ああ…疲れたぞ……。
本文約7000文字
後書約5000文字
合計約13000文字
両角を失った切り口から、今まで行き場をなくし燻っていた怨念が、黒赤く禍々しい炎となって爆発的に噴き出した。
ゴウッ、と空気を焼き焦がす悍ましい音が響き渡る。雌を得られないのなら、自分が存在する場所そのものを誰にも譲らない。ただ己という存在を世界へ証明するためだけに、狂った力が彼の肉体へと注ぎ込まれていく。
(ああ……あああああッ!!)
言葉にならない絶望の絶叫とともに、彼の肉体は防御を完全に捨て去り、ただひたすらに攻撃と戦闘を行うための狂器へと変質を始めていった。
雌へアピールするための美しき頭部の角という、生物としての「装飾」は完全に削ぎ落とされた。両角のあった土台はバキバキと音を立てて融合し、頭蓋骨や額の甲殻が異様な厚みを持って肥大化していく。
それは正面衝突の衝撃に耐えるためだけに特化した、「角のない、無骨なる鉄兜」のごとき醜悪な面構えへと変貌した。
首と肩の筋肉は、首をねじ切らんばかりに極端に隆起し発達していく。
両腕の刃は自らの肉体を裂きながらさらに巨大に、鋭利に伸長し、獲物を両断するための凶刃へと進化した。
尾の先端にある刃尾は、より複雑に、肉を抉り骨を砕くための歪な形状へと変形を遂げる。
そして、肉体を包む鬼火は、世界への逆恨みを燃料にして、これまでにないほど禍々しく高密度な黒赤き怨炎へと凝縮されていった。
両角を完全に失った彼には、もう守るべき象徴も、簒奪すべき希望も存在しない。失うものは、何一つとしてなくなったのだ。
故に、彼は「守る」という生物としての目的を完全に捨て去った。ただ目の前のすべてを破壊し、蹂躙し、己の存在を世界に刻みつけるためだけに、全てのエネルギーを攻撃へと回す――これこそが、通常の個体を遥かに凌駕する、最悪の変異であった。
立ち上がったその異形には、かつての滑稽な亡霊の面影はなかった。そこにいるのは、ただ世界への怨みだけで動く、剝き出しの暴力の化身だった。
「……それがお前が選んだ道か」
最期まで他者への逆恨みと怨みを胸に抱き、異形へと成り下がったマガイマガド。その哀れとも思える姿を前にして、レウスが抱いたのは、恐怖でも怒りでもなく……底の抜けたような呆れだった。
「悪いが……お前が近くにいると子ども達への教育に悪い。だから力尽くで追い出させてもらうぞ」
静かに、けれど絶対的な拒絶を告げて、レウスは力強く羽ばたいた。次の瞬間――。ゴウッ!! と爆風が荒野を打ち据え、マガイマガドの視界から地面が消え失せた。
レウスが、常人の目には見えないほどの神速で肉薄し、その強靭な爪でマガイマガドの巨体をガッチリと掴み上げたのだ。
そのまま、天を衝くような勢いで遥か上空へと羽ばたいていく。都に残された最愛の番と、そのお腹にいる新しい命。彼らにこれ以上の被害や不快な光景を及ぼさないために、レウスは文字通り、この害獣を竜の都から遥か遠くへと強制的に排除したのだ。
だが――天空へと連れ去られるその最中、猛烈な風に晒されながらも、マガイマガドにとってはどうでもよかった。
もう……既に生物としての理性も、知性も、意思も……何もかもが、あの狂気的な肉体の変異と共に、跡形もなく消し飛んでしまっていたのだから。脳髄を支配するのは、世界を呪う黒赤き怨炎の衝動のみ。ただの動く破壊兵器と化した異形は、王の爪の中で、中身の抜けた咆哮を虚空へと響かせるだけだった。
「……これほどまでの力を得たのならば、姿さえ受け入れればお前を求める雌もいるだろうに……今のお前には、そんな雌さえも敵に見えてしまうのだろう……」
風を切り裂き、高速で空を飛びながらレウスは爪の中の異形を見下ろして呟いた。
常に狂ったような怒りと肉体を削る苦痛に苛まれているその状態では、もう近づいてきた者が、かつての彼女のように自分を慕う雌なのか、あるいは自分を討ちに来た敵なのかを冷静に判断できる理性など、一欠片も残っていない。
