拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
『――ゥォォォォオオッ!』
彼方より響いた怒号を辿れば、丘の上から青草を踏み倒し、大鬼が走って来ている。
飛翔の際、風に流されたので、オレたちがいる着地点は、馬車があったところからだいぶ離れているのだが、片腕を奪われて怒り心頭の大鬼は、執念深く追ってきたようだ。
(……オレの強さを確かめるのに、おあつらえ向きだな)
これが、もし訓練の中で
だが、突如として目覚めたこの力は労せず得たもの……天から授かりし、いわば天恵だ。
したがって、我が身のことでありながら力量は未知数である。
(あの怪物に挑めば、実戦を通じて真価が測れるかもしれない)
きっと、力を得たことによる高揚と謎の万能感がそうさせたのだろう。
後になり振り返ってみれば、未開の地で凶暴な未知の生物と対峙するなど、軽率だったと断言できる。
オレは握り拳を作ると上体を捻り、大鬼を迎え撃つ構えを取る。
記憶の中に武道の心得などなかったので、いつか動画で視聴したであろう格闘技の見様見真似だ。
「な、なにをするおつもり? 逃げた方が……」
これから一戦交えようとするオレと大鬼を見比べて、おろおろとしている少女は、このスーパーなパワーを知る以前のオレだ。
「下がっていてくれ」
そんな少女を後ろへ押しやって、すぐそこまで迫っている大鬼を真っ直ぐ見据える。
(思い上がりならそれまで……自分の倍近くある怪物に踏み潰されるだけだ!)
『ヴォオオオオオオオオーッ!』
接近した大鬼が、手に持っている大きな木片を棍棒のように振るう。
野太い風切り音を鳴らすそれを、オレは難なく飛び越えて回避する。
ここまでは、ほぼ前回見たシーンの焼き直し。だが、異なる点がひとつ。
それは二度目ということもあり、オレは加減を覚えたということ。
今度は天まで昇る失敗は犯さず、大鬼の頭上程度の高さに跳躍を抑えた。
無事で済んだとはいえ、高高度からパラシュートなしでダイブする、そんな絶叫体験など二度と御免だ。
これが、がむしゃらに棍棒をぶん回す怪物と、学習能力を持つ人間の差だ。
(なんて、こんな頭の悪そうな奴と張り合うなんて――)
「――どうかしてるぜッ!」
オレは空中で水平方向に一回転し、遠心力を加えた拳を繰り出す。
分厚い筋肉に覆われた胴体は避け、狙うは生物の急所である鼻頭。
『ゴガァァアアアアァァッ!』
負けじと大鬼も、振り抜いていた棍棒を返して抵抗をみせる。
双方の闘争心が激突し、そして次の瞬間――――。
周囲に破裂音が響き、続いて血液やら
はたして絶命したのは怪物か少年か・・・
ご高覧いただきありがとうございました 次回へ続きます