【なのはEXCEEDS】 〜久瀬家の長女は、妹たちに内緒で魔導師やってます〜 作:三坂
辺りが完全に暗くなった頃、久瀬家の寝室では丁度お風呂から上がったばかりなのかラフなパジャマ姿でセツナに…ではなくアメヤにドライヤーで髪を乾かされるシイナの姿があった。
普段ならシイナが手っ取り早いからといって髪をぐしゃぐしゃししながら髪を乾かしてしまうからということで、セツナが乾かしてあげてるのだが、今日は久しぶりに戻ってきたということで姉であるアメヤが乾かしてあげてるらしい。
「ほいっ完成、こんなもんかな?」
「ありがとう〜…、いやーやっぱお姉ちゃん髪乾かすの上手いよー。セツナに負けないぐらい」
「あんた昔から適当に乾かす癖があるから…、どーせ毎日セツナに乾かして貰ってるんでしょ?」
「えへへ…バレてたか…」
「だってしいちゃん私が気を抜いたらいつも自分の髪はぐしゃぐしゃーっ!って乾かしちゃうから…!」
もちろんシイナだけでなくセツナの髪も乾かしてあげないと不平等なのでおいでと手招きしつつ姉とチェンジした妹の髪も丁寧に…だがテキパキとほぐしながら乾かしていく。
国連の職員として多忙な彼女ではあるものの、表に出る仕事が多いため身だしなみはしっかりしているということもあってこういった作業は慣れているらしい。
「ほらおいでセツナ、たまにはお姉ちゃんが乾かしてあげる♪」
「はーいっ、じゃあ今日はお姉ちゃんに甘えるー」
ウィィィィンン
自分といるときよりも妹らしくない?…と少し不服そうに一足先にリビングのソファーに腰掛けたシイナが不服そうに見つめるが、セツナ曰く大切な家族だが案外ズボラな一面も相まって姉には全然見えないらしい。
それを聞いたシイナは酷い!?と声を上げるのだが、その光景がおかしかったのかセツナとアメヤは顔を見合わせながら吹き出すように笑い出す。
「なんか私といるときより妹らしくしてないセツナ?」
「だってー、しーちゃんお姉ちゃんらしくないんだもん。ズボラ過ぎて、確かに頼れるお姉ちゃんではあるけど…」
「酷い!?一生懸命お姉ちゃんしてるのに!」
「ぷっ、何よそれ…♪変なの」
「「あははっ」」
そんなこんなでお風呂から上がり髪の手入れが終わった3人は、まだ寝るまで時間があるということで夜のニュースをリビングに設置されたテレビで何気なく見ていく。
丁度世界中や自分達の暮らす瑞穂において問題となっている侵略種(正式名称:侵略性危険生物)に関しての報道がされていた。
現状民間の猟友会に丸投げしている行政機関や政府だが年々増加傾向にある侵略種の被害や調査に対応するために、自国の国連災害対策本部に初の専門調査機関を設置することが閣議で決定したらしい。
一見れば負担の多い猟友会などの民間の組織にとって負担が減るかもしれないことや専門組織が作られるかもしれないことを踏まえるとありがたい話、…がシイナはあまり期待していないようで…
『世界中で続く侵略性危険生物、通称侵略種の被害と関連災害において国連災害対策本部は有識者による専門の調査機関を設立する旨を――』
「…こういうのたまに聞くけど…上手く言った試しないよねぇ…」
「…そうかも…」
テレビの音量を下げながら国連災害対策本部で働く姉に対してこういうのってどうなのとシイナは尋ねていき、アメヤも実際話とか案は結構聞くけど大体の場合うまく言った試しがないとシイナが愚痴をこぼした通りの返答を返していく。
「姉さん的にはこれどうなの?ってかちょくちょくこれ以外にも侵略種関連の話とかも」
「案は結構聞くし試行錯誤とかはしてるけど…大体上手くいってないパターンがおおいかも…」
まあ言わばお役所仕事の問題みたいなもので、警察や行政機関が対策を立てたとしても基本はどうしても利権絡みの場合が多く、それも相まってそういった経験を数多くしているシイナはもちろん、国連災害対策本部の職員であるアメヤもあまり信用していないらしい。
「結局こういうのって利権絡みが1番の問題だからねぇ……、それで大体上手くいってないパターンだし」
「…確かに、ってか警察やお役所の対策って結局信用できないんだもん。頑張ってるのって結局は民間のハンター達だし…」
どんなに頑張っても結局可彼女からすれば、侵略種の駆除を頑張っているのは民間の猟友会ハンターばかりで行政機関は最低限の支援のみ
実際都の要請で本土の都心部に侵略種の駆除をしに行った際も色々と大変な目に遭ったようで、手にしていたコップを洗いながらひどい目にあったと愚痴を零していく。
「ってか支援とかの方を私はしっかりして欲しいんだけど、その辺ガバガバなお陰でこの前都の団体からの依頼で駆除に行った時にも…本当っに酷い目に遭ったからね…!」