「いや……今更そんな雌が現れ、肯定してくれたとしても、お前にとっては哀れみという屈辱であり、トラウマを刺激するものでしかないのかもしれない」
レウスの黄金の瞳が、悲哀と、それ以上の冷徹さを湛えて細められる。
「雄としてのプライドをズタズタにされたお前が選ぶのは、愛を受け入れることではない……『自分を否定した世界への、徹底的な報復と拒絶』だろうからな……」
レウスはひたすらに、静かに呟き続けた。それは眼下の化け物に対する対話ではなく、ただ自然の理として、目の前の哀れな存在の本質を断定する言葉だった。
この間も、マガイマガドは必死の抵抗を続けていた。巨大な腕刃を振り回し、禍々しい黒赤の怨炎を爆発させ、自分を拘束する王の強靭な脚を幾度となく打ち据える。
だが、レウスの呟きは……当然、届いていない。耳を叩く暴風の音も、王の言葉も、今のマガイマガドにとってはただの雑音にすぎなかった。彼の壊れた世界にあるのは、肉体を焼く苦痛と、目の前のすべてを噛み砕けという暴走した破壊衝動のみ。
かつて簒奪しようとした雌の面影すら、もうその昏い脳髄からは完全に消え失せていた。ただ、世界を呪う。自分を嗤ったすべてを滅ぼす。知性を失い、純粋な「悪意の兵器」へと成り下がった雄は、自分を運ぶ空の王の肉体を、ただただ狂ったように貪り食おうと牙を剥き出しにするだけだった。
レウスはひたすら、飛び続けた。二度と己の目の前にこのマガイマガドが姿を見せることがないように、遠く、遠くへと羽ばたき続ける。山を越え、谷を越え、灼熱の火山と極寒の雪山をも超える。やがて広大な海をも飛び越え、遥かなる別大陸へと到着した。
「……ここまで離れれば、お前が戻ってくるのには相当な時間が掛かるはずだ」
そう言って、レウスは掴んでいた爪を離した。重力に捕らえられたマガイマガドの巨体が、上空から地上へと真っ逆さまに落下していく。
だが、知性を失ってもなお、その肉体に刻まれた戦闘生物としての本能は生きていた。凄まじい風圧のなか、空中を反転して衝撃を受け流し、四肢で荒々しく大地へ着地する。
ドオォンッ!
と凄まじい衝撃波をあげ、黒赤き怨炎を撒き散らしながら着地した。しかし――レウスの追撃は、すでにその頭上に迫っていた。
「やっぱりお前は油断が出来ない」
着地の瞬間の隙を、レウスが見逃すはずもなかった。言葉と同時に、レウスが弾丸のような速度で急降下を仕掛ける。
ズガアァァァンッ!!!
荒野の岩盤そのものが底が抜けたように沈み込むほどの質量と速度。レウスは急降下の勢いをすべて乗せた強靭な脚によって、着地したばかりのマガイマガドの背中を、容赦なく、そして完全に踏み潰した。骨の砕ける音が辺り一帯を支配した。しかし…
「骨が砕けても尚、お前は怨念の炎を燃やし続けるか……」
レウスの脚に踏み荒らされ、たった一撃で骨を粉々に粉砕されたというのに。マガイマガドの目に宿る黒い炎は、未だ消え去ることはなかった。
すでに生物としては動くはずのない肉体を無理やり動かし、戦いとは呼べない執念の暴発を継続しようとする。
「……生憎、お前にはもう付き合いきれん。ここで野垂れ死ぬなり、縄張りを得るなり、暴虐の限りを尽くす暴力の化身となるなり好きにしろ」
そう言ってレウスは羽ばたき、空へと舞い始めた。冷徹な断絶の宣告。これ以上、この狂った亡霊に割く時間は一秒としてない。
「ただし――これを食らって生き延びれたらな」
レウスが上空から冷酷に見下ろした瞬間、その大きな顎から、巨大な豪火球が吐き出された。まるで夜の闇を昼に変えるほどの紅蓮の猛火だった。
マガイマガドは……それを避けることが出来なかった。いや、避けるという発想すらなかった。今の彼の肉体には、己を「守り」「逃げる」という選択肢が完全に欠落しているからだ。ただすべてを拒絶し、正面衝突することしかできない壊れた狂器。
ドゴォォォォンッ!!!
