創造主の幻想入り   作:ゆうれん

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一緒 第10話 破壊の妹と、電脳の創造主

「……そうですか、メモリア。私のことも、主様のことも、忘れてしまったのですね……」

 

 甘露はいつもののんびりしたポーカーフェイスのまま、しかし、その背後にある一対の狐耳と九本の尻尾を、寂しさと決意を込めてピンと逆立てた。

 人見知りで抜けている彼女だが、仲間を助けるための真剣な場面では、完全に一世界の「創造主」としての顔になる。

 

「では! 私とお手合わせをお願いします! 力ずくでも思い出させてみせます!」

「あら、お友達になりたいって言ったり、戦いたいって言ったり、忙しいモフモフね」

 

 レミリアがフフンと鼻で笑い、紅い槍を出現させようとした――その瞬間だった。

 

「だーめ! そのモフモフ、レミリアじゃなくて私と遊ぶの!!」

 

 ガラスの破片のような七色の翼を羽ばたかせ、テラスの天井を突き破る勢いで飛び出してきたのは、紅魔館の地下に眠る破壊の妹――フランドール・スカーレットだった。

 狂気と無邪気さを孕んだ笑顔を浮かべ、甘露の放つ「ガチの最強格」の気配に惹かれるようにして乱入してきたのだ。

 

「わあぁぁぁ!? なんかさらに強そうな吸血鬼さんが来ましたー!?」

「あはははは! お札の顔のやつも強そうだったけど、まずはあんたからね! 遊ぼう、モフモフのお姉ちゃん!」

 

 フランが小さな手を開き、甘露の『目(キュゥ)』を握りつぶそうと能力を発動する。ありとあらゆるものを破壊する、文字通りの即死攻撃。

 しかし、甘露の処理速度はそれすらも上回った。

 

「電脳――『ハイパー・クロックアップ』!」

 

 ピキィィィン! と神速の演算音が響き、甘露の思考速度が極限まで加速する。世界が静止したかのような錯覚の中、甘露は自身の存在データを瞬時に書き換え、フランの破壊の因果を強制的に回避した。

 

「わっ、私の攻撃を避けた!? すごいすごい! じゃあこれならどう!?」

 

 激化する、創造主と破壊の悪魔の戦闘。

 テラスを舞台に、フランの放つ無数のレーザー状の弾幕と、甘露が空間操作で生成した数千本のサイバーナイフが、激しい金属音を立てて衝突し、弾け飛ぶ。紅魔館の壁が、庭の木々が、二人の規格外の衝突の余波だけで消し飛んでいく。

 

霊夢たちは並んでのんびり観戦している。そんな中、レミリアの隣で爆風に吹かれながら戦いを見つめていたメモリアの胸に、奇妙なざわめきが走った。

 

「ただいまー、あ、メモリアこれあげる。」

 

と主が帰ってきた。

 

「あ、ありがと…う?」

(な、に……かしら。この、頭が痛くなるような感覚……)

 

メモリアは記憶の書を取り戻したことで記憶を取り戻し始めていた。

 

 目の前で戦う甘露は、フランの容赦のない一撃を、自身の身体を盾にするようにして受け流していた。不調で身体がボロボロなはずなのに、そんなことは微塵も感じさせない完璧なポーカーフェイス。

 だけど、その尻尾は、メモリアが傷つかないようにと、ずっと彼女の前に空間の防壁(結界)を張り続けていた。

 

『甘露はのんびり屋で少し抜けているけれど、何者でも助けに向かうんだ。自分ですべて解決しようとして、友達のために自己犠牲をしてしまう……不器用な創造主』

 

 頭の奥底から、上書きされていたはずの「本当の記憶」が、濁流のように溢れ出してくる。

 

「あ……、ああっ……!」

 

 メモリアは小さな頭を両手で押さえ、パチパチと弾けるサイバー粒子の光を見つめた。

 あの光を知っている。あの、あったかくて、ちょっとお節介で、だけど誰よりも頼りになる、世界の創造主の光を。

 

「……甘露……お姉ちゃん……?」

 

 ぽつりと、小さな少女の口から、本来の名前が零れ落ちた。

 その瞬間、メモリアの周囲を覆っていた紅魔館の「偽りの記憶のデータ」が、ガラスのようにパリンと音を立てて砕け散る。

 

「メモリア!?」

 

 レミリアが驚いて振り返る。

 激しい爆風の向こう側、フランの弾幕をポーカーフェイスで受け止めていた甘露の耳が、その声を拾ってピクンと大きく跳ね上がった。

 

「――っ、メモリア! 思い出してくれたんですね!?」

 

 甘露の二本の尾が、まるで満開の花のように大喜びでパッと広がった。完璧だったポーカーフェイスが、嬉しさのあまり完全に崩壊している。

 

「あはは! よそ見しちゃダメだよ!」

 

 楽しそうに突っ込んでくるフランの攻撃を、甘露は高テンションの空間操作でひらりと受け流し、そのまま光の粒子を纏ってメモリアの元へと舞い降りたのだった。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!ゆうれんです。

創造主の幻想入り 第10話、どうでしたか?
メモリアの記憶が戻り紅魔館はようやく一件落着です。
次回はお茶会の途中のメモリアを置いて竹林に向かいます。
甘露のポーカーフェイスも解けることが起こっていました。

面白いと思ってくださった方は、ぜひお気軽に感想(コメント)や評価、お気に入り登録をよろしくお願いします!
次回、第11話の更新でお会いしましょう!

次回タイトル予告 紅魔の館に託す少女と、竹林の熱き天才科学者
次回更新予定 10/30 17:50
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