異世界日記 ~魔法適正ゼロの現代人は 脳筋スキルで無双する~   作:日月ゆう

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拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです


ep.28 冒険日和

「やー! 本日は絶好の冒険日和だな!」

 

「心躍りますわね! 歌い出したい気分!」

 

「まったく、君たちは……遊びじゃないんだぞ」

 

「どうしてこうなった……」

 

 遠足前の小学生さながらにはしゃいでいるのは、ジョニィとマティルダの二名。

 

 対照的に気落ちしているのは、引率の先生ことドロシーとオレの二名。

 

 計四名プラス一頭の即席仲間(パーティ)は、大平原に横たわる街道を行く。

 

 プラス一頭とは、マティルダお嬢様が騎乗する山羊のような鹿のような馬(?)のことだ。

 

 こいつがなかなかにスケベなオスで、飼い主であるマティルダに懐くのは言うに及ばず。ドロシーにも鼻を擦り付けたりして甘えるくせに、男性陣には態度を豹変させ、素っ気ないどころか好戦的になりやがる。

 

 そのことにむかっ腹を立て、(しつ)けようとしたジョニィなんか、後ろ足で蹴り飛ばされていた。

 

 そんな馬鹿山羊(仮称)をジョニィは警戒しつつ、マティルダの側を歩きナンパ男よろしく、しつこく自分を売り込んでいる。

 

「だから言ってやったのさ……お前たち、文句があるならこのジョニィ様を倒してからにしな――ってな! 一斉に襲い来る悪党! あわや大惨事と思いきや、俺様は愛剣(ヴァレンティン)を閃かせ、多勢に無勢をものともせず、敵をバッタバッタと薙ぎ倒し――」

 

「はあ、そうですのね」

 

 真偽のほどがだいぶ怪しい武勇伝に、マティルダは気のない感じで相槌(あいづち)を打っている。

 

「ジョニィ、お前は後列だろう。前に出過ぎだ……やれやれ、先が思いやられるよ……」

 

「なんか、ごめんな……」

 

 模造剣(ヴァレンティーヌ)の借りがあり、一応は約束を交わしたジョニィは仕方ないとして、マティルダまで同行するのは当初の予定にない。

 

 ドロシーには、我儘(わがまま)なお嬢様のお守に付き合わせることになってしまい、たいへん心苦しく思う。

 

「貴族からの依頼自体は、さして珍しくはない。単身で同行を希望されるのは(まれ)だがな……まあ、町の外に(おもむ)くとはいえ人間の支配圏内ではあるし、凶暴な魔物(モンスター)も居ないだろう。私と君が(そろ)っているんだ、大丈夫さ」

 

「大丈夫、なのかなぁ……」

 

 この世界の住人はどうも楽観的というか、刹那(せつな)的というか、いい加減なところが度々見られる。

 

 魔物や野党が跋扈(ばっこ)し、剣と魔法の世界。死が身近にあり、明日も知れない世の中だ。

 

 人間ひとりの命が軽く、だからこそ重要なのは目の前にある今この瞬間であり、いちいち立ち止まって悩んでいる暇などないのだろう。

 

 国や風土が違えば国民性も異なる、そんな当たり前の話。

 

(逆に彼らからすれば、オレは七面倒くさい奴なのかもな)

 

 そういったことを考え込んでいると、頬を薫風(くんぷう)が撫でる。それに誘われるようにして、顔を上げ視線を巡らせた。

 

 

「これは…………やっぱり、凄いな……!」 

 

 

 果てしなく続く空となだらかな地平線。

 

 深翠(しんすい)と蒼天の鮮やかなコントラスト。

 

 小高い丘から見下ろす圧巻の光景に心を奪われ、直面している不安など些末事(さまつごと)のように吹き飛んだ。

 

 こうして町の外に出るのは二度目。

 

 以前は遭難という非常事態の最中で、悠長に景色を楽しむ余裕などはなかったのだが、冒険者となった今、世界はまた違った輝きを見せてくれる。

 

 映画やゲームで見た、どんな景色よりも臨場感がある一大パノラマ。

 

 あの広大な世界で、この身ひとつ生きてゆく。

 

 

 オレは、大地に冒険の第一歩を刻んだのだった。




ご高覧いただき ありがとうございました 次回から冒険開始です
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