【なのはEXGV】 〜久瀬家の長女は、魔導師やってます〜 作:三坂
瑞穂本土
国連災害対策本部
オフィスにて
「……」カタカタ
あの襲撃事件から一ヶ月後、瑞穂本土にある国連災害対策本部のオフィスでは他の職員に交じる形でデスクワークを行っている赤枠の眼鏡をかけたアメヤの姿が…
結局あの事件は薬物中毒者が襲ってきたということでニュースでは片付けられ、大量に押し寄せてきた侵略種や魔人に関しては一切報じられることはなかった。
デスクワークの合間に調べても出てくるのは薬物中毒者であろう男の名前、堂士馬ゴウとそれに関するデータのみであり後は機密情報として見ることすら出来ない。
「ハァ…やっぱ駄目かぁ…」
まあこうなることはなんとなく予想はしていたものの、やはり入手出来ないうえに別の事件として片付けられる身としてなあんまりスッキリしないだろう。
こちとら殺されかけたんだけどなぁ…そんなことを思っていると、上官らしき中年の男性が近づきてきてアメヤに声をかけられる。
ーまあこうなることは予想してたけど…なんかモヤモヤするなぁ…こっちは殺されかけてんのに…ー
「久瀬さん、今いいかね?」
もちろん声をかけられた以上反応しないといけないため、仕事の合間に調べていた例の事件を慌てて消して本来の仕事内容を表示しながら何事もなかったようにどうしましたかと答えていく。
どうやら上官曰くはどうやらアメヤにお伺いしたい人が来ているらしく、今から会えないかという話らしい。
「えっあっはい!いかがなされましたか?」
「実はな、君に会ってお話したい人がいるんだ」
「私に…ですか?」
その後上官に案内される形でオフィスを後にしたアメヤは、外部の客人がやってきた際に使われる応接室に通される形で中へと入る。
すゆと既に中に人がいるらしく、応接室に入ってきたアメヤの視線の先には既に腰掛けている人物の姿が…
外見は子供っぽい雰囲気を見せているものの、ここに通されているということは子供ではないのは間違いない。
そんなことを思っている間にも上官は少女にアメヤを連れてきたことを告げ、彼女はこちらに視線を向けながら2人っきりでお話をしたい旨を伝えた。
ー…子供?…いやでも…ここにいるってことは…ー
「失礼します、久瀬アメヤさんをお連れいたしました」
「ありがとう御座います、お二人でお話をしたいので…よろしいですか?」
「はっ、失礼します」ガチャ
その後上官が退室したことを確認した少女は初めましてと初めに口にしながら、自身の名前を国連危険生物調査機関『EXCEEDS』の高町なのはであると名乗っていく。
「お仕事中急にお呼びしてすみません、私 国連危険生物調査機関『EXCEEDS』の調査員、高町なのはと申します」
もちろん名乗られた以上答えないと失礼に値するため、アメヤも自身の名前を名乗っていき、双方自己紹介を済ませるとなのはがようやくお会い出来たと少しお疲れ気味な表情を浮かべる
「あっえっと…国連災害対策本部 危機管理初動対応部所属の久瀬アメヤと申します…」
「アメヤさんですね、良かった…ようやくお会い出来ましたよ…」
というのも国連調査機関「エクシーズ」と名乗っている高町なのはであるが年齢が13歳、つまり中学1年で身長もそれ相応ということもあって、国連災害対策本部を訪れた際には間違えられて門前払いをされかけたらしい。
幸いレイジングハートが気を利かせ身分証を提示してくれたため事なきを得たが、それでも色々と大変だったのには変わりないのだろう。
「えっと…というと…」
「私これでもちゃんとした国連の職員なのに、身長と年齢で間違えられて門前払いをされかけて…、身分証を提示したことでようやく…」
まあそりゃそうだろうな…内心そう思っていたアメヤだったが、そんな彼女をみつつなのはが本題へと入っていく。
ーまあそりゃそうだろうね…、だって年齢13歳ってセツナと近い歳だもん…、それで国連職員って信用しろって方が…ー
「コホン、すみません少し愚痴が…ひとまず本題に入りますね」
その本題というのが一ヶ月瑞穂の離島、海女取島で起こったこと…言わずがもな久瀬家が巻き込まれた事件であり、それを聞いたアメヤはひそかに眉を細めた。
