何やら神に喧嘩を売った雪国に転生したらしい 作:てきとーでいこう
引きたいけどイネファも引きたい。
無課金勢にはキツいよ原神。
よし、逃げよう。
生成した氷を足元に向けて投擲した後、俺はすぐさま逃げ出した。
理由は簡単あいつの足に全くと言っていいほど傷がつかなかったからである。
っぱダメか。
俺が実践で使った氷塊の相手なんて雑魚もいいとこだもんな。
そりゃ同じ威力じゃ意味ねぇわ。
といってこれ以上出力あげてやばい時に元素使えませんが1番やばい。
よって取るべき選択肢はヒットアンドアウェイ。
俺にできるのは時間稼ぎ、あわよくば足を切ること。
俺の氷塊じゃ威力が足りない。
最初から巨大な氷塊を作って押しつぶせばよかったか?
いや、そんなことをしてたらバレて死んでたな。
「おらこっちだ熊野郎!」
煽りながら森の奥へ誘導する。
魔物もいるだろうがコイツとも相入れないだろう、勝手に逃げていくはずだ。
逃げなかったとしてもこのスピードなら逃げるだけなら余裕だし。
問題は熊が俺のことを諦めてしまうかもしれないということだ。
そしたら街へ襲いに行くだろう。
そうなると俺は手出しできない。
一定の距離で熊に俺を殺すチャンスがあると思わせなきゃならない。
「クッソきついなおい! 氷塊!」
「グォッ!!」
「手で弾くなよ凹むだろ……」
木々の隙間から追ってくる熊に向けて放った氷塊がいとも容易く弾かれて苦笑いをする。
ここまで来ると逆に笑えてくるものだ。
今絶対に挑むべき相手じゃない。
……が、機動力には自信があるんでな。
初めてだがやるしかない。
氷元素による足場の生成と風元素を使った周囲の把握と加速、姿勢制御のマルチタスク。
……頭が割れるように痛い。
こうなるんだったらもっと並列発動の訓練としとけばよかったな!
「氷……解ッ!」
これに加えて攻撃までやんなきゃいけない。
溜まったもんじゃないぞクソ。
このまんまじゃ俺の頭が先にぶっ壊れる。
知ってる場所に誘導しなければ。
人がいないルートを通りながら。
どこだ……探せ!
氷塊をやめて風元素による探知に力を入れる。
そして森の端から見える景色からも情報を得て考える。
今は街の下の森、その西側……。
ならばこのまま回っていけば広い空間に出る。
基本誰もいないし街からも離れている。
軍も何もないから進軍しやすい……はずだ。
よし、方針は決めた。
「こっちだ!」
薄暗い木々を避けながら進む。
ふと後ろを覗けば熊が木々を押し倒しながら進んでいる。
ほんの少しだろうが木を倒すという行動でスタミナを削れるならラッキーだ。
今なら動きが鈍い。
当たるか……?
そう思い手を差し出して照準を定めようとするが移動による振動でまともに狙いが定まらない。
「……散弾銃とかが欲しいな」
氷を広範囲にばら撒けたら便利なもんだ。
あらかじめ氷の弾丸を用意しておける銃ならば尚更。
今の俺には複数の氷塊を同時に発射することもできないしそそもそも銃自体もないから考えても意味がないがな。
帰ったら作りたいものだ。
「うおっ!?」
そんなことを考えていたら頭上を熊の巨大な腕が通り過ぎた。
影と反射で回避できなかったら今のでお陀仏だったな……
孤児生活様々だよ、ほんとに。
「ちょっと近すぎるんじゃないかっ!」
探知を一時中断し、それなりに大きい氷塊を生み出して足止めをする。
これでしばらくは大丈夫。
そう思った時だった。
浮遊感が全身に漂う。
世界が逆転して見える。
あ、上に熊がいる。
下に空がある。
なんだこれ……
そこまで考えた時気づく。
(飛んでる!?)
なんだ、なぜ?
なぜ急に宙を飛んでいる?
熊野郎には特段触られては……
そう考えながら周囲を見回していると、そりたった氷が視界に入る。
「あれか!」
おそらくはあれがスキーのジャンプ台のような役割を果たしたのだろう。
氷で滑り風で加速。
さらに10歳付近の小さな体重。
特大ジャンプには十分だな。
とか考えてる場合じゃねぇよ!
どうする?
このまんまだと死ぬぞ、俺。
落下時に頭を氷で固めて守るか?
いや、そんな程度でうまく行くとは思えない。
そりゃやらないよりはマシだろうが他の部分が死ぬぞ。
氷で衝撃も吸収できないだろうし。
せめて雪なら良かったんだがな。
だが現実は無常。
地面に見えるのは一面固い氷である。
地面にぶつかった時点で終わりだ。
落ちる前になんとかしないと!
なんだ、何かないか?
旅人とかしょっちゅう崖から落ちてるのに無事とか意味わかんない。
今の俺に5点着地とか無理だわ。
風の翼とかいう便利装備もないし……
(風?)
そうだ、風元素!
放浪者とか飛んでたよな、風元素で。
そりゃ空中浮遊とかは無理だろうが多少速度を抑えたりするくらいなら!
大ジャンプした子供の体重舐めんなよ!
「そぉらっ!」
後先考えず全力で風を押し出す。
出し惜しみしようと思うな。
ここで死んだら継戦どころじゃねぇんだから!
吹き出した風によって雪が舞う。
その雪がこの場にいる1人と1匹の視界遮る。
どうだ、いけるか!?
