STAR FOX:LINK   作:まきる

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MISSION05「呼ぶ声」

マナの初任務から、数日後────

 

「ようこそいらっしゃいました! スターフォックスご一行様!」

 

周囲では派手な音楽が重低音を響かせながら唸り、色とりどりの原色のネオンが輝いている。

恭しく現れた店員は、招かれた客たちを迎え入れた。

 

「お招きいただきありがとう。楽しませてもらうよ。」

 

フォックスが片手を上げて答える。

 

「当クラブは、料理や酒も高級品……そして……」

 

店員はフォックスの耳元に顔を寄せ、小声で囁く。

 

「可愛い子たちも揃っていますから! 期待してくださいね!」

 

「あー……あはは。いいじゃないか。」

 

その言葉に、生返事を返すフォックス。

テロリストグループを撃退した彼らは、その謝礼として、とあるクラブパーティーに招かれていた。

 

「……フォックス、あんまり羽目を外すんじゃないぞ。」

 

「進んで来たわけじゃないさ。付き合いだよ、付き合い。」

 

小言を言ってくるペッピーに、首を振りながら返答する。

 

「せっかく呼ばれたんだし、楽しまなきゃねー! マナー! デザート探しに行こー?」

 

「……。」

 

スリッピーは、隣にいる彼女から反応がないことを不思議に思い、顔を覗き込む。

 

「どうしたの? 大丈夫?」

 

「……あぁ! ごめん! なんだっけ?」

 

やっとスリッピーと目が合う。

 

「デザート食べよ!」

 

「う、うん!! 行こっか!」

 

彼女は、これまでずっと寮生活で毎日のように机へ向かっていたため、こういった場所に来たことがなかった。

多数の獣人が集まるホールでは、男女が親密に触れ合う光景を間近で目撃してしまうこともある。

 

────は、早く出たいな……。

 

強く抱き締め合ったり、人目につくところでキスを交わしたりするカップル。

気まずくて仕方がなかった。

 

「俺は酒飲んでくる。フォックス、行こうぜ。」

 

ファルコはフォックスを連れ立って、バーカウンターへ向かった。

マナはペッピー、スリッピーと共にテーブルへ腰を下ろす。

 

「みんな、こういうの……慣れてるの?」

 

まだキョロキョロとしているマナをよそに、スリッピーがパフェをつつきながら笑う。

 

「まあ、依頼のお礼とかではよく呼ばれるねー! マナちゃんは苦手そうだね。」

 

「毎回、フォックスとファルコを見張るのが大変なんだよ。」

 

はぁ、とため息をつくペッピー。

 

「二人ともよくお酒飲むし、モテるしねー!」

 

ケラケラと笑いながら、少し離れたところにあるバーカウンターへ視線を向ける。

つられてマナも同じ方向を見た。

 

「あ、ほら! もう女の子が声をかけてるよ。」

 

フォックスの周りには狐の女性たちが何人も集まり、楽しげな笑い声が響いていた。

一方、ファルコの傍にも二、三人の鳥類系の女性が集まっている。

その中でも、淡いピンクの羽毛をした女性だけは、ひときわ距離が近かった。

 

「ねぇ、あなたスターフォックスのファルコでしょ?」

 

艶を帯びた声で、女性はファルコに話しかける。

 

「あぁ、そうだ……。」

 

女性を一瞥すると、ファルコはグラスを傾けて酒を飲んだ。

 

「エースパイロットなんでしょ? 私、強い男が好きなの。一緒に飲んでも?」

 

自分へ視線を向けようとしないファルコの顔を、少し覗き込むようにする。

 

「好きにしろよ。」

 

その様子を、マナは食い入るように見つめていた。

ファルコの傍らにいる女性は、艶ややかな羽毛に覆われ、すらりとした体躯をしている。

人間のマナから見ても分かる。

美人だ。

 

────なんか、お似合いだな。

 

女性に向けるファルコの態度は、いつものマナに対するものとは少し違って見えた。

 

「慣れてる……のか。」

 

フォックスもファルコも、腕の立つ一流のパイロットだ。

異性にモテないわけがなかった。

普段、グレートフォックスで友人のように接している彼らが、ほんの少し遠くにいるように感じた。

 

「ねぇ……このあと時間あるの?」

 

