シリシーとふよふよ空を飛んでいたら、あたしの下に赤い魔法陣が浮かんだ。
またお
「シリシー、行くよー」
「はいでございます。ご主人ちゃん」
次の契約だ、また幸せにできるかな?
魔法陣で召喚された場所は、暗いお部屋の中だった。
んー。このお部屋、日当たりが悪いのかな。
「悪魔…さん?」
「お
あたしを喚んだのは長くて黒い髪の、人間さんの女の子だった。
魂はちょっとふんにょりしてる。質は…あんまり良くはないかも?
「ホントに成功しちゃった…。あなた、悪魔なんだよね?」
「そうだよー。あなたの魂を贄にして、契約する?」
人間さんはツバをごくりと飲み込んだ。魂が小刻みに震えてる。
「……そ、その為に呼んだんだし。でも……もう少し、待ってもらえるかな? あ、明日!――明日もう一回聞いて!」
「いいよー」
うんうん。契約を迷う人間さんもいるって習ったもんなあ。少し待ってみよう。
朝になった。ここはお屋敷みたい。
女の子の人間さんは、メイド服って服に着替えてる。メイドさんってやつだね!
あたしは透明になって、メイドの人についていってみる。
箒をするすると動かして、床を掃いてる人間さん。パタパタ動く箒が面白い。
「ラトリア!…ラトリア!! どこだ!」
「は、はい!」
大きな声が聞こえて、メイドの人が走っていった。
メイドの人が入ったお部屋の中には、お腹の大きな人間さんが二人いる。
おじさんの人間さんも、おばさんの人間さんも、魂がドロドロしてる。質もイマイチかも。
「旦那様、お待たせしました!」
「遅いぞ。呼んだら直ぐに来いといつも言っているだろう」
「すっ、すみません!」
「すみませんじゃなくて、申し訳ございません、でしょう?」
それから、お腹の大きなおじさんとおばさんが、ガミガミとメイドの人に怒り続けていた。
んー。いじめられてるのかな?
お部屋から出た後もメイドの人は、色んな人からいっぱい怒られてる。
子どもの人間さんやドレスの人間さん、別のメイド服の人間さん、ここは色んな人間さんがいるんだなあ。
あれ?今度は燕尾服の人間さんに呼ばれてるみたい。
「ラトリア、今日のお前の食事は抜きだと奥方様から伺っている。奥方様の気を損ねた罰だそうだ」
「そ、そんな。……死んじゃいます」
「安心しろ。少し食事を抜いたくらいで、人は死なんよ。お前をメイドとして置いてもらってるだけでも有難いことなのに、その態度はなんだ? 折檻が必要か?」
「……っ!」
んー?メイドの人が、走りだしたのでついていく。
ぎりぎりと歯を噛み締めて、目をいっぱいに開いてる。涙が溢れそう。
メイドの人は誰もいない部屋に入って、ドアと鍵を閉めた。
「ふえっ…」
部屋に入ってすぐに、メイドの人の目から涙がぽろぽろ落ちてきた。悲しいみたい。
背中を撫でてあげた。
「ふええええええ!!!」
「どうしたのー?」
泣き止まないね。
泣いてる間、背中をさすってあげていると収まってきた。
うんうん。良かったあ。
「…リズリリス。ごめんね、名乗るのを忘れてたんだけど、私はラトリア・セライゼンって言うんだ。……家名の方は、名乗っちゃダメって言われてるんだけどね」
「ふーん。そうなんだ」
メイドの人は、鼻をすすりながらお話してくれた。なんだろー?
「私ね、この家の旦那様の、娘なんだよ? なのに、私は奥方様からもみんなからも嫌われてて。……私の母は旦那様のお手つきのメイドだから。だから私は、居場所がないの」
「…居場所が欲しいの?」
あたしを喚んだのは、居場所が欲しいからなのかな?
契約の出番なのかも。
「欲しい。私は、私を家族にしてくれる、家族が欲しい。…リズリリスなら、叶えられるの?」
「叶えられるよー」