何やら神に喧嘩を売った雪国に転生したらしい   作:てきとーでいこう

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感想嬉しい……


初狩猟

 

 

 方針を固めてからまたしばらく経った。

 具体的な日付はわからんが俺がまともに日にちを確認し始めるようになってから数年が過ぎた。

 

 そう、前は到底不可能だと思っていた正確な日付の確認。

 これができるようになった理由はただ一つ。

 

「やっと仕事が軌道にのってきた……!」

 

 まともに働き始めたからである。

 とは言ってもまだ10歳近くの子供で狩人ができるはずがない。

 

 いや、実際やろうと思えばいけるのだ。

 前から訓練していたおかげで氷塊を飛ばすのも形を自在に変えるのも慣れた。

 何せ時間だけはあったからな。

 ずっと練習してたのだ。

 

 そんな俺の現在の仕事は運搬だ。

 とはいっても重いものじゃない。

 正確に言えば新聞とかの軽いものだ。

 

 俺が運送を仕事にしようと思ったのには二つの理由がある。

 

 まずは単純に狩人が無理ゲーだったこと。

 

 倒せはするがそれを運ぶのは?

 解体するにしてもその技術は?

 特段身分がない状態で販売できるのか?

 

 まぁ要するにいろんな問題があるわけだ。

 正直考えなしだった。

 狩人自体はいいアイデアだと思ったんだがな。

 

 それはさておきもう一つの理由はとあることに気づいたからだ。

 

 俺の元素の相性がめちゃくちゃいいということに。

 星拡散という新しい元素反応もあるがそれ以上に機動力だ。

 足元を氷元素で凍らせ滑りながら風元素で加速、姿勢制御。

 

 二元素扱えることも氷で覆われているここスネージナヤではさほど目立たない。

 氷元素×風元素によって俺は高機動力を手に入れたのだ。

 

 そんなものを活かすとなるとスピードが大事な情報の運搬だろう。

 そりゃ無論大事な情報はこんな子供に渡せるわけがないが小さなお使い程度のことなら問題ない。

 

 最初は街の住人のお使いを引き受けて名を広め、そこから出版社にまでこぎつけたわけだ。

 

 とはいえ正式に雇われたわけじゃない。

 まぁ似たようなものだがお使いの延長上だ。

 出版社の社員が個人として俺に新聞配達を頼んでいるのだ。

 

 出版社なら毎日の配達があるため仕事には困らないしまさに天国というわけだ。

 毎朝早く起きないといけなく、常に移動しなきゃいけないというのはあるがな。

 

 それでも前の裏路地生活よりは断然マシだろう。

 何せ今なら安い宿になら定住できるくらいには稼ぎがあるのだから。

 たまにやってくる「四つ足のお客さん」も逆にいい元素のトレーニングになっている。

 天国といってもいいかもしれない。

 

 そんなことを考えながら今日も今日とて新聞配達である。

 最近になって俺の配達範囲が拡大した。

 前まではスネージナヤ•グラード周辺だったのだが今ではスレトモロスクまでである。

 しかも列車ではなく己の足によってだ。

 まぁ走ってるんじゃなくて滑ってるんだけども。

 

 出版社からしたらウハウハじゃないか?

 切符代払わずに済むのだから。

 俺の身は一つしかないからそんなあちこちに回れるわけじゃないがな。

 

 今日は快晴だ。

 特に雪が降っていなくて滑りやすい。

 絶好の配達日和だ。

 

 そんなことを考えながら目的地へと向かっていると視界の端に長蛇の列が映る。

 

「ん? ファデュイか?」

 

 制服から察するにおそらくそうだろう。

 あんなに長いとなるとそれなりの人物が率いているんだろうな。

 それこそ執行官クラスとかが。

 

 何か遠征があったんだっけか?

 背負ってる鞄に情報の塊である新聞があるので見たくなったがここで視界を遮ると冗談抜きで死ぬので我慢する。

 

(何かそんなやばい出来事あったっけな……)

 

 内心そんなことを考えながら俺は滑っていた。

 目的地まであと数十分。

 ラストスパートだ。

 

 

 

 

「……どうしました?」

 

 長蛇の列を形成している1人のファデュイが己が上司にそう尋ねる。

 

「……いや、なんでもない。行くぞ」

 

 その質問に顔が仮面で覆われた男はそうそっけなく答える。

 その男の脳裏には先ほど通常ではありえない速度で移動していた少女の姿。

 

(風元素で加速しているのか? にしては早すぎる。……そうか、氷で滑っているのか。とはいえそんなことをすれば足への負担が相当……)

 

 鍛えられた軍人ならまだしもそれはたかだか10歳前後の少女が平気な顔して行う?

