異世界日記 ~魔法適正ゼロの現代人は 脳筋スキルで無双する~ 作:日月 幾人
「えー……じゃあ、次の人どぞー」
役所
だから、魔法適性検査にしても、夕方まで待たされることを覚悟して列に並んでいたのだが、予想に反してオレの順番はすぐにやってきた。
当初、試験と聞いて予備知識のないオレは身構えていた。
けれど、先に検査を受けている受験者の様子を見るに、どうやら簡単に済むもののようだ。
「――つーわけで、この水晶に手ぇ乗せてくださいねぇ(アァ、ツマンネ)」
推測するに、オドとは魔法を行使するさいに必要になる精神力のことで、いわばゲームにおけるMPのようなものではないだろうか。
(精神力とは何か、という疑問は脇に退けておく……)
ちなみに、オド測定の明確な基準値及び合格ラインは不明。
どこかに得点が表示されるわけでも、試験官が検査結果を記入する様子もない。
これでは試験官の
(ルールが緩いのは世相を現れか?)
オレが居た世界でも、一昔前まではサラリーマンが仕事中に平気でタバコを吸っていたり、営業周りの途中で堂々とサボっていたりと、おおらかな時代があったらしい。
厳格なルールが敷かれるのは、時代を経て社会が十分に成熟した後であって、この世界ではこのくらいの緩さが普通なのかもしれない。
(いや、それとも……)
この空間が局地的に異例という線も考えられる。
右を見れば、血の気の多そうな半裸のむくつけ。
左を見れば、ボロを
些細なことから喧嘩になり、殴り合いを始める輩もいる。
いずれも暴力の臭いを漂わせ、
冒険者組合など名ばかりで、その実まるで凶悪犯の収容所のようである。
窓口が広くゴロツキ紛いの手合が集まる、という老執事の言葉の信憑性が増す――と思いきや、実際はまるで違う。
右を見れば、防御力の概念に挑戦する露出過多の鎧を着た女戦士。
左を見れば、とんがり帽子が歩いているような童女。
明日を夢見る少年剣士に、先輩風を吹かすかませ犬こと軽薄男。
(異様っちゃあ異様だけど、なんだか想像してたものと違うなぁ)
魔法が実現されている世界だから、見た目のたくましさと強さが必ずしも比例するわけではないのだろう。
「――あのー、ちゃんとやってくれませんかね…………(チッ、オワンネェンダケド)」
ふいに気怠そうな担当員から、試験に集中するように批難される。
確かにオレの意識は周囲へ逸れていたが、事前説明ではただ水晶玉に掌を乗せろと言われただけで、やれ呪文を唱えろとか、やれ気合を
「いや、だって水晶玉光らねぇし……これ、どゆこと?」
「いや、こっちに訊かれても……」
オレの番に限って、水晶玉はなぜだかまったく反応しない。
「オレ、なにかまずいことしちゃいました?」
「あー、ひょっとして故障かな? こーれ、けっこうお高いんスよねぇ……」
(動作不順の原因を
気怠そうな担当員は、オレに代わり水晶玉に掌を乗せて作動を試みる。
すると、これまでウンともスンともいわなかった水晶がにわかに光を発した。
「あぁ、ちゃんと光りますねぇ……(ハー、メンドクセ)……おーい――」
気怠そうな担当員は重い腰を上げ、近くにいる同僚のところへ行くと、こちらをチラチラと見ながら何事かを相談している。
(まるで、やる気のない店員みたいだ……レジの不具合に直面して、バイトリーダーにヘルプを求めて……いや、他人のことをとやかく言える立場じゃないな)
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