ファルコの腕に、女性の腕が絡む。

 

「いや……時間は……。」

 

不意に、マナがこちらを見ていることに気づく。

目が合った瞬間、ファルコの胸に何とも言えない感情が湧き上がり、思わず視線を逸らした。

 

「いいじゃない。お隣のリーダーさんは、どこかに行ったわよ?」

 

隣にいたはずのフォックスがいない。

 

「アイツ……また連れていかれたな……!」

 

複数の女性に囲まれやすいフォックスは、あっという間に彼女たちに連れ去られていた。

 

「時間があるってことよね?」

 

女性がにこりと笑う。

 

「俺は……。」

 

一度目が合ってしまったせいか、マナのことが妙に気になり、ファルコはまたそちらを見てしまう。

すると、再び視線がぶつかった。

 

────なんでこっち見てんだよっ!! なんか気まずいだろ!?

 

「ファルコ、なんでこっち見てるんだろ……。」

 

焦るファルコをよそに、マナはようやく視線を落とした。

 

「……なんか、みんなでいるのが当たり前だと思っちゃってた。」

 

「えっ……? どういうこと?」

 

ペッピーはフォックスを探しに大慌てで飛び出していったため、テーブルにはスリッピーだけが座っていた。

 

「フォックスとファルコはやっぱり、パイロットとして特別なんだなって。」

 

少し寂しそうな笑みを浮かべるマナに、スリッピーは不思議そうに首をかしげた。

 

 

────翌日。敵基地上空。

四機のアーウィンが縦横無尽に空を飛び回る。

 

『正面三機、ファルコお願い!』

 

「了解。」

 

『左から増援!』

 

「見えてる!」

 

ファルコの機体が鋭く旋回し、敵機を撃破する。

 

『じゃあ右はフォックス!』

 

「……ずいぶん慣れたじゃねぇか。」

 

無線越しでも、ファルコがニヤリと笑っているのが分かる。

 

『優秀な教官がいたからね。』

 

「俺だろ。」

 

『フォックスとペッピーとスリッピーのおかげ! まぁー……ファルコもちょーっと……だけ?』

 

「俺を最後に付け足すな!!」

 

「ははは! からかわれてるじゃないか、ファルコ。」

 

フォックスが愉快そうに会話へ入ってくる。

 

『ほら、無駄口叩いてないで! ファルコ、右後方!』

 

「分かってる!」

 

いつも通りの声。

昨夜、クラブで女性に囲まれていた人物と同じとは思えない。

 

────こっちのファルコの方が、なんか落ち着く。

 

「大体は片付けたかのぉ?」

 

ペッピーがレーダーを確認する。

 

「あっ、一機逃げてくよ!! 六時方向!」

 

スリッピーが声を上げる。

 

「逃がすかよっ!」

 

一番距離の近かったファルコが追おうとする。

 

『ファルコ、追わないで!』

 

「はぁ!? あと一機だぞ!」

 

言いながらも、ファルコはGディフューザーのブレーキを展開する。

 

『その先、地形がおかしい。待って!』

 

「……チッ。」

 

『何その反応!』

 

「いや。正解だ。」

 

速度を上げて飛び出していれば、峡谷に設置された対空ミサイルの照準レーダーに捕捉されていただろう。

狭く入り組んだ峡谷内へ入り込んだ状態で狙われれば、ミサイルを避け切るのは難しかったはずだ。

 

「うわー! マナちゃんナイスー! 修理代が浮いたね、ファルコ。」

 

「うるせぇ!!」

 

悔しそうに怒鳴る。

 

「お見事だ、マナ! どんどん成長してるな!」

 

フォックスが嬉しそうに賞賛した。

 

『ありがとう、フォックス! で、この先の峡谷なんだけど……何かありそうだよ。』

 

「ほう。依頼主が言っていた地下遺跡か?」

 

ペッピーがディスプレイの資料を確認する。

 

『そうかもしれない。準備して調査した方がいいかも。』

 

「分かった。スターフォックス、全機帰投せよ!」

 

フォックスの掛け声を合図に、アーウィンは母艦へと向かった。

 

 

「ロープと、それから熱探知機とぉ……。」

 

スリッピーが倉庫の中をゴソゴソと漁る。

漁るたびに物が滑り落ちてきて、今にも足の踏み場がなくなりそうだ。

 

