とっても苦かったメイドさんの魂を残さず食べた。お屋敷も、だいぶ燃えてきてる。
願いが変わっちゃうなんて、今回はどうすれば良かったんだろ。
「ご主人ちゃん、この後はどうするんでございます?」
シリシーがあたしの頭の上に乗ってきた。座り心地良いのかな?
「うーん。そろそろ一回、魔界に帰らなきゃだね。――ゲートを開こうか」
「はい、でございます。短期間でこれだけの成績、きっと報奨なんかもされちゃうです」
「そうかな?」
うん、そうかも。そうだったら嬉しいな。
よーし。帰るぞー!
あたしは宙に紫色の魔法陣を発動させて、シリシーと一緒に中に入った。
△▼△▼△▼△▼△
紫の魔法陣から出たあたしは、悪魔学園都市の門に着いた。
人間さんの街と違って、悪魔の都市は門番さんがいない。
空間のポケットから取り出した上着を着て、フードを被る。念のため、だね。
都市の中に入ると、黒い花が咲いた街路樹や黒レンガの建物が立ってる。
雰囲気も大事って言ってたなあ。
「相変わらず、悪魔がうじゃうじゃいるでございますね」
「お喚ばれされるまでは、ここで待ってる悪魔も多いみたいだよー」
頭が二つある悪魔もいる。弱点が増えるなんて、大変そう。
「リズー! 戻って来てたんだ!」
「んー?…わぷ」
いきなり抱きつかれた。全体的に柔らかいこの感じ、ローゼヘナだ。
「ロズ、元気そうだね」
「ウチは元気だよ! 契約も、もう三つ取れちゃった。リズはどうだった?」
「おー。あたしは六つだよー」
やっぱりロズも優秀だ。あたしと同じ学年でいつも十位以内だったもんなあ。
シリシーがあたしの胸の前で、胸を張った。
「ご主人ちゃんはすごいでございます。でもご主人ちゃん、ニンゲンを幸せにしてから回収するから、待ってる時間が長いのです」
「へえー。相変わらず変なことしてるんだね、リズは」
他の悪魔はあんまり味を気にしないか、苦かったりしょっぱい魂が好きみたい。
「人間さんは幸せになってお得、あたしも美味しい魂を食べられてお得。どっちも幸せになれるんだよ?」
「ウチは味なんて分からないよ。質さえ良ければ何でもオッケー!」
「普通の悪魔は質しか気にしないものでございますね」
うーん。質も味も良いのが一番じゃないかなあ。
あれ?周りにいる悪魔が、なんだかあたしたちを見てる。
フードは外れてないんだけどな。何て話してるんだろー。
「リズリリス…?」
「いま、リズリリスって」
「聞き間違えじゃねえのか?」
あたしだって気づいてるみたいでざわざわしてる。そういえばさっき、名前呼ばれちゃったからなあ。
「…いや。あそこにいるのって確か、リズリリスの仲間のローゼヘナだ」
「南通りの街路樹完食事件を共謀したっていう…じゃあやっぱり」
うん、バレちゃったみたい。周りの悪魔の魂も、もにょもにょしてる。
ロズがあたしの手を掴んだ。
「リズってここでは有名な悪魔だもんね。騒ぎになる前にお買い物に行こう?」
「いいよー」
魔界コインも貯まってるから、何か良いもの買いたいな。
ロズに手を引かれて、裏通りに入っていく。
「こっちに最近出来たお店があるんだよ。品揃えが良いの」
「ふーん。楽しみだね!」
案内されたお店は、死神マドローの魔界道具店って看板がかかってる。
死神が魔界にいるなんて、珍しいな。
お店に入ると、ドアに取り付けてあったベルが鳴る。
「いらっしゃい。魔界道具店マドローにようこそ! お安くしときますよ!」
「はあい、マドロー。元気そうね」
「そりゃあ勿論、おかげさまで! 嬢ちゃんこそ、一層綺麗になっちまって。――そちらのお客様はご新規さんですかね?」
ロズに話しかけてきた死神がこのお店の店主かな?死神なのに鎌を持ってないみたい。
でも、お店の中の商品は良い感じ。期待できるかも。
「こっちはリズリリス。ウチの友だちよ」
「こんにちは。悪魔のリズリリスとシリシーだよ」
フードを外してご挨拶する。うんうん、挨拶は大事だよね。
「リ、リリッ…、リリリズリリスゥ!!!??」
「リリリズリリスウじゃなくてリズリリスだよー」
うん?店主の死神が、尻餅をついて後ずさりしちゃった。
なんだか面白い動きだなあ。