その時はシイナ以外にも侵略種の駆除の経験があるハンター達も多く集められていた。
…が説明に来た役所の人間は、集めるだけ集めといて自分達は専門家じゃないからなんか適当にいい感じでお願いしまーすといってほぼ丸投げされたらしい。
幸い集まったのがベテラン揃いのハンター達ばっかりだったお陰でどうにか駆除は成功したものの、セツナ曰く戻ってきたその日はかなり荒ぶっていたとか……
「人数だけ集めて、自分ら専門家じゃないんで後はプロの皆さんでいい感じに…みたいな…!」
「しいちゃんがめっちゃ怒ってた奴…」
「集まったハンターが優秀だったからどうにかなったけど…」
もちろんその情報はアメヤにも流れており、電話でめっちゃ愚痴こぼしてた奴か…と当時のことを振り返りながら苦笑いの表情を浮かべる。
だがそれだけならまだいい方、先ほども触れた通り支援が全然整っていないお陰で弾代はでない上に駆除費用はピンハネ、なのにその上に功績だけは団体という酷い有様。
そりゃ愚痴の1つや2つも零したくなる気持ちもわからなくもない。
「…しかも弾代はでない上に駆除費用はピンハネ!…その癖に功績だけは団体のもの!」
「…しいちゃんは本当そういうの嫌いなんだね」
「お役所なんてそんなもんよ、結局は利権絡みには勝てないわけだし…功績さえもらえれば後はどうでもいいしっ」
だがだからといって投げ出すかと言われればそんなことはない。
困っている人がいるならば呼ばれれば行くし侵略種を駆除だって率先してやる、別に評価が欲しくてやってるわけではないが、シイナにとって人を騙したり利用することだけは一番許せないようだ。
「…困ってる人がいるなら呼ばれれば行くし、侵略種もやっつけるよ…!…別に評価が欲しくてやってる訳じゃない、…でも人を騙したり利用してやろうって奴は嫌いだな」
当然セツナにはそっちがわに立ってほしくないという思いが姉にはあるため、騙されちゃダメだと念押ししていき、彼女も騙されないと自信満々に答える。
その後怪しい大人がいたらどうすればいいのかと質問されたセツナは、順番に自信満々な口調で答えていきすべてパーフェクトで答えたことで、シイナはお見事!という感じで満面の笑みを浮かべていき、2人で仲良く微笑んでいく。
「セツナは絶対そんな奴らに騙されないでねっ!」
「大丈夫!騙されない!」
「怪しい人には」
「近づかない、信用しない。しいちゃんかあーちゃん、あと大人の人に相談!」
「そーう!よーく出来ましたー!」
「あははっ!」
そんな微笑ましい姉妹のやり取りを見ていたアメヤは、2人がこんなに頑張ってるんだから自分も頑張らないと…と内心意気込みながら和気あいあいと過ごしていくのであった。
ー…2人もこんなに頑張ってるんだもん…、私も頑張らないと…!お姉ちゃんとして…!ー
辺りも完全な暗くなりみんなが寝静まった時間、本来ならば漁を始めるにも早すぎる時間帯のため人影すらいないはず…
…なのだが、埠頭に目をやると見慣れないボートから降りてきた人影がゆっくりと上陸、町の方へ向けて歩みを進めていた。
「……」
薄暗くてハッキリとまでは分からないめのの、ガタイのいい半袖のシャツに黒色のズボンに身を包んだ男性なのは間違いい。
しばらくゆっくりかつも確実に歩みを進めていたが、急に足を止めたと思ったら鼻で匂いを嗅いだと思ったら、いるな…とそう呟く。
「……(クンクン)居るな…、何処だ…」
その目は明らかに普通の男性がしていいような目ではなく、まるで何かに取り憑かれたような生気を失った表情を浮かべており、止めていた足取りを再び動き出すと、暗闇に包まれた町へとゆっくり歩み始めるのであった。
翌朝、キッチンとリビングが併設された部屋に設置されたテーブルを囲む形で久瀬姉妹は朝食を食べようとしていた。
ちなみに外の天気は曇り、予報では雨が降るとのことなので今日はいい天気じゃなさそうだねーというやり取りを3人は交わしていたのだが…
「今日は雨になりそうだねー」
「だねぇ…、ってか姉さんっていつ帰るの?」
「明日の朝ぐらいには戻る予定、2人は学校でしょ?家事とはこっちでしとくよ」
「いいよ流石に、姉さんだってここまで来るのに疲れてるだろうに」
その直後インターホンの音が鳴り響き、それに気づいたシイナがこんな時間に誰だろう…そんなことを思いながら壁に設置された画面付きのボタンを操作。
すると暗転していた画面が付き玄関の外を映し出していくのだが、そこには見慣れない屈強な紫髪の男が映し出されていた。
ピンボール
「…?誰だろこんな時間に」
「…ちょっと見てくる」ピッ
「……」