「ス、スリッピー! もうちょっと散らかさないように……。」

 

マナが後ろから声をかける。

ここも早く整理しないとなぁ、と思いながら、足元へ落ちてきた道具を脇へ避けていく。

 

「あ、あったー! 高性能ランタン!」

 

地下探検はランタンがないと始まんないよね、と言いながら、スリッピーは荷造りを進めていく。

 

「地下探検なんて、ワクワクするね。スリッピー!」

 

「うん! 空ばっかり飛んで、フィールドワークは全然だったからね。」

 

ニコニコと笑みを浮かべるスリッピー。

 

「こら! 二人とも遊びじゃないんだぞ! 遺跡は深い。細心の注意を払わんと……。」

 

「分かってるよ、ペッピー! ペッピーも一緒なんだから、安心でしょ?」

 

小言が始まりそうなペッピーへ、マナは両手を突き出して制止する。

 

「そうそう! も〜! お宝探しなんてテンション上がっちゃうんだけど!」

 

振り向いたスリッピーと目を合わせる。

 

「「ねー!」」

 

二人揃って首を傾げ、息を合わせる。

その様子を見て、ペッピーは頭を抱えるばかりだった。

 

 

『こちらフォックス。スリッピー、ペッピー。目的地に到着後は、アーウィンを自動操縦に切り替えて待機させてくれ。』

 

「こちらスリッピー。了解、フォックスー。」

 

「こちらペッピー。了解だ。」

 

マナたちは数時間前に訪れた峡谷へ、再び足を運んだ。

マナはスリッピーのアーウィンの補助席に乗り込み、程なくして目的地へ降り立った。

 

「さて、この地図によると……。」

 

マナは地図を広げ、先へ続いていると思われる方向へ目を向ける。

ここは深い谷に覆われており、光が届きづらい。

先の道は、ランタンに照らされた数メートル先までしか見えなかった。

 

『打ち合わせ通り、俺とファルコは上空で警護にあたる。無線は繋いだままにしてくれ。』

 

「了解。」

 

地上の三人が返事を返した。

 

「かなり暗いねぇ……。」

 

スリッピーがランタンを照らす。

三人は地図を頼りに、道なき道を進んでいった。

周囲を照らしてみると、壁面には古代文字のようなものが彫り込まれた跡が残されている。

 

「……気味が悪いのう。」

 

「そう? なんか罠でも仕掛けられてそうでワクワクしない?」

 

「こんなとこで罠なんて、冗談やめてよ。」

 

スリッピーの軽口を聞きながら、マナが無線を飛ばす。

 

「どう? フォックス、ファルコ。異常はない?」

 

『こちらフォックス。特に問題ないぜ。お宝発見を首を長くして待ってるよ。』

 

『こちらファルコ……退屈すぎて寝ちまいそうだ。』

 

ふぁ、と欠伸をする声まで聞こえてきた。

 

「寝たら落ちるよ、ファルコ。」

 

『誰に言ってんだ。』

 

マナの冗談に、ファルコが少し笑う。

 

『とにかく、お宝を発見……したら……早……』

 

「あれ、フォックス?」

 

『危……険……な……』

 

「通信障害かな……フォックス、フォックス!」

 

そのまま雑音だけが耳に残り、声は完全に途切れてしまった。

マナがレーダーを確認すると、そちらも反応を示さなくなっている。

 

「……レーダーと通信がダメになってる。引き返した方がいいかも。」

 

「えー! これからなのにー!」

 

「スリッピー! わがままを言うな! そうだな。危険になる前に出直そう。」

 

三人が来た道を戻ろうとした、その時。

奥の暗闇に、赤い光が揺らめいた気がした。

 

「待て! 二人とも!」

 

ペッピーが腰に装備していたブラスターを素早く構える。

 

────ヴゥルルル……!!!

