異世界日記 ~魔法適正ゼロの現代人は 脳筋スキルで無双する~ 作:日月 幾人
一同は、○○大平原に伸びる××街道を行く。
「――で、あるからして……」
道中、オレは紳士改め◇◇男爵の親切心から、この世界の地理や風習についてレクチャーを受けていた。
レクチャーと言っても簡略的なもので、男爵が治めている領地と、その周辺くらいの狭い範囲の情報に留まっている。
これは、とりわけ男爵が世界情勢に
その辺り産業革命や世界大戦を経て、テクノロジーが発達した世界とは訳が違う。
個人が指を動かすだけで、世界中に張り巡らされているインターネットを介し、膨大な情報にアクセスする現代社会と比較するのは酷だ。
ちなみに地域や男爵の名称がいい加減なのは、マティルダ嬢のときと同じ理由で発音が難しいからだ。
(単に記憶を失う以前のオレが、いい加減な奴だったかもだけど……)
地域の歴史を教わる過程で、◇◇男爵家の成り立ちと功績について~を、
「町に着いたら、まず役所で尋ね人の確認をしよう。そなたの行方を捜している親類の方々が届けを出しているやも知れぬからな」
「それは――……どうでしょうね。オレはこの地方の生まれじゃないみたいだし……」
もう分かり切っていることだ。
記憶の断片から推測するに、オレが暮らしていたところは、こちらの世界とは決定的に異なる。
ゆえに、オレを捜している親類など居るはずがない。
「何か心当たりが?」
街道に転がる小石を車輪が
「い、いやほら、オレは顔立ちからして、皆さんとは違うじゃないですか!」
自分が別世界の住人など明かせば、気が触れていると思われかねないので、男爵たちには
「察するに、もっと東の生まれなんじゃないかなぁ、と……」
胸中を悟られまいとして
元居た世界で言うところの、西洋人に酷似した彼らが存在しているのだから、オレに近しい人種、すなわち東洋人風の者たちが治める国だって、どこかにありそうだ。
「うーむ……そなたは我らと同じ□□人の
男爵は怪訝そうな面持ちを浮かべ、その主張に賛同を得ようとマティルダ嬢と顔を見合わせる。
「こちら、使われます?」
マティルダ嬢も男爵と同意見のようで、手鏡をオレに差し出して確認を促してきた。
「――なるほどな……」
はたして、水溜まりより解像度の高い鏡に映ったのは、黄色人種の平凡な少年――ではなく、赤髪に碧眼を持つ異国風の少年だった。
彫りが深くはっきりとした顔立ちは、一般的な黄色人種の特徴とはかけ離れており……とはいえ、純粋な白色人種ともどこか異なるような感じでもある。
いずれにしても、男爵やマティルダ嬢が親近感を覚えるのも頷ける風貌だ。
(なんだろう……懐かしい感じだ……でも、この顔じゃあ、オレが異邦人なんて言っても説得力に欠けるよなぁ……)
手鏡の中で、東洋人であると主張した少年が顔を引きつらせている。
「無理もありませんわ。記憶喪失なのでしょう? あなたのエキゾチシズムなお顔立ち、
マティルダ嬢は「キャッ言ってしまいましたわ……!」と呟いて頬を染める。
「ふむ。最悪、親族が見つからなかったとしても、そなたほどの腕っぷしであれば、勤め先に困るどころか引く手数多だろう。
「やだわ、お父様ったら気が早い!」
「ハァーッ、ハッハッ!」
本人そっちのけで盛り上がる男爵親子。車内に響く二人の朗らかな笑い声に、オレは一人だけ
(まったく……)
顔を上げ窓越しに馬車の外を眺めれば、街道の先に密集した建物の影が見えてきた。
記憶を失くし、異世界で目覚めて、先行きの見えない状況に置かれているけど、人の良い親子に出会えたことは
第1章 目覚め・完
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