【なのはEXGV】 〜久瀬家の長女は、魔導師やってます〜 作:三坂
噴火した火山ように噴き出した炎はしばらくの間ありとあらゆる壁や天井を破壊しながら溢れ出るように空高くまでしばらく吹き出し続けると、直後先ほどまでの勢いが嘘のように炎は消え去っていく。
偶然か否か、雨が振りしきる中天井が貫かれ炎が今だ立ち込める中、中心部ではオレンジの雰囲気に包まれたシイナが立ち尽くしていた。
「……」
その後しばらくすると能力が解除されたのかオレンジに包まれた両手両足、髪色がぱっと消え去っていき、多少髪に名残りは残っているものいつものシイナに戻っていく。
終わった…そう内心思ってシイナだったが、ふと周りの惨状を目の当たりにするとやべっという表情を浮かべながら、先ほどのクールそうな雰囲気が嘘のように慌て始める。
「……っ!やば…これっ…」
それもそのはず、魔人の大男を倒すのに周囲が瓦礫の山になるのもお構いなしの全開火力で能力を使ったのはいいものの、そちらに意識を向けすぎてセツナやアメヤのことを完全に忘れていたのだ。
巻き込んだらどうしよう…というか完全に巻き込んだ…そんな焦りを表に出しながら、必死で2人の名前を呼び続けていく。
ーどうしようどうしよう…!?完全にしくった…!倒すのに意識向けすぎて2人のことを……ー
「セツナー!!姉さーん!!いたら返事して!!」
もし自分のせいで2人の身に何かあったらどうしよう…そんなことを考えながら見つけ出そうと歩みだした矢先、聞き慣れた声が耳に飛び込んでくる。
ーせっかく倒したのに…私のせいで危険な目に合わせて…もし身に何かあったら…私…ー
「はーい…ここにいるよー…」
その声でハッとした表情を浮かべたシイナは慌ててそちらに視線を向けていくと、そこにはあの緑色のシールドによって護られる形でセツナを護るようにしゃがんでいるアメヤの姿が……
「…!!姉さん!?何処に…」
「いやー…死ぬかと思った…、セツナ…怪我ない?」
「私は大丈夫…あーちゃんの方は…?」
「なんとか無事…あの大男に捕まったときは死ぬかと思ったけど…、更に妹から間接的に追い打ちかけられるとは…」
良かった…内心ホッとしつつも色々と吹き出しそうになる感情を抑えながら、2人の方へと駆け出していき、シールドが解除されると共に勢いよく抱きしめた。
「……良かった…本当に…良かった…!!」ダッ!
「わわっ!?」
「ちょ…抱きしめる力強い……こっち病み上がり何だから……(汗)」
とはいえそれだけ不安だったのは間違いない、下手をすれば大切な家族の誰が死んでいた…そんな極限状態を経験したのだ。
抱きしめがら堪えていた涙を流しながら泣いているシイナを優しく撫で下ろしながら、アメヤは妹に助けられるなんて…情けないな…と内心そんなことを思う。
「…っ…ひっぐ…えっぐ……」
「泣かないの…気持ちは分かるけど」
ーあーぁ…妹に助けられるなんて…お姉ちゃん失格だな……ー
そんな2人の間に挟まる形で見上げいたセツナは、みんなが無事で良かった…そんなことを思いながらも、今回魔人の大男が襲撃してきたきっかけを知っているのか、ぎゅ…と手を握りしめながら複雑そうな表情を浮かべていくのであった。
「………」ぎゅ
「いてて…ちょもうちょい優しくしてシイナ…」
「…我慢だよ姉さんっ、怪我人なんだから…手当はしっかりしないと…」
「わかってるけど…イテテテ…!」
その後一旦安全の確認が取れたことで住み慣れた家に帰ってきた3人は、外も雨が振っているということでセツナは室内の散らかったものの片付けを、シイナは負傷しているアメヤの手当をしたりしていた。
一応今回の兼は戻ってきてから再度警察に通報し、事情なども話したものの午前中が大雨ということもあって、詳しい調査は午後から行うことになったらしい。
「そういえば姉さんさっき帰ってきた直後電話してたよね、何処としてたの?」
「警察、襲撃中のときかけたら繋がらなかったでしょ?だからさっきかけたら繋がってさ。雨が落ち着いたら本格的に調査してくれるって」
まあ警察などのお役所機関は信用できないものの、しないよりかはマシと言っても良いだろう。そんなやり取りをしていると片付けをある程度し終えたセツナが、2人にどうしても話したいことがあると告げていく。
「まあ宛にはならないけど…、しないよりかはマシか…襲撃中電話繋がらなかったけど」