世間では大量の侵略種と薬物中毒者が島のとある家を襲撃したとしか報道されていない、だが瑞穂に専門の調査機関を設立すると明言したエクシーズがわざわざ訪れるということは…彼女の予想通り普通の事件ではなかったということだろう。
「一ヶ月の事件…覚えてますか?こちらで勝手ながら調べさせてもらったんですが…」
「……表向きでは、大量の侵略種と薬物中毒者がとある家を襲った事件…でしょ?」
「はい…」
実際彼女の予想通り、その襲撃事件で薬物中毒者とされていた男性、堂士馬ゴウが実は薬物中毒でも何でもなく人型の侵略種、いわゆる魔人である旨をなのはから告げられていく。
「その襲撃事件で薬物中毒者とされている堂士馬ゴウって方が、実は人型の侵略種なんです。私たちは魔人と呼んでいるんですけど…」
「……」
それを聞いたアメヤはやはりか…と眉を細めながらなのはの話に耳を傾ける、噂では聞いていまし何より人離れした姿でそうでないかとは思ってはいた。
しかし世間ではその情報は隠され、何度も進言しても相手すらされず、そんな国連に嫌気を最近抱いていたのだが…
ここにきてようやく話を聞いてくれる人が来てくれた…内心そんな安堵を浮かべていると、なのはが話を続けていく。
ーやはりか…そんな気はしてたんだけど…、国連の連中は言っても門前払いさせられるし…丁度嫌気がさしてたんだよね…。はぁようやく話を真剣に聞いてくれる人が出てきた…ー
「えっと…話を続けますね?」
基本的に魔人というのは侵略種の力を得た人間のことを指し、主に怪我などで傷口から侵略種の血が体内に入った場合と、魔人になるための薬を注入した場合の2つが今確認されている魔人の種類だとか…
「基本的に魔人は侵略種の力を得た人間のことを私達は呼んでいます、主に怪我などで傷口から侵略種の血が体内に入った場合と、魔人になるための薬を注入した場合の2つ。これが現在確認されている魔人の種類です」
「なるほど…」
もちろん魔人に襲撃されれば一般の人間相手にとってはひとたまりもない、…しかし今回の襲撃事件では死者どころか重傷者も出ずに軽い怪我をした人のみで被害が出ていない。
つまり襲撃した魔人を倒した魔人がいるということであり、それを調べた際に知ったなのはは近場で久瀬家の長女が働く国連災害対策本部へ訪れたようだ。
「当然魔人に襲撃されれば普通の人ではひとたまりもありません…、ですが今回の事件は軽症者1名のみで大きな被害が廃ショッピングモール以外確認されていない…ってことは…」
「…その魔人?を倒した魔人がいるはず…そういう推察で来たということですか?」
「はい、その通りです」
もちろん彼女だけでなく当事者であるアメヤの2人の妹、シイナとセツナにお話を伺いたいので出来れば何処かで時間を取って頂いて国連調査機関「エクシーズ」までお越し頂きたいというのが今回の経緯らしい。
「もちろんアメヤさんだけじゃなく、同じ当事者のお二人であるシイナさんやセツナさんにもお伺いしたいので何処か時間を取っていただいてお越しいただければ…」
「なるほど…」
一通り話を聞いたアメヤは少し考え込むと、その話を聞いたあとはどうするのかと尋ねていき、それを聞いたなのはも改める形でその後について説明し始める。
「…それでその話を聞いた後はどうされるおつもりなんですか?」
「それに関してなんですが…」
基本的にエクシーズは侵略種の駆除を行ってはいるもの、なのはを含めたエクシーズ隊員は外国の人間で光構成されており、活動期間も限られているのだ。
なのでその活動機関が終了後にも継続的に現地で魔人や侵略種に対抗可能な協力者が必要となってくる。
「基本的に我々エクシーズは外国の人間で構成されて、活動期間も限られています。なので現地で継続的に駆除が行える協力者が必要なんです」
「なるほど…現地の協力者を…」
ちなみにその一人はアメヤが適任だと思われているようで、その訳を聞くとやはりというか侵略種や魔人に対抗可能な魔導師としての能力を持っているから…という理由らしい。
とはいえ魔導師としてはようやく一人前レベルの能力しかないため、お役に立てれるかはわからない…と彼女が答えると、そのへんはサポートするので問題ないとなのはは答えていく。