獣のような唸り声が闇の奥から響いた。

 

「なにっ……!?」

 

マナは思わず後ずさり、恐怖のあまりスリッピーへ抱きつく。

 

「うん……? あれ、古代の生物兵器だよ!」

 

ランタンの光にぼんやりと照らされたその獣には体毛がなく、全身が鈍い金属の光を放っていた。

口元には鋭い牙が並び、四足で地面を這うようにして迫ってくる。

 

「うわっー! 凄い! 持って帰って分解したいー!」

 

「言っとる場合か! 逃げるぞ!」

 

ペッピーがブラスターを牽制に何発か撃ち込む。

 

『グゥ……!!!』

 

「怯んだ! 今のうちだ!」

 

ペッピーは踵を返し、マナとスリッピーの背中を押した。

一方、上空ではフォックスが地上の三人へ何度も呼びかけていた。

 

『おい、スリッピー、ペッピー、マナ! 聞こえるか。応答しろ。』

 

『なんだ、通信が途切れたのか?』

 

『レーダーにも反応がなくなった……捜索に向かおう、ファルコ。』

 

『ああ。』

 

二人はアーウィンを傾け、遺跡の上空へ接近していった。

 

「はぁ……はぁ……! スリッピー、ペッピー! この先に行けば……。」

 

マナが二人を振り返る。

しかし、そこには闇が広がるばかりだった。

 

「スリッピー! ペッピー!」

 

手にしたライトを四方へ向けながら、必死に二人の姿を探す。

気配がない。

マナの鼓動が急速に速くなっていく。

 

「どうしよう……はぐれるなんて……!」

 

────グルゥヴルルッ!

遠くから、また唸り声が聞こえる。

 

「……とにかく奥に行くしかない……開けた場所があるはず……。」

 

頭に残っている地図を頼りに、遺跡の中心部へ向かって走った。

広い場所へ出れば、通信も回復するかもしれない。

後ろを何度も振り返りながら、懸命に道を駆け抜ける。

すると、前方に僅かな光が差し込む場所が見えた。

 

「ここが……遺跡の中心部……。」

 

そこは巨大な空洞となっており、架けられた石橋の下には、底の見えない奈落が広がっている。

中央には、何かの神を象ったと思われる巨大な石像が立っていた。

 

「あ、通信……ダメだ。回復してない。ペッピーとスリッピー、大丈夫かな……。」

 

ここで救助を待つしかない。

そう考えながら、マナは石像へ続く橋を進んだ。

またあの生物兵器が襲ってくるかもしれない。

可能な限り距離を取りたかった。

 

「……何これ。何か書いてある? 読めるかな?」

 

石像の足元まで来ると、その台座には古代文字で何かが刻まれていた。

どうせここで待つしかないのなら、少しでも成果を持って帰ろう。

そう思い、マナは端末を片手に解読を始める。

 

「汝……墓を……穢す者……頭を垂れて……罰を……受けよ……何これ、怖。」

 

その場から離れようとした瞬間。

マナの足元へ、鈍い衝撃が走った。

 

「……っ、なに……!!」

 

石畳の橋が砕ける。

 

「────っ!」

 

マナの体が、奈落へ投げ出された。

闇に続く深淵は、いつまで経っても底へたどり着かない。

落下しながら、マナの思考は完全にパニックへ陥った。

 

────どうしよう、どうしよう、どうしよう……!! 私、死ぬの……!?

お母さん。

フォックス。

ペッピー。

スリッピー。

誰でもいいから助けて!!

 

「……ファ……ルコ!! ファルコォ!!!」

 

届くはずのない叫びを上げた。

 

────なんだ?

 

『どうした、ファルコ。早く着陸地点に……。』

 

不自然に動きを止めたファルコへ、フォックスが問いかける。

 

『……お前はそっちから行け。胸騒ぎがする。』

 

Gディフューザーのブーストを全開にし、ファルコはただ自分の勘に従った。

 

『おい! そっちにアーウィンが入れる通路はないぞっ!』

 

『ある! なんか分かんだよっ!』

 

『どういうことだ!』

 

『うるせぇ!! 今、話してる暇はねぇ!』

 

ファルコの機体は吸い込まれるようにして、岩壁に開いた小さな空洞へ飛び込んだ。

内部には鍾乳石の柱が幾重にも伸びている。

ファルコはそれらを紙一重でかわしながら、高速で駆け抜けていく。

 

────なんだ、この嫌な胸騒ぎは……!

 

「はぁ……はぁ……!」

 

マナは落下の途中、幸いにも遺跡の一部へ服が引っかかり、宙吊りの状態になっていた。

その眼下には、なお底の見えない闇が広がっている。

 

「助けて……助けて……!」

 

ただ祈ることしかできない状況に、涙が滲んでくる。

一方、ファルコは鍾乳洞を抜け、石像が立つ広場へたどり着いていた。

マナの姿はない。

 

────いや、なんでアイツがいるって思ってんだ?

