創造主の幻想入り   作:ゆうれん

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一章 第12話 冥界の団子と、背中の小さな檸檬

「――というわけでですね、永琳さん。そういう事情で友達を回収して回っているところなんです!」

「なるほどね。空間の歪みで迷い込んだにしては、この子は本当に素晴らしい知性の持ち主だわ。ねえ甘露、このレムフィル、しばらく永遠亭で私の助手としてお借りしてもいいかしら?」

 

 永遠亭の診察室で、甘露がいつものハイテンションで事情を説明すると、八意永琳はすっかりレムフィルを気に入った様子でフフッと微笑んだ。

 隣では、医学の天才レムフィルが「私も永琳さんの月の医学をもっと深く学びたいですね!」と、まだまだ語り足りなそうに目を輝かせている。

 

「レムフィルがそう言ってますし、私の出力もまだ本調子じゃないので……。分かりました、レムフィル、ここで大人しくお勉強して待っていてくださいね!」

「ええ、任せて甘露!他の皆さんの救出、楽しみにしていますよ!」

 

 気さくに手を振るレムフィルを永遠亭に預け、一行はいよいよ最後の迷子――最年少の『れもん』が落ちたという冥界・白玉楼へと向かうことになった。

 

 * * *

 

 ひんやりとした死の気配と、どこまでも続く白桜の並木。

 甘露、主様、霊夢、魔理沙の4人が白玉楼の広大な庭園に到着した。

 紅魔館では戦闘があり、竹林では医療トーク。最後の白玉楼では一体何が起きているのか。甘露は「れもんは一番年下ですし精神面も弱いですから、いじめられて泣いていないでしょうか……!」と内心で大パニックを起こし、耳をアンテナのようにピンと立てて、九本の尻尾をあわあわと揺らしていた。

 

 完璧なポーカーフェイスの裏で、決死の覚悟を持って白玉楼の縁側へと回り込んだ、その瞬間。

 

「うむ。この、みたらし団子というのも、なかなか乙な味わいですみょん」

「ふふ、そうでしょう? 妖夢。でも、レモンちゃんが食べている三色団子も美味しそうねえ」

「おだんご、あまくて、とってもおいしいですぅ……!」

 

 白玉楼の縁側。

 そこでは、主の西行寺幽々子、庭師の魂魄妖夢、そして頭に三角コーンを被った10歳の少年・れもんが、3人揃って仲良く並び、お茶を片手にお団子をパクパクと食べていた。

 

「……は?」

 

 甘露のポーカーフェイスが、本日最大級の完全崩壊を起こす。耳はぽかんと横に寝て、尻尾の動きも完全にフリーズした。

 

「なによこれ、ただのお茶会じゃない」

「おいおい、あの黄色いチビ助、冥界の主たちとすっかりピクニック気分だぜ。ウケるな」

 

 霊夢が呆れ果てたようにため息をつき、魔理沙がゲラゲラと笑う。主様に至っては「あー、れもんじゃん。お団子食べてる。僕にも一本頂戴ー」と、顔の「れ」の紙をペラペラさせながらのんびり縁側に近づいていく。

 

「れ、れもん……! 無事なのは何よりですが……泣くどころか、めちゃくちゃ満喫してるじゃないですかぁぁぁ!?」

 

 甘露が高テンションなツッコミの声を響かせると、お団子を頬張っていたれもんがパッとこちらを振り返った。その大きな目が、大好きな創造主の姿を捉えた瞬間、うるうると輝き出す。

 

「あっ! 甘露おねえちゃん! 主様も!」

 

 れもんはお団子をお皿に置くと、トトトッと駆け寄ってきて、甘露のふさふさとした九本の尻尾の中に勢いよく飛び込んできた。

 

「うう……怖かったよぅ……。でもね、幽々子様も妖夢様も、とっても優しくしてくれたの。お兄ちゃんも、僕を一生懸命護ってくれたんだよ!」

「お兄ちゃん(しもん)が……。よかったです、本当に無事でよかった……!」

 

 甘露は人見知りなのも忘れて、愛らしいれもんをぎゅっと抱きしめた。彼女の耳は嬉しそうにピンと立ち、尻尾もれもんを包み込むようにしてパタパタと優しく揺れる。

 そんな様子を見て、幽々子は扇子で口元を隠しながら、のんびりと微笑んだ。

 

「あら、あなたがこの子たちの世界の『おねえちゃん』ね。あの子のお兄ちゃん、死んでお化けになってまで、弟を本当に強く護っていたわ。とても素敵な絆ね」

「幽々子様……。れもんを護ってくださり、そして和解してくださって、本当にありがとうございました」

 

 甘露が深く頭を下げると、主様も「ありがとねー、お団子美味しかったー」と、ちゃっかり妖夢からお団子を貰って食べながら手を挙げた。

 

「さて、それじゃあ全員の安否も確認できたし、一旦神社に戻るわよ。あんたたちの世界の友達は、紅魔館と永遠亭にそれぞれ預けてあるんだから、迎えに行かないといけないでしょ」

 

 霊夢がそう言って空を見上げると、甘露はのんびりとしたポーカーフェイスに戻り、フワリと身体を浮かせた。そして、自身のふさふさとした大きな背中を、れもんの方へと向ける。

 

「れもん、私の背中に乗ってください。特等席ですよ」

「わーい! 甘露おねえちゃんの背中、もふもふしてて大好き!」

 

 れもんは嬉しそうに声を上げると、甘露の背中の上にちょこんと跨り、その柔らかな毛並みに顔を埋めた。甘露の二本の尻尾が、れもんが落ちないようにシートベルトのように優しく身体をホールドする。

 

「よし、それじゃあ出発です! 高テンションで神社へ戻りましょう!」

「おー!」

 

 背中に小さな檸檬(れもん)を乗せた創造主・甘露、世界最強の主様、そして博麗の巫女たち一行は、冥界の桜が舞い散る中、再び青空へと舞い上がった。バラバラになった仲間たちを全員集め、オリカビアへ帰るための大団円に向けて、デコボコパーティーの飛行はどこまでも賑やかに続いていくのだった。




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!ゆうれんです。

創造主の幻想入り 第12話、どうでしたか?
ようやく全員回収し終わり、もう帰ることができます…と思っていたのですが〜…
とうとう、最終話も近くなってきました!

面白いと思ってくださった方は、ぜひお気軽に感想(コメント)や評価、お気に入り登録をよろしくお願いします!
次回、第13話の更新でお会いしましょう!

次回タイトル予告 別れの宴と、まんまるな異変
次回更新予定 11/13 17:50
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