その顔は、特権階級としてのプライドと、剥き出しの『嫉妬』で赤黒く染まっている。
「たかがモンスター風情が『空の王者』だと? 笑わせるな。この地の王は余ただ一人! 民を統べるのも、敬われるのも余の特権だ。それを、あの鱗塗れの化け物が掠め取っていく。……だが、それだけならまだ良かった。まだな」
王は低く、地を這うような声で言葉を紡ぐ。その瞳には、暗い怨嗟の炎が揺らめいていた。
「風の噂で聞いたぞ。あのリオレウス……何頭もの雌を従え、巣に侍らせているそうではないか。側室を迎え、ハーレムを築いておるのだ。……この余でさえ、正妃との冷え切った関係に耐え、血統を守るために義務として夜を過ごしているというのに! 獣の分際で、本能のままに己の欲望を満たし、王のごとく一族の頂点に君臨するなど……絶対に許せん! 万死に値する!」
激昂する王を前にしても、老執事は眉一つ動かさず、静かに懐から一通の黒い書状を取り出した。ギルドの検印がない、裏社会だけで流通する違法な依頼書である。
「……左様でございますか。なれば、あの『王』には、その座を降りていただかねばなりませんね。ギルドを通さぬよう、裏の手配を進めて参ります。かの地へ向かうハンターたちには、特級の閃光玉と、巣の雌たちを一網打尽にするための特殊な致死毒を支給いたしましょう」
「それでいい。ギルドの耳に入れば生ぬるい連中が騒ぎ出すからな。これは余の聖戦だ。……奴が自慢の翼を捥がれ、側室どもの前で無様に這いつくばる姿を、余はこの目で拝んでやりたい」
王はグラスに注がれた赤ワインを口に含み、醜く口元を歪めた。
「準備を急げ、セバスチャン。偽りの王から、その『王冠』を引き摺り下ろしてやるのだ。金に糸目はつけるな。雑魚でも構わん、とにかくハンターどもを集めろ。もちろん秘密裏にだ」
王は吐き捨てるように命じ、狂気を含んだ目で執事を睨みつけた。
「あのリオレウスに怒りを溜め込んでいるのは、余だけではないはずだ。裏にはそんな人間がいくらでも転がっている。声をかければ、すぐに何十人も集まる。奴らに触れ回っておけ。――『最上級の鎧と武器、潤沢な罠、そして飽きるほどの食料は全て支給、何より報酬は大金』とな」
「……御意。金に釣られる命知らずや、レウスへの私怨に燃える者ならば、裏のギルドを使えば明日にでも揃いましょう。ですが陛下、それほどの数を一度に動かすとなれば、いくら隠蔽工作を施そうとも、いずれギルドの正規ハンターや書士官に察知される恐れがございます」
セバスチャンの冷静な指摘すら、今の王の耳には届かなかった。王は首を激しく横に振り、さらに信じがたい言葉を口にする。
「構わん! 察知される前に、物量で押し潰せば良いのだ! ……それと、セバスチャン。余の鎧も持ってこい」
老執事の眉が、この夜初めて、わずかにピクリと動いた。
「……陛下の、鎧、でございますか?」
「そうだ。余も行く。あの化け物が自慢の翼を捥がれ、側室どもの前で無様に這いつくばる瞬間を、余はこの目で拝まねば気が済まんのだ。偽りの王が惨めな肉塊へと変わる様を見届けて初めて、余のこの乾きは癒える」
王の瞳は完全に血走り、もはや正気の色を失っていた。自分が一国の王であり、その命がどれほど重いかなど、リオレウスへの底知れぬ嫉妬の前にはどうでもよくなっていた。セバスチャンはしばし沈黙した。王の無謀極まる出陣。止めようと思えば、いくらでも論理的な言葉を並べられたはずだった。
しかし…老執事は深く、深く頭を垂れた。
「……承知いたしました。ただちに、陛下のための極上の大剣と、特注の厚き鎧を御用意いたします。そして、命を捨てる覚悟のある『
影が蠢く深夜の執務室で、偽りの王を屠るための、最悪の軍勢が組織されようとしていた。
◆
「…討伐部隊はどうなっておる?」
「すべて順調に進んでおります」
その返事に王は下卑た笑みを浮かべる。
「ふん…モンスター風情がハーレムを築くなど片腹痛いわ。混血のガキどもは学者かコレクターにでも売りつければ、今回の出費を補う額にはなるだろう…」
いつの時代も、救いようのない愚か者はいるものだ
さてと…暫くシリアスなシーンに入りますかね……
皆様大好きベテランハンターの命はどうなるやら…
ではもう一つアンケートを。この中なら次は誰がいいですかね?
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〇欲復活・護龍アルシュベルド
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ジュースにされた・レ・ダウ
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ナニしても起きない・エスピナス
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嫉妬深い・レイギエナ
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体格差・ホロロホルルとトビカガチ