異世界日記 ~魔法適正ゼロの現代人は 脳筋スキルで無双する~   作:日月ゆう

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拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです


ep.23 闘いのあと~余波・仲間結成

「さて、晴れて君は冒険者になるわけだが。どうだろう、一度私と仲間(パーティ)を組んでみないか?」

 

 

「え……」

 

 魔法使い(ウィッチ)の提案を聞いた周囲の人間がざわめく。

 

 こっそり耳をそばだててみると、孤高を気取る魔法使いが誰かを誘うのは、よっぽどのことらしい。

 

(ただの社交辞令と受け止めず、返事は慎重になるべきか……)

 

 抜きん出た実力者に認められたのなら光栄だけど、協調性のない人間である線も考え得る。

 

 憂慮するのは、魔法使いが誰とも仲間を()()()()()()のではなく、誰とも()()()()()()人間である可能性だ。

 

 冒険者の仲間ともなれば、ときとして命を預けることもあるだろうから、相手は吟味(ぎんみ)せねば。

 

「おっと! その話は、俺様を通してくれねぇとなあ!」

 

 ふいに群衆の中から声が上がる。

 

「ちょ、おい、やめ、どけって! ど・き・や・が・れ~~ッ……ぬがっぐぐぐぐ…………うおっ!?」

 

「……誰だ?」

 

 魔法使いは怪訝(けげん)そうな顔を浮かべる。

 

 人垣を無理に押し分けたことで反感を買い、皆に小突かれ(つまづ)きながら飛び出て来たのは軽薄男だった。

 

「君の仲間かい?」

 

「違う」「そうだ!」

 

 魔法使いの質問に、それぞれ異なる返答が重なる。

 

「ええと、見解の相違が見られるようだが?」

 

「オレがいつお前の仲間になったよ……」

 

「はあ!? なんでだよ! その剣、貸してやったろ!」

 

「あぁ、これか……」

 

 確かに試合中に軽薄男から模造剣を貸して貰ったが、それで仲間になった覚えも、仲間になるつもりもない。

 

「おいおい、スカしてんじゃねぇよ。俺様が手助けしてなきりゃ、決闘に負けてただろ? となれば試験も合格できず、冒険者にもなれなかったわけだ。わかるか? すべては俺様の、お・か・げ・よ!」

 

(あの局面を切り抜ける術なんて、他にもあったけど……なるほど。傍からすれば、そう見えたか)

 

 軽薄男は恩着せがましく手柄を主張してくるが、もちろん同意しない。

 

 そも事前に、そのような取り決めを交わした覚えなどないし、いくら模造剣を貸して貰った恩があるとはいえ、それはそれこれはこれだ。

 

 こんな奴と仲間を組むなど、ごめん被る。

 

(こいつこそが、誰とも仲間を組めなかった人間だろうからな)

 

 大体、出会いからして軽薄男の心証は最悪で、距離を置きたい手合いナンバーワンの人間だ。

 

 今後、よっぽどのことがない限り交流を持つことはないだろう。

 

「――というわけだ。じゃあ、返すぜ。ありがとな」

 

 以上のことを話してにべもなく断ると、さすがに軽薄男も消沈した様子で、渋々ながら引き下がる。

 

(少し、言い過ぎたかな……)

 

 オレの中で罪悪感がもたげる。

 

 軽薄男の腹積もりがどうであれ、力を貸してくれたのは事実だ。

 

「チッ、なんだよ、なんだよ……つれねぇ野郎だな。後悔しても知らねぇからな……」

 

 軽薄男はブツブツと文句を垂れながら、オレが差し出している模造剣を受け取ろうと手を伸ばし――――そこで剣の刀身がポッキリと折れた。

 

「あ」「んえ?」「おや」

 

(そうか。スキルで強化せず、強引に泥人形〈ゴーレム〉をぶった切ったから……)

 

「ぬわああああ!? 俺のヴァレンティーヌがああああぁぁぁぁ!!」

 

「ヴァ、ヴァレ……なんだって?」

 

 自前の翻訳障害スキルが発動し、オレは思わず対象の名前を訊き返す。

 

(……っていうか、こいつ剣に名前なんて付けてるのか)

 

「どうしてくれんだッ! 弁償しろ、弁償ゥ!」

 

「あー弁償、ね……したいのは山々だけど、今は手持ちが……」

 

「おおぉぉん! 愛しのヴァレンティアァ! 伝説の剣となるはずのお前が、こんなとこで終わるなんてええぇぇ……!」

 

「いや、さっきと名前違ってるし! そもそも模造剣だろ、ソレ!」

 

 魔物(モンスター)どころか、まともに野菜も切れない剣が、どうやって伝説になろうというのか。

 

「ぉぉおおぉぉ! ぁぁああああぁぁぁぁ!!」

 

 人目を(はばか)らずギャン泣きする軽薄男にドン引きしつつも、それほどまでに入れ込んでいた剣を折ってしまったことを知り、いよいよもってオレの両肩に罪悪感がのしかかる。

 

(仕方ないか……)

 

「ハァ、わかった……一度だけ。一度だけ冒険に付き合ってやるよ。それで今は勘弁してくれ」

 

「本当だな!? 約束じだぞ! あど代金はぢゃんど弁償じで貰うがらな!」

 

 瞬間、折れたヴァレナンチャラを前にして、床に(うずくま)っていた軽薄男は、涙やら鼻水やらでぐしょ濡れの顔を跳ね上げると、加速スキルかくやの敏捷(びんしょう)な身のこなしで迫ってくる。

 

「あーはいはい……うおっ!? それ以上近づくなバッチイ!」

 

「ぷげらっ!?」

 

 体液を垂れ流しすり寄って来るそいつを、思わず蹴り飛ばしてしまう。

 

 軽薄男は大鬼(オーガ)の二の舞になり、頭蓋が砕かれて――――なんてことはなく、この怪力を受けても、爆ぜることなくもんどりうった。

 

 模擬試合を経て力加減を覚えてきたオレである。

 

(それでも、やっぱり人間相手は苦手だな……)

 

 魔物を容易く(ほふ)る怪力も、人間が相手では十全に振るえず弱点になるとは……。

 

「ほう。こうなると、やはり私の協力が要るな。近場を冒険するにしても新人二人では心細いだろう?」

 

 魔法使いは、すでに冒険者として活動実績のある自分の有用性を、ここぞとばかりに説いて売り込んでくる……やはり早口で。

 

「わかった! もう十分わかったから! 最初の冒険はこの三人で行こう!」

 

「よっしゃ!」

 

「賢明だな」

 

 こうなってしまうと、オレはもう考えるのも面倒になって諸々の提案を承諾する。

 

(ヤレヤレ、というやつだ)

 

 人生、先のことは誰にも分からない。

 

 迷い、悩み、慎重を重ね、最善を尽くしたつもりが裏目に出ることもある。

 

 いつだって後悔の奴は、後に立つ卑怯者なのだ。

 

 

(それなら、いっそ流れに身を任せるのも、ありのはず…………そうだよな?)




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