「離して! お願いだから、今すぐみんなを助けに行かなきゃいけないの!」
博麗神社の境内に、甘露の悲痛な叫びが響き渡る。
自分のせいで、大切な仲間である『れもん』『レムフィル』『メモリア』の3人をこの見知らぬ世界――幻想郷へと巻き込んでしまった。その事実が、甘露の心を激しく焦らせていた。
「ちょっと、落ち着きなさいってば!」
背後から伸びてきた博麗霊夢の手が、甘露の黒い帽子の後ろをがっしりと掴む。
しかし、普段ならのんびり屋の甘露も、今は一刻を争う事態。表情豊かな耳と尻尾をバタバタと激しく揺らしながら、無理やり身を捩って霊夢の手をすり抜けた。
「あっ、こら! 待ちやがれ!」
「行かせてっ……!」
逃がすまいと、霊夢が瞬時に両手を広げる。
「――おとなしくしなさい! 『弾幕結界』!」
神社の四方に不可視の障壁が展開され、空間が完全に遮断される。それと同時に、無数の紅白の陰陽玉と札が甘露めがけて容赦なく降り注いだ。
だが、世界の創造主である甘露の『サイバー能力』は、博麗の巫女の常識を遥かに超越していた。
「っ…空間変質……!」
甘露が小さく呟くと、迫り来る霊夢の札が空間ごと青白いデータ粒子へと分解され、霧のようにかき消えていく。
「なっ……私の札を消した!?」
驚愕する霊夢の隙を見逃さず、甘露は手元に高密度の光を収束させ、鋭利な『サイバーナイフ』を形成した。さらにポップスターの魔術を織り交ぜた超高速の連撃を放つ。
「い、いたたた! ちょっと、なによこれ! 物理的にも魔力的にも重すぎるわよ!」
ガチ最強格の力を前に、さしもの霊夢も防戦一方となり、完全にボコボコにされていく。結界の主である霊夢が圧倒され、勝負が決するかと思われた――その瞬間。
「甘露、後ろがガラ空きだぜぇっ!」
「えっ――」
背後から響いたのは、さっきまで気絶していたはずの霧雨魔理沙の声。
復活した魔理沙の手に握られたミニ八卦炉が、目も眩むほどの熱量を帯びて輝いていた。
「喰らいな! 『マスタースパーク』!!」
極太の破壊の光が、甘露の背中を直撃する。不意打ちの直撃を受け、激しい爆炎とともに甘露はその場に倒れ伏した。
「ふぅ……間一髪だったぜ。おい霊夢、生きてるか?」
「死ぬかと思ったわよ、なんなのあの子……」
二人が息を吐いたのも束の間。爆煙が晴れると、そこには何事もなかったかのように即座に立ち上がる甘露の姿があった。圧倒的なタフさである。
しかし、甘露の瞳からは先ほどの好戦的な色は消え去っていた。耳と尻尾をペコリと力なく垂らし、申し訳なさそうに手を合わせる。
「ご、ごめんなさい! 暴れちゃって本当にごめんなさい……!」
あまりの切り替えの早さに霊夢と魔理沙が呆気に取られる中、甘露は一気にここまでの経緯を話し始めた。
「私の名前は甘露。実は、別の世界の『オルカディア』っていうところの創造主なんだけど……空間操作をちょっと失敗しちゃって。私だけじゃなくて、あと3人、友達をこの世界に巻き込んじゃったの」
ポーカーフェイスで隠そうとしても、不安げに揺れる尻尾が甘露の本心を雄弁に物語っている。
「レムフィルが『迷いの森』、メモリアが『紅魔館』、れもんが『白玉楼』っていうところに落ちちゃったみたいで……。とにかく助けに行きたくて。まずは、紅魔館から行こうと思うんだけど……」
甘露がそう言って歩き出そうとした、その時だった。
神社の境内の空間が、まるで衣服のチャックを開けるように不自然に裂けた。中から無数の不気味な目玉が覗く――八雲紫の『隙間』だ。
「あらあら、賑やかね。とある世界から、面白そうな子を幻想入りさせておいたわよ~」
楽しげな紫の声とともに、隙間から一つの影がぽんっと放り出される。
「「えっ?」」
声が綺麗に重なった。
甘露が驚いて振り返り、隙間から降ってきた影も同時に声を漏らす。
そこにいたのは、あまりにも見覚えのある姿だった。
体は真っ白、足は真っ黒。
そして、顔には堂々と『れ』と書かれた紙が貼り付けられている。
「なんでここにいるんですか!?主!」
そこに佇んでいたのは、間違いなく甘露たちの世界の『主』その者であった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!ゆうれんです。
創造主の幻想入り 第6話、どうでしたか?
博麗神社での甘露の初戦闘です。初戦闘にしては魔理沙の不意打ちのマスパで倒れたけどね。
面白いと思ってくださった方は、ぜひお気軽に感想(コメント)や評価、お気に入り登録をよろしくお願いします!
次回、第7話の更新でお会いしましょう!
次回タイトル予告 最強の『主』様と、紫の企み
次回更新予定 10/2 17:50