【なのはEXGV】 〜久瀬家の長女は、魔導師やってます〜 作:三坂
国連災害対策本部 危険生物調査機関『EXCEEDS』極東支部へ訪れた久瀬家御一行は、総督である八神はやてとはやての部下として活動する調査員、高町なのはとフェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンに出迎えられた。
その後お互いに自己紹介を済ませると、はやてたちに連れられる形で建物内へと入っていく。
「あっこっちの2人が妹の…」
「久瀬シイナです…!」
「久瀬セツナ…です…!」
「総督の部下で調査員をしております!高町なのはと」
「フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンです」
「ささっ立ち話もなんですしどうぞ中へ」
アメヤが勤務している国連災害対策本部の建物内とはた違った白を基調とする落ち着いた空間に見惚れながらも執務室らしき部屋へと踏み入れると、支局長のルークアンダーソンが3人を出迎えつつ、荷物はこちらにと丁寧に案内してくれた。
ガチャ
「ここが執務室です、それであそこにいらっしゃいますのが」
「ここの支局長を担当しております、ルーク・アンダーソンと言います。お荷物はこちらに」
「あっどうも…」
その後執務室の隣に設置されている会議室らしい部屋に移動し、向き合う形でそれぞれ座っていくと危険生物調査機関『EXCEEDS』の極東支部で働くスタッフらしき女性が飲み物をそれぞれのテーブルのうえに置いてくれる。
それを確認しつつはやては一ヶ月前の事件を覚えてますか?と尋ねていき、3人も一瞬眉を細めながらはい…と答えていく。
コトっ
「あっ…どうも」
「では本題に早速はいらせてもらいますが、一ヶ月の事件は覚えておりますか?」
「…っ…はい」
その事件でシイナはセツナから特殊な能力を身体を宿しており、そういった人間をエクシーズでは侵略種のなかでも魔人と呼んでいるらしい。
話を聞く限り魔人になった人の多くは事故や偶然の獲得以外にも薬物によって生まれる場合もあるのだとか…
「それで久瀬シイナさん、貴方は現在妹さん由来の特殊な力を身体に宿してちゃいますね」
「…そう…ですね」
「一部の侵略種の持つ超常的な能力を獲得した人間、魔人。魔人は事故や偶然の獲得以外にも薬物によって生まれる場合があります」
簡単に姉からしか聞いてないシイナとセツナは少し首を傾げるが、なのはから例のことについて聞いていたアメヤはアレか…と密かに眉を細める。
するとルークが立ち上がりながらスクリーンを操作、プロジェクターで一ヶ月前に久瀬家を襲った男である堂士馬ゴウが薬物によって魔人としての能力を獲得した旨を明かした。
「薬物…?」
「……」
ーなのはちゃんが言ってた奴か…ー
「久瀬さんの島を襲った男、彼は違法薬物によって魔人としての能力を獲得しました」
だから表情が薬物中毒者みたいな雰囲気してたのか…とあの不気味なオーラの意味にアメヤは納得したものの、トラウマでしかない男の画像にセツナはシイナにくっつく形で少し震えていく。
そんなセツナをみつつも、はやては魔人の特徴に関して引き続き説明を行う。
ー…なるほど…あの表情はそういうー
「…ちっ…!」
「しっ…しーちゃん…」
「……ほとんどの場合侵略種の体組織は人間の身体を侵食していきます、身体の肥大化や異形化。精神の異常や様々な病理症状、そして同種の生物に対する強烈な捕食欲求…」
つまり堂士馬ゴウがあそこまでセツナを狙っていたのも彼女が魔人だったからというわけで、その力を狙っていたからということ。
そして違法薬物によって魔人化した人のほとんどは精神を侵略種によって侵され、自分自身をコントロールできなくなってしまうそうだ。
「侵略種に精神を侵された魔人は人間や魔人を捕食したいという欲求が強いという傾向があるようです」
ー……だからあのとき…執拗にセツナを狙って……しかも私を食べようとしたのもそれが原因…ー
だからこそ同じく魔人の能力を受け持ったシイナは自分自身をしっかりコントロール出来ているうえに、身体に異常をきたすことなく記憶や人格を失わずに侵略種の超常能力を自由に扱えるというのは、はやてたちにとって非常に珍しい事例らしい(なのは達が頷いているところをみるに)。