雪のせいで地面が見えん。
このまま垂直落下でいいのか?
さっき見た感じは急斜面って感じだったが大丈夫か?
一応風を出した勢いを利用して体勢は頭を上に持っていくことはできたが足折れないかこれ。
まぁ頭かち割れるよりはマシだけど。
安全対策はいくらあってもいい。
素直にぶつかるよりも転がるようにやったほうが結果として怪我は少ないのか?
クッソ、んな経験ないからなんもわからねぇ。
風は出し続けてるがどれだけ勢いを殺せたかわからんな。どうにか雪の目隠しから逃れなければ……
(……っ! 見えた!)
舞っている灰色がかった白の雪ではなく、青い氷の地面が見える。
衝突のタイミングで雪の斜面とは反対方向に噴射する!
接地まであと──
「ここっ!」
ブワッと過去最大の風が吹き出し、一瞬体が上に浮く。
そしてそのタイミングを逃さずに地面を俺の氷でコーティングする。
天然の氷でなく俺が作り出した氷ならいくらか小細工ができる。
例えば滑りやすくすれば──
「グガォッ!」
気配を探って飛び込んできた熊を滑り台のように下に落ちることで回避できる!
そしてそのまま体を起こして再び風で加速して森の中のように滑る。
危なかった。
過去一危なかった。
つか怖かった。
これを自分からやったりする旅人エグいって。
死ぬ瀬戸際だったから一周回って冷静だったけど俺今やばかったって。
死にかけてたよ正真正銘。
「熊は……上か」
俺が滑り落ちたところを見ると、俺を追って追いかけてくる熊が見える。
炎元素使えたら地面の氷を溶かせてんだがな。
無い物ねだりしても仕方ない。
「氷塊」
ふとまず物量だ。
攻撃してヘイトを買っておかなければ俺を諦めてしまう。
最悪逃げ切ること自体はできるはずだからな。
ここでも足止めしておきたい。
……これいくら時間を稼ぎゃいいんだ?
決定打に欠ける俺じゃこいつを倒せないし。
巨大な氷を作ってぶつければワンチャンあるかもしれないがそんか時間を許してくれるか?
アイツは。
そう考えながら何か使えるものはないかと思い辺りを見回していると前方に小さな崖があることに気づく。
あそこに誘導して落とせばそう簡単には登ってこれない。
ファデュイに通報する時間も十分稼げるはずだ。
となるとどうやってあそこに落とすか。
俺の氷で足場を作って熊が通った時に崩壊させるか?
だとしてもあいつがそこを通るとは限らない。
俺が一緒に渡って誘導するという手もあるが下手したら一緒に崖下に落ちて再び鬼ごっこに開幕だ。
んな地獄を味わいたくはない。
ならばどうするか。
後ろを振り返る。
すぐそこまできている、悩んでいる時間はない。
「一度できたんだから今回も成功してくれよ!」
そう願掛けしながら俺は加速する。
より早く、勢いをつける。
じゃなきゃこれは成功しない。
さっきは勢いがあったからこそああなったんだ。
平坦なここじゃより勢いをつけなきゃ意味がない。
「グォォォッ!」
熊が咆哮しながら近づいてくる。
勢いはこれくらいあれば足りるはずだ。
よし、いくか。
熊の前で滑り、誘導する。
そして氷元素で崖の端にジャンプ台を作る。
そしてそれに乗り、一気に飛ぶ。
先ほど俺が宙を待ったのと同じように浮遊感が全身を包む。
俺には風元素によるさらなる加速があるが熊にはない。
熊は空中で勢いを失い崖下に落ちていった。
あとは俺。
このまま反対まで!
「届けっ!」
どうやら俺の願掛けに意味はあったらしい。
ギリギリだが反対側まで飛ぶことができた。
着地態勢も何もないから全身痛いけどな。
痛みを堪えながら崖端に行き、下を覗くと熊が怒りの咆哮を上げながら俺を見ていた。
勝った。
足止めは成功、俺も生きてる。
目標達成だ。
そう思った瞬間体が崩れ落ちる。
多分緊張が解けたからだろう。
我ながらよくやったものだと褒めてやりたい。
あとは向こう側でつながっているところからスレトモロスクまで戻るだけだ。
とはいえしばらく休憩していこう。
幸い雪はそこまで酷くないからな。
そう思っていた時、
「っ!?」
何かが来る気配を感じる。
強いなんてものじゃない。
あの熊が赤ん坊に見えるくらいの化け物。
本当にやめてほしい。
さっきのでさえ強敵だったのにそれ以上が来たらどうしろというのだ。
体もボロボロだというのに。
内心どこか諦めのような考えが浮かびながら落ちた衝撃で舞って何も見えなくなっている場所をどうにか体を起こしながら眺める。
さて、いったいどんなやつが来るのか。
そう思っていた次の瞬間、俺の思考が止まる。
「は?」
そこにいたのは化け物ではない。
体が獣毛で覆われていない、立派な服を着ている。
そして特徴的なのは顔全体を覆う仮面。
なんで?
なぜここにいる。
「ふむ、崖を利用してあの魔物を落としたのか」
頭が混乱している俺とは対照的にその男は冷静に俺の行ったことを分析している。
「素晴らしい。こんなこと、並のファデュイではできないだろう」
褒めてくれているのだろう。
それはわかる。
けど、それ以上に困惑が勝つ。
「自己紹介を忘れていたな。俺はカピターノ。ファデュイの執行官をしている」
なんでここにいるんだ、【隊長】。