 ありえない。

 

 そんなものが全員できればファデュイの進軍速度はもっと早い。

 実現するとしたら風と氷の両方が……

 

 そこまで考えたところで男はとある可能性に気づいた。

 おそらくこの世界でたった1人、彼女しか体現していないであろうこと。

 

(もしこれが事実だとしたら危険だ)

 

 ()()()()()()()()()()という前代未聞の出来事が事実ならば研究者は放っておかないだろう。

 特に身内のとある〝博士〟は。

 

 さらに暴走の可能性もある。

 幸いうまく制御しているようだがもし制御を誤ればその被害は通常とは比べ物にならないだろう。

 

(早急に対策を立てる必要があるな)

 

 行軍のスピードを速めながら大男はそんなことを考えるのだった。

 

 

 

 

「お、見えてきたな」

 

 おそらくナド•クライに1番近い街であろうスレトモロスク。

 

 今の俺なら多少はナド•クライでも行けるだろうが流石に今の生活基盤を捨てる選択肢はない。

 向こうに行けば多少は何かわかるかもしれないがまた初めから繋がりを作るのは無理だ。

 だから俺が今行ける限界地点がここだ。

 

 正直言うならここで暮らしたい。

 だってナド•クライに1番近いのならば必然的にここに旅人ははじめに来るわけだ。

 そうなりゃひとまず旅人に任せておけば色々と巻き込まれるだろうが最終的には勝てるだろう。

 勝てて欲しい。

 俺も死にたくないから手助けするからさ。

 ま、敵は全くわからんがな。

 

 なんだったっけ。

 なんかのショート動画の考察で見てた気がする。

 

 〝天理〟だっけか。

 それとそれに付随する執政たち。

 

 一応知識として知ってはいるがその実態はあまり知らないんよな。

 PVとか見て容姿と名前を覚えてるくらいだし。

 

 まぁ、そんなやつと関わるのは旅人だからな。

 そうであってほしい。

 執行官とも元原神プレイヤーとして関わりたいがそれはそれで面倒ごと確定演出だからな。

 まぁもしかしたらそもそも旅人すら来ない遥か前時代の可能性もなくはないけども。

 

「うし、これで全部か?」

 

 思考しながらも家に新聞を配達し続け、最後の家に配達を終える。

 鞄の中を確認しても残っているものはない。

 全部やり切ったっぽいな。

 

「うし、んじゃ帰るか」

 

 そう思い街から少し離れた時だった。

 

「──ッ!」

 

 魔物の気配。

 今まで感じたことがないほどに強大な……今まで対峙してきた魔物が雑魚に感じられるほどの圧。

 

 多分俺は気づかれてない。

 孤児で常に周りを警戒しなきゃいけない特殊な状況下に数年いたからこそわかったこと。

 

 おそらくはナド•クライ方面に通じる森の中。

 ワイルドハントが紛れてきたか?

 いや、そんなことはどうでもいい。

 下手したらこの街が壊滅するぞ。

 

 どうする?

 今から住人を避難させても間に合うか?

 いや、そもそも信用してもらえるのか。

 

 ファデュイの兵士をよこしてほしいが今日はクルースニク晶鉱の搬送日じゃない。

 俺がスネージナヤ•グラードを出発したときも列車に積んでいる様子はなかった。

 だからこそ今は駅に滞在してる兵士はいない。

 

 列車も来ないからそもそもの避難場所がない。

 変にこまねいていたらそれこそタイムリミットだ。

 

 クソ、やるだけやってやる。

 

「魔物が来る? 安心しなお嬢ちゃん。ここしばらく魔物はでてないんだ、大丈夫だよ」

「何言ってんだ。来るわけないだろ? 万が一来ても俺が追い払ってやるよ。ガハハハ」

「怖いのかい? じゃあおばあちゃんと一緒にいようね」

 

 ダメだ。

 信用されない。

 

 これ以上時間を使ってる余裕はないぞ。

 ……仕方ない。

 せめて足止めくらいはしてやる。

 

 足さえ止めれば兵士を呼ぶ猶予も少しは稼げるはずだ。

 今更元素二つ持ちを隠していても仕方ない。

 全速力だ。

 

「……い、ちゃ………ん……!?」

「……は余…………いな」

「………か。物……いで………たです………な」

 

 後ろで何やら話しているが聞こえない。

 聞いている余裕もない。

 

「まさか俺が人民救助じみたことをするとは思わなかったな……!」

 

 これも力を持ったものの責務ってか?

 他の人に比べて俺が1番足止めできるんだからやるしかない。

 

 ここで何もせず後で壊滅の情報を聞いてずっと後悔するのだけはごめんだぞ。

 ずっと引きずられるのが1番辛いんだからな!

 

 そんなことを考えながら木々を避けながら気配のする方へ進む。

 

 ……見えた。

 あれは……巨大な熊?

 

 俺の視界に現れたのは全長3メートルはあるであろう巨大な熊。

 自然ではあり得ない魔物である。

 

「はてさて一体どこまでできるか……」

 

 手元に氷塊を形成しながらそう呟く。

 ここにきて初めて強敵との戦闘だ。

 

 原神のように負けたら復活ではない。

 負ける=死だ。

 命を賭けた戦闘の緊張感はとんでもないな。

 これをタルタリヤは楽しいというのだ、どうかしている。

 

 俺は戦鬪狂じゃない。

 やることは、アイツを狩ることだ。

 殺すんじゃない。

 倒せば……足を止めれば俺の勝ちだ。

 

 

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