異世界日記 ~魔法適正ゼロの現代人は 脳筋スキルで無双する~ 作:日月ゆう
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
「……クソ面白くねぇ」
どいつもこいつも、アホ面晒して試合に夢中になっていやがる。
満を持して冒険者試験に殴り込んだってぇのに、魔法の適正は並み以下で、実技もてんで振るわねぇ。
俺様の中に眠っている、超絶最強のパワーで
「きっと時期が悪かったんだ……長旅で疲れてたしな……」
んなふうにこの俺、ジョニィ様が独りダベってると、空気を読めねぇ脇役どもから大きく歓声が上がった。
「チッ、うるせぇな……」
周囲の熱狂に当てられて人垣の隙間から覗き見ると、剣を持った男が次々と襲いくる魔法を弾いてる。
アイツだ、アイツ。
カーニバルの道化師みてぇに、ド派手に着飾っているおめでたい奴。
主人公の俺様を差し置いて、皆の注目を浴びてやがる、あのいけすかねぇ野郎。
「なんで、あんな奴が……」
冒険者の中でも名うての実力者を相手に健闘し、あまつさえ接戦していやがるんだ。
俺とオマエ、いったい何が違うんだ。
余所者同士、招かれざる客だろうがよ。
◇◇◇
俺様は田舎も田舎ド田舎の農村で、しがない農家の三男坊として生まれた。
農家のそれも三男坊。長男の代わりの代わりだ。
土地も家業も継ぐ権利はなく、うっかり出来ちまった誰からも期待されねぇ人間。
俺に残された将来の選択は、このまま家に残り兄貴たちにコキ使われて、財産も持たず労働力として一生を終えるか。家を出て他所の農家で雇ってもらい、やっぱ奴隷のように終えるかの二択。
死ぬまで搾取されるのが決まった、クソみてぇな人生だ。
そんな俺様にも――いや、そんな俺だからこそ夢がある。
仕事をサボり、ひょんなことから古市で
どこにでもいるような平凡な少年が、剣術の才能に目覚め、己の腕っぷしひとつで英雄へと昇り詰めるサクセスストーリー。
いつか俺もそんなふうになるんだと胸を熱くし、労働に費やされるどん詰まりの未来にも希望を抱けた。
そうだ! 夢は英雄になること! 村の……いや、世界の誰もが認める大英雄に俺はなる!
そうと決まれば、いずれやってくる魔王軍の進撃と、王女様との激アツな出会いに向けて準備せねばなるまい。
俺様は選ばれし者だ。
例え寝てても機会は必ず訪れる。時が来れば導かれるだろうが、俺様は堅実な男だ、うん。
手始めに村の自警団に入って、柄にもなく真面目に剣術を学ぶ。
自分の中に眠る才能を信じて、地味でかったるい基礎体力トレーニングなんかにも励んだ。
だが、一日が過ぎ、三日が過ぎて、どんなに頑張ってもちょびっと筋肉が付いた気がするくらいで、一向に芽が出ねぇ。
模擬戦でも、ここ一番でビビり癖が出ちまった。
性根の捻くれた二番目の兄からは、よくノミの心臓とからかわれたっけな……いや、んなこたぁどうでもいい。
そもそもだ。こんな辺境で、隠居した
魔王軍だって、こんな何もねぇ村を襲うかうっすら疑問だ。
嗚呼、ビッグな俺様にこの村は小さ過ぎる……王都に生まれてりゃあ俺だって……。
そうだとも! 全部、環境が悪いのだ! 冒険者で賑わう町へ行けば、俺様の才能も自ずと開花し大・大・大活躍が約束されるはず!
思い立ったがなんとやら。こんなとこにゃさっさとオサラバだ。
息子の成功を疑うクソ親父の財布から旅費を頂戴すると、納屋に眠っていた宝剣を手に、俺様は故郷の農村を飛び出した。
◇◇◇
(つーか、思い返してみても、印象的な出来事がまるでねえ……マジでシケた村だったからな……けど、これからは違う……冒険者組合のある町に来て、いよいよ一発逆転の快進撃が始まる――そのはずだったのによぉ……)
そんで現在。冒険者組合の訓練場で、脇役どもに紛れて決闘試合を目の当たりにしてる。
「ふん……アイツもなかなかやるじゃねぇか……ま、まあ、俺様にゃ遠く及ばなねぇけどな、うん!」
――いつからだ? 嘘を吐くのが平気になったのは。
「……俺だって本気を出せばあんくらいのこと……」
――いつからだ? テメェの嘘で誤魔化せなくなったのは。
不意に脳裏に浮かんだウザったい邪念。そいつを振り払おうとして意識を他所に移すと、試合を観戦してる奴らの会話が耳に入る。
『なぁ、どっちが勝つと思う?』
『そうだなぁ……やっぱ魔法使いが勝つんじゃないか? 男の方も頑張ってるけど、戦士が強かったのなんて親父の時代の話しだろ』
『だよなぁ。
『んじゃあ賭けるか?』
『いやいや、賭けになんねぇって』
「……チッ、好き勝手言いやがって」
そんな時だ。一際大きく歓声が上がり、勝負は佳境を迎える。
見ると決闘を行っている野郎は剣が折れてしまい、丸腰で魔法使いと対峙してる。絶体絶命ってやつだ。ざまぁみやがれ。
(――アイツ、どうして……)
けど、野郎はピンチに陥ってなお戦う姿勢を崩さない。
(ダッセェの。俺が目指す英雄とは程遠い――……)
「クソが! あのバカ、なにやってんだよッ!」
次の瞬間、気づくと俺は愛剣を手に駆け出してた。
きっと理由はいろいろある。けど、いちいち考えるのもメンドクセェ。
ただ同じ余所者で、同じ新米で、同じ戦士を志すアイツが無様に負けるのは、どうにも我慢ならん。
それに文句を垂れ流し腐ってるのは、いい加減飽き飽きだ。
(もし、アイツが勝負に勝つことができたら、そんときは今度こそ俺も本気で――――)
三枚目のキャラは 描きやすくて好きです
ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます