何やら神に喧嘩を売った雪国に転生したらしい 作:てきとーでいこう
スネージナヤ。
テイワットの最北に位置し、氷の女皇が治る国。
そして原神において旅人が最後に訪れる国である。
ここまで言えばわかるだろう。
俺は転生者だ。
なんで死んだのか、いつ死んだのか。
そんなものはわからない。
気づいたら転生していた。
正確にはふと思い出した、というのが正しい。
なぜ思い出したのかはこれまたわからない。
重要なのは俺が原神を知っている、ということだ。
ここで転生ものの作品を読んでいるものならばこう思うのではないだろうか。
原作知識があるから無双しよう!
と。
ハッキリ言おう、それは無理だ。
この世界はだいぶ理不尽である。
というか世界はそういうものだ。
普通に死人が出たりする。
ネームドであれば死んだりすることはめったにないがそれ以外のモブキャラは普通に死ぬ。
ならば強くなればいいではないか。
そんな簡単な話でもない。
この世界で強者と認定されるには最低でも神の目を持っている必要がある。
そしてそれが扱えることが大前提。
さらに神の目は誰もが持っているわけではない。
まぁ選民的な要素があるのだ。
何かしら条件があった気がするが思い出せない。
ならば知識を使って安全な場所に……
残念だがそれも無理だ。
原神の各国は基本危機に陥っている。
そしてメインストーリーである魔神任務以外の世界任務でも結構な頻度で危機に陥っている。
それを旅人が解決していることでどうにかなっているのだ。
旅人でしかできないことがあるのにそれを俺がやる?
無理だ。
そもそも俺は原神はなんとなくでしかやっていない。
基本魔神任務で満足して世界任務には手をつけない怠惰な旅人なのだ。
そんなものを覚えているわけがないのだ。
結論を言えば無双なんか無理、である。
この世界で生き残るには地道に強くなるしかないのだ。
その強さも才能的な面が大きいのだが。
それに加えて、だ。
今世の状況が死ぬほど悪い。
何故なら俺は今は孤児だからだ。
親は知らない。
その上別に孤児院とかに所属しているわけでもない。
正真正銘ひとりぼっちである。
そんな絶望的な状況なのにもこんなにヘラヘラしてられるのはまだこれが現実味がなくてハイになってるのもあるのだろう。
おそらく今俺は10歳も行ってない。
鏡がないからわからないが手足の大きさや身長的に多分そうだ。
こんな年齢でこの状況。
並の子供じゃ耐えられない。
俺が存在しているのもこの体の持ち主が限界になってしまったからなのかもしれない。
だとすると俺はこの子から体を譲り受けたことになる。
だから思った、一市民としてひっそりとだけど自由に生きていこうと。
別に全員が全員死ぬわけじゃないのだ。
人は死ぬ時は死ぬ、それは前世も同じ。
ならば細かいことは考えても仕方ないだろう。
自分のできる範囲でこの原神世界を生き抜けばいい。
「うぅ、寒……」
とはいえ決意だけで寒さを凌げるわけじゃない。
冷たい風の届かない裏路地の奥の方に避難しながら俺は何か暖房になりそうなものを探すのだった。
◇
あれから何日、何ヶ月……
詳しい時間はわからないがここの生活にも慣れてきた。
人間ってものはすごい。
全く慣れない生活であっても案外適応できるものなのだ。
前までは全くできなかった物資漁りだったり、気配の察知なども身についた。
さて、ここまでは生き残ることで精一杯だったから落ち着く暇がなかったが今なら多少は大丈夫だ。
状況を整理しよう。
まずここはスネージナヤ。
氷の女皇が治る国だ。
あちこちで悪い意味で有名なファデュイの本拠地でもある。
そして俺はここでストリートチルドレンをしている。
まぁそこは置いておくとして……いや後で触れるが問題は俺の知識の方だ。
俺の知識はナド•クライで止まっている。
要はスネージナヤの物語を知らないのだ。
予告番組がある、というところまでは知っている。
だからここで何が起こるのかわからないし、そもそも誰がいるのかすらわからない。
タルタリヤとかサンドローネ、アルレッキーノといった執行官はいるだろうか?
そもそも今が時代がわからない以上そう期待できるものではないが。
ならば他の国に行けばいいじゃん、というのもあるがこの状態で行けるのか怪しい。
だって土地がつながってんのナド•クライだぞ?
ワイルドハントだぞ?
あの体力2倍やろうだぞ?
