創造主の幻想入り   作:ゆうれん

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一章 第8話 創造主たちの飛行術と、紅魔館の優雅なお茶会

 紅魔館へと向かう幻想郷の上空。

 博麗霊夢は空を飛びながら、ふと隣を並走する異世界の住人たちに視線を向け、素朴な疑問を口にした。

 

「そういえば、あんたたちってどうやって飛んでるのよ? 魔法って感じでもないし」

「あ、私はですね、粒子生成で『オリカビアの道化師の羽』を模倣して生成してるんです! 今度は主様のおかげで出力が安定してるので、バッチリ発動できてます!」

 

 甘露がポーカーフェイスのまま、どこか誇らしげに答える。

 彼女の背中には、さっき神社の上空で失敗した、マルクのようなドット絵調の美しい光の翼がパタパタと羽ばたいていた。耳もピンと立ち、尻尾も嬉しそうに空中で揺れている。

 

「へー、綺麗な羽だな。じゃあ、そっちのお札面の主様は……って、おい! なんだその飛び方!?」

 

 箒に乗った霧雨魔理沙が、甘露のさらに隣を飛ぶ『主』を見て目を丸くした。

 主様は、羽も生やさず、魔法陣も展開せず、ただの直立不動の姿勢のまま、もの凄いスピードで慣性を無視して空中を並走していた。

 

「んー? 僕? 僕はね、自分の周囲の空間の重力データを無理やりゼロにして、あとは自分の体を拳で軽く殴った衝撃の慣性だけで進んでるんだよね。方向転換したい時は、空気を足の裏でパァン! って蹴って軌道修正してる」

「……それ、ただの脳筋すぎる力技じゃない。疲れないの……?」

 

 霊夢が引きつった苦笑いを浮かべながら尋ねる。空間操作の権限と世界最強のフィジカルを完全に無駄遣いした超絶脳筋飛行術である。

 

「全然? 最強だから疲れるとかないし。あ、あそこに大きな赤い館が見えてきたよー。あれが紅魔館?」

「そうよ。あそこの吸血鬼、めちゃくちゃ我が儘だから覚悟しなさいね」

 

 一行がそんな会話を交わしながら高度を下げていく中、目的地の紅魔館のテラスでは、すでに優雅な時間が流れていた。

 

 * * *

 

 紅魔館、見晴らしの良い2階のテラス。

 白いパラソルの下で、紅い悪魔の異名を持つ館の主――レミリア・スカーレットは、最高級の紅茶を優雅に口に運んでいた。

 

「ふぅ……。今日の十六夜咲夜の紅茶も完璧ね。ねえ、あなたもそう思うでしょう? メモリア」

「はい!本当に素晴らしい味ですね、レミリアさん」

 

 レミリアの対面に座り、上品にカップを傾けているのは、甘露の世界から巻き込まれて落下してきた『らのアール』――ではなく、記憶を操る能力を持つ少女、『メモリア』であった。

 彼女はレミィやパチュリーの考えで自分の本来の記憶や、オルカディアでの姿をすっかり忘れ、あたかも最初からこの紅魔館の賓客、あるいはレミリアの古くからの友人のような顔をして、この贅沢なティータイムを心から満喫していた。

 

「外の世界から降ってきた時はどうなることかと思ったけれど、あなたの『記憶を操る能力』、なかなか面白いじゃない。パチュリーもあなたの力に興味津々よ」

「光栄です。皆様が私の力を歓迎してくださって、本当に救われました」

 

 メモリアがふわりと微笑む。

 そんな二人の完璧なお茶会の空間をぶち壊すように、上空から「たのもー!」と言わんばかりの賑やかな影が近づいてくる。

 

「おいレミリアー! ちょっとツラ貸しなさい!」

「ちょっと魔理沙、人の家に不法侵入するような声で叫ばないの!」

 

 霊夢と魔理沙の声だ。レミリアがわずかに眉をひそめて空を見上げる。

 

「まったく、騒がしいネズミたちが来たわね……。ん? 後ろにいるのは見慣れない……狐の耳?」

「あっ、メモリアーーー! 探しましたよぉーっ!!」

 

 道化師の羽を輝かせながら、甘露がポーカーフェイスを全力で維持しつつ(しかし尻尾はちぎれんばかりに大振りの大喜びで)テラスへと着地した。その後ろからは、直立不動のままフワリと降り立つ、顔に「れ」の紙を貼った主様も続いている。

 

「………? 誰でしょう…、あのモフモフした方と……お札を貼った、すごくシュールな方は……?」

 

 記憶を書き換えられ、オルカディアの仲間たちのことを完全に忘れてしまっているメモリアは、首を傾げて不思議そうに甘露たちを見つめる。

 

 記憶を失った友人(メモリア)と、それを助けに来たのんびり創造主(甘露)、そして空気の読めない世界最強(主様)。

 紅魔館のテラスを舞台に、新たなドタバタ劇の幕が上がろうとしていた。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!のゆうれんです。

創造主の幻想入り 第8話、どうでしたか?
なんか最終確認してる時にちょっと短めな気がしました。
2話で掘り下げたメモリアですね。この人の本の設定は昔からあったのですが、2話では記憶が残っているのに、9話では記憶がなくなっているという謎なことが裏で起こっていました。

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次回、第9話の更新でお会いしましょう!
おそらくこれからは二週間投稿で進めると思います。

次回タイトル予告 記憶を失った小さな少女
次回更新予定 10/16 17:50
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