「ってもアレを警察が対応できるかって言われたらアレだけどね」
「あっあのさ…しーちゃんあーちゃん…、ちょっといい…かな?どうしても話したいことが…」
もちろんその内容がシイナがセツナから受け取った炎の力に関してであることは察していたため、手当を終えたシイナはそのまま話して…と口にしながら、アメヤと耳を傾ける。
「私にくれた…例の奴…でしょ?いいよっ、話して」
「えぇ」
その後セツナから告げられた言葉、それはかつて自身が普通の人間ではなく炎を操る侵略種因子適合人類、通称「魔人」であること。
過去の記憶がないことは事実だが、同時に自身が人ならざる者であることを本能的に理解していた。
「実はさ…私…普通の人じゃなくて…侵略種因子適合人類っていう通称「魔人」…なんだ」
「……」
「まあその…極端に言ったら化け物みたいなもので…記憶こそないけど…人ならざる者ってのは理解してるつもり…なんだ」
数年前の侵略種災害の際、セツナやアメヤに助けられてからというもの一緒に過ごしては来たものの、自分が人ならざるものでないことは自覚していた。
なので人間ではない自分はシイナの傍にいてはいけない、離れなければならないと思っていたらしい。
「数年前の侵略種災害のとき…しーちゃんやあーちゃんに助けられてから一緒に過ごしてきたけど…、人間ではない自分は2人の傍にいてはいけない、離れなければならないって思ってた」
そもそも今回の襲撃だって自分が魔人の力を持っていたからことがきっかけで狙われたようなもので、改めて一緒にいてはいけない…と感じていた。
…何より許可なくシイナに魔人の力を受け渡し化け物にさせてしまった以上、余計にそのことについて考えてしまうようになったとか…
「…それに今回の襲撃だって…元を辿れば自分がいたからなの…魔人としての力を持ってたから…、何より許可なくシイナに魔人の力を渡して化け物にして……。駄目だよね…こんな私が一緒にいちゃ…」
でも離れたいと思っていても自分を家族として迎え入れてくれたシイナや雨の愛情に居心地の良さが何度も横切ったことで、自分はこの家しかないんだ…と改めて実感させられたらしい。
涙をポツポツ流しながらごめんなさい…と謝罪するセツナに対して、そっと抱きしめ頭を撫で下ろしながら謝ることなんて何一つない…とシイナは答えていく。
「でも離れようとしても…2人と過ごしてきた思い出が過って……ごめんなさい…」
「……なんでセツナが謝るの…、謝る必要なんて何一つないでしょ?」
…え?と予想しなかった返答が帰ってきたことに驚きの表情を浮かべながら涙顔のまま顔を見上げたセツナに対して、シイナはそのお陰でみんな助かったんだから謝る必要なんてないし、むしろ御礼を言いたいぐらいだと述べる。
もちろんアメヤも同じように例え魔人と人間が入れ替わった2人のことや、セツナが化け物だったとしても家族には変わりないとフォローの言葉を投げかけてくれた。
「…え?」
「だってー、セツナがこの力くれなかったらみんな助からなかったんだよ?私的にはむしろ御礼を言いたいぐらいだよー」
「ええっ、それにセツナが化け物だっただろうが2人が入れ替わったとしても…大切な妹や家族には変わりないよ♪」
それを聞いたセツナは安心しきったのか、今まで抑えていた涙をダムが決壊したかのように溢れさせながらシイナの胸元に顔を埋めていき、子供のように泣きじゃくる。
「……しーちゃん…あーちゃん……っ!!」ガバッ
そんなセツナをシイナは優しくつつみ込みながら優しく撫で下ろしており、アメヤも2人を抱きしめながらこれからは何があろうとも味方をするし、家族として護ってあげる…と告げていくのであった。
「っ…ひっぐ…えっぐ…」
「よしよし…お姉ちゃんはずっとそばにいるからねー」「これからは私が…いえ私達がセツナを護ってあげるから…♪何があろうとも…!」
しばらく泣きじゃくったことで落ち着きを取り戻したセツナは涙を拭きながら、ありがとう…と重荷が外れたように今まで以上に眩しい笑みを浮かべる。
とりあえずはこれで一段落ね…そう口にしたアメヤだったが、シイナがそれに待ったをかけた。
「…ありがとうあーちゃんしーちゃん、…お陰で重荷が外れたっていうか…」
「でしょうね♪今までにないぐらい笑顔眩しいもんっ♪まっこれで一段落し…」