大爆発と共に、マガイマガドの巨体は正面から豪火球を浴び、肉体が黒く、醜く焼け焦げていく。甲殻は弾け飛び、内臓を爆風が駆け抜けた。爆炎が晴れ、静寂が荒野を包み込む。
――それでも。その化け物は生きていた。全身を黒焦げにされ、骨を砕かれながらも、変質した鉄兜のような頭部をゆっくりと持ち上げる。知性も、番への妄執も、すべてを失いながらも、ただ「世界を拒絶する」という怨念の炎だけが、煤まみれの肉体の奥底で、未だにチリチリと不気味に燻り続けていたのである。
「……呆れた生命力だ。もういい。勝手にしろ」
そう言って、リオレウスは冷たく吐き捨てると、翼を広げて海の向こうの住処へと帰っていった。この別大陸へと残されたマガイマガドは、文字通りの虫の息となりながら、どことも知れぬ大地をあてもなく徘徊し始めた。
やがて、彼の焼かれた肉体から漂う生々しい血と焦げた肉の匂いによって、手負いの獲物を仕留めようと、この地の凶暴なモンスターたちが次々と姿を現し始める。
しかし――近寄ったすべてのモンスターは、凄惨な返り討ちにあった。彼らに蹂躙されたその肉体は、捕食のためではなく、必要以上に執拗に痛めつけられ、元の原型すら留めていない肉の塊へと変えられていた。
このマガイマガドには、もはや縄張りを得るという生物としての本能すら残されていない。ただ、自らの目の前に現れる「敵」を、自分を否定した世界の全てを、一頭残らず滅ぼしていく。
さっき自分を叩き潰したレウスの姿も、すべては黒赤き怨炎の彼方へ消え去った。何もかもを失った壊れた狂器は、ただ、その身が完全に朽ち果てるその瞬間まで、終わりなき報復の拒絶を叫び続ける。
◆
あの日、黄金の瞳を持つ竜によって、かつての王都は竜の都へと変わった。それから王都を捨て、遥か海を渡った別大陸の都へと避難したセバスチャンと正妃は、そこでは何の権力も持たないただの移民でしかなかった。
莫大な財産こそあれど、異郷の地では貴族の血統も、かつての地位も通用しない。
「しかし……この私の頭脳までは、置いてきていませんよ」
新天地の安宿で、元執事は不敵に微笑んでいた。彼は驚異的な手際で動き始めた。かつての王都で、嫉妬に狂った王の心理を巧みに操り、リオレウスという絶対的な暴威を利用して謀殺したように、彼はこの新しい都の王をも、じわじわと追い詰めてゆく。
セバスチャンのやり方は冷徹で、かつ完璧だった。宮廷の影に潜り込み、現国王に関するあることないことをでっち上げ、醜悪なスキャンダルや失政の噂として街に流布させた。
重税の噂、異端の信仰、他国との密約――巧妙に仕組まれた偽情報により、少しずつ、だが確実に市民からの王への信頼は削られてゆく。
その一方で、セバスチャンは己の立場を徹底的に利用した。王の財産を惜しみなく投じ、貧民街への炊き出しや、孤児院の設立、果ては都市の防衛案の提出まで行い、市民からの絶大な信頼をまたたく間に稼いでゆく。
人々は彼を「異郷から来た、慈悲深く聡明な聖人」と称え、無能な現国王を引き摺り下ろす象徴として祭り上げ始めた。
策略、扇動、そして時には…暗殺。かつて培った闇の技術のすべてを動員し、気がつけば約1年が経過していた。かつて移民としてこの街の門を潜った男は、いまや最も豪華な宮殿の、最も高い場所にいた。
豪奢な謁見室。王座の間。その王座に座る王の隣には、今やこの国の王妃となった、かつての正妃が妖艶な笑みを浮かべて寄り添っていた。
その王座についていたのは……他でもない、元執事であり、現国王のセバスチャンであった。
「……フフ、ハハハハハ!」
セバスチャンは王冠を弄びながら、低く、愉悦に満ちた笑い声を響かせた。一国の王をモンスターの手で屠り、国を滅ぼし、自らは異郷の地で新たな王へと登り詰める。
これ以上ない完全犯罪であり、完璧な玉座の強奪だった。窓の外には、彼を称える新市民たちの歓声が地響きのように鳴り響いている。彼らの頭上には、澄み渡るような青空が広がっていた。かつて、大討伐部隊を灰にしたあの「絶倫王」の影など、この大陸にはどこにも見当たらなかった。