うん、絶対無理。
ちゃんと鍛えてるライトキーパーの人たちでさえ無理だったんだからこんなヒョロガリじゃ勝てない。
というわけで却下。
そして次に問題なのが俺自身の生活。
このままストリートチルドレンをやるかという話だ。
無論無理。
ふかふかじゃなくてもいいから風が凌げて暖かい場所で寝たい。
そのためには金!
ということで働き口を稼ぐ必要があるのだ。
とはいっても今の年齢で働ける場所はそうそうない。
ワンチャンファデュイなら訓練兵みたいな感じで雇ったりしてくれるんだろうか。
とはいえ危ない実験に巻き込まれたくはない。
お前のこと言ってるんだぞドットーレ。
ストーリーでは死んでいるがこの世界だとまだ生きているかもしれんからな。
確率で死ぬとこはいやだ。
ここで野垂れ死ぬのと確率ドットーレ実験サンプルを天秤にかけるとだいぶいい勝負をする。
まぁそこはいい。
とはいえ一応ファデュイ入りも選択肢に入るのは事実。
当てが無いわけでもないしな。
そう思いながらボロボロのコートの中にしまっているものを取り出す。
それらはガラスのように見えながら1人でに煌々と輝いている。
風と氷の神の目。
氷の方は何やら見慣れない形をしている。
おそらくは星の楔……だと思う。
一応自前で星拡散はできるらしい。
なぜ神の目が2つあるのかは不明だ。
プレイアブルしているキャラたちは全員元素一つだったしな。
なぜ俺が旅人みたいに複数の元素を操れるのか。
まぁ旅人は神の目なくて全部の元素操れるけど俺は神の目ありで2種類だから劣化版もいいところだが。
ともかく元素が使えるのなら多少は可能性があるはずだ。
問題は……
「これで余計実験体になる可能性が上がるんだよなぁ」
神の目の二つ所持とかいう一時的に万葉が成し遂げた奇跡的な出来事。
俺の場合は一瞬ではなくそれが継続している。
明らかに珍しい。
多分テイワット中を探し回っても俺しかいないと思う。
そんなやつをあいつが放っておくかと言われれば答えはNOだ。
貴重さゆえに実験体にはしないかもしれないが実験に巻き込まれるのは確実だ。
とはいえ便利なのは事実だ。
まだ氷元素は目立つからあまり使えていないが風元素による高速移動はとても助かっている。
あとは風を操って冷たい風の軌道を逸らしたりとか。
まさか本当に足に圧縮、加速みたいなのができるとは思わなかったが。
流石にファルカみたいに大ジャンプは無理だが走るくらいのスピードをほぼスタミナなしで出せるのは非常にありがたい。
とはいえどうする。
このまま漁りを続けても意味ない。
普通に犯罪だし。
だとすると……狩りとか?
外には魔物以外に鹿とかいると思うし。
とはいえまともな戦闘経験ない俺が勝てるか?
いや、でも囮として風元素を使いながら高速移動して氷元素で壁を作って頭をぶつけさせたりすればいけるのでは?
そりゃいっかいとかじゃ無理だろうけど複数回やればあり得るかもしれない。
風拡散でやれば倒せたりするのだろうか。
つっても俺のレベル低いだろうからな。
この世界にレベルという概念はないけどまともに元素を操る修行をしていない状態ではレベル1に等しいだろう。
対して俺が相対しようとしてるのは最終盤のスネージナヤ。
絶対普通の動物も強い。
俺がナイフとかもっても仕方ないし遠距離攻撃が欲しいな。
氷元素で氷塊飛ばしたりできるか?
そう思い風元素と同じ要領で氷を出そうとしたのだが……
「出るには出るけど……って感じか」
結論から言えば氷は出せた。
大きさはなんと言えばいいのだろう手のひらより少し大きいサイズだ。
とはいえあくまで出ただけであってスピードは皆無だ。
風元素による移動もそれだけを数ヶ月間使い続けてようやく身についたものだしずっと使ってなかった氷元素をすぐにパッと扱えるようにはならないか。
いや、旅人結構手に入れたばっかの元素自在に扱ってね?
化け物か。
まぁ、旅人と違って一般人の俺が比べても仕方がない。
地道に鍛えていくしかないな。
金については……ひとまず鍛えてからだな。
再生速度と発射速度を自在に操れるくらいにならないと……
まずは武器になるもんを作らなきゃ。
薄暗い裏路地で俺はそう考えるのだった。