創造主の幻想入り   作:ゆうれん

11 / 11
一章 第9話 記憶を忘れた小さな少女

「………? 誰でしょう、あのモフモフした方と……お札を貼った、すごくシュールな方は……?」

 

 白いパラソルの下で、小さな少女――メモリアは、ちょこんと椅子に腰掛けたまま、不思議そうに首を傾げた。

 レミリアの対面に座る彼女は、外見こそ守ってあげたくなるような愛らしい小さな少女だが、その佇まいはどこかお淑やかで上品だ。しかし、その記憶は完全にキャラ替えの力で上書きされており、かつてオリカビアで甘露たちの友人だったことなど、微塵も覚えていない様子だった。

 

「メモリア――っ! よかった、無事だったんですね! 今助けに――」

「ちょっと待ちなさい、モフモフ。いきなり私の可愛いお茶会相手に馴れ馴れしくしないでくれるかしら?」

 

 感動の再会(?)にポーカーフェイスを崩して駆け寄ろうとした甘露の前に、レミリアがひらりと割って入る。小さな身体から放たれるのは、紅い悪魔にふさわしい威風堂々とした吸血鬼の覇気だ。

 

「レ、レミリアさん、そこをどいてください! 彼女は私の大事な友達で、世界の創造主としての責任を持って回収しに来たんです!」

「フン、創造主だか何だか知らないけれど、今のメモリアは私の大事な賓客よ。パチュリーも彼女の『記憶を操る能力』を絶賛しているわ。そう簡単に渡すわけないじゃない」

 

 レミリアが不敵に笑う。甘露は内心で「うわあああ吸血鬼さんやっぱり我が儘ですー!」とパニックになりつつも、顔は澄ましたポーカーフェイスを維持したまま、耳をペタンと伏せて尻尾をあわあわと揺らしていた。

 

「んー? メモリア、お前本当に僕たちのこと忘れてる? 僕だよ、主様。世界のトップ。一番偉くて一番強い、あの主様だよ」

 

 すると、後ろから直立不動のままフワリと歩み寄ってきた主様が、顔の「れ」の紙をペラペラと揺らしながら、相変わらずの友人トーンでメモリアに話しかけた。

 

「……主、様? ごめんなさい、私、そのようなシュールなお札を貼ったお知り合いは記憶にありませんわ。それに、世界のトップはレミリア様ですもの」

 

 メモリアは小さな手で口元を隠し、クスクスと上品に笑う。その徹底した「紅魔館の住人」っぷりに、甘露の脳内処理速度は再びエラーを起こしかけていた。

 

「嘘でしょう、メモリア……。あんなに仲良しだったのに、私のことも主様のことも忘れてるなんて……!」

「おい甘露、こいつ完全に記憶がすり替わってるぜ。噂に聞くメモリアの能力が、自分自身に暴走しちまったんじゃないか?」

 

 箒にまたがったままの魔理沙が、真剣な顔で分析する。霊夢も陰陽玉を軽く弄びながら、レミリアとメモリアの様子を鋭く見つめていた。

 

「レミリア、その小さな子が自ら望んでここにいるなら文句はないけど、外の世界の歪みに巻き込まれて記憶がおかしくなってるのは間違いなさそうよ。ちょっとその子、調べさせてもらうわね」

「あら、博麗の巫女が私の館で横暴を働くつもり? 面白いわ、やれるものならやってみおきなさい!」

 

 レミリアが紅いオーラを立ち上らせ、不敵に身構える。

 記憶を失った小さな少女・メモリアを巡り、紅魔館のテラスはいよいよ一触即発の空気に包まれるのだった。

 

 

 

その時、主はーー

 

「いやぁ、広いねぇ…ここまで広いと、いっそ清々しいくらいに迷子になっちゃうな…そろそろもどるべきかなぁ…」

 

メモリアが記憶がないことを確認し、メモリアがいつも持っている本を探して探索していた。

独り言をこぼしながらも、その表情には焦りはない…主の持ち前の気さくさは、見知らぬ不気味な館の中でも健在だった…壁に飾られた絵画を眺めたり、窓の外に見える霧の湖を面白そうに観察したりと、まるで観光地でも歩いているかのような足取りだ。しばらく歩いていると、鼻先を掠める匂いが変わった…それまでの冷たい空気の中に、古びた紙の香りと、僅かな薬品の匂いが混じり始める…

 

「ん?これは本の匂いかな?この世界の本はどんなものなのか…ちょっと覗いてみよう。」

 

角を曲がると重厚な木製の両開き扉が聳え立っていた。鍵はかかっていないようだ。主は遠慮なくその大きな扉を「失礼するよ」と押し開いた。

 

ーーーー瞬間、視界が圧倒的な本の世界に染まる。

床から天井まで届く、天を突くような巨大な書架。そこを埋め尽くす大量の魔導書や古文書。薄暗い空間を照らすのは魔法の灯火だけだ。

 

そしてその広大な大図書館の中央、うず高く積まれた本に囲まれた特等席に彼女。パチュリー・ノーレッジは座っていた。パチュリーはいつもの魔理沙などとは違う気配に興味を惹かれ振り返る。

 

「誰かしら、私の読書を邪魔する不届者…は……あなたはメモリアの関係者…かしら?」

 

そうパチュリーは問いた。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!ゆうれんです。

創造主の幻想入り 第9話、どうでしたか?
主は、レミリアの部屋を出て探索に向かい、図書館に辿り着きました。
メモリアの記憶はどうなるのか!お楽しみに!

面白いと思ってくださった方は、ぜひお気軽に感想(コメント)や評価、お気に入り登録をよろしくお願いします!
次回、第10話の更新でお会いしましょう!

次回タイトル予告 破壊の妹と、電脳の創造主
次回更新予定 10/23 17:50
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。