あくまであくまっ!   作:逢生 藍

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九話

 街のお屋敷から出たあたしは、ふよふよと飛んでいく。

 んー。甘くてふわふわな魂と契約したいけど、どこに行けばいいんだろ。

 

 考えながら何日か浮いていると、白いお花畑に来てた。綺麗だなあ。

 あれ?人間さんの魂がこっちに来る。でもこの魂…。

 

「だあれ?」

「あたしはリズリリス、悪魔だよ!」

 

 あたしに話しかけてきた人間さんは、まだ魂がちっちゃかった。それに、なんだか細くてしょんぼりしてる。

 おっきなリボンを付けてる、子どもの人間さんだ。可愛いー!

 

「お姉ちゃん、悪魔なの?」

「うん、そうだよ。汝の魂を贄として、願いを叶える悪魔だよー」

「…願いが、叶うの?」

 

 あれれ。リボンの人間さん、魂はちっちゃいのに、熱を持ち出した。

 嫌な予感がするなあ。

 

「契約して」

 

 やっぱりだ。…瞳孔は開いてるのに、瞳にも姿勢にも揺れがない。本気だなあ。

 

「うーん。子どもはちょっとなあ。まだ質があんまり育ってないし。新鮮なんだけど、あたしはあんまりなあ。ふわふわは、してるんだけど…」

「じゃあ、どうすれば質が良くなるの?……わたし、契約したいの」

 

 食べ足りないだろうし、味も薄そう。それに、回収できる魂もあまり多くない。

 

「なんで契約したいのー? 願いを叶えたら、代償としてあなたの魂をもらうよ? 死んじゃうってことだよ?」

「それは…」

 

 俯いちゃった。魂はふわふわでとっても柔らかそうだから、もう少し大きくなってから契約したいなー。

 

 リボンちゃん、顔を上げてまたあたしを見た。

 

「このままじゃ、どちらにしてもわたし、売られちゃう。…でも、そのくらいじゃうちは豊かにならなくて、次はわたしの妹が売られちゃうの」

「ふむー。売られちゃうんだ…」

 

 それだとあたしが食べれなくなるのかも。

 人間さんの瞳に、じんわりと涙が浮かんできた。

 

「だからね、わたしの魂をニエにして、うちに余裕ができて、妹も売られなくなるなら、契約したい。…お願い!」

「うーん…。それなら、せめて味が良くないと。いっぱい幸せを感じてもらわなきゃ美味しくないの」

 

 うんうん。幸せになっても、回収するまでに美味しくなくなっちゃうかもだし。

 

「そう、なんだ…。――それなら、わたしとお友だちになって?」

 

 お友だち?幸せが関係があるのかな?

 

「えー。それって契約が二つになっちゃうよー」

 

 ふるふると、リボンちゃんが頭を振る。

 

「ううん。お友だちになるのに、契約なんてしないよ?……それに、家族が幸せになって、わたしの最後にお友だちもいるのなら、わたしは幸せで終われるもん」

「うーん」

 

 よく分かんないけど、そうしたら甘い魂になるのかな。

 

「うん、いいよー! リボンちゃん、あたしとお友だちになろう?」

「やった。リズちゃんって呼ぶね。わたし、リノ!…リズちゃんって、何歳? どうして悪魔なのにツノや尻尾が無いの?」

 

 リボンちゃんが詰め寄ってきた。

 魂が膨らんできてる。これは、良い感じかも。

 

「あたしは生まれてから十七年だよ。(つの)と尻尾はしまってるんだー。ほら!」

 

 いつもは人間さんの世界ではしまってある角と尻尾を、ぴょこんと伸ばす。

 

「ツノと尻尾だ。かわいいね」

 

 尻尾に触ろうと手を伸ばしてきたので、実体化させてみた。

 にぎにぎされてる。

 

「尻尾、ひゃっこい。…わたしは十二歳なんだよ。リズちゃん、お姉さんだね」

 

 暖かい手のひらで尻尾を掴まれていたけど、満足したみたいで解放された。

 

「ありがとう。リズちゃん、代わりに撫でる?」

 

 リボンちゃんが頭を差し出してきた。撫でてみる。

 柔らかな髪が気持ちいいかも?

 

「んふふ。……ねえ、リズちゃん。契約して」

「…うん、分かったよー」

 

 うん、なんだか美味しそうな魂になる気がする。

 

「わたしのお願いは、わたしの魂が足りる限り、わたしの家族が幸せになれること。…いいかな?」

「うん。汝の願い、聞き届けるよ!――ほいっ」

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