セツナがどちら様?とシイナに尋ねるが彼女自身にこんな男性の知り合いはいないため、全然知らない人だと答える。
だが同じように画面を覗き込んだアメヤは違和感を感じたらしく、眉をひそめながらこの違和感は一体…と内心そんなことを呟く。
「…知ってる人?」
「全然知らない人…、姉さんはどう?」
「…私もコイツは知らないな…、こんな特徴的な人忘れるわけないし…」
ーでも何だろう…この違和感……嫌な予感が立ち込めて…ー
とはいえ来客となれば対応しないといけないため2人に対してシイナはここで待っててと告げながら玄関へと駆け足で向かいかける。
自分が行こうかと言いかけたアメヤだったが、これぐらいなら大丈夫だとシイナは口にしていき、かわりにセツナのそばにいてほしいと頼みながら外へと歩み出た。
「…とりあえず出てくるからセツナは姉さんとここで待ってて」
「私出てこようか?なんか変な雰囲気醸し出してるし…」
「これぐらいなら大丈夫、姉さんはセツナのそばにいてあげて」ガチャン
その後玄関で靴に履き替えながら外へ出たシイナはどちら様ですかー?といつものテンションで、門の前に立っている男の元へと歩み寄る。
しかし男からの返答はすぐになく、空が濃い雲に覆われているお陰であたり一帯薄暗い雰囲気に包まれており、それもあって余計に不気味さをかきたてていた。
「はーいっ、どちら様でしょうか?」
「……」
丁度柵の分厚い部分に相手の顔が被っているためインターホンのカメラでみた顔は見えないが、それでもこんな雰囲気の男性はシイナにとって見覚えがない。
その間にもしばし無言の時間が流れたものの、しばらくして男のほうから先に切り出すように口を開いていた話始めた。
…がその内容はここにいるな…という会話にならない一言であり、これには思わずシイナもはぁ?という声を零す。
「…居るな、ここに……」
「はぁ?」
だがその直後男が右手を少し引いくと共に柵の境目を勢いよく拳でどついていき、一見すれば頑丈そうな柵の部分が殴られた箇所だけ少し凹んだ。
…が間髪入れずに出入り口部分をふさいでいた柵が男が殴った箇所から衝撃波と共に粉々に吹き飛んでいき、思わずシイナも反射的に後ろへと下がっていくのであった。
ゴンッ!!
ガシャァァァン!!
「っ!?」
「!?今の音…」
シイナが訪れてきた謎の男から盛大な挨拶を喰らったのと同時刻、リビングのテーブルで待機していたアメヤは明らかに尋常じゃない衝撃音にはっとした表情を浮かべる。
音の位置的に先ほどシイナが向かった出入り口柵付近、あそこには彼女の他にあの男がいるはず。
当然シイナはこんなことをしないことはアメヤもわかっているため、十中八九訪れてきたあの男が関係しているのは間違いなかった。
ー玄関の方から…確かあっちにはシイナと…さっき来たあの男が……、けどシイナはこんなこと…ってことは…ー
すると同じように嫌な予感を感じ取ったのかセツナは座っていた席から立ち上がると、反射的にシイナが侵略種を狩る際に使っている猟銃やら対物ライフルの入った武器庫の元へと駆け寄り、慣れた手つきで解錠。
その後衝撃音やシイナの所持しているであろうソードオフショットガンの銃声が聞こえてくるのを横目に弾や武器を集めていく。
「……っ!」ダッ
「あっえっ…セツナいきなりどうし…」
もちろんアメヤも黙って見るわけにはいかないため、セツナの元に駆け出すと何か使えそうな武器はないかと尋ねる。
が銃を扱ったことのない彼女からのそんな問いに驚きの声をあげるセツナだったが、姉から急かされる形でそれなら…!と猟銃を彼女へと手渡す。
「…ねぇセツナ、使えそうな武器ない!?」
「あっえっ…でもお姉ちゃん銃扱ったこと…」
「いいから!早く!」
「…っ!それなら…しーちゃんが使ってる猟銃が…!」
ありがとうと言いながら受けとったアメヤは慣れた手つきでボルトハンドルを起こして引き、後ろまで下げると、猟銃の後に手渡してくれました弾薬を5発分全弾を薬室の上に直接実包を置いてボルトを前進・押し込みながら装填する。
「あっあとこれその銃の弾薬…!」
「サンキュ…!ありがと…!」
ガチャ!
ガコッ
その後シイナの様子を見に向かおうとアメヤが歩き出した直後、リビングと庭を行き来するための窓ガラスが勢いよく割れると共に、ガイコツの恐竜のような侵略種がセツナの悲鳴と共にド派手に押し入って来るのであった。
ーよしっ装填はオッケー…後はシイナの様子を…ー
バリィィィン
ガァァァ!!!
「!?」ーなっコイツ…まさか侵略種!?ー
「きゃぁぁぁ!!?」
ちなみに久瀬アメヤのモデルキャラは東雲椎名さん(Sレイマリチャンネルオリジナルキャラクターより)