「――――え……」
次の瞬間、二人は空にいた。
「な――!?」
そこは地上より遥かに眩い晴天の世界。眼下に雲海が広がるほどの高高度だ。
大鬼のラリアットを、オレは少女を抱えながら必死に避けた――まではよかったのだが、なんと勢い余って、そのまま天高く飛翔したのだった。
冗談のような本当の話。馬鹿みたいな脚力が可能にした、ギャグ漫画みたいな展開だ。
「わっ……わぁ……!」
傍らには、瞳を輝かせて感動している少女。
飛行機や映像技術が無い時代では、まずお目に掛かれない光景であり、生まれて初めて見るであろう世界に、恐怖より好奇心が優っているようだ。
一方のオレはというと、360度の満天より雲海の切れ目から覗く地表の有様に絶句していた。
(嘘だろ、こんな……これじゃあ、とんだ秘境じゃないか!)
平原と森林。
河川と湖。
山々の向こうに至るまで。
どこまでも未開の大地が続いており、そこにはビル群や高速道路などの見慣れたものは一切無い。
人工物といえば、かすかに見える三角屋根の集落や、石造りの壁に囲われた町が点在しているだけ。
それは、おそらく二百年年から三百年……下手をすれば、もっと遡った時代の風景だった。
(……オレに帰る場所なんて無いのかもしれない……)
自身の
怪物を目撃した時から薄々感じてはいた。
ひょっとしたらオレは、
混乱の中で宙ぶらりんになっていたそれが、ここにきて確信に変わった。
「おっ、おおぉ……?」
やがて、上昇を続けていた二人は空中で停滞。
翼のない生物が飛び上がった後には、当然、落下が待ち受けているわけで……二人は間もなく物理法則に従い急降下する。
「ひっ、ひゃああああああああああああああああああああ――――ッ……!」
内蔵が浮くような非常に嫌な浮遊感に見舞われ、落下の恐怖に駆られた少女が、救いを求めて縋り付いてくる。
「くっ!」
少女をしっかりと抱きかかえると体勢を整える。痛いくらいに吹き付ける暴風を受けながら、急激に迫る大地を見据えた。
これほどの高さまで上昇する脚力のオレならば、きっと着地も可能なはず。
よもや、自滅する高さまでジャンプする生物もいないだろう。
(きっと――いや、絶対! でなけりゃ困るっ!)
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!」
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