 

「……下だっ!!」

 

考えることをやめた。

何かに導かれるように、ファルコはアーウィンを急降下させる。

 

────ゴォォォ……!

マナの耳に、微かにエンジン音が届いた。

 

「……! アーウィン?!」

 

『お……い……大丈……夫か!』

 

途切れ途切れの通信が聞こえる。

どうしてファルコが。

通信もレーダーも途切れていたはずだ。

マナは驚きながらも、大きな安堵を覚えた。

 

「ファルコ……!!」

 

『待っ……てろ、すぐに……!』

 

少し先で宙吊りになっているマナの姿を認め、ファルコは事態の深刻さを理解する。

 

────ゴゴゴッ……!

再び遺跡の崩落が始まり、マナを支えていた石壁へ亀裂が走る。

 

────まずいっ……!!

 

ファルコがブーストを最大出力まで引き上げた。

 

「あっ……?」

 

引っかかっていた服が裂ける。

マナの体が、再び闇へ落ちた。

 

『────っ、マナ!!!』

 

さらにブーストを踏み込む。

アーウィンが警報を上げた。

ファルコは一気に追い抜かず、マナの落下速度に合わせるよう慎重に推力を調整する。

 

「……ファルコ……。」

 

マナは気が遠くなっていくのを感じた。

 

『気を失うなっ!』

 

アーウィンをぎりぎりまでマナへ近づけ、機首で掬い上げるようにして受け止める。

 

『捕まってろっ!』

 

マナに負担をかけないよう、徐々に速度を落としていく。

コックピットの上へ必死にしがみつくマナと、ファルコの目が合った。

 

『大丈夫だ。俺の腕を信じろ。』

 

────PULL UP!! PULL UP!!

アーウィンの警報が鳴り響く。

底が近い。

ファルコは限界まで地面を引きつける。

 

『止まるぞ! 掴まれっ!』

 

地面すれすれで機首を引き起こす。

機体が大きく軋み、砂埃を巻き上げながら着地した。

 

「はぁ……はぁ……っ!!」

 

無事にアーウィンからマナを下ろし、ファルコは座り込んだ彼女の隣へ腰を下ろした。

 

「……怪我はねぇのか?」

 

「うん……かすり傷……ぐらいだよ。」

 

ファルコが持っていた水を差し出す。

マナはそれを受け取ると、勢いよく喉へ流し込んだ。

そして、ようやく一息つく。

 

「……助けてくれてありがとう……もうダメかと思ったよ。」

 

力のない笑顔を浮かべる。

 

「そりゃ……助けるだろ。俺たちはチームだ。」

 

「うん……そうだね……さっきさ……。」

 

少し言い淀むマナ。

 

「なんだよ?」

 

「名前……呼んでた? マナって。」

 

────呼んでたか?

というか、今まで俺は呼んでなかったのか?

 

「ファルコ?」

 

動きが止まってしまった彼の顔を、マナが覗き込む。

 

「あぁ……そうだったか?」

 

「……うん。」

 

彼女は、ほんの少し微笑んだ。

なぜそんなことを今聞かれるのか、ファルコには分からなかった。

 

「それから、なんで私がいる場所が分かったの? レーダーも消えてたよね?」

 

「……俺にも分からねぇ。勘だよ、勘。まぁ助かったんだからいいだろ。」

 

マナは、偶然にしては出来すぎていると感じていた。

しかし、今ここで考えたところで答えが出ないことも明らかだった。

 

「そう……だね……早く……帰らない……と……。」

 

安堵した途端。

張り詰めていた糸が切れたように、全身から力が抜けていく。

 

「おい!」

 

ファルコが咄嗟に、その頭を受け止める。

彼の声が、遠く聞こえていった。

 

第1部 終

 

 




第1部イメージソング:
繝舌Φ繝励が繝悶メ繧ュ繝ウ縺ョ縲後い繧ォ繧キ繧「縲阪〒縺吶?
気になる方は変換してみてください!
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本作品はフォレストページ+にも同一作者名義で掲載しています。
フォレストページ+版では名前変換に対応しています。
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