……あの「絶倫王」の影はなかった。この大陸のどこを探しても、あの忌まわしき鱗も、天を焼く爆炎の兆候すら見当たらない。
王となってからも、セバスチャンは徹底して善政を敷き、市民からの信頼をさらに強固なものへと稼いでいった。
内政を整え、経済を潤し、民の声を聴く。かつての王が持たなかった冷徹なまでの知性と合理性で、彼は完璧な「名君」を演じ切っていた。
美しき正妃を隣に配し、権力も、富も、名声も、何もかもが完璧。すべてが満たされ、彼は己の人生を最高潮に謳歌していた。
――しかし、その完璧な平穏に、突如として不穏な亀裂が走る。
「……陛下、辺境の領地より緊急の報告が。『両角が折れた』マガイマガドと呼ばれる、見慣れぬ牙竜種のモンスターが近隣を徘徊しているとのことです」
報告に上がった衛兵の言葉に、セバスチャンは眉をひそめた。マガイマガド――怨虎竜。この大陸では珍しい、怨念のガスを纏う狂暴なモンスターだ。だが、セバスチャンの警戒を引いたのは、その「両角が折れた」という異様な特徴だった。
不審に思ったセバスチャンが、即座にこちらのハンターギルドへ問い詰めさせた所、信じがたい返答が戻ってきた。
「あれは……かつて海の向こうの大陸で、『黄金の瞳を持つリオレウス』が、徹底的に叩きのめして捨てていった特殊な個体にございます」
黄金の瞳を持つリオレウス。その名を聞いた瞬間、セバスチャンの背筋に冷たい戦慄が走った。忘れるはずもない、かつての主である前王を屠り、一つの国を消滅させたあの生ける天災。
「……その、黄金の瞳のレウスはどうした。まさか、この大陸へ追ってきたのか?」
セバスチャンは声を潜め、ギルドにさらに詳細な情報を求めた。帰ってきた答えは、こうだった。
「いえ。そのリオレウスはマガイマガドを完全に放逐した後、一度とある大岩で塞がれた洞窟の前まで接近すると、暫し悩んだような様子を見せた後、再び海の向こうへと帰っていったとの目撃例がございます」
その情報に、セバスチャンは一度は深く安堵の息を漏らした。
(そうか……。あの怪物は、あくまで己の家族と縄張りを汚されたから怒り狂っただけ。私のことは関知していない。もう追っては来ないのだ)
しかし――本当に恐ろしいのは、それに続く「次の報告」だった。ギルドの調査員は、青ざめた顔でこう告げたのだ。
「問題は、残されたあのマガイマガドにございます。奴はリオレウスに完膚なきまでにプライドをへし折られた結果……その凶暴性、攻撃性が、通常個体とは比べ物にならぬほど異常に高まっております。そしてそれに比例するように、戦闘力も非常に高いです。 執念だけで生き永らえ、ただ眼前にある動くものすべてを八つ裂きにせんと、この都へ向かって進撃を始めています……!」
その報告を聞いた瞬間、部屋の空気が凍りついた。
「な……に……?」
セバスチャンの額に、一筋の冷たい汗が流れる。海の向こうから厄災が直接追ってきたわけではない。しかし、あのリオレウスが残した圧倒的な敗北の怨念と狂気が、皮肉にも巡り巡って、この新天地にいるセバスチャンの喉元へと突きつけられたのだ。
マガイマガドが纏う紫色の鬼火は、まるで死んだ王の怨念そのもののようでもあった。完璧だったはずのセバスチャンの支配に、かつての復讐の残滓が、最悪の怪物という形を取って襲いかかろうとしていた。
◆
一方その頃。マガイマガドが海の向こうの別大陸へと隔離されてから数日が経過した。あの竜の都にて、リオレウスたちモンスターと共存し、一連の喜劇を傍で見守っていたあのハンターから、一つの報告書が届く。
宛先は、セバスチャンがいる大陸とは別大陸のハンターギルドへ新たに就任した、元・王都のギルドマスターだ。
執務室で、ギルドマスターは届けられた書簡の封を切った。そこには、都での騒動の顛末が、ハンターらしい簡潔かつどこか茶化した筆致で綴られていた。
『ギルマス、『赤い竜の君』の、いいタネがあったぞ』
読み進めていくうちに、ギルドマスターの厳格な顔が、不敵な笑みへと歪んでいく。
「ふふっ……これではまた、私の財布が膨らんでしまうな」
