一章 プロローグ それは結界を破る者
「ーー…よし!成功かな?」
「………あ、あれ?」
博麗神社の上空。遥か高き雲のさらに上、通常なら誰も立ち入ることのできないはずの
「博麗大結界」の最上層。
そこに、ぽつんと浮かぶ一つの丸い影があった。
エメラルドグリーンの瑞々しい体に、深い色のキャスケット帽。右目には歯車と小さな白い翼が
あしらわれた片眼鏡(モノクル)を光らせ、背中には大きな、ふさふさとした狐のような
尻尾を携えている。
性別は不明。どちらかといえば、少し可憐な少女のようにも見える。
その正体は、一つの世界を形作ったとされる創造主――名を、甘露(かんろ)といった。
「空間操作の座標指定、ちょっとズレちゃったかな。……というか、ここどこだろう?」
のんびりとした声で、甘露は首を傾げた。
少し前にオルカディアの世界と幻想郷の境界を超えようと、自身の持つ『空間操作』の権限を
使ったまでは良かったのだが、どうやら未知の強力な結界を無理やり突き破って侵入して
しまったらしい。その拍子に元の世界から何人かこちら側に入ってしまったことをまだ
彼女は知らなかった。
人見知りな甘露は、見知らぬ土地の気配に少しだけ身をすくめる。感情に連動している背中の
大きな尻尾が、不安げにパタパタと左右に揺れた。
歩いて周りを探索しようとした、その瞬間。
パキィィィン! と、空間そのものがガラスのように割れる不吉な音が響く。
「わ、わわっ!? 空間が変質して――重力がっ!?」
ぐにゃり、と視界が歪む。
空間の変質に必死に抗おうとした瞬間、甘露のモノクルの奥に、世界のバグを知らせるような
無機質な文字列が浮かび上がった。
【警告:未知の強固な二重結界を検知】
【エラー:境界突破の反動により、能力にバグが生じる可能性があります。】
【現在地:幻想郷・博麗神社上空】
「え……バグ!?」
次の瞬間、創造主の体は重力の導くまま、幻想の地へと真っ逆さまに落ちていった。
自らが形作ったオリカビアの世界。そのには能力の源たる大樹『コピーツリー』が中心に
そびえ立ち、その世界の住民たちは自身の翼ではなく、能力の力を使い優雅に飛ぶ。
そんな世界を生み出したはずの偉大な創造主。ーーだがそれすらも。かつて、ある『主』に
生み出されたただのオリカビにすぎなかった。
落ちていく風の中で、ふと鼻をくすぐる匂いがあった。
それは、かつての一度だけ訪れたことがあった、銀河の果てに存在するポップスターのような、
圧倒的な緑の香りと、湿った心地よい土の匂い。そしてすぐ下に見える古い神社から漂う、
どこか懐かしいお線香のような匂いだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!ゆうれんです。
本作は全二章の構成を予定しており、第一章が今始まろうとしています!
新学期が始まったら少しづつ更新していく予定です。
一章は完結済みなので安心してください!
もし第二章の時点でなんだかんだ伸びていたら、【読者参加型】の企画を用意しています!
面白いと思ってくださった方は、ぜひお気軽に感想(コメント)や評価、お気に入り登録をよろしくお願いします!
次回、第一話の更新でお会いしましょう!
次回タイトル予告 創造主、幻想の地へ降り立つ
次回更新予定 8/27 17:50