「ちなみにその一人はアメヤさんが適任だと思っています、国連災害対策本部で唯一魔人や侵略種に対抗可能な魔導師としての能力をお持ちになっておられますので」
「…まああんまり強いとは言えませんけどね、正直お役に立てれるかは…」
「ご心配なくっ!そのへんもしっかりサポートするので…」
それを聞いたアメヤは2人が協力してくれるかはわかりませんが、話だけは聞かせようと思いますと答えるとなのはが満面の笑みを浮かべながらありがとう御座います!と勢いよく頭を下げる。
下手をすればセツナと近い年齢の子が国連職員、今思えば信じられないことだな…そんなことを思いながらなのはから告げられた今後のスケジュールに関して耳を傾けていくのであった。
「…なるほど、わかりました。協力して貰えるかはわかりませんが…2人に話だけは聞かせようと思います」
ーってか今思えばセツナと近い年齢の子が国連職員だなんて…本当信じられないかも…ー
「っ!ありがとう御座います♪それでは今後のスケジュールなんですが…」
それから少し日が経ち、瑞穂の水守区にある港には、数日分の着替えやら何やらを詰め込んだキャリーケースを引いて他の人に紛れる形でフェリーから降りてくるシイナとセツナの姿があった。
どうやらなのはの話を姉から経由して聞いたらしく、ひとまず話だけでも聞こうとということでこうして本土へ訪れたらしい。
「セツナ、足元気をつけてね。なんならキャリーケース持とうか?」
「ううん、大丈夫。これぐらいなら」
すると降りてきた2人の耳に聞き慣れた声が飛び込んできたためそちらに視線を向けていくと国連災害対策本部と書かれた赤色のSUV(マツダ CX-60)に寄りかかりながら手招きするアメヤが立っていた。
「えーっと…確か姉さんが迎えに来てくれてるはずなんだけど」
「あっいたいた、おーい2人共。こっちこっち!」
その後姉の元へ合流し、荷物をトランクに積み込んだシイナとセツナはそれぞれ助手席と後部座席に乗り込み、それを確認したアメヤはシートベルトを身に着けると車を発進させていく。
「姉さん一ヶ月ぶりー、いやいきなり電話してきたときは何事かと思ったよー。まさか例の話を聞かされるとは…」
「まあとりあえず荷物載せるから乗っちゃって、詳しい話はあっちで聞くことになってるから」
「ほーい、んじゃセツナ乗ろっか。どっち乗る?」
「私は後部座席でいいかなー、しーちゃん助手席のほうがいいでしょ?」
「サンキュ、そーするよ」
ブロロロロ
港を後にしたアメヤの運転するSUVは他の車に紛れる形で高速道路を経由していき、車窓から見える景色…特にセツナは侵略種災害以降久しぶりの本土の街並みを興味深そうに眺めていた。
「……」
やはり島とは違い人の賑わいやまちの発展具合もかなり違ってくるものの、やはり侵略種災害もその分多いということもあってか、遠くの方には放棄された街並みもちらほらと確認出来る。
そんなやり取りをしているうちに、黒色のSUVは国連危険生物調査機関『EXCEEDS』と書かれた看板が立てかけられた建物の敷地内へと入っていく。
「ビルが一杯だねー、しーちゃんの言う通りお店もたくさん……あっあの店いいかも」
「あとでよろっか♪今日は好きなの買っていいよ」
「さっ流石にそこまでは…」
ー…まあそれいいけど…やっぱ本土は本土で大変っぽい…遠くの方には放棄された街も見えるし…ー
「はーい2人共ー、そろそろ到着するわよー」
「…?あっここが…」
その後出入り口前に車を停めたタイミングでいかにもエクシーズトップですという雰囲気を醸し出した、指揮官の上着を羽織った女性と、アメヤは見慣れたなのは…そして金髪セミロングの同年代っぽい少女の姿が…
キキッ
「よっと…確か出入り口まで来たら向こうから迎えてくれ…あっきたきた」
「よーこそおいでなさいました」
車から降りた3人の元に歩み寄りながら、長旅ご苦労さまと労ってくれた女性は、自身を国連危険生物調査機関『EXCEEDS』の総督を務める八神はやてと名乗りながらようこそ…とアメヤと握手を交わしながら出迎えていくのであった。
「長旅ご苦労さまです、国連災害対策本部 危険生物調査機関『EXCEEDS』極東支部へようこそ。私ここの総督を務めております、八神はやてと申します」
「あっどうも…」