烙印者 Prequel ~空白の1ページ~   作:日月ゆう

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一部グロテスクな表現がございます

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです


ep.7 エンカウントバトルⅡ

『――ゥォォォォオオッ!』

 

 

 彼方より響いた怒号を辿れば、丘の上から青草を踏み倒し、大鬼が走って来ている。

 

 飛翔の際、風に流されたので、オレたちがいる着地点は、馬車があったところからだいぶ離れているのだが、片腕を奪われて怒り心頭の大鬼は、執念深く追ってきたようだ。

 

(……オレの強さを確かめるのに、おあつらえ向きだな)

 

 これが、もし訓練の中で(つちか)った能力であれば、自ずと実感も湧いただろう。

 

 だが、突如として目覚めたこの力は労せず得たもの……天から授かりし、いわば天恵だ。

 

 したがって、我が身のことでありながら力量は未知数である。

 

(あの怪物に挑めば、実戦を通じて真価が測れるかもしれない)

 

 きっと、力を得たことによる高揚と謎の万能感がそうさせたのだろう。

 

 後になり振り返ってみれば、未開の地で凶暴な未知の生物と対峙するなど、軽率だったと断言できる。

 

 オレは握り拳を作ると上体を捻り、大鬼を迎え撃つ構えを取る。

 

 記憶の中に武道の心得などなかったので、いつか動画で視聴したであろう格闘技の見様見真似だ。

 

「な、なにをするおつもり? 逃げた方が……」 

 

 これから一戦交えようとするオレと大鬼を見比べて、おろおろとしている少女は、このスーパーなパワーを知る以前のオレだ。

 

「下がっていてくれ」

 

 そんな少女を後ろへ押しやって、すぐそこまで迫っている大鬼を真っ直ぐ見据える。

 

(思い上がりならそれまで……自分の倍近くある怪物に踏み潰されるだけだ!)

 

『ヴォオオオオオオオオーッ!』

 

 接近した大鬼が、手に持っている大きな木片を棍棒のように振るう。

 

 野太い風切り音を鳴らすそれを、オレは難なく飛び越えて回避する。

 

 ここまでは、ほぼ前回見たシーンの焼き直し。だが、異なる点がひとつ。

 

 それは二度目ということもあり、オレは加減を覚えたということ。

 

 今度は天まで昇る失敗は犯さず、大鬼の頭上程度の高さに跳躍を抑えた。

 

 無事で済んだとはいえ、高高度からパラシュートなしでダイブする、そんな絶叫体験など二度と御免だ。

 

 これが、がむしゃらに棍棒をぶん回す怪物と、学習能力を持つ人間の差だ。

 

(なんて、こんな頭の悪そうな奴と張り合うなんて――)

 

「――どうかしてるぜッ!」

 

 オレは空中で水平方向に一回転し、遠心力を加えた拳を繰り出す。

 

 分厚い筋肉に覆われた胴体は避け、狙うは生物の急所である鼻頭。

 

『ゴガァァアアアアァァッ!』

 

 負けじと大鬼も、振り抜いていた棍棒を返して抵抗をみせる。

 

 双方の闘争心が激突し、そして次の瞬間――――。

 

 

 周囲に破裂音が響き、続いて血液やら脳漿(のうしょう)やら内容物がぶちまけられる。

 




はたして絶命したのは怪物か少年か・・・

ご高覧いただきありがとうございました 次回へ続きます
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