彼は楽しそうに独りごちると、頭の中で副業である小説の構想を、小気味よく練り始めた。傲慢な自尊心の果てにすべてを失い、それでも世界を呪い続ける哀れな狂王。
本物の愛と絆を知る『赤い竜の君』を引き立てる悪役としては、これ以上ないほどに上質で、滑稽で、最高に醜悪な素材だった。
ペンを転がしながらさらに報告書を読み進めていくと、最期に、走り書きのような一文が付け足されていた。
『追記。レウスの奴が、そっちの大陸の方角に飛んでいった。あの化け物を近くにポイ捨てしてるかもしれないから、一応気をつけてくれ』
「ふむ……」
ギルドマスターは手元に置いた別大陸の白地図へ視線を落とした。肉体が異常に変質し、防御を捨てて攻撃性のみを極限まで高めた、ギルドの予測を遥かに超える危険な特殊個体。
「角が両方折られた、マガイマガドか……角を失ったから弱くなったのではない……角を失ったことで、戦うことしかできない怪物になった……」
世界の調和を脅かす、ただ世界を拒絶するためだけに生き永らえる、名前のない怪異。ギルドマスターは、その哀れな怪物へ、ギルドとしての正式な「二つ名」を付けるべく、静かに唇を動かした。
「二つ名を付けるなら……『絶角の修羅 マガイマガド』、と言ったところか」
その怪異が、どれほど凄まじい怒りで大地を血に染めようとも。人間の、そして世界の歴史にとっては、一冊の本を彩るための、ただの一節にすぎない。
海の向こうから響く、届くはずのない遠い咆哮を嘲笑うかのように、ギルドマスターの執務室には、ただ楽しげなペンの走る音だけが、いつまでも静かに響き渡っていた。
※AI生成
【挿絵表示】
『絶角の修羅 マガイマガド』
(※ほぼノトーリアスBIG)の基本的性質
この個体を一言で表すなら、「死にさえ拒絶されて戦い続ける、攻撃特化型の狂戦士」でしょう。
通常のマガイマガドなら鬼火を利用した攻撃、巨大な角や甲殻による威圧、前脚の刃、尾、身体能力、狩猟本能、などを総合的に利用して戦う。
ところが絶角マガドは、それらの中から「生存」「繁殖」「縄張り」「防御」などの要素を極端に切り捨てています。
残っているのは、敵を見つける → 接近する → 破壊する → 自分が壊れても再び攻撃するという極めて単純なサイクル。そのため、通常個体とはかなり異なる戦闘になります。
① 戦闘方法
「防御」という概念がない最大の特徴はここ。
『肉体は防御を完全に捨て去り、ただひたすらに攻撃と戦闘を行うための狂器』
つまり普通のモンスターなら、攻撃 → 回避 → 防御 → 隙を窺う → 攻撃という戦闘になります。
しかし絶角マガドは、攻撃 → 攻撃 → 攻撃 → 被弾 → 攻撃 → 被弾 → 攻撃です。
レウスの豪火球に対しても、「避けるという発想すらなかった」としました。「避けられない」のではなく、「避けるという行動そのものを選択肢として認識していない」わけです。
② 正面突破型
頭部が「角のない、無骨なる鉄兜」へ変化しているのも戦闘スタイルと完全に噛み合っています。角は失われていますが、その代わり、頭蓋骨、額の甲殻、首、肩、が異常発達しています。したがって、絶角マガドは頭部を単なる弱点ではなく、「正面から敵へ突っ込むための装甲」として使う。(ポケモンならアイアンヘッド、もしくはすてみタックル)
イメージとしては、頭突き→相手の攻撃を真正面から受ける→首・肩で衝撃を受け止める→そのまま前脚の刃で斬るという非常に荒々しい戦法です。
③ 前脚の刃は主兵装
『両腕の刃は自らの肉体を裂きながらさらに巨大に、鋭利に伸長』しています。単純に「大きくなった」だけではなく、自分自身の肉体を破壊してでも武器を大型化しているんですよね。したがって、この個体の前脚は、相手を捕まえる捕食器官ではなく「殺傷兵器」に近くなっています。攻撃方法としては、横薙ぎ、縦斬り、両腕による挟撃、地面への叩きつけ、突進しながらの斬撃、相手を押さえつけて連続斬撃、などが考えられます。
