道中、クモの巣らしき糸が顔にへばり付き、不快感に舌打ちを漏らす。
さらに、鬱蒼とした道なき道を躓きそうになりながら歩く。
道中、ネズミに似た小動物が爪先を
ひたすらに、鬱蒼とした道なき道をかき分けて歩く。
四方からひっきりなしに響く鳥の鳴き声に、いい加減気が狂いそうだ。
(……いったい、どこまで続くんだ…………)
体が異様に軽いのだ。ひどい悪路を進んでいるのにもかかわらず、息一つ乱していない。
滅入る一方の気力とは正反対に、体力は満ち満ちている。
どうやらオレは、非常に運動能力に長けた人間のようだ。
それを自覚してからは、もう簡単だった。
遭難していることなどすっかり忘れて、意気揚々とずんずん先に進んでいると、当初苦戦していたのが嘘のように、あっさりと大原生林を踏破した。
◇◇◇
日光が木々によって遮られ、常に薄暗かった大原生林から、広々と開けた明るい世界へ。
急に訪れた明暗の差にオレは目が眩み、思わず掌をかざして顔をしかめる。
……しばらくして、ようやく眩しさに慣れた頃、この目に飛びこんできたのは、どこまでも続く空となだらかな地平線。青草が一面に生い茂り、吹き抜ける風に揺れている光景だ。
大原生林を抜けたその先で待っていたのは、まさしく大平原と呼ぶに相応しい圧巻の世界が広がっていた。
「ハァ~、まだまだ道のりは長いな…………」
(まあ、あんな森を抜けて、いきなり住宅街がこんにちは、なんてことはないだろうけど、ちょっとガッカリだ……)
雄大な景色に
大平原を前にしてポツンと一人佇んでいると、否応にも自分の置かれている状況を再認識させられ、飲み込んだはずの不安がせり上がってきた。
(と、とにかく干上がる前に、ここも通り抜けないとなっ)
まずは大平原を見渡し目印になる物を探す。
そこには細い木々と草食獣らしき影が点在しているくらいで、やはり民家といった人工物の類は見当たらない。ましてや人の姿など――……。
(――ん? あれは……)
一見すると、何も無いと思われた大平原だが、よく目を凝らせば、遠くの方に草を縫うようにして街道らしきものがあり、加えて停車している車らしき影と人だかりが目視できる。
(やった! あの車で人里まで送り届けてもらおう!)
オレはようやく捉えた人間の気配に歓喜し、車に乗車すべく全速力で駆け出した。
景色が滑るように流れ――風がごうごうと音を立てて顔にぶつかる。
持前の脚力を発揮して、ぐんぐんと加速し――草を薙ぐ勢いで大平原を疾走――――。
目標地点の全容は、距離が縮まるにつれて明らかになる。
(揉め事か? というか、え……あ、あれは何だ……?)
記憶にある常識とは、かけ離れた状況に唖然とする。
遠目で車と勘違いした物は、車は車でもエンジンを動力とする自動車ではなく、大型動物に牽引させる馬車であり、人だかりと思われたそれは、なんと異形の怪物に襲われている兵士だった。
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