烙印者 Prequel ~空白の1ページ~   作:日月ゆう

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拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです


ep.3 馬車襲撃 窮地の美少女

 怪物……それは、さながら童話から飛び出してきた鬼――小鬼のようだった。

 

 

 体長はおよそ120センチメートル。小学生中学年くらいの矮躯(わいく)に、不釣り合いなほど筋肉質な体付き。

 

 邪悪に濁った瞳に、脂ぎった大きな鷲鼻が特徴的で、頬まで裂けて締まりのない口からは、不揃いで黄ばんだ牙を覗かせている。

 

 手には錆びた鉈を持ち、申し訳程度に(まと)っているボロ布は、ファッションとしては言わずもがな、防寒と保護を目的とした場合でも、衣類としてまるで機能をしていない。

 

 人間の猿真似でもしているのだろうか、よくよく冗談みたいな格好だ。

 

 

 その奇天烈(きてれつ)な小鬼どもを相手に、(にび)色の武具を装備した兵士と仰々(ぎょうぎょう)しいローブを着た者たちが、隊列を組んで戦っている。

 

 それは、まるで中世を舞台にした映画のワンシーンのようだ。

 

(映画撮影……いや、それよりも夢というほうが、まだ……)

 

 現実とは到底思えない修羅場に直面し、真っ先に夢か幻かと疑うオレだが、しかし、自然と湧いた感想を自ら否定する。

 

 小鬼どもと兵士たちが繰り広げる及び腰の攻防は、フィクションの勇ましい殺陣(たて)には見られない生々しさがあったからだ。

 

 それというのも、一太刀でも浴びれば致命傷になりかねない真剣同士の戦いは、相手の一挙手一投足を警戒し、慎重にならざるを得ないからだろう。

 

 すべて素人目線の解釈なのは言うまでもない。

 

「キャアアァァッ!!」

 突如として上がった女性の悲鳴が、新たな異変を知らせる。

 

(なっ、何だ、あのデカブツは!?)

 

 遠目でもはっきりとわかる巨体。小鬼とは対照的な大きな鬼――大鬼が馬車を襲撃している。

 

(あんなの、どこに隠れてやがった……!)

 

 あれほど目立つ巨体なのに、手前の小競り合いばかりに気を取られ、今の今まで見逃していた。

 

 二足歩行の生物として規格外のサイズであり、あまりにも非常識な存在を目撃して、精神の平静を保つために、意識の外へ追いやっていたのだろうか。

 

 などと、オレが悠長に構えている間にも、馬車は脅威に晒されている。

 

 余程の要人を乗せているのだろう。

 

 豪奢(ごうしゃ)な馬車は、見た目に違わない頑丈な造りで、車体に無骨な拳を叩き込まれても、外装が剥がれる程度の損傷で留まっており、まだ搭乗者は無事のようだ。

 

『グガッ!? ググググゥ……ッ!』

 

 すると短気な子供が、プレゼントの包装紙をなかなか開けられず、癇癪(かんしゃく)を起したみたいに、大鬼は馬車を抱えて激しく揺さぶり始め……そして、ついにはひっくり返した。

 

 その拍子に、ドレス姿の少女が車外へ投げ出され無防備を晒す。

 

 その後を追いスーツ姿の紳士が車内から飛び出してくる。身を挺して少女を庇うが、大鬼との対格差からして、とても守り通せるとは思えない。

 

 頼みの綱であろう彼らの護衛と思しき兵士たちは、小鬼どもの襲撃を凌ぐので手一杯のようだ。

 

 

 そんな切迫した状況を目撃して、オレが取った行動は――――。




絶体絶命の少女を前にして 少年の勇気が試される

ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます
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