特に怖いのが、「攻撃を受けながら斬る」という戦法でしょう。普通なら、「攻撃を受けた! 一度距離を取ろう」となります。絶角マガドは「腕を斬られた! なら反対の腕で斬る」となる。しかも痛覚や恐怖による行動抑制がほぼない。
④ 尾も完全な殺傷武器
尾についても、「肉を抉り骨を砕くための歪な形状」へ変形しています。つまり通常の尻尾攻撃よりも、「毒針」や「槍」ではなく大型の破砕刃に近い。前脚が正面の敵を攻撃する武器なら、尾は死角を補う武器。そのため、正面から前脚で攻撃している最中、後方から尾が襲ってくるという非常に厄介な立体攻撃が成立します。
⑤ 怨炎は「攻撃力」だけでなく生命維持にも関係している
ここが、この個体最大の異常性だと思います。本文には、「生物としては動くはずのない肉体を無理やり動かし」とあります。さらに、骨を砕かれた、豪火球で全身を黒焦げにされた、内臓を爆風が駆け抜けた、それでも生きていた、となっています。つまり怨炎は単なる武器ではなく、絶角マガドを動かし続ける「異常な生命活動の燃料」になっています。
⑥ 「怨炎による疑似生命維持」
設定として整理すると、
通常マガド:肉体 → 生存活動 → 鬼火 → 戦闘
絶角マガド:怨念 → 怨炎 → 肉体を強制稼働 → 戦闘 → さらに怨念 → 怨炎増大
という循環になっている。つまり、「傷つくほど普通なら弱るのに、この個体は怨念が強まる」という恐ろしい性質を持たせられます。
⑦ 戦闘本能だけは残っている
完全に知能が消滅したわけではありません。ここも重要です。
落下した際、「空中を反転して衝撃を受け流し、四肢で荒々しく大地へ着地する」とあります。これは明確に、身体に染みついた戦闘技術・運動能力は残っていることを示しています。意思がないだけです。したがって、
知性:ほぼ消失
理性:消失
社会性:消失
生殖本能:消失
縄張り意識:消失
戦闘本能:極端に強化
回避・運動能力:残存
攻撃本能:異常強化
という状態でしょう。「ただのゾンビ」にはなりません。戦い方だけは異常に上手い狂戦士になります。
⑧ 最大の特徴は「撤退しない」
通常のモンスターには瀕死になれば逃げる、相手が強ければ距離を取る、縄張りを離れる、食料を確保する、休息するという生存行動があります。
しかし絶角マガドには、それがありません。だからハンターから見ると非常に厄介です。例えば通常個体なら、「瀕死になった。逃げた。追跡して討伐」となります。絶角マガドなら、「瀕死になった。それでも突っ込んでくる」です。討伐側が想定する「敵が弱っていく」という常識が通用しない。
生命力についてこれは作中でもトップクラスに異常でしょう。レウスから受けたダメージだけでも、巨体を掴まれて長距離飛行、高高度から落下、背中を踏み潰される、骨を粉砕される、豪火球を直撃、全身が黒焦げ、甲殻破壊、内部まで爆炎が侵入、その後も活動、別大陸を徘徊、他モンスターと連続戦闘です。それでも生きています。
なので、「耐久力が高い」というより、「致命傷を負っても活動を停止しない」タイプと考えるのが適切です。ここは似ているようで全然違います。
絶角マガドの生命力を段階化すると
状態 通常の生物 絶角マガド
骨折 戦闘能力低下 戦闘継続
重度外傷 逃走・休息 攻撃継続
内部損傷 瀕死 活動継続
全身火傷 戦闘不能 怨炎継続
致命傷 死亡 活動継続
敵襲 捕食される 逆に殺害
瀕死状態 防御・逃走 更に攻撃
このため、ギルドからすれば、「強いモンスター」より「死ににくいモンスター」の方が厄介という評価になりそうです。
危険性
この個体の危険性は、単純な攻撃力だけではありません。
第一の危険性:敵を選ばない「自分の目の前に現れる『敵』」をすべて滅ぼす。つまり、モンスター、ハンター、村人、別種族、大型モンスター、小型モンスター、などの区別がありません。古龍も無言で殺しに行く。オオナズチが透明化していても、半径10メートル以内に入れば無条件で襲いかかる。
第二の危険性:戦闘終了条件が存在しない
普通なら、敵が逃げる → 戦闘終了です。
しかしこの個体の場合、敵が逃げても追う可能性があります。
