お花畑の中で、あたしは座っていた。次の契約に、行こうかなー。
「ご主人ちゃん、シリシーが来たでございますよ」
甲高い声がして、あたしの影からシリシーが出てきた。相変わらず、フリフリのゴシックドレスだ。
人差し指くらいの大きさの、あたしの使い魔。
「シリシー、来たんだ。今までどこにいたのー?」
「ずっとご主人ちゃんの影の中にいたでございますよ。出番を待っていたです」
ふーん。ずっと見ててくれてたんだ。
「それよりご主人ちゃん、もう四つも契約してるのすごいでございますよ。成績優秀悪魔として、表彰されちゃうです」
「んへへー。これでも首席だもんね。それじゃあ、次に行っちゃおう!」
シリシーを連れて、あたしはふよふよと次の契約者さんを探しに向かった。
次も幸せな契約ができるかなー。
△▼△▼△▼△▼△
シリシーとおしゃべりしながら、何日か空を浮いていると街を見つけた。
人間さんがいっぱいいる。今まで見た中で、一番賑やかな場所だ。
「屋台もあるです。まるでお祭りでございます」
「そうだねー。人間さんの魂がうきうきしてる!」
みんな楽しそうだなあ。それに、質の良い魂もちらほらいる。
良い契約者さん、見つかるかなー?
んー。でも、その前に。
「シリシー、オカネある?」
「毎月魔界コインを支給されているはずでございます。それに、ご主人ちゃんは魔界に納品した報酬のコインももらっているです」
そっかあ。それなら、余裕があるかな。
魔界コインを変換して、この街の通貨に換えた。
人間さんがいない路地に降りて、実体化する。シリシーには妖精さんに化けてもらって、と。
よーし。お店に行ってみよー。
「こんにちは! 二つちょうだい?」
あたしはお店の人間さんから、果物のアイスを売ってもらった。
片方をシリシーに渡して、食べてみる。ひんやりしてて、甘いなあ。
「美味しいね」
「ヒナゴのシャーベットって書いてたでございますよ」
ふむふむ。凍らせたフルーツを擦りおろして、シャーベットアイスにしてるんだって。人間さん、すごい。
木の椅子に座って、足をぶらぶらさせながら食べていると、いつの間にかなくなっちゃった。
「美味しかったー」
「ご主人ちゃん、あっちのお店も気になるです」
んー?メメコメエのウインナーサンドって書いてある。行ってみよー。
お店で買ったサンドは、パンにウインナーと葉っぱが挟んであった。
「パリッとしててジューシーで美味しい」
「厚切りのパンがミソと言っていたでございます」
うん。人間さんの食べ物、お腹には溜まらないけど美味しいな。
シリシーも嬉しそう。素敵だね!
サンドを食べながら次のお店を探しに歩いていると、後ろから大きな声が聞こえる。
「キミ!…キミだよ、キミ!!――可憐な赤い髪のキミ!」
「うんー? あたし?」
「そう、キミだよ! ああ…美しい」
大きな声は、あたしを呼んでたみたい。
あたしを呼んだ人間さん、手に持ってた杖を落として地面に座り込んじゃった。面白いなあ。
魂がどっくんどっくんして、なんだかよじれてる。質はまあまあかな?
「今、解った。ボクは…、キミに出会うために生まれたんだ。キミ、ボクと結婚してくれないかい?」
「結婚? でもあたし、悪魔だよー?」
契約の出番?うーん。でも、この契約は成立しないかも。
悪魔と結婚したいだなんて、珍しい人間さんだなあ。