烙印者 Prequel ~空白の1ページ~   作:日月ゆう

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拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです


ep.5 雲外蒼天~そこに広がる世界

「――――え……」

 

 

 次の瞬間、二人は空にいた。

 

 

「な――!?」

 

 そこは地上より遥かに眩い晴天の世界。眼下に雲海が広がるほどの高高度だ。

 

 大鬼のラリアットを、オレは少女を抱えながら必死に避けた――まではよかったのだが、なんと勢い余って、そのまま天高く飛翔したのだった。

 

 冗談のような本当の話。馬鹿みたいな脚力が可能にした、ギャグ漫画みたいな展開だ。

 

 

「わっ……わぁ……!」

 

 傍らには、瞳を輝かせて感動している少女。

 

 飛行機や映像技術が無い時代では、まずお目に掛かれない光景であり、生まれて初めて見るであろう世界に、恐怖より好奇心が優っているようだ。

 

 一方のオレはというと、360度の満天より雲海の切れ目から覗く地表の有様に絶句していた。

 

(嘘だろ、こんな……これじゃあ、とんだ秘境じゃないか!)

 

 平原と森林。

 

 河川と湖。

 

 山々の向こうに至るまで。

 

 どこまでも未開の大地が続いており、そこにはビル群や高速道路などの見慣れたものは一切無い。

 

 人工物といえば、かすかに見える三角屋根の集落や、石造りの壁に囲われた町が点在しているだけ。

 

 それは、おそらく二百年年から三百年……下手をすれば、もっと遡った時代の風景だった。

 

(……オレに帰る場所なんて無いのかもしれない……)

 

 自身の(おぼろ)げな記憶にある故郷の風景と、直面する現実の乖離(かいり)に落胆する。

 

 怪物を目撃した時から薄々感じてはいた。

 

 ひょっとしたらオレは、()()()()()に迷い込んでしまったのではないか、という妄想染みた疑念。

 

 混乱の中で宙ぶらりんになっていたそれが、ここにきて確信に変わった。

 

 

「おっ、おおぉ……?」

 

 やがて、上昇を続けていた二人は空中で停滞。

 

 翼のない生物が飛び上がった後には、当然、落下が待ち受けているわけで……二人は間もなく物理法則に従い急降下する。

 

「ひっ、ひゃああああああああああああああああああああ――――ッ……!」

 

 内蔵が浮くような非常に嫌な浮遊感に見舞われ、落下の恐怖に駆られた少女が、救いを求めて縋り付いてくる。

 

「くっ!」

 

 少女をしっかりと抱きかかえると体勢を整える。痛いくらいに吹き付ける暴風を受けながら、急激に迫る大地を見据えた。

 

 これほどの高さまで上昇する脚力のオレならば、きっと着地も可能なはず。

 

 よもや、自滅する高さまでジャンプする生物もいないだろう。

 

(きっと――いや、絶対! でなけりゃ困るっ!)

 

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!」

 




ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます
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