そして、自分が瀕死になっても攻撃する。したがって、遭遇した側からすると非常に危険です。
第三の危険性:周囲の生態系を破壊する
縄張りを作るわけでも、食料を求めるわけでもない。ただ敵を殺す。すると、モンスターAが接近→絶角マガドが殺す→血の臭いを嗅いだモンスターBが接近→絶角マガドが殺す→さらに別のモンスターが接近→また殺す。という殺戮の連鎖が起こります。
そのため、周辺一帯が長期的に危険区域化する可能性があります。
そして最大の危険性――「死なないこと」
この個体は、自分が死ぬことすら目的になっていないのが怖い。普通の狂暴なモンスターなら、「殺される」という恐怖があります。絶角マガドには、それすらない。
だからハンターからすれば、「倒すまで戦う」ではなく、「活動を完全に停止させるまで戦う」必要があります。
場合によっては討伐ではなく、「封印」「隔離」「追放」まで検討される個体でしょう。
絶命しないため、素材を剥ぎ取ることは不可能。そのため、特殊な手順を踏むことで素材の採取がようやくできる。
討伐難度:測定不能
捕獲:極めて困難
素材採取:特殊手順必須
① 絶角の修羅の鉄兜
最も象徴的な素材。両角が存在した部分の骨・甲殻が融合し、異常肥大化した頭部。表面の脱落しかけた甲殻を採取する。
特徴
極めて高い硬度、衝撃耐性が異常、正面からの攻撃に強い、通常のマガイマガドの角素材とは別物。
武器にすれば、「正面からの突進力を強化する盾槍」のような装備に向いていそうです。
② 絶角の怨炎殻
この個体の代表素材。通常の鬼火を遥かに超えた、黒赤色の怨炎を内部に封じ込めた甲殻。破壊しても内部から赤黒い光が漏れる。加工には非常に高い技術が必要。
用途は、爆発属性武器、高火力防具、炎を利用する装置、怨炎を封じる特殊容器など。
③ 絶怨の刃
巨大化した両腕の刃から取れる素材。普通のマガイマガドの腕刃より、攻撃性だけを極端に高めた刃。古くなった外層が剥離するタイミングがあるのでそこを狙って採取。つまり、「切り取る」のではなく「剥がれ落ちたものを拾う」
特徴として、「刃そのものが生物の骨格から形成されているため、異常な靭性を持つ」武器素材に使える。
④ 修羅の刃尾
尾の先端から取れる特殊素材。通常のマガイマガドの尾素材とは違い、「肉を抉り、骨を砕く」ことだけを目的に異形化した尾。大剣、太刀、チャージアックスなどの大型武器に使うと似合う。
これも同様。尾そのものを切断するのは危険すぎる。しかし戦闘によって尾刃の先端が欠けたり、古い外殻が脱落したりするなら、それを採取できる。
⑤ 絶怨の鱗
絶角の修羅の全身から取れる基本素材。通常のマガイマガドの鱗よりも、黒色、赤い亀裂、紫~赤の鬼火反応などが強く現れている。
防具にすると、攻撃力を上昇させる代わりに、防御性能を犠牲にするという、この個体そのものを再現したスキルをもつ。
⑥ 修羅の鬼火玉
かなり希少なレア素材。通常の鬼火玉よりさらに異質で、「怨念によって濃縮された鬼火の核」という位置付け。これが武器素材として使われるなら、かなり強烈でしょう。例えば、「攻撃するほど鬼火ゲージが増加する」みたいな武器特性。
⑦ 怨念の核
そして、この個体ならではの超レア素材。これは肉体のどこかに存在する「器官」というより、怨炎が凝縮して形成された異常なエネルギー結晶。
見た目は、黒い結晶の中心で赤い炎が脈動している。ようなもの。しかし、これを採取すると取り返しがつかなくなるため、実質採取禁止素材。
「角」は剥ぎ取れない。ギルドの素材鑑定書には、角――欠損。採取不能。と記録されている。
その代わりに、「絶角の鉄兜」が存在する。これによって、「角を失った結果、角素材を失った」ではなく、「角を失ったことで、別の未知素材が生まれた」という特殊個体感が出ます。
角を失ったことで、雄としての象徴を失った。
守る理由を失った。
防御を捨てた。
愛されることも望まなくなった。
ただ世界を拒絶する。
