「お
さーて、次の仕事だ。もう三件目だね!
喚ばれたのは、白いお部屋の中みたい。あたしが五人くらい寝れそうなおっきなベッドがある。
おっきな窓に広くて豪華なお部屋、綺麗だあ。
「せっ…成功しましたの!?」
「んー?」
あたしを見て驚いてる人間さんは、女の子。尻もちをついちゃって、ふわふわの髪が泳いでる。
透き通ってて綺麗な魂だなあ。でも、ぐわにょりしてる。左右に揺れて、上に下に伸び縮み。変てこだけど綺麗な人間さんだ。
「あの、あなたは悪魔、なのですの?」
「うん。そうだよー」
あたしは空間のポケットから鎌を取り出して、刃を伸ばしてみる。
「わ、分かりましたわ!…ですから、しまってくださいまし!」
「綺麗な人間さん、あなたの願いはなあに? 贄とする魂の質に応じて、あなたの願いを叶えるよ」
「わ、わたくしの願い…叶いますの?」
うんうん。契約してくれそう。魂も綺麗で柔らかそうだし、これは良いかも!
「うん! 綺麗なお姉さんの魂、綺麗で質も良いから、だいたいの願いは叶うよ!」
「…そう、なの。他の人の魂じゃダメですの?」
「そうだよー。契約は、自分の魂でのみ自分の願いを叶えられるの!」
理解が早い人間さんだなあ。すごい。
うん?俯いて何かぶつぶつ言ってる。
よいしょとしゃがんで、声を聞いてみる。
「わたくしの…願い。そんなの、決まってる。あの泥棒猫に奪われた…あのお方を、取り戻したい。……あの女…許せない。わたくしの、婚約者を…!!」
がばっとお姉さんが顔を上げた。びっくりしたあ。
あれ。魂が、濁ってきてる。
「…何でも、叶うの?」
「う、うん。綺麗なお姉さんの魂の質なら、だいたいのことは」
「でしたら、わたくしの婚約者――サリウスさまを奪った、フィニカ・ヘーゲルの命を…奪って。そして、わたくしのサリウスさまを、取り戻すの」
うーん。この願いは、あんまり良くないかも。
「えっと、でも、奪った人間さんが死んでも、婚約者の人間さんが返ってくるとは限らないよ? いいの? それじゃあお姉さんは幸せになれないよ?」
あたしはお姉さんの瞳を覗き込んでみる。小刻みに揺れてるし、瞳孔が開いてて、冷静には見えない。
「だって!…許せないもの!! わたくしにとって一番大切だったサリウスさまを寝取った、あの女が…憎い!…憎い!!」
お姉さんはぽろぽろと泣いてる。背中を
「…そうだ。そうですわ」
両目から涙を流しながら、お姉さんがあたしを見た。
瞳も魂も揺れていない。落ち着いてきたのかな?
「…あの女とその一族が死んで、サリウスさまをわたくしの元に取り返すことまでが一つの願いよ?…人の婚約者を寝取る女には、当然の報いですわ」
「うーん…。婚約者さんのことは、お姉さんの魂をもらうまでってことなら、サービスでいいよ?」
うん。お姉さんの魂の質的に、そのくらいは全然問題ない。
ニヤリとお姉さんが笑った。
「それで良いですわ。契約してくださる?」
「いいよー。願いを叶えたら、契約成立だよ?」
地面に座ってたお姉さんが立ち上がる。
「構いませんわ。――わたくしは、ローゼシア・フランチェスカ。侯爵令嬢ですの」
「ふーん。お姉さん、偉いんだ!…それじゃ、契約するね。――
あたしは指先にチカラを集めて、契約魔法を使った。
「叶いましたの?」
「もう叶えたよー」
お姉さんが両手を見て周りを見て、首を傾げてる。
叶えた願いだとお姉さんの近くは変わらないから、不思議なのかな。
「仕方ないですわ。サリウスさまの様子を見に行きますわよ!」
「んー? あたしも行くの?」
「当然ですわ!」
お姉さんはあたしの手を掴もうとしたけど、空ぶった。
うーん。実体化って疲れるんだよね。
「こほん。行きますわよ、リズリリス」
「いいよー」
お姉さんがずんずんと扉に向かうのに、ふよふよと付いていく。
「うふふふふ。…これで、サリウスさまはわたくしのものなのね。さっそく手に入れるわよ。おーっ!…ほら、あなたもやりなさい」
「うん? おーっ!」
お姉さんの真似をして、拳を上に突き出してみるとなんだか楽しかった。