街のお屋敷から出たあたしは、ふよふよと飛んでいく。
んー。甘くてふわふわな魂と契約したいけど、どこに行けばいいんだろ。
考えながら何日か浮いていると、白いお花畑に来てた。綺麗だなあ。
あれ?人間さんの魂がこっちに来る。でもこの魂…。
「だあれ?」
「あたしはリズリリス、悪魔だよ!」
あたしに話しかけてきた人間さんは、まだ魂がちっちゃかった。それに、なんだか細くてしょんぼりしてる。
おっきなリボンを付けてる、子どもの人間さんだ。可愛いー!
「お姉ちゃん、悪魔なの?」
「うん、そうだよ。汝の魂を贄として、願いを叶える悪魔だよー」
「…願いが、叶うの?」
あれれ。リボンの人間さん、魂はちっちゃいのに、熱を持ち出した。
嫌な予感がするなあ。
「契約して」
やっぱりだ。…瞳孔は開いてるのに、瞳にも姿勢にも揺れがない。本気だなあ。
「うーん。子どもはちょっとなあ。まだ質があんまり育ってないし。新鮮なんだけど、あたしはあんまりなあ。ふわふわは、してるんだけど…」
「じゃあ、どうすれば質が良くなるの?……わたし、契約したいの」
食べ足りないだろうし、味も薄そう。それに、回収できる魂もあまり多くない。
「なんで契約したいのー? 願いを叶えたら、代償としてあなたの魂をもらうよ? 死んじゃうってことだよ?」
「それは…」
俯いちゃった。魂はふわふわでとっても柔らかそうだから、もう少し大きくなってから契約したいなー。
リボンちゃん、顔を上げてまたあたしを見た。
「このままじゃ、どちらにしてもわたし、売られちゃう。…でも、そのくらいじゃうちは豊かにならなくて、次はわたしの妹が売られちゃうの」
「ふむー。売られちゃうんだ…」
それだとあたしが食べれなくなるのかも。
人間さんの瞳に、じんわりと涙が浮かんできた。
「だからね、わたしの魂をニエにして、うちに余裕ができて、妹も売られなくなるなら、契約したい。…お願い!」
「うーん…。それなら、せめて味が良くないと。いっぱい幸せを感じてもらわなきゃ美味しくないの」
うんうん。幸せになっても、回収するまでに美味しくなくなっちゃうかもだし。
「そう、なんだ…。――それなら、わたしとお友だちになって?」
お友だち?幸せが関係があるのかな?
「えー。それって契約が二つになっちゃうよー」
ふるふると、リボンちゃんが頭を振る。
「ううん。お友だちになるのに、契約なんてしないよ?……それに、家族が幸せになって、わたしの最後にお友だちもいるのなら、わたしは幸せで終われるもん」
「うーん」
よく分かんないけど、そうしたら甘い魂になるのかな。
「うん、いいよー! リボンちゃん、あたしとお友だちになろう?」
「やった。リズちゃんって呼ぶね。わたし、リノ!…リズちゃんって、何歳? どうして悪魔なのにツノや尻尾が無いの?」
リボンちゃんが詰め寄ってきた。
魂が膨らんできてる。これは、良い感じかも。
「あたしは生まれてから十七年だよ。
いつもは人間さんの世界ではしまってある角と尻尾を、ぴょこんと伸ばす。
「ツノと尻尾だ。かわいいね」
尻尾に触ろうと手を伸ばしてきたので、実体化させてみた。
にぎにぎされてる。
「尻尾、ひゃっこい。…わたしは十二歳なんだよ。リズちゃん、お姉さんだね」
暖かい手のひらで尻尾を掴まれていたけど、満足したみたいで解放された。
「ありがとう。リズちゃん、代わりに撫でる?」
リボンちゃんが頭を差し出してきた。撫でてみる。
柔らかな髪が気持ちいいかも?
「んふふ。……ねえ、リズちゃん。契約して」
「…うん、分かったよー」
うん、なんだか美味しそうな魂になる気がする。
「わたしのお願いは、わたしの魂が足りる限り、わたしの家族が幸せになれること。…いいかな?」
「うん。汝の願い、聞き届けるよ!――ほいっ」