この個体の怖さは「最強だから危険」ではない。というところ。レウスには完全に力負けしている。実際、レウスに、掴まれる、運ばれる、踏み潰される、豪火球を直撃させられるという圧倒的な敗北を喫しています。それでもなお生きている。つまりハンターからすれば、「勝てない怪物」ではなく、「勝っても終わらない怪物」なんです。
装備・修羅【絶角】シリーズ。
属性耐性
属性 一部位 一式
火 +4 +20
水 −4 −20
雷 −2 −10
氷 +2 +10
龍 +1 +5
肉体を包む黒赤き怨炎そのものが鎧になっているため、「炎を燃料として取り込む」ようなイメージ。火属性には非常に強い。
逆に、怨炎によって異常な高温状態になっているため、大量の水・冷却攻撃に弱い。
つまり、「火には強い。しかし水には極端に弱い」というピーキーな防具になります。
スキル
このマガイマガドの本質は、「体力が減ったから強くなる」
ではなく、「傷つけば傷つくほど、怨念が燃え上がる」、ぶっちゃけ火事場力だらけのスキルと思ってください。
一式発動スキル
火事場力 Lv5・体力が一定以下になると、攻撃力大幅上昇防御力上昇・通常の火事場力に近い効果。ただし、この装備ではさらに――体力が低いほど怨炎の威力が上昇。
絶怨Lv3・この装備専用の固有スキル。
絶怨、受けたダメージが大きいほど攻撃性能が上昇する。さらに段階式。
残体力 効果
75%以上 効果なし
50~75% 攻撃力+10
25~50% 攻撃力+20、会心率+10%
25%未満 攻撃力+40、会心率+20%
爆破属性値上昇
まさに、「傷つけるほど強くなる」という絶角の修羅そのもの。
怨念Lv3・こちらは状態異常・怨炎方面。一定量のダメージを受けると、自動的に特殊な鬼火状態になる。ただし通常の鬼火纏とは違って、「絶怨火」と呼ぶ。そしてこの状態で攻撃すると、攻撃命中時に怨炎爆発が発生する。
つまり、被弾→怨炎が強くなる→攻撃→爆発→さらに戦闘継続という循環。
逆恨み Lv3・書くのが疲れたので省略。火事場力+逆恨み+絶怨の三段構えにすると、「体力を減らして戦う」という明確なコンセプトになります。
逆襲 Lv3・以下同文。吹き飛ばされた直後、「攻撃力が大幅に上昇」する。絶角マガド版では、吹き飛ばされた瞬間、怨炎が爆発的に噴き出すという演出を入る。
「鬼火纏」は勿論残します。ただし通常の鬼火纏ではなく、「絶怨纏」に強化。
通常のマガイマガド防具が鬼火を戦闘に利用するのに対し、絶角の修羅は、怨炎そのものを肉体の一部として扱う。
だから、鬼火纏、絶怨、怨念、を統合したような固有スキルにする。
一式完成形
こんな感じです。
修羅【絶角】シリーズ。
固有スキル・絶怨 Lv3・怨炎纏 Lv3・逆恨み Lv3・逆襲 Lv3・火事場力 Lv5・さらに、攻撃 Lv3・弱点特効 Lv2・災禍転福 Lv2あたりを装飾品や各部位スキルとして付ける。「防御力」は低め。
「防御性能は超高級装備としては中程度。しかし攻撃性能が異常」という設計。
さらに固有スキル、「修羅の肉体」を発動。
防御力を一定割合低下させる代わりに、攻撃力と怨炎威力を上昇。つまり、防具なのに防御力を自ら捨てる。これが絶角の修羅らしい。
一式装備時の完成イメージ
最終的には、「瀕死になればなるほど強くなる」装備にします。例えば、
HP100%・普通。
HP70%・逆恨み発動。
HP50%・絶怨発動。
HP30%・怨炎が強化。
HP20%・火事場力発動。
HP10%・絶怨・極状態。攻撃力・会心率・爆破属性・怨炎威力が異常上昇。ただし防御性能は大幅低下。つまりハンター側からすると、「あと一発で乙る!」と思った瞬間、「一番危険で最強な状態になる」
装備説明文
絶角の修羅の怨念を宿す防具。
守るために作られた防具でありながら、その思想は「傷つくほど強くなる」という矛盾に満ちている。死に瀕した時、宿る怨炎は最も激しく燃え上がる。
――それはもはや鎧ではない。
世界への拒絶、そのものだ。
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