怪物……それは、さながら童話から飛び出してきた鬼――小鬼のようだった。
体長はおよそ120センチメートル。小学生中学年くらいの
邪悪に濁った瞳に、脂ぎった大きな鷲鼻が特徴的で、頬まで裂けて締まりのない口からは、不揃いで黄ばんだ牙を覗かせている。
手には錆びた鉈を持ち、申し訳程度に
人間の猿真似でもしているのだろうか、よくよく冗談みたいな格好だ。
その
それは、まるで中世を舞台にした映画のワンシーンのようだ。
(映画撮影……いや、それよりも夢というほうが、まだ……)
現実とは到底思えない修羅場に直面し、真っ先に夢か幻かと疑うオレだが、しかし、自然と湧いた感想を自ら否定する。
小鬼どもと兵士たちが繰り広げる及び腰の攻防は、フィクションの勇ましい
それというのも、一太刀でも浴びれば致命傷になりかねない真剣同士の戦いは、相手の一挙手一投足を警戒し、慎重にならざるを得ないからだろう。
すべて素人目線の解釈なのは言うまでもない。
「キャアアァァッ!!」
突如として上がった女性の悲鳴が、新たな異変を知らせる。
(なっ、何だ、あのデカブツは!?)
遠目でもはっきりとわかる巨体。小鬼とは対照的な大きな鬼――大鬼が馬車を襲撃している。
(あんなの、どこに隠れてやがった……!)
あれほど目立つ巨体なのに、手前の小競り合いばかりに気を取られ、今の今まで見逃していた。
二足歩行の生物として規格外のサイズであり、あまりにも非常識な存在を目撃して、精神の平静を保つために、意識の外へ追いやっていたのだろうか。
などと、オレが悠長に構えている間にも、馬車は脅威に晒されている。
余程の要人を乗せているのだろう。
『グガッ!? ググググゥ……ッ!』
すると短気な子供が、プレゼントの包装紙をなかなか開けられず、
その拍子に、ドレス姿の少女が車外へ投げ出され無防備を晒す。
その後を追いスーツ姿の紳士が車内から飛び出してくる。身を挺して少女を庇うが、大鬼との対格差からして、とても守り通せるとは思えない。
頼みの綱であろう彼らの護衛と思しき兵士たちは、小鬼どもの襲撃を凌ぐので手一杯のようだ。
そんな切迫した状況を目撃して、オレが取った行動は――――。
絶体絶命の少女を前にして 少年の勇気が試される
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