「……で、なんで主様がここにいるんですか?」
博麗神社の境内で、甘露は煤(すす)をパッパと払いながら、目の前の真っ白な身体に黒い足、そして顔に「れ」の紙を貼ったシュールな存在――『主』に問いかけた。
創造主である甘露も大概のんびり屋だが、この主様はさらに上を行くのんびりオーラを放っている。しかし、その内側に秘められた実力は甘露の数倍。文字通りの世界最強。そんな存在が、今、東方の世界にぽつんと立っているのだ。
「んー? あ、甘露じゃん。いやさー、なんか急に空間が割れて、オルカディアの空に見たことない『隙間』が開いたからさ。ちょっと覗いてみたんだよね」
主様は顔の「れ」の紙をペラペラと揺らしながら、まるでコンビニに寄った帰りの友人みたいな軽いトーンで話し始めた。
「そしたら、そこの紫色の服着たお姉さんに『あら、面白い子が釣れたわね』って言われて、そのまま拉致されて。気づいたらここにいたってわけ。ウケるよね」
「ウケるよね、じゃないですよ! 拉致されてるじゃないですか!」
甘露の尻尾がツッコミを入れるように激しく左右に揺れる。
そんな二人(?)の軽い掛け合いを見ながら、霊夢と魔理沙は完全に置いてけぼりを食らっていた。
「ちょっと紫。とんでもないの連れてきたわね……。見た目はこんなにアレなのに、なによこのプレッシャー。近づくだけで肌がピリピリするんだけど」
霊夢が楼観剣(妖夢の刀)を見た時以上に、主様から放たれる「世界最強」の底知れない気配を本能で察知して顔を引きつらせる。魔理沙もミニ八卦炉を握る手が心なしか震えていた。
「ふふ、ちょっと外の世界(オルカディア)の境界がガタガタに歪んでいたから、様子を見に行ったらね? こんなに強力で面白そうな『神様』が落ちそうになっていたのよ。幻想郷の抑止力として、ちょっとお招きしちゃった」
紫は扇子で口元を隠しながら、怪しげに微笑む。
主様の力が強すぎるため、甘露の不調による時空の歪みに引き寄せられ、そこを紫にうまく手引きされて幻想入りしたというのが真相のようだ。
「へー、ここ幻想郷っていうんだ。のどかでいいところじゃん。お茶とかないの?」
「神社を壊したモフモフの身内にあげるお茶はないわよ!」
「えー、ケチ。あ、甘露、お前何してんの? そんなボロボロのポーカーフェイスで」
主様がのんびりと首を傾げると、甘露の耳がピクンと跳ねた。完璧に隠しているつもりだった不調を、世界最強の主様には一瞬で見抜かれていた。
「うぐ……。実は、私の不調のせいで、れもん、レムフィル、メモリアをこの世界に巻き込んじゃって……。今から霊夢さんたちと紅魔館へ助けに向かうところなんです」
「あー、やっぱり。オリカビアのあちこちで急に人が消えたから、お前がなんかやらかしたなーって思ってた。しょうがないなぁ」
主様は白い手をポンと甘露の頭の上に置いた。
すると、主様の凄まじい力の一部が流れ込み、甘露を苛んでいた不調の眩暈(めまい)がほんの少しだけ和らぐ。
「よし、じゃあ僕も行くわ。友達が迷子になってるなら、最強の僕がついてってあげないとね。霊夢、魔理沙、よろしくー」
「……勝手についてくるなら、案内料としてあとで神社の縁側の修理費、ガッツリ請求させてもらうからね!」
「いいよー、甘露が払うから」
「私ですか!?」
主様の軽いノリに巻き込まれつつ、甘露の尻尾は安心感で少しだけふわふわと膨らんだ。自分一人で抱え込もうとしていた責任を、この最強の友人があっさりと半分持ってくれたからだ。
「よし、話はまとまったな! それじゃあ最初は『紅魔館』へ出発だぜ!」
魔理沙が箒にまたがり、霊夢もお札を握り直す。
世界の創造主・甘露、世界最強の主様、そして博麗の巫女と魔法使いという、前代未聞のデコボコパーティーが、メモリアの待つ紅魔館へと向かっていった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!ゆうれんです。
創造主の幻想入り 第7話、どうでしたか?
オルカディアの主が登場です!確かこのキャラは…小学校の…卒業文集をまとめる画用紙に落書きしたキャラだった気がします。顔の紙は多分その時の私のブーム…ですね。
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次回、第8話の更新でお会いしましょう!
次回タイトル予告 創造主たちの飛行術と、紅魔館での優雅なお茶会
次回更新予定 10/9 17:50