「ちょっと待った姉さん…!」
どうやらアメヤに聞きたいことがあるらしく、一間空ける形で魔人の大男や侵略種との大群と戦闘した際に見せたアレ(魔導師)は何なのかと詰めながら問いただす。
まあ当然アレを観られた以上誤魔化しは効かないため、少し目を泳がせたアメヤは観念した表情を見せると、実は…と自身の正体を明かしていく。
「まだアレに関して何にも説明してもらってないんだけど…ほら魔人の大男とかや侵略種と戦闘してたときの…アレ!」
「…あっえっと…、ごめん…今まで秘密にしてたんだけど…実は……」
『私、国連災害対策本部で魔導師っていうのをやってるの』
魔導師…それは魔法を科学的・体系的に修得し行使する人々の総称であり、アメヤは国連災害対策本部所属として事務職を兼任しつつ侵略種災害の初動対応に当たる即応部隊として活躍しているらしい。
それを聞いたシイナは道理で国連災害対策本部で働いているとはいえ仕送りの金額が多いわけだ…と今まで疑問に思っていた答えを知ったことで、納得の表情を浮かべていく。
「もちろん事務職をしてるのは本当、それに加えて侵略種災害の初動対応に当たる即応部隊もやってて…」
「なるほど…道理で国連のお仕事してるとはいえ仕送りのお金が多い訳だ……、今日ようやく納得したよ」
だがそれよりも何故そのことを黙っていたのか…と問いただすシイナに対して、アメヤは侵略種災害の初動対応に当たる部隊ということで、危険な仕事をしていることを2人に知られたくなかったこと。
そして自分は魔導師としては弱い部類で、魔人クラスとなると奇襲でないと対応が出来ないことをコンプレックスに感じており、そのことも言えない理由の1つだったとか…
「でも何で今まで話してくれなかったの?別に隠すようなことなかったじゃん」
「あーいや…その…、それも一応理由はあって…危険な仕事をしてるってのを知られなくなかったのと…あと…私魔導師としては弱い部類でさ…、今回みたいな奴は奇襲じゃないと対処できなくて…だからギリギリまで温存してたんだけど…」
今回の襲撃もまさにいい例であり、全力で闘っても魔人の大男相手には手も足も出なかったことや2人を守れなかったことにも触れながら、かっこ悪かったよね…と少し申し訳なさそうな口調で問いかける。
…がセツナはそれを真っ向に否定、すごくかっこよかったし頼れるお姉ちゃんだよ!と真剣な眼差しで顔を近づけていく。
「今回のがいい例だと思う…、その…カッコ悪いよね……侵略種と闘ってるのに奇襲じゃないとあーいうのに太刀打ち出来ないなんて…」
「ううん!そんなことないよ!お姉ちゃん、すっごくかっこよかった!!」
「…セツナ」
確かにあの魔人の大男には太刀打ちできなかったかもしれない、だがそれでもあれだけいた侵略種をあっという間に蹴散らして危機的状況を脱し、シイナの戦闘を大きくサポートしてくれたことには変わりないのだ。
シイナからもフォローを受けたアメヤはありがとう…と笑みを零しながら、少し零れ出た涙を指で優しく拭っていく。
「そうそう!姉さんのお陰で私もすっごく戦いやすかったし…!!私がフルパワーで吹っ飛ばした時もセツナを護ってくれたじゃん!」
「しーちゃんの言う通り…!だからあーちゃんは誇っていいと思う!」
「…2人共……、ありがとう」
そんなこんな話しているうちに、突如として室内にお腹が盛大になる音が響き渡る。そういえば朝食食べてなかったね…と3人揃ってお腹が鳴っているのを横目に、遅めの朝食をとることに。
ギュるる〜
「…あ…」
「そーいえば朝食…食べてなかったね」
「言われてみれば確かに…」
とはいえ朝作って食卓に並べた朝食は完全に冷めてしまっている上に、時刻は気づけばお昼の12時前を指していた。
もちろん捨てるのはもったいないため朝食を温めながらも追加で昼食を作ることにしたらしく、3人はいつものように楽しげな雑談を交わしながら昼食の準備に取りかかっていくのであった。
「朝食…冷めちゃってるよねー…、でも捨てるのはもったいないし…」
「まあ朝食はレンジで温めるとして…昼食は追加で作りましょうか」
「あっじゃあそれ私がやる!ちょうどいい奴が冷蔵庫にあるから!」
「りょーかい、ならシイナ手伝って上げて。私は窓の修理できるかやってみる」
「ほーい、でも病み上がりなんだから無理しないようにね姉さん」