「久瀬さんのように身体に異常をきたすことなく記憶や人格も失うことなく、侵略種の超常能力だけを自由に扱えている。そんな方は非常に珍しいんです」
「そう…なんですね」
その後話を侵略種に戻していき、侵略種は他の侵略種を取り込めば取り込むほどその形質が混ざり合い、その形質が大型化していくらしい。
この辺は国連災害対策本部の魔導師として侵略種災害の初動対応に当たっているアメヤも詳しい情報であり、はやてに聞かれた彼女はええっ…と答えていく。
「話を侵略種に戻します。侵略種は他の侵略種の力を取り込むほどその形質が混ざり合い、大型化していきます」
「この辺は国連災害対策本部の魔導師として侵略種を駆除してはるアメヤさんが詳しいと思います」
「えぇ…、だいたいのパターンはそうですね…。私とも何度か…」
大きくなるのだけでも面倒極まりないのだが、巨大化した侵略種は世界各地に巣を作り、侵略種を産み落とすらしい。
尚その産み落とすのも一定周期で大発生という大規模な繁殖を行うせいで数の増加はたどる一方で、これこそが世界中に侵略種が蔓延っている原因主な原因になっているそうだ。
「巨大化した侵略種は世界各地に巣を作り、侵略種を産み落とし、一定周期で大発生という大規模な繁殖を行います。これがこの世界に侵略種が蔓延っている原因です」
「……」
ー実際その通り…私らもそれで対処に苦労してるっていうか…ー
特にこの世界へ最初にやってきたとされる個体、原種群は侵略種のなかでも最も強力であり、繁殖力や再生能力も桁違い。
近代兵器や薬剤を持ってもしても駆除は困難らしく、
実際過去に一度位置が掴め、軍が駆除を試みたものの失敗したデータがあったことをアメヤは思い出す。
「特にこの世界へ最初にやってきた原種群は強力で繁殖力も再生能力も強い、薬剤や近代兵器を持ってしても駆除は非常に困難です」
ー…そう言えば…少し前にそんな資料があった気が…、今までの侵略種と全然違うって書いてあったけど…アレが…原種群ー
より強大な侵略種を倒すには当然ながら更に強力な侵略種の力が必要不可欠であり、はやてはそんな人材を探していたのだが…
「強大な侵略種を倒せるにはより強大な侵略種の力しかない」
まさにそれがシイナであり、侵略種の力を取り込み最大限に発揮しながらも、健全な心と身体に宿し人間としての生活に影響がほぼないというのは、エクシーズにとってかなり大きな人材。
実際そんな人間が組織の支援を受けて強力な侵略種を倒して力をつければ、世界中全ての原種を駆除し侵略種の災害を消し去ることも可能ではある。
「そう!そんな力を健全な心と身体に宿した人間が組織の支援を受けて強力な侵略種を倒して力をつけて!世界中全ての原種を駆除して!この世界から侵略種の災害を消し去る!そんな計画を実践出来る人材がよーやく見つかったんです!!」
「うぇ…わっ私…?」
そんなはやての言葉を後押しするように、はやてとフェイトもシイナの能力はどんな兵器や侵略種よりも凄い可能性を秘めてるんだと告げていく。
「そーです!久瀬さんの力は凄い可能性を秘めているんです!どんな侵略種や兵器よりも…!とってと凄いものが!」
「はいっ!」
もちろんエクシーズである自分たちが駆除出来ればいいのだが、海外の機関ということも相まって活動期間も限られているせいで、現地の強力を得なければ駆除出来ないし、仮に出来たとしても復活されるのがオチとも言える。
だからこそ侵略種を倒せる力を持っているシイナと、魔導師として戦闘経験のあるアメヤは、はやてたちからすれば喉から手が出るほどの人材。
なので一緒に強力して世界を救わないか…!とはやてが詰め寄るように2人へ直談判していく。
「もちろん我々が駆除出来ればええんですけど、私らエクシーズは海外の機関ですし活動期間も限られとりますから。現地の協力が必要不可欠なんです」
「……現地の協力…」
「シイナさん、アメヤさん!一緒に侵略種を倒して…世界を救いませんか!!」
まあいきなり世界を救いませんかと言われてはいそうですか…と納得出来るわけではないが、それでも侵略種災害が減ることによって自分たちみたいな悲しむ人が減るのならやる価値は十分にあるだろう。
もちろん魔人としての能力を失い普通の人間と化したセツナもきちんと配慮してくれるのなら、やらせてください…と2人は顔を一瞬合わせるとオッケーの返答を返した。
「…正直…世界を救うとかはピン来ないんですけど……、侵略種災害が減ってそれで悲しむ人が減るのなら…やる価値はあると思います。ねっ?姉さん」
「そうだね、もちろん私たちだけじゃないです。魔人としての力を失ったセツナも配慮してくれるなら…、やります…!」
当然はやてたちももちろんそれは配慮させてもらいますと前向きな答えを返していき、それを聞いたシイナがセツナに向き直ると、話を聞いた通りこれからは一緒にいられる時間が姉さんみたいに減るかもしれない…と伝える。
だがその分一緒にいる時間も増やすし2人で更に協力していくつもりだとも答えると、セツナは本当だね?と真剣な目つきで2人を見上げていく。
「もちろんそれは最大限配慮させてもらいます、家族との時間を作るのは大切なことですから」
「ありがとう御座います…、セツナ。これから多分…いや絶対姉さんみたいに一瞬に過ごせる時間が減るかもしれない…」
「……」
「でもその分一緒にいる時間も増やすし2人で更に協力して支えてくつもり…、だからお姉ちゃん達のわがまま…聞いてくれる?」
「…本当に…今まで以上に一緒にいてくれるん…だよね?」
もちろんそのつもりであるため、そうだと2人が答えると…少し考えてからセツナはいいよと答えた。
こうしてエクシーズに協力することになった3人は、ルークから今後のこと、業務体制や福利厚生、報酬はもちろん。
これから戦うべき災害や侵略種はもちろん、警戒が必要な人間に関しても…
「うん」
「…わかった、いいよ。私も自分の力が誰かを護るために使えるなら…しーちゃんとあーちゃんを応援する」
「ありがとうセツナ、八神総督」
「…決まりですね」
「ではこれからのことについて説明しましょう、業務体制や報酬、福利厚生。」
「それと戦うべき災害や侵略種はもちろん、警戒が必要な人間に関しても…」
ピンときていないシイナとセツナは首を傾げるが、アメヤはその意味を知っているのか密かに眉をひそめながら話を聞いていく。
実際エクシーズにとって侵略種はもちろんのこと、その侵略種や力を悪用する人間も要注意しなければならないため、福利厚生などと含めて話をしていくのであった。
「人間…も?」
「侵略種や、侵略種の力を悪用する人間もいますから…」
それから時間が経ちあたりが暗くなりつつある頃、久瀬家の3人はエクシーズ側が手配したホテルで一夜を明かすことになり、それなりに豪華で落ち着いた雰囲気のホテルに2人は目を思わず輝かせる。
「わぁ…!!こんなとこに泊まれるなんて夢みたい…!!」
「しーちゃん見て見て!ここすっごく夜景綺麗だよ!!」
「えっマジで!?私もみるみる!!」
昼間エクシーズの極東支部にいたときとは全然違う年相応の反応に、2人のキャリーケースを収納スペースにしまいながらアメヤはやれやれという表情を浮かべる。
一応1泊泊まることやホテルも手配してくれることは事前に聞いてはいたものの、まさか都心部でもそれなりの値段がする場所に泊まれるとは思っても見なかったらしい。
「ははっ…昼間の反応が嘘みたい…、ってかこんな場所よく手配出来たわね…」
恐らくエクシーズに協力してもらうために出来ることは何でもするつもりだったのかも知れない、とはいえこれからが本番とも言えるだろう。
シイナは魔人の能力を活かし学生として勤勉に励みながらも、手始めに瑞穂の侵略種や原種などの駆除を少しずつ始めていき、アメヤもエクシーズが新たに設立する専門機関のリーダー兼魔導師として活動することになっている。
もちろんセツナも例外ではなく、近いうちに今通っている学校から新しい学校に転校という形で調整が始まっており、魔人としての力を失ってから初めて普通の人として生きるのだ。
ー…ってもこれからが本番か…私やシイナもそうだけど…セツナも環境が大きく変わる…ー
色々と不安なことはあるが、それでもそのなかでできることはしっかりしていこう…!内心意気込みながら、楽しそうにはしゃぐ姉妹のこの光景は何が何でも護ってやる…そう思って行くのであった。
「ほらしーちゃんみてみて!あそこ夜景が綺麗…!!」
「いやー、島とは全然違うねー。あっセツナ!この辺にいいお店があるって!明日時間あるし行って見ない?」
「いいの?わーい♪」
ーけど出来ることはしっかりやってかなきゃ…!それに…この光景だけは絶対何が何でも護ってやる…!それがお姉ちゃんの役目だもん…!ー