あくまであくまっ!   作:逢生 藍

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八話

 あれから七日が経った。幸せになってるし、そろそろ告知に行こうかな。

 ふよふよと、お姉さんのいるお屋敷に向かう。

 

 お姉さんはどこかなあ。んー。

 こっちの部屋にお姉さんの魂、見つけた!

 

 でも、同じお部屋の中には、人間さんの魂がたくさん。パーティ中かな?お邪魔しちゃうかも。

 右手だけを実体化して、扉を開けて中に入ってみた。

 

「魂の回収の告知に来たよー!」

 

 およ?鎧を着た人間さんたちがたくさんいる。

 でも、お姉さんもいる。隣にいる人間さんは、上に何も着ていない。裸だ!

 

「――来たわね、リズリリス! 構えなさい、兵士たち!」

 

 あれれ。銀の剣を持った鎧の人たちが、あたしを囲んでくる。

 この銀の剣、祝福を受けてるみたい。危ないなあ。

 

「んー。抵抗するの?」

「当たり前じゃない! ほら、見なさい?サリウスさまの背中。……振り向いてくださる?」

 

「ウン、ローゼシアノ、イウコトナラ」

 

 裸の人間さん、よく見るとマントの人間さんだ。

 

 後ろを向いたもうマントじゃない人の背中には、ローゼシアちゃまラブって書いてある。

 うーん。掘ってある?

 

「痛そうだね」

「とっても素敵、ですわよね。わたくしが死ぬまではサリウスさまはわたくしのもの。――それなら、リズリリス。あなたが死ねばいいのよ!! 兵士たち、行きなさい!――悪魔を殺せ!!」

「オオォ!」

 

 祝福を受けた銀の剣を構える鎧の人たちが、あたしに向かってくる。

 

「そっかあ。契約履行(りこう)への実力妨害。契約違反、だね。…兵士さんたちの魂も、もらうよ?」

 

 契約権限での魂の強制徴収(ちょうしゅう)だ。

 空間のポケット、黒い穴の中からあたしは黒鎌を取り出した。グンと刃を伸ばす。

 

 あたし目がけて振られた銀の剣を、躱して、と。

 

「ほいっ」

 

 鎧の人間さんに鎌を突き刺して引き抜くと、魂が抜けだした。他の剣を躱して、鎌の先っぽに刺さった魂を見てみる。

 

「おおー」

 

 うん、悪くはないかな。

 

「よーし、どんどん行くよ!」

 

 鎧の人間さんから魂を抜き取っていると、いつの間にか、残りはお姉さんだけになっていた。

 大量だね!

 

「いっぱいお仕事できた!…それに、良かったあ。そろそろ魔界に送る分の魂も必要だったんだ」

「な、なな…」

「ローゼシア、ダイジョウブダヨ」

 

 お姉さんは裸の人間さんに抱きついて震えている。魂が縮んでいってるなあ。

 早めに回収しなきゃ。

 

「じゃあ次は、お姉さんの魂を徴収するね?」

 

 鎌を突き刺して、お姉さんの魂を抜き出した。

 さっそく、鎌の先に刺さってた魂を取り外していく。鎧の人間さんたちの魂はポケットにしまっておいて、と。

 

 お姉さんの魂、綺麗だったのに濁ってドロドロしちゃってるなあ。ねばつくような温かさ?

 幸せは感じてたみたいだけど、早めに回収すべきだったかも。

 

「いただきまーす。…あーむ」

 

 一口食べてみる。甘いけど、もったりした甘さだ。

 うーん。あんまり美味しくない。ドロドロしてるし、甘いのに苦いよぅ。人間さんって、難しい。

 

「ここは…僕は……」

 

 んー?裸の人間さんが元に戻ったみたい。顔が白くなっていく。

 

「あああ、あああああ…!――オェェッ」

 

 うわあ。床に吐いてる。背中、(さす)る?

 

「……ハァ…ォエッ……ハ。――こいつ!」

 

 なんか、床に倒れてるお姉さんを蹴飛ばしてる。あたしが持ってるこの魂のほうが、綺麗だったお姉さんなのになあ。

 

「――お、お前が、僕に魔法をかけたのか! この悪魔!!」

「うん? 悪魔だよー!」

 

 あんまり美味しくないけれど、残すのもマナーが良くないので、残ったお姉さんの魂を食べていく。

 

「あ、あ、この野郎! こっちを見ろ!!」

 

 床に落ちてた銀の剣を拾った裸の人間さんが、あたしに切っ先を向けた。

 契約の出番かなー?

 

 でも、魂は燃え上がりそうで燃え上がらない。震えてる。…質も、あんまりかも。うん。

 

「ごめんね…? あなたの魂、あたしは好みじゃないから契約できないよー。じゃあね!」

 

「待て!――待て!!」

 

 ふよふよと浮かんで、部屋の扉から外へ出る。

 甘くてふわふわなのを食べたかったんだけど、今回は、失敗しちゃったなあ。

 人間さん、なんでえ…。

 

 そうだ。忘れないうちに、ゲートで鎧の人たちの魂を魔界へ送らなきゃ。よし、これでいいね!

 

 次こそ、甘くてふわふわな魂を食べるぞー!

 そしてあたしは、おーっと片手を上に突き上げた。

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