「王立悪魔学園、第五百七十六期卒業生の一期成績一位は、リズリリス・ヘイルアイズ!」
「はーい!」
悪魔学園の大広間で、あたしの名前が呼ばれた。一位なんだって。やったね!
クマみたいな毛むくじゃらの学園長の前まで歩くと、なんだかお堅い言葉で褒められて、金のメダルをもらった。
お手てに肉球がないのが残念だなあ。
「――改めて、よくやったな。リズリリス。契約を六つに、納品した魂が二十二。…納品数も、契約に比べ多すぎる。優秀なのもそうだが…学生だった頃から、ほんに異例な悪魔よの」
「んひひ。契約履行への妨害があったからねー。その分お得だったんだよ」
魂をたくさんくれた人間さんに感謝だね。
クマ学園長は、お側に付いてるブタ悪魔の教官から良い感じの箱を渡されている。
んー?ブタ悪魔の教官、あたしを見ないようにしてるかも。なんか見覚えがあるような。
「ヘイルアイズ」
クマ学園長に呼ばれた。この箱、くれるのかな?
「此度の報奨としてこれを授ける。これからの君の働きに期待しておるよ」
あたしの目の前で、クマ学園長が箱を開いた。中から取り出したのは、筒にダイヤルとガラスの付いた、望遠鏡?
「これは、シュレーディンガーの望遠鏡だ。別名は時飛ばしの望遠鏡と言い、未来や過去を見通せる逸品だ。ただし観測した事象を改変すると壊れるぞい。詳しい使い方は説明書きに書いてあるから、読んでおくといい」
「逸品! すごい。これで契約の履行の時を先に確認できるね!」
望遠鏡をしまい直した箱を受け取った。嬉しいな。やったね。
台から降りるときに、ブタ悪魔の教官をもう一回見てみる。やっぱり会ったことあるような。
あたしより背の高い教官を、下から見上げてみると目が合った。
「ひっ…食べないで」
「食べないよー?」
なんだかとっても震えてる。
不思議だね。食べるわけないのになあ。悪魔だから質は高そうだけど、あんまり美味しそうじゃないし、それに。
「悪魔社会規則で食べちゃダメって言われてるからね!」
あたしは首席卒業生なんだもの。ちゃんと規則は覚えてるんだよ。
うんうん。あたしが笑うと、ブタ教官も笑ってた。
「やれやれ、さっさと席に戻ってくれ」
クマ学園長が、とっても失礼なことを言っていた。
△▼△▼△▼△▼△
「リズ流石、凄いね! ウチなんて十位だったよ、表彰ギリギリ」
「ロズも表彰されてて凄かったよ!」
「二人とも、将来有望な悪魔なんでございます」
ロズから褒めてもらえた。今日はみんなたくさん褒めてくれるね。
「でもリズ、なんで二十二もの魂を納品したの?…
「うん。人間界で回収した魂のうち、七割が契約悪魔で三割が魔界に納品するって規則だね。でも、あたしが回収したのは二十八人の魂だよ?」
「…ほとんど納品してるんじゃん。悪魔として、特殊すぎるよ。……なんで?」
理由は決まってるんだけど。でも、いつも言ってるのに、悪魔のみんなには理解してもらえたことがない気がする。
「美味しい魂を食べたいからだよー。契約履行への妨害で回収した魂はあんまりだったから、全部納品しちゃった!」
「ご存知の通り、ご主人ちゃんは偏食な悪魔でございますから」
「味を気にする悪魔は稀にいるみたいだけど。質や量よりも優先するなんて…リズはやっぱり変わってるね!」
うーん。人間さんもあたしも幸せだとどっちも幸せでお得だと思うんだけど、味を気にする悪魔が少ないと伝わらないかな。難しいなあ。
「えー。そうかなあ。――んー?…わぁ」
「ご主人ちゃん、大人気の悪魔になったです」
お
「リズ、いってらっしゃい。時飛ばしの望遠鏡の使い心地、教えてね!」
「うん。ロズ、またね!」
足元に浮かんだ赤い魔法陣に導かれて、あたしは次